1999年06月30日 大蔵委員会

○村井委員長 次に、仙谷由人君。

○仙谷委員 日銀の報告について質問をさせていただきます。

 まず最初に、金融危機といいましょうか、現在のこの異常な、ゼロ金利を四カ月も続けるという事態について、ここ数年間の日銀の金融政策の運営についてどういうふうな責任をお感じになっているでしょうか。

○速水参考人 バブル崩壊によって生じました不良債権問題、これは我が国の金融システムに非常に深い傷跡を残したわけでございます。今なおこの問題を克服し切れないでいるということはまことに遺憾な事態であるというふうに考えております。

 現在の金融システム問題の源をさかのぼってみますと、やはり八〇年代後半のバブルの発生に行き当たらざるを得ないと思っております。これは、いろいろな要因はあったにしましても、長期にわたります金融緩和にもその一端があったことは否定できないと思っております。この間、金融機関のリスク管理面にも問題があった上に、バブル崩壊後においても、いわゆる右肩上がりの幻想が払拭し切れないうちに、そういう状態の中でかつての護送船団方式と言われるような金融機関への対応が続いて政策が後手後手に回りがちであったということも認めざるを得ないと思っております。

 また、金融システムにかかわりますセーフティーネットが不十分であった中で、不良債権問題の処理等に当たっていろいろな制約があったということも事実であったと思います。

 こうした中で、日本銀行としましては、我が国金融システム崩壊や日本発の金融恐慌を回避していくために、中央銀行の立場からその時々なし得る最大限の努力をしてまいったつもりでございますが、ここまで金融システム問題が長引いてしまったことにつきましては、私どもとしても重く受けとめる必要があると考えております。

 昨年十月に金融再生法及び早期健全化法が施行されまして、それまでの預金保険法の改正を含めてセーフティーネットの整備が大きく進められてきた、このことは高く評価させていただきたいと思います。私どもとしては、整備されたセーフティーネットを活用しながら、一刻も早く我が国金融システムに対する信認を回復し、金融機能が十分発揮されていくように努めてまいる所存でございます。

    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕

○仙谷委員 今の自己批判といいますか、反省の中で、私は、もう少し具体的に気をつけてもらいたいといいましょうか、抜けておる面が三つぐらいあるのじゃないかという気がいたしました。

 すべて申し上げる時間はないわけですが、最大のものは何といいましてもプラザ合意以降の金融政策だったと思うのです。ここに、日本銀行がある種の政府の要請を受け入れ過ぎたのではないか、これに対する独立性を保てなかったのじゃないか、政府はアメリカの要請にやすやすと従っておったのではないか、このことを大変強く感じるのですね。そうでなければ、極端なバブルの生成と崩落というものももう少し早目早目に手が打てたのではないかという気がいたします。

 それからもう一つは、やはり大蔵省の金融行政についての護送船団と言われる、あたかもその一端に日本銀行が存在するかのごとき扱いの中で、日本銀行が金融問題についての提言をすることができなかった、あるいはみずからインフラづくりをすることができなかったということが非常に大きい理由ではないかと思うのですね。

 先ほどセーフティーネットの話が出ました。正直申し上げて我々も素人でございます。そんなにセーフティーネットが大事ならば、なぜセーフティーネットを一九九〇年の当初にでもつくらなかったのかということが大蔵省と日本銀行双方に問われるわけでありますが、当時の仕組みの中では日本銀行にそのことを要求するのは気の毒かもわかりません。

 あるいは、現在でもまだまだ問題になっております、これは企業の体質にも関係するわけでありますが、直接金融と間接金融の問題、つまり企業社会におけるファイナンスの問題というのは、考えてみますと、実は一九九〇年代の初頭から行われた、端的に言うと銀証の垣根をどうするのかというまさに金融制度改革とかかわっておったわけですね。これが非常に中途半端な格好で、今から考えれば幼稚園の遊びみたいなことを当時は大声でやっていた、こういうことになると思うのです。

