1998年03月19日 予算委員会第二分科会

○伊藤主査 これにて金田誠一君の質疑は終了いたしました。

 次に、仙谷由人君。

○仙谷分科員 小渕外務大臣も、二十一日にソウルに行かれるということを報道で知ったわけでございますが、昨年の十二月三十日にもソウルに行かれて、韓国政府の関係者、あるいは二月二十五日から大統領に就任された金大中さんにお会いになったように報道で伺っておるところでございます。

 私も、二月二十五日の大統領就任式典に出席をさせていただいて、金大中大統領ともお会いをすることができましたし、現在の政府関係者あるいは与野党の政治家の方々ともお会いをして、今後の日韓の関係等々についても意見を交換して、帰ったところでございます。

 そのときの感想からお話をいたしますと、一つは、金大中大統領も我々にもおっしゃっておったことでありますけれども、現在韓国が、IMF体制というふうに彼ら自身が言っておるわけでございますが、大変な経済的な苦境、特に金融危機、日本の金融危機をはるかに上回るような対外債務の問題がデフォルト直前の状態にまでいって、IMFに支援を求める。つまり、昨年伺ったときには、OECDに入ったのだということで、大変国民の方々が胸を張っていらっしゃったわけですが、一年を経ずして一MFに支援要請をせざるを得ないというところまで落ち込んだ。その状況をよく認識しながら、日本の今回の韓国の金融危機に対する支援については、率直に感謝の意を述べていらっしゃいました。

 しかし、町に出て話を聞きますと、一つは、漁業協定の破棄というのは、新大統領に対するお祝いのしるしとしてはまことに神経を逆なでするようなことをやったものだ、非常に日本の外交というのはデリカシーに欠けるのではないかという痛烈な批判が、町のあちこち、あるいは政治家の間でもそういう議論がされておったところであります。

 この間、年に二、三回なるべく韓国に伺っておるわけでございますが、どう考えましても、隣国というのですか、日本の周辺国といい関係をつくるしかないのだろうと思うのですね。どんなことがあっても、隣国との間がうまくいかないで、これからの国際社会の中で日本が何らかの指導的な地位を占めるというふうなことはあり得ないというふうに考えるのが基本ではないかと思います。盧泰愚大統領が来日をされてから、そろそろ丸八年だと私は記憶しておりますが、要するに、未来志向の日韓関係というのが当時から言われておりまして、今も言葉としては生きておるわけでございます。なかなか未来志向になってこない、現実には未来志向の関係構築が非常に難しいというのをやはり痛感するわけでございます。

 今回、日本も経済的に大変厳しい状態にあるわけでございますけれども、韓国のこの苦境について、日本がやはりちゃんと、これは同情とかあるいはれんびんの情とかそういうことではなくて、まさに韓国が隣国にあるがゆえに、経済的な相互協調といいますか、相互の関係を改めてつくり上げる、未来志向の経済的な関係をつくり上げるという観点から、経済的な支援をやらなければならないのではないかと考えているところでございます。

 金大中さんの演説を聞いておりましても、やはり政治的な民主化と市場経済はコインの裏表であるといいますか、両面であるということを力説されております。それから、きょうの毎日新聞で報道されましたことを考えましても、あるいは金大中さんの今までの来し方を拝見しておりましても、やはり人権問題というものについてはそれほど軽々に扱わないといいましょうか、人権尊重ということも一つの大きな柱になっておるのだと思うのです。

 このことは、市場経済、民主化、人権というのは国際社会においてははっきりとした確立されたスタンダードでありますから、この価値を共有するという観点で日韓関係をきちっとやっていく、これからつくっていくという志向があれば、難しいことは多々ありましょうけれども、そんなに従来のような、絶えず反日闘争が起こったりということにはならないという関係をつくれるのではないかという、ある意味で楽観論に私は立っております。

 そういう中で、サハリン残留韓国人の問題というのが日本と韓国の、あるいは日本と韓国人の問題としていまだに残っているわけでございます。外務大臣は御存じだと思いますけれども、これは一九八七年ころから原文兵衛先生あるいは五十嵐広三先生という、今引退をされました両先生が大変な尽力をされて、八八年ごろから一時帰国というふうな、NGOがやっておった事業に予算がつき始めた、赤十字を通して支援が行われ始めたということでございました。そして、五十嵐官房長官が内閣に入るというふうなことも相まって、現時点では相当の進捗状況を見ているわけでございます。

 そこで、まず、サハリン残留韓国人の一時帰国ということについて、あるいは、最近では永住帰国に対する支援というふうなものも行われておるようでございますけれども、今までの実績について外務省の方から御答弁をいただきたいと思います。

