再生エネルギーの技術開発を進め
現実的な「脱原発依存」へ

仙谷由人

脱原発依存を実現するために
 原発がないと生きていけない社会から、徐々に原発の依存度を低めていき、太陽、水力、風力などの再生可能エネルギーへ移行させていく努力が必要です。市場で通用する価格になれば一挙に広がります。そしてそれは産業の活力にもなります。政府は7月3日、2030(平成42)年までにどれくらい原発依存度を下げるべきか、3つの選択肢を国民に提示しました。依存度をそれぞれ0、15、20〜25パーセントとし、エネルギー政策について国民的議論をいただくことにいたしました。

 中長期的な目標を立て、原発を自然エネルギー・再生エネルギーに置き換えていくという戦略と工程表なしに、「脱原発」をいくら叫んだところで現実離れした議論になってしまいます。

大飯原発再稼働への責務
 3、4号機は事故のあった東京電力福島第1原発と型式が異なり、改良に改良が重ねられ、地震と津波に対し3倍、4倍の安全策がとられています。病院への通電(現在の病院では電子カルテ化をはじめ、医療機器の殆どが電気が無い状態での運営は考えられません)、人工呼吸器等使用の重病患者の文字どおり生命を守ることをはじめとした国民の生活、安定した良質の電力供給を確保できる経済活動という観点から考えると、安全管理をきちんと行うという前提で再稼働させるほかありません。だれが政権を担っても、これは政治家の責務だと考えています。

今回の再稼働への関わり
 私は、東電の再建・改革について、官房副長官として昨年9月まで中心になって対応してきました。今は内閣から離れていますが、政府の要請を受け関係閣僚会合にはオブザーバーとして参加してきました。「閣僚ではない仙谷さんがなぜ?」というご質問をいただきますが、この種の話はその立場になってからできるという問題ではなく、継続性が必要だとの観点から、政府からの要請をお受けし、オブザーバーとして参加させていただいております。

深刻な石油価格の高騰
 極端な脱原発の動きが、福島第1原発事故の深刻さと絡み、国民の感性的な部分で確かに存在します。しかし、良いか悪いかは別として、これだけ高度に電化、情報化されたこの社会を、今さらパソコンや携帯電話の無いロウソクの生活に戻すことはできません。つまり、今のほとんどの企業は、電気が止まった瞬間に、コンピュータが作動しなくなりますから、企業活動が出来なくなります。アジア各国と違い、日本では良質で安定的な電力供給が確保されているからこそ、多くの製造業があるということを忘れてはなりません。

 日本には石油、石炭、天然ガスなどの天然資源がほとんどなく、石油価格がどんどん上がっている(原油価格は2002年までは1バレル20ドル。今は1バレル100ドル)現在、アラブ諸国へ国民が稼ぎ出した利益(付加価値)から燃料代として(2011年の時点で)23兆円(1998年は5兆円でした)流出してしまっています。このことは、国民が稼ぎ出す価値=原材料費+燃料価格+賃金(人件費)という式で表されますので、価値が一定ならば、原材料費、燃料代が上がれば上がるほど、賃金(人件費)が下がらざるを得ないので、原子力発電の代わりに、石炭、石油、天然ガスの火力発電を電源にしてしのげても、石油価格が現時点のように高止まり(一バレル100ドル)する状況では、結果として「働けば働くほど貧しくなる」という経済構造になってしまっているのです。

 脱原発依存は、代わりの電源として、高い価格の化石燃料ではなく、原料代がゼロに近いできるだけ安い水、太陽、風などに置き換えていくことで進めて行くべきだと考えています。

 火力を基盤に置かなければならない現状では、この石油価格の高騰は深刻な問題なのです。

今後の原子力政策
 日本の原発は、政府が建設地や安全基準を決め、電力会社が所有・運営する「国策・民営」でしたが、福島第一原発事故で矛盾が表面化しました。東電は巨額の賠償を負担しきれず、政府の原子力損害賠償支援機構の公的資金注入や資金支援が必要となりました。数兆円規模とみられる廃炉費用は、機構の資金支援の対象ではありません。他の電力会社が保有する原発でも、いずれ廃炉費用の問題が浮上します。廃炉費用、原発事故の賠償、使用済み核燃料の中間処理を含めて、国の原子力政策大綱など法律体系を大きく変える必要があります。

 原発への依存度を低下させるため、国民の同意を前提に、再生可能エネルギーの推進を、技術や資本を含めて、政策を総動員することをお誓い申し上げます。