 このことについても、日本銀行は日本銀行として、トータルな金融の監視者といいますか、あるいはアンパイアといいましょうか、いろいろな立場があると思いますけれども、総括主宰者みたいなものでありますから、ここに提言なりみずからの制度づくりなりをすることも抽象的にはあり得たと思うのですね。ただ、当時の大蔵省との関係ではそんなことは到底無理なわざであったことは私も疑いません。そして我々も、早期に財金の分離そして日本銀行と大蔵省のある種の上下関係を断ち切ることを大胆に提起できなかった、あるいは実現できなかったということを反省しなければならないわけでありますが、さっき総裁のおっしゃられたことは、そういう問題が根本にあるのだろうと私は思うのです。

 曲がりなりにも大蔵省と日本銀行が、日本銀行においては大蔵省からの自立性といいますか独立性をかち得たわけでございますから、これからは、アメリカの要請を受けた小渕政権のある種の短期的な目標達成のために何かしてあげなければいかぬとかそういうことを絶対にお考えにならないように、ひとつ要請をしておきたいと思います。

 何でこんなことを言いたいかといいますと、六月二十八日付の読売新聞に、元信用機構室長でございましたか、理事さんでございましたか、つまり長銀の現在の頭取でありますが、安斎さんがこういうふうに言っているんですね。日債銀や長銀の損失を生み、先送りしたのはだれか、大蔵検査で銀行の実態を知りながら手を打たなかったのはだれか、バブル経済を生み出す金融政策をとったのはだれか、歴代の頭取と大蔵省と日銀とリーダーシップをとれない政治こそが問われるべきであると立派なことを言っているんですね。彼が元日銀マンじゃないということであればもっと立派なんですが、日銀マンであることをお忘れになっているのかどうかわかりませんが、言っているんですね。

 こういう感想をお聞きになって、総裁、どういうふうにお考えになりますか。

○速水参考人 仙谷先生が先ほど御指摘になりました三つの点、プラザ合意以降、政府の言ったことに従い過ぎたんではないか、あるいはMOFのコンボイシステムといいますか護送船団方式の一端になって、日本銀行として言うべきこと、やるべきことができなかったんじゃないか、あるいはセーフティーネットをなぜもっと早くつくらなかったか、今から考えますと、おっしゃることすべて私どもも耳の痛いことだというふうに思います。幸いにして、日本銀行法が五十数年ぶりに新法ができまして、昨年の四月から施行されたわけでございまして、ここに独立性が与えられて、私ども、ここ一年、本当に新法に感謝しながら、私どもの正しいと思う政策をどんどん打ち出してきたつもりでございます。

 先ほど御指摘になりました大きな問題として、直接金融と間接金融、千二百兆円もある国民の金融資産のうち、七百兆近くが預金になって銀行や郵便貯金に入っておる、そのほか、三百兆円は保険、年金に入っている、証券、債券に行っているのは国債を含めてわずか百兆足らずだといったような事態が、いかにバランスのとれない、近代金融市場の立場から見て偏ったものであるかということを私ども十分認識いたしております。

 これからやはり金融機関も、投資家ないし預金者、金融資産を持つ立場の者も、もっと自分の責任で市場機能を考えながらやっていく、特に直接金融、企業と投資家が直接市場でぶつかり合って資金の調達、資金の供給をしていくという市場をつくっていくことが必要だと思っております。また、その先端を切るのは国債であり、セキュリティーの面で不安のない国債というものが市場にもっと出回っていいと思いますし、そこから始まって、今のビッグバンといいますか、もっともっとこの機会に市場ができていってそれが内外から信認されていくことを期待して、私どもも努力してまいりたいと思っております。

    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕

 

○仙谷委員 その信認の問題と関係するわけでありますが、総裁、現在のゼロ金利政策、ことしの二月十二日以降のゼロ金利政策でありますが、これはいつまで続けなければいけない、いつまで続ければいいんだとお考えなんでしょうか。

○速水参考人 先ほども申し上げましたように、足元の景気が下げどまっているけれども回復の方向にはっきりした動きがまだ見られないというのが現状の私どもの判断でございます。物価面、当面需給ギャップの明確な縮小が見込みがたいことなどを踏まえますと、こうした面からの潜在的な物価低下圧力というのはまだ残っているというふうに判断しております。こうした景気、物価情勢を踏まえまして、日本銀行としては、デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまでは現在の思い切った金融緩和基調を維持し、経済活動を引き続きしっかりと下支えしていくつもりでおります。