○阿南政府委員 お答え申し上げます。

 一時帰国支援、韓国とサハリンの間に直行チャーター便を運航するというようなことで、昨年末までに延べ一万百七十七名の方がこの支援を受けております。また、永住帰国支援につきましては、先生も御案内のように、定住施設、それは療養院それからアパート形式集団住宅というようなものでございますが、この建設にかかる費用を共同事業体に拠出をしているということでお手伝いをしております。

    〔主査退席、久野主査代理着席〕

○仙谷分科員 九四年に予算がつけられて、百名収用規模の療養院それから五百世帯のアパートの着工を韓国政府にお願いするという事業が始まっているわけでございますが、これは、現時点ではどの程度の進捗状況なのでしょうか。

○阿南政府委員 お尋ねのアパート形式集団住宅につきましては、我が国は三十二億円を拠出いたしましたが、これを受けまして、韓国側の方で建設用地確保の努力をされまして、昨年七月に着工いたしました。

 今後の見通しを申し上げますと、明年、平成十一年でございますが、秋、十一月ごろ完成を目指

しておりまして、十二月ごろには入居が行われる予定ということでございます。

 また、療養院の建設状況は、つい最近、三月十六日に着工いたしまして、明年二月の完工、三月の入居が予定されております。こういう状況でございます。

○仙谷分科員 このアパートの方も、最近現地へ見に行った人の話によりますと、まだ穴を掘っている段階で、地盤工事もできていないという報告が私どものところへ来ております。

 後に申し上げるサハリン残留韓国人の問題というのは、基本的に時間との闘いの部分が非常に大きいのですね。余りもたもた議論を重ねたり、ゆっくりと施策が進行するということになりますと、もう既にサハリンにいらっしゃった老人会の会長さんは亡くなっていらっしゃる方もおりますし、どんどんとお亡くなりになるということでございまして、意味がなくなる、意味が減殺されるということもございます。

 政府から韓国政府の方に、早くやれとか、急いでやれとか、やってくれというようなことを言うのは、そんな大変細かいこと、内政に干渉するようなことを言いにくいのかもわかりませんけれども、しかし、少なくとも工事の進捗状況については、ちゃんと何らかの方法で、つまりNGOと連携するとかいろいろなことを考えて、フォローをして、そしてまた韓国政府の方に対する要請も、政府対政府という格好でやるのが非常に難しければ、別の方法をお考えになったらいかがか、こう思っているところでございます。

 安山でございますか、ここへ現在建築中のアパートと療養院、これは三十年とか五十年とかという、何か韓国の新聞に、五十年契約でその後安山市に譲渡されるという記事が出たというふうにも聞いておるわけですが、そういう年限が切られた話なのでございましょうか。それとも、日韓の政府とかあるいは両赤十字間には、協定とかあるいは約束はないということなのでしょうか。

○阿南政府委員 向こうとの取り決めでは、三十年を経過した後に譲渡するということになっております。

 それから、その前に先生おっしゃいました、建設のおくれでございますが、韓国側に事情を聞いております。着工後、産業団地の開発にかかわる認可の取得に手間がかかって、一時中断を余儀なくされた、現在は、先ほど委員がおっしゃいましたように、地盤や道路などの基礎工事を行っている段階であるということを聞いております。

○仙谷分科員 ぜひ何らかの方法で工事の進捗を図っていただいて、来年の夏でしょうか、秋でしょうか、その入居が開始されるようにお願いをいたしたいと思います。

 次に、現在臨時のアパートへ入居している百世帯の御家族の方もいらっしゃるようでございますし、それへの移転の経費について日本政府、あるいは日本政府が赤十字社を通して支援金を交付するという事業もなさっておるようでございます。ただ、入ってから大変、韓国政府からの生活保護のお金が昨今の状況でカットをされたりして生活が苦しいということでございますので、この生活支援の支援金についても、別途の手だてができるようなことをさらにお考えいただきたいということを申し上げておきたいと思います。加えて、サハリンに残留することを選択した、

 つまり、韓国の方へ帰国をしない、サハリンで死ぬまで生きていくんだという方々もいらっしゃいます。そういう方々に対する支援、これはもう高齢化して、病気にもなったりもしますし、生活も相当苦しい方もいらっしゃるようでございます。この残留の韓国人の方々について、何らかの支援を具体的になさろうという計画といいましょうか、プランはございますでしょうか。

