仙谷由人は156回国会の会期末に「質問主意書」を提出しました。

 

 がん治療改善に向けて、政府は抜本的改革を急げ

 昨年の胃がん手術以後1年半の間、仙谷由人が多くの患者さんや医師、ジャーナリストと意見交換し、学んできた内容をまとめて質問したものです。

 一刻も早くがん治療改善をしなければ助かる患者さんも助からなくなってしまうという危機意識から、会期末のあわただしい時期でしたが、衆議院議長あてに提出しました。7月25日に衆議院議長が受理し、同日内閣総理大臣あてに送付されました。

 この質問主意書に対する答弁書は、8月29日の閣議で検討され、衆議院議長あてに内閣総理大臣名で届けられます。

 


平成十五年七月二十五日提出

質問第一三八号

がん治療の改善に関する質問主意書

提出者  仙谷由人


がん治療の改善に関する質問主意書

 一九八一年以来、がんは日本人の死亡原因の第一位を占め、がんで死ぬ人の数はいまや毎年三〇万人で約三人に一人ががんで亡くなるという状況である。

 この国民病というべきがんの恐怖に対して、どのように対策をたてていくかが、日本の医療、ひいては国民生活を直接左右する重要な政治課題である。

 この問題を考えるとき、世界標準の化学療法(抗がん剤治療)が受けられないという問題をどう解決するかという大きな問題が存在する。

 豊かな経済力を持ちながら、世界標準の治療薬の恩恵を受けられない日本の患者の悲劇をどう考えるか。最近米国は医薬品の開発・承認を一〇年前のほぼ五倍にスピードアップしているという。日進月歩の科学の進歩に比して、わが国は今のままでは標準治療を普及しようにも肝心の薬の承認が追いつかない。優れたエビデンスに基づく世界的な標準治療薬はすべての人の財産であり、監督官庁や個別の企業・病院の都合によって患者がその成果を享受するのを妨げるべきではないと考える。そして、標準的教科書レベルの薬は一括承認の時期に来ているのではないか。こうした問題意識のもとに、以下、質問する。

 

一 世界標準治療薬の承認について

 治療方針の決定は、これまでの医師の経験やカンによるものから世界的にはEvidence Based Medicine(科学的根拠にもとづく医療)にかわりつつあり、政府もEBMの推進を提唱している。現時点で世界で行われた第?V相臨床試験によって、現在もっとも科学的に効果が高いという根拠が確立しているものをいう。アメリカの国立がん研究所の「PDQ」(がんに関する医師情報データベース)には一一五種類ものがんが掲載され、無料で公開し、毎月更新している。こうした資料を基本とし、日本人への副作用を研究することはゼロから日本独自のガイドラインを設定するより効果的ではないか。

 アメリカFDA(食品医薬局)が承認して標準テキストにのった薬はそのまま日本で医師が使えるようにしてほしいというのが、患者団体の率直な希望である。そこで、

 1 政府は、現在のがん治療の新薬承認の手続きのどこに問題があり、どこから改善しようと考えているのか。

 2 世界標準の治療薬という考え方を国は認めていないのか。

 3 がん治療の前進にとって、世界標準の治療薬を採用するには、一括承認の方法しかない。それが本来いちばん患者のための医療にとってよいと考えるがいかがか。いまの国の治療薬の承認のスピードでは、いつまでたっても標準治療を普及しようにも肝心の薬の承認が追いつかない。もはや二〇〇を数えるといわれる標準的教科書レベルの薬は一括承認の時にきているのではないか。それ以外の新たな治療法を日本独自で開発することが可能なら具体的に明示していただきたい。

 4 昨年の薬事法改正で、制度的には医師主導の治験が可能になったといわれるが、実際に医師主導の治験はどの程度見込まれているか。医師主導の治験が行われるための条件整備が必要と考えるがどうか。

二 EBMによる新薬の承認と保険適応について

 日本泌尿器科学会から平成一三年、一四年に要望が出されているが、「抗悪性腫瘍剤の適応外使用等に関する要望書」でM−VAC療法の有効性について述べ、学会においてはその使用が当然と考えられている。ところが、保険適応外であるという理由で大学病院に対して厚生労働省と県が保険の不正請求だとしてM−VAC療法使用の病院に対して保険から支払われた薬代を過去にさかのぼって返還せよということがあったという。先にテレビ報道等で紹介された事例である。そこで、

 1 世界標準治療薬の保険適応について、政府の判断を明らかにされたい。

 2 保険の範囲で最新の標準治療をまかないきれない場合、どのような解決策をもっているか。

 3 保険適応を拡大し、学会等で必要とされるものについて一刻も早く保険適応するべきと考えるがどうか。保険適応外薬は一刻も早く製薬会社に適応追加申請をさせ、承認し、通常の保険診療で使えるようにすべきであると考えるがどうか。

 4 今日の保険のあり方を考えた場合、がん治療において混合診療を必要とする場合をどう考えているか明らかにされたい。

 5 未承認薬については、承認されるまでの間、特定療養費制度の枠内で、薬剤費のみ全額本人負担の「混合診療」を認めるべきと考えるがいかがか。

 6 前記「混合診療」については、患者の経済状態を考慮し、本人負担分を軽減もしくは免除する措置の検討はしているか。

三 日本がん治療学会と日本臨床腫瘍研究会が厚生労働省の委託を受けて「抗がん剤適正使用ガイドライン」の作成を行っているが、いまだ正式に公表されていない。

 1 非常に多種類のがんについてそれぞれの治療のためのガイドラインはどのようなものが存在するのか。

 2 それらをとりまとめた「抗がん剤適正使用ガイドライン」の進行状況は現在いかなる段階にあり、いつ正式発表されるのか。

 3 正式発表にいたっていない要因を政府としてどのようにとりはらっていくつもりがあるか。

 4 現状では「適正使用ガイドライン」の更新体制ができていない。治療薬・治療法は日進月歩で変わっている。これをどう考え、更新体制をどうつくっていくつもりか。

四 次に、日本では化学療法(抗がん剤治療)の専門医師の養成が遅れている。米国では、臨床腫瘍医が九,一〇〇人以上いるというが、日本では腫瘍内科医は少数といわれている。イレッサの使用が原因と見られる副作用で患者が多数亡くなった事件の背景として、医師が抗がん剤の使用に習熟していなかったことが挙げられている。

 多くの専門家やメディアから指摘され始めているように、この国の人々は本来受けるべき科学の恩恵を受けていないのではないか。インターネットの普及で情報が個々の患者に急速に届き始めている現在、患者にとってこうした状況は許容しがたいものになっている。そこで、

 1 日本には腫瘍内科の専門医は何人いるか。

 2 がん克服一〇カ年計画で、どのような年次計画で専門医を養成していくか。一年次目、二年次目、三年次目・・・一〇年次目の計画を示されたい。

 3 その年次計画の実現に向け、政府の体制はどのようなものか。

 4 日本臨床腫瘍学会との協力体制をどのように行っていくのか。

五 政府は、第三次がん克服戦略の策定中であるが、

 1 第一次、第二次のがん克服戦略の成果と到達段階をどのように認識しているか。

 2 第三次がん克服戦略の策定にあたって、患者団体の意見をどのように聴き、反映させていくのか。

 3 第三次がん克服戦略実現に要する予算とその執行体制について、どのような見通しを考えているのか。特に省庁横断的ながん克服推進機関を設置すべきと考えるがどうか。

 

 右質問する。