 デフレ懸念の払拭とは何をもって判断するかと御質問がおありかと思いますけれども、もちろん物価が大切な要点であることは当然でございますが、物価を含めた企業家あるいは消費者の動き、そういうものを判断した上で、今のゼロ金利の終えんといいますか、次の手を打つ時期を間違えないようにしてまいりたいと考えております。

○仙谷委員 デフレとの関係が出ましたので大ざっぱに私の感想を申し上げますと、これはもうお気づきだと思うんですが、このデフレ傾向は、少なくとも物の世界ではそう簡単にインフレの方に振れたりはしないんではないか。歴史的に、一三〇〇年ぐらいからインフレ、デフレの波をとった統計を拝見しますと、大体、デフレが始まると約百年、短くて五十年ぐらいデフレ傾向が続いておりますね。第一次世界大戦直前から極端にインフレになったりがたっと落ちたりはしている傾向もありますけれども、一三〇〇年ぐらいから七百年ぐらいのタイムスパンをとってみても、実は歴史の中ではデフレというのはそんなに異常なことじゃなくて、インフレの方が、産業革命以降といいましょうか、あるいはもっと言えば第一次世界大戦以降の極端なインフレというのが、我々はなじんでおるけれども、歴史的にはレアケースに近いような格好で存在するという見方の方が正しいんじゃないかと私はこのごろ思い出しているんですね。

 そして、物の世界では当分インフレというのは起こり得ないんではないか。条件は、ベルリンの壁崩壊以降の巨大な社会主義圏に住む労働力がマーケットに入ってきた、労働力市場に入ってきた。賃金コストインフレが起こりようにも起こらない。賃金は大変な硬直性を持っていますけれども、しかし、物をつくる人間が、安い賃金の労働者が一挙に十数億人というオーダーでできたという条件ですね、一つは。このことによって容易に物の世界でインフレは起こらない。したがいまして、過剰流動性が起こったときにインフレ化するのは資産であり、辛うじてサービス産業の世界で先進国の中でインフレは起こるけれども、どうも物の世界ではインフレは起こしにくい、起こらないんではないか、そのことを前提に金融政策、金利政策をお考えになった方がいいんではないかというのが私の考え方なんです。

 したがいまして、卸売物価、消費者物価の指数を見ましても、国際商品相場の指数を見ておりましても、こんな数字なんですかという数字ですよ。起こらない。そうしますと、デフレ懸念が去るまでは、こうおっしゃるけれども、半永久的にこういう低金利を続けざるを得なくなる、こういう論理展開になることを私は心配しておるわけであります。

 そこで、この異常な短期についての低金利、そしてそのことが長期金利の低下にまで効果があった。さもいいことであるかのような総括を速水さんが六月二十二日の日本記者クラブの講演でなさっておりますけれども、私は必ずしもそういうふうに考えるべきではないと思うんですね。

 現在の超低金利政策のネガティブな効果、マイナスの効果というのはどこに出ておりますか、どういうふうに出ておりますか。

○山口参考人 いわゆるゼロ金利政策ということを始めましてから数カ月たっているわけでございますけれども、先ほど総裁が、そういう政策のもとで気をつけなければいけない留意点の幾つかを申し上げましたが、まず、金融市場の中でゼロ金利というやや極端な政策をとった結果として混乱が生じることがないようにというのが私どもの第一の留意点でございます。

 実際の姿を見てみますと、例えばコール市場の残高、市場の規模が、二月ごろに比べますと約四割ほど減少しております。規模の縮小が生じております。そういうことの結果として例えば資金の決済などに支障を来すというようなことが起きては困るわけでございまして、そういうことが起きますとゼロ金利政策のマイナス面の一つということになるわけでございますが、幸い、これまでのところ、そういう市場機能の低下というようなことにはなっておりません。

 また、ゼロ金利政策ということは、ある程度の将来にわたりまして流動性を潤沢に供給するという約束をマーケットに示したわけでございますから、そういう約束のもとで市場参加者のリスクをとる姿勢というのがまた極端に振れてしまうということになっても将来に禍根を残しかねないという意味で、潜在的なマイナスの要素がないわけではないというふうに思いますが、これも、現在のところ、心配すべきほどの行き過ぎたリスクテークという状況にはなっていないと思います。