○阿南政府委員 確かに御指摘のような問題があるのでございますが、事業の性格上、現在残留されている方々へ補助をするという計画はございません。

○仙谷分科員 そもそも、サハリン残留韓国人の問題というのは、今まで国会でも随分議論はされてきておりまして、半ばであったか全面的であったかはともかくとして、強制徴用とかそういう格好で日本を経由してサハリンへ送ったといいますか、送られた人から見れば送られたということでしょうけれども、そういう方々である。そしてさらに、戦後は、この四万三千人の韓国人の方々を日本人とは別にそこに残して、放置したということについては、日本の政府あるいは歴代外務大臣といいましょうか、外務省も責任をお認めになって、責任をお感じになっているというふうに我々は認識をしておるわけでございます。

 そうだといたしますと、このサハリンに残留する韓国人の方々にも、これは当然のことながら、日韓基本協定の賠償権に含まれるとかなんとかという解釈は出てこないはずでございますので、何らかの手当てをする。まさに国際的な人権という立場からも、あるいは日本の戦後処理、戦後責任という観点からもしかるべき手当てがあって当然だろうと私は考えているわけでございます。

 そういう問題について、現在は対応できてないということでありますけれども、これも時間との競争の部分がございます。その点については、今の段階で外務省の方はお考えがあるのかないのか、もしないとすれば、外務大臣にここはひとつ支援策を講じようという気になっていただきたいのでありますけれども、いかがでございますか。

○阿南政府委員 先ほどもお答え申し上げましたが、この事業は、もちろん委員の御指摘の点は私どももわかっているつもりでおりますが、そもそも事業の趣旨が、戦後、自分の意思で帰国をされる状況であればよかったのでございますが、当時のソ連の政策もあって、お帰りになれなかった方、そういう方の離散家族が再会されるというようなことをお手伝いするという趣旨でございましたので、一時帰国支援、それから永住のために帰られる方の支援ということでございまして、そういうそもそもの事業の趣旨から申しまして、残留されている方にお手伝いするということは今検討していないと先ほど申し上げたわけでございます。

○仙谷分科員 大臣、いかがですか。このサハリンに残留しておる韓国人については、日本にそもそも論からいっても責任がある、あるいは戦後もこれを放置した、ここのところははっきりしているわけですね。この方々が年老いて、悲惨な状況の方もおるし、苦境の方々もいらっしゃる。

 例えば、具体的に年金的なものを、基金をつくって、あるいは赤十字を間に入れて交付するかどうか。あるいは、サハリンにお住まいの方々に、老人ホームをサハリンの地につくって、そこを利用してもらう。あるいは、医療施設を日本が、他のロシア人も利用できるけれども、サハリンに残留する韓国人が優先的に利用できるような医療施設をつくってみてはどうか。あるいは、文化センターみたいなものをつくってはどうか。こういう種々のプランがあるようでございますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○小渕国務大臣 在サハリンの韓国人の問題につきましては、先ほど委員御指摘のように、原先生を初めとして大変熱心にお取り組みをいただきまして、政府としてもできる限りの御支援を申し上げてきたという経過であろうと思います。

 私自身、それほど深いかかわり合いを持ってきたわけではありませんが、昨今、いろいろテレビ等を拝見いたしておりましても、こうした事業を通じまして、韓国に戻られるに当たって夫婦別れしてみたり、また帰った方々も必ずしもふるさとに温かく迎えられなかったというような事例を拝見いたしておりますと、この状況をこのままにしてよろしいかという気はいたしております。

 ただ、国籍からいいますと、ほとんどがロシア籍だ、それから北朝鮮が一%で無国籍が一一%、こういう中でございまして、ほとんどがロシア人に今なっておられるわけですね。

 ですから、よって来るところにつきましてのいろいろ御議論はあろうかと思いますが、こうした方々にどのような手だてで協力ができるのかということについては、さらに検討しなければならな

いと思いますが、今、段々申し上げられているように、政府としていろいろ、韓国内にこうした施設をつくるというようなことを現実のものとしてさらに加速させなきゃならぬし、また現地に残っておられる方についての委員の御指摘だろうと思いますので、少しく勉強させていただきたいと思います。

○仙谷分科員 ロシア政府も内々、聞くところによりますとむしろ賛成である、あるいはサハリン州の方も拒否反応はしていないというふうに聞くわけでございます。我々も、そういうロシア政府なりサハリン州なり、そういうところにも動いてみようと思っております。あるいは、韓国の政府筋とも非公式に話し合う機会があればやってみようと思っておりますので、ひとつこの問題は、外務省の方で積極的に、残された問題を一つずつ片づけていくという取り組みをしていただきたいと思います。

