仙谷由人の主張と論点

1998年03月04日 予算委員会

<主張>

 平成10年度予算書には財政法第4条等の原則、財政民主主義に反する重大な瑕疵があり、国鉄長期債務・国有林野事業債務の承継に伴う12兆2000億円の歳入歳出予算を追加した形で予算書(及び予算総則)の記載を書き直したうえで、国会に再提出すべきである。

(論点) 

  1. 平成10年度一般会計予算書には公債金収入が15兆5570億円しか計上されていない。
  2. 一方、予算案の付属資料である「国債及び借入金の現在高及び償還計画書」によると、10年度末の内国債残高は、298兆8493億円と9年度末(補正後見込額275兆5281億円)よりも差し引き23兆3212億円増加することとなっている。
  3. その差額は、国鉄長期債務及び国有林野事業の債務を一般会計で承継することに伴う債務の借り換え国債計12兆2230億円の発行が主な要因である。
  4. しかし、これらの借り換え国債に関する歳入・歳出は一般会計はおろか、国債整理基金特別会計予算、資金運用部特別会計予算のどこにも項目を設けて計上されていない。
  5. 政府の答弁(桶井主計局長)では、平成10年度に「一般会計において承継した借入金並びに日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律案」及び「国有林野事業の改革のための特別措置法律案」に基づいて、国鉄清算事業団と国有林野事業特別会計から一般会計が承継する債務を一括繰り上げ償還する方針である。このため、12兆2230億円の資金を市場で新規に国債発行で調達し、国債整理基金特別会計から資金運用部特別会計へ返済するとしている。
  6. 問題点の第一は、借り換え債は、新たな歳出増を伴う国債の発行ではなく既発債の借り換えに伴う場合しか認められないというのが、財政法・国債整理基金特別会計法の趣旨である。大蔵省監修の本にもそう書かれている。政府の予算案は、法律上認められていない行為をしようというものであり、重大な瑕疵がある。
  7. 第二は、仮に借り換え債を認めたとしても、財政法上4条但し書きの対象となる国債(いわゆる建設国債)以外は、特別に法律で授権しない限り国債発行ができないというのが、財政法4条の規定であり、建設国債についても「国会の議決の範囲内で」という財政民主主義の制約課している。しかるに、上記の二法案には一般会計で承継する債務に関する国債発行の授権規定が含まれていない。赤字国債の発行を認める平成10年度の財政運営に関する公債発行特例法案にもそうした規定はない。
  8. したがって、政府はこの国債が建設国債であるというならその旨を予算総則に記載し、予算書を書き換えて再提出すべきである。特例国債でありながら法律の根拠もなく国債を発行し、市場から12兆円もの資金を調達し、債務残高も増えるのに予算書に記載しないというのは、国家的な「財政赤字飛ばし」だ。
  9. こうした予算が認められるなら、今後、国会の議決に基づかずに作られた特殊法人の赤字、例えば北海道東北公庫が苫小牧東部開発で作った損失などを一般会計に承継するたびに、借り換え債名目で国会の議決を経ずに新規の国債が発行され、全く財政民主主義が働かない、国会のコントロールが効かない形で、国民の負担が増えていくということになる。
  10. 12兆円余の国民負担増は、予算書に明示して審議するのが筋であり、予算書の再提出がなければ、これ以上の審議に応じられない。

(1)形式上、法律上の問題点

 新しい財源をマーケットで調達する国債発行は、借換債という名前がつこうが特例公債の発行であるから

  1. 特例法が必要
  2. 予算総則の限度額に12.22兆円加えたものになることが必要。
  3. 一般会計予算書の特例公債金収入の記載が7.13兆円プラス12.22兆円=19.35兆円になる必要があり、予算書の書き換えとならざるを得ない。(結果的に特例公債発行額が前年度を上回り、財政構造改革法違反となる)

(2)実質的、政治的問題

 財政規律と財政法4条、財政民主主義を無視してまでこのようなウラ処理にしたのは

  1. 平成10年度特例公債発行は平成9年度当初予算比約1兆円(実質0.34兆円)減にすることが財政構造改革法案上求められた。
  2. 国、地方の財政赤字を対GDP比4%台にあるという格好をつける必要(財革法路線)が在った。

  特例公債の発行が12.22兆円加わって19.35兆円となると、

  1. に反することが明白となるばかりでなく
  2. も対GDP比9.7%となってしまい

 財政構造改革路線の破綻が明らかとなり政治責任が出てくるためである。