 そのほか、もう少し視野を広くとりますと、例えば、余りにも低い金利が長い間続くことによっていわゆる構造改革の努力というのがかえっておくれてしまうのではないかというような懸念も時折聞くわけでございます。

 ただ、現在は、私どもの判断では景気回復への道筋がまだはっきりついたと言える状況にはございませんので、こういうときには、やはり構造改革に伴う短期的なデフレ圧力といいますか、あるいは構造改革に伴う痛みというのを和らげるために、低い金利を維持し、金融緩和を続けていくというようなことも必要ではないかと思っております。

 また、これは少し前からいろいろ御議論いただいているところでございますけれども、金利収入に多くを依存している家計というのをどう考えるのかというのも、当然忘れてはならない留意点の一つだというふうに思っております。

 ここは、そういう家計に対しまして現在の金利政策が影響を及ぼしているということはよく承知しておりまして、以前から私どもの総裁も、大変心苦しいところであるということを申し上げてきているわけでございますが、ここはぜひ少し長い目でもって金融緩和の経済全体に与える積極的な面というのを評価していただきたいというふうに願っております。

 以上、幾つかの点を申し上げたわけでございますけれども、もちろん、低金利が長く続くことの影響というのは、経済全体に対していろいろ複雑な経路でもってあらわれていくのではないかというふうに考えられます。その効果がまだすべてあらわれているというわけでもなく、今後の時間の中でさまざまな影響というのがあり得ると思いますので、私どもとしても、決してその点は警戒を怠ることなく、経済全般に対して目配りをきちんとしてまいりたいと思っております。

 

○仙谷委員 私、この低金利政策は、先ほど鈴木先生もおっしゃっていたけれども、やはり緊急避難であると思うのです。あるいは危機管理にも似た政策である。つまり、三月末決算をしのぐために二月十二日にこれを行って、もう五月になってしのいだから、今回はとりあえずこういう極端な政策をやめようということの方が実は正しいんじゃないかと思うのですね。小渕さんの〇・五%成長ということ、これを頭から外して純粋に金融政策から考えたら、その方が正しいと思うのです。

 つまり、今の公定歩合〇・五%も、もうこれはどうにもならない。いつか一遍上げて、また戻せばよかったんだけれども、とにかく〇・五%に張りついたままこんなに四年もたってしまうと、さあ、いつ動かすんだという、ちょっとでも上げれば何か事が起こるかもわからぬという心理的な恐怖感にむしろ政策担当者の方がとらわれているのじゃないかと思うぐらい硬直していますよ。

 それで、なぜそんなことを言うかというと、例えば生命保険業界、もう悲鳴を上げていますよ。首つりの足を引っ張るのかということまで言っている人がおります。長期、短期の金利がこんな低どまりする、短期はいわば実質ゼロ金利政策をやられるということになりますと、もう生保業界はどうすることもできない、つぶれざるを得ない、こうおっしゃっておる。聞こえてきますよ、我々のところにはじかに。私は大蔵省へ行って言えと言っていますけれども、いや、大蔵省は怖くて言えない、こういう話ですね。それでは、日本銀行へ行って言えとこれから言っておきますけれども。

 まず生保。そしてやはり年金ですよ。年金の運用、これがこんな金利ではいかんともしがたい。そうですね。

 それから、やはり先ほど山口さんもおっしゃった家計ですよ。それははっきりと家計部門からの所得移転が行われているわけですよ。あるいは年金生活者というふうに言いかえてもいいかもわかりませんが、家計一般ではなくて、家計の中の高齢者世帯についての資産効果といいますか利子所得を、大幅というか、いわばゼロに近い格好にしておるのが現在の政策です。

 さらにもう一つ重要なのは、金額的には大したことがないのかもわかりませんけれども、いろいろなファンドですよ。NPOとか、あるいは文化的な活動、芸術的な活動、あるいは奨学金というふうなもののファンドを運用していらっしゃる方々が、この金利ではもうどうにもならない。奨学金の受給者を今まで百人毎年つくっておったところが十人になっていますよ、こんなことをやったら。