 もう一点問題がございます。

 切実な話としまして、郵便貯金の問題がございます。実は、ここ数日前から、サハリン残留の韓国人の老人会の方々と、それと大邸に本部がございます中蘇離散家族会の方々が日本に来ておりまして、そこで、私もその方々とお会いしましたら、いわゆる郵便貯金、簡易保険、国債、勧銀債、あるいは、先ほど倒産をしたといいましょうか廃業した北海道拓殖銀行、こういうところの通帳を持っていらっしゃったり、通帳はなくしたけれども確かにあったはずだというような方々が相当数いらっしゃいます。私のところへも、今、一覧表が、郵便貯金の一覧表あるいは紛失者の名簿というふうなものが届けられておるわけでございます。

 これは郵政省の方に事実関係をお伺いするわけですが、どのぐらいの金額が未払いのまま、サハリンで貯金をされた郵便貯金あるいは掛けられた簡易保険というのが存在するというふうに考えられるわけですか。

○中澤説明員 お答えさせていただきます。

 サハリンで利用されていた郵便貯金等の口座数及び現在高は、平成九年三月末現在で、郵便貯金については、口座数で約五十九万件、現在高は約一億八千七百万円、簡易保険につきましては、件数は約二十二万件、金額は約七千万円となっております。

 ただ、これにつきましては、当時サハリンで預けられたものでございますので、その具体的詳細につきましてはわからないということでございます。以上でございます。

○仙谷分科員 これは、原簿のようなものはどこにあるというふうに推定されますか。

○中澤説明員 お答えさせていただきます。原簿につきましては、サハリンの方に残ったままになっておりまして、日本の方には返還されていないというのが現状でございます。以上でございます。

○仙谷分科員 サハリンに現在も存在することは確認されているのですか。

○中澤説明員 申しわけございません。その件につきましては不明ということでございます。

○仙谷分科員 外交ルートを通じてでも確認をしようとしたこともないのですか。つまり、確認作業に入ったけれども確認できなかったということなのか、郵政省としては確認しようとしたこともないのか、どちらですか。

○中澤説明員 今まで、そういうことにつきましては取り組んでいなかったということでございます。

○仙谷分科員 預金者の方から見たら、勝手にというか、自分の知らないところで戦争が終わって、日本政府当局者は全部いなくなって、だれに請求していいのかわからない。つまり、一人一人の強制徴用された方々や、強制徴用されたあげく強制預金を強いられた方々が、相手方がいなくなったときにどうするのか。これはある意味では大変な問題だと思うのですね。

 郵政省は、今までの議論の中では、金利をつけて請求があればお返しする、こういうことを言っているらしいですね。ここはきょう時間がないからまた改めてどこかでやりますが、台湾の関係者には百二十倍を払う、こう言っているわけですね。そうですね。ここは、本当は、本来的に計算すると一千倍になるのか二千倍になるのかわかりませんけれども、いずれにしても、盗人たけだけしいというふうに思われないような措置をちゃんととらないと、これはある種の国辱の話に近いと私は思うのですね。

 これは、郵政省の課長さんにそんなことを聞いてもしようがないので、大臣に最後に聞きますが、私もこの会に、離散家族会等々に出ますと、夫の生活と私の生活と子供の生活と父、母の生活を奪ったのがこの強制連行だというのを必ず言われるわけですね。その上に、サハリン現地で貯金をした貯金まで返してくれないなどということになっているわけでございますから、これは大変ひどい話だと私は思います。

 外務大臣、これは、郵政省の方は調査もしていないということでございますので、外務省の方から外交ルートを通じて調査するように、内閣の中でひとつお取り計らいをいただきたいと思うのです。いかがでしょうか。

○小渕国務大臣 郵便貯金あるいは簡易保険等の信頼は世界に冠たるものだろうと思っております。そうした意味で、戦前戦中、いろいろな形で、国際情勢の変化あるいはまた我が国の敗戦等によって、いろいろな問題が惹起しておることは承知いたしております。

 そこで、今先生の御指摘いただいたことに対しての答弁の中でその数が申されましたが、これは恐らく、旧サハリンに、樺太に住んでおった日本人の貯金や保険を持っておった方々じゃないかなというふうに思っておる……(仙谷分科員「含まれているのですね」と呼ぶ)含まれていますね。したがって、そういう方々の今度権利義務の問題等も生ずるわけでございますので、こうした貯金のあり方については、郵政大臣とも、どういうことになっておるか、よく相談してみたいと思っております。

○仙谷分科員 終わります。

○久野主査代理 これにて仙谷由人君の質疑は終了いたしました。