 私は、なぜこれが問題なのかというと、実は、ベルリンの壁崩壊後というこのキーワードのほかに、もう一つのキーワード、高齢社会というキーワードですよ。高齢化しつつある社会において低金利政策というのは社会の活力を殺す方向にも強く働く、このことが私はある種の罪悪にまでなっているのじゃないか、こんなことを考えるわけであります。

 企業社会がサプライサイドを強化するというのは私も賛成です。しかし、ここまで官需の経済、つまりフィスカルポリシーとゼロ金利政策というものを二つあわせてやる政策なんというのは、世界じゅう、歴史上、いまだかつて一回もないのですから、こんな、私に言わせれば官主導といいましょうか、こういう政策が長続きすることは、私はどこかで大破綻が来るんじゃないかと思いますね。まだ片一方だったらわからないでもない。そのかわり、プラザ合意以降の政策のようなひずみが出てくるでしょう。しかし、これは両方やったという例はないんじゃないですか。

 つまり、ことしの単年度予算でいえば、財政赤字の比率が国の予算だけでも四〇%弱、三九・何%です。世界の財政赤字のうち、単年度で見ると、G7国の財政赤字の七四%が日本の財政赤字ですよ。もう世界じゅうから、ヨーロッパ、アメリカ、まじめな人と議論して帰ってこられるとわかりますが、本当に今、冷笑の対象になっているんですよ。へえ、どこまで続くんですかね、こういう感じです。そういうお感じしませんか、随分外国の要人なんかとお話しされて。

 私は、とんでもないところにG7の中でほうり込まれたな、落とし穴に落とし込まれたなという感じがしてならないわけであります。ある種、日銀が、短期的に景気回復とかそのことだけじゃなくて、中長期的な視点からこのゼロ金利政策から早く脱する、そのことがむしろ必要なんではないかと私は思いますが、いかがでございますか。

○速水参考人 仙谷先生、少し中期の視野のもとに御心配になっておられること、私も十分わかります。東西冷戦が終わりまして、かつての私どもが考えておりました高度成長の時代というのはよかった時代に違いありませんけれども、ああいうものが返ってくるという可能性はまずないと見てもよろしいし、それからもう一つの高齢化社会というのも、これは非常に大きな社会構造の問題の変化が起こっているわけでございます。ただ、過去二年続けてマイナス成長ということ、これも日本の経済の戦後の歴史の中で初めての経験なんです。それが今、これからどうなっていくか。その背後にあるものが、先ほど申し上げたようなことやら、あるいはまだ残っております非常に大きな需給ギャップというもの、それから技術革新が、やらなきゃならないことがまだ日本では余りできていない。

 アメリカのこの十年近い不況、デフレを乗り越えていったのは、そういう技術の革新をどんどん導入して新しい仕事をつくっていった、八百万の失業者の増加に対して千二百万のニュー・ジョブ・クリエーションといいますか、新しい仕事をつくっていったというのがアメリカの今日の繁栄をもたらしたものなんです。その背景にあるものはやはり構造改革だったんだと思います。ハイテクとか光ファイバーとか、そういうものを製造業だけでなくてサービス産業の面でもどんどん導入した新しい仕事をつくっていくというのが、今政府が一生懸命お考えになってやっておられることだと思います。私どももそこまでは少なくとも下支えしていかなきゃいけないというふうに思っております。今の低金利がそういう新産業をつくっていくためにも必ずプラスになるものだと思っております。

 ただ、同時に、家計の心配、特に年金生活者等にいつまでも続いていく。まして、万が一スタグフレーションといったようなことが起こって、定められた所得の中で物価が上がり出すというようなことが仮に起こったとすれば、これは社会的にも非常に大きな、何が起こるかわからないといった予感もするわけでございまして、そういうことをよくよく考えながら、避難対策とおっしゃいましたか、確かに私どももそのことは十分認識して今のゼロ金利を維持しているわけでございますが、デフレ懸念が消えてここで大丈夫だという判断ができますまではこのままいくつもりでおります。

 

○仙谷委員 違う観点からちょっとお伺いします。先ほど自由党の鈴木先生が倒産件数の減少について評価と懸念をおっしゃっておりましたが、約二十兆円の信用保証枠をつくりましたね。詳しい数字がもう一つわからないんですが、約十七兆円ぐらいこの枠が使われて、そのことが効果を生んで中小企業の倒産を防止している、そのとおりだと思うんですね。

 ところが、これは日本銀行が出されておる銀行の何とか統計というんですか、ちょっときょう表紙を持ってこなかったんですが、残高ですか、これを拝見しますと、都銀が、昨年の十月とことしの四月を比較しますと約八兆円の貸し出し減です。地銀が五千億の貸し出し減、第二地銀が六千億の貸し出し増、こういうふうになっておるんです。もう少し見ますと、都銀の手持ち国債がことしの一月と四月を比べますと二兆円ふえている。それから、地銀では有価証券が一兆一千億ふえている。十七兆円の貸出枠が使われたのに貸し出しがこんなに減っている。そして、さっきおっしゃったように、コールマーケットを見ますと、コールマネーは、同じ時期をとりましても、都銀レベルで九兆円のマイナス、地銀レベルで一兆四千億マイナスというのが大体わかります。

 そうすると、せっかくの金融緩和か量的緩和じゃないゼロ金利政策か知りませんけれども、要するに、インターバンクの取引というのはどんどんやせ細ってきておるし、銀行から企業サイドに貸し出される金額も、理由はともあれ、結果としては減っておる、こういう事態になっておるわけですね。つまり、公的資金の注入を受けた都銀が、国債は買うけれども企業には貸さないということが起こっているということですよ。どういうことなんでしょうか。こういう事態でゼロ金利政策を続ける意味がどこにあるのかと私は思っておるんです。

 つまり、新聞紙上でも、もうインターバンクで短期の資金をとりたくないからとらないんだ、都銀レベルにおいては特に。そんなにしないでも公的資金が入ってきたから余っている金は国債を買っているんだ、貸さないんだ、こういうことが行われているというふうに俗っぽく言えば見た方がいいのかなと思っておるんですが、いかがですか。

○黒田参考人 お答えいたします。

 ただいま先生御指摘のとおり、民間金融機関の民間企業向けの貸し出しは、残念ながら、今のデータを得られる限り、まだプラスに転じるというところまで至っていないという状況にございます。もちろん、この減っている中には、三月末に不良債権を大量に償却いたしましたので、その分が上乗せされて減っているというものもあるわけでございますが、こうした特殊要因を調整いたしましてもまだマイナス傾向にあるというのが実態だというふうに認識しております。ただ、その引っ込んでいく早さというものはむしろ徐々に縮小傾向にある、まことに徐々にではありますが縮小傾向にあるというのが実態かと存じます。

 そこで、どうしてそういうことなのかということなのでございますが、民間銀行の融資の態度につきましては、基本的に慎重な融資態度というものは維持されているようにうかがわれます。しかし、金融緩和の浸透のもとで、銀行自身の資金調達をめぐる環境は、まさに先生ただいま御指摘のとおり好転してきているわけでございます。また、公的資金の投入などによりまして、こういった自己資本面からの制約も緩和されてきているわけでございます。こういった環境が整ってきたということを背景にいたしまして、金融機関では、信用リスクの小さい融資案件を手始めといたしまして徐々に融資を回復させる姿勢も見られているようにうかがわれるところでございます。

 ただ、これに対しまして、企業の方の資金需要も、景気の動向を反映いたしまして量的にはなかなか大きくなっていないということがございます。また、企業による手元資金積み上げの動きも、このところ、先行きに対する安心感からか、明瞭におさまってきているという状況にあります。こうした中で、結果としての貸し出しの数字が非常に伸びにくい状況にあるわけでございますが、その一方で、企業金融をめぐる逼迫感は和らいできているわけでございます。

 今後、こうした企業金融面での改善傾向が企業の投資意欲などの実体経済活動にどのような影響を与えるか注視し、かつ期待しながら見守ってまいりたい、そのように考えております。

○仙谷委員 全然わからないですけれども、時間がございませんので、次の問題、一番大事な問題にちょっと触れておきたいと思います。

 この一カ月ぐらい、長期金利の動向を見ておりますと、非常にナーバスに動いていると私は見ておるんです。これが、景気がよくなったから長期金利が上がっているということなのか、日本の財政、つまり国債に対する信認問題で上がっておるのか、もう一つよくわからないというよりも、私は後者の方だと考えておるわけであります。

 多分、この類例を見ない赤字財政、例えば、これはきのうでしたか、「財政健全度 OECD推計 日本、悪化際立つ」。もうヨーロッパ、アメリカ社会では常識化しているんですね。ところが、ヨーロッパ、アメリカもずるいものだから、日本にだけは、財政赤字をつくってどんどん財政出動しなさい、自分の国は財政黒字になったといって手をたたいて喜んで赤飯でも炊こうかというふうな、こんなことをやっておるわけですね。あるいはEUでも、みんな三%以下に抑えているわけですよ。ドイツの今度の予算を見ましても、ドイツは今多分日本よりも成長率悪いですよ。それでも緊縮予算です。そのぐらい財政規律が重要だということを言っている、あるいはそういう政策をとっている。これは担当者にお会いしてもそのとおりであります。先ほど申し上げた、彼らが冷笑しておるというのはまさにそのことであります。

 こういう際立つ財政赤字の国がいわゆるビッグバンと称する外為の自由化をやった。その後で、ここまで世界史上類例を見ない財政赤字を積み上げていく。補正予算でさあ十兆円、二十兆円。平成十二年度の概算要求が済めば、多分来年度予算は四十兆円ぐらいの財政赤字をつくりたがるんじゃないかと私は見ておるんですね。このときに、当然のことながらことしの二月のような大騒ぎが始まると思うんですよ。

 もちろん長期金利は、徐々か急激にかわからないけれども、上昇するでしょう。日銀の国債引き受け、速水総裁が、先ほど申し上げました六月二十二日の講演の中で、悪性インフレになる可能性があるから国債引き受け、買い入れ、あるいは買い切りオペの拡大、こういうものについては絶対にやってはならないんだという決意を示されております。私もそのとおりだと思います。

 きょう朝、さる外人のマーケット関係者と会いましたら、日本の今の経済政策はバイアグラ政策だと言うんです。本当はもう足腰も余り立たなくなった人がバイアグラを飲んで頑張ろうとする、こういう政策なんです、カンフル注射を打ってやろうとする。そう言われても反論できないような政策じゃないですか。あと残された道は日銀の国債引き受けだけです。それしかありません、この路線では。しかし、それは短期的には、半年か一年はハッピーかもわかりませんけれども、早晩破綻することは、これまた疑いのないことであります。

 どうか総裁、ここで詳細かつ熱心におっしゃっておる、日銀の国債引き受け、むしろこの点については長期金利が上昇する、それは市場の警告である、それ以上発行してはならないんだ、警告として受けとめる方がいいんだ、こういうお立場のようでありますけれども、ぜひそれを厳守するというか堅守をしていただきたいと思うのでありますが、いかがでございますか。

○速水参考人 仙谷先生のおっしゃるとおりだと思います。

 まず、国債引き受けに関する考え方を申しますと、日本銀行は国債を新規に引き受ける考えは全く持っておりません。これは財政法でも禁じられております。

 中央銀行は国債を引き受けてはならないということは、我が国を含む主要国の歴史から得られる貴重な教訓なんです。すなわち、中央銀行が一たん国債の引き受けを始めてしまいますと、財政支出の拡大と通貨の増発の歯どめがきかなくなってしまう、悪性インフレを招くことは間違いないと思います。そうなると、その国の通貨や経済運営そのものに対する内外からの信認が失われてしまうということになりましょう。また、市場でもそうした危険性が意識されるので、長期金利は結局のところ上昇してしまう以外にはないというふうに思っております。我が国だけでなくて主要国におきましても中央銀行による国債引き受けが禁止されているのは、そういった事情に基づくものではないかというふうに思っております。したがって、日本銀行としては、国債の引き受けは選択肢とはなり得ないというふうに考えております。

 なお、財政運営につきましても、一般論を申しますと、既に財政赤字が巨額に上っていることを踏まえまして、今後は従来以上に財政支出の内容の吟味とその効率化などに重点を置いて検討していくことが重要ではないかと考えております。

 国債を中央銀行が引き受けているんだ、あるいは市場からどんどん中央銀行が買っているんだということは、その国債自体の海外からの信認を失うことになる、市場では通用しないのかということになってしまったら、これは困ったことだと思いますので、その点も十分考えていく必要があろうかと思っております。

○仙谷委員 かわります。