1997年04月04日 本会議

○議長(伊藤宗一郎君) 仙谷由人君。

    〔仙谷由人君登壇〕

 

 

○仙谷由人君 私は、米駐留軍用地等に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、民主党を代表して、質問いたします。

 橋本総理、総理は昨年の九月十日、沖縄県の大田知事と会談し、政府の沖縄に対するそれまでの施策が不十分であったとの反省の言葉を知事に伝え、沖縄の諸懸案の解決に向け全力を挙げるとの決意を表明されました。私は、その率直な言葉の中に沖縄問題にかける総理の熱意を感じたからこそ、沖縄県の大田知事は、会談後、米軍用地の公告縦覧の代行に応じたのだと思うのであります。今顧みましても、この会談は、沖縄米軍基地問題をめぐる国と沖縄県との関係にとって重要な節目となるものでありました。

 また総理は、会談後、沖縄県との信頼関係を、一瞬のことではなく、これから先継続していくことが大事であると述べられました。しかし、幾ら言葉が誠意に飾られていようとも、その言葉が具体的な行動、実践によって裏づけられなければ、かえってその言葉を受けた者の落胆と不信ははかり知れないものにならざるを得ないのであります。

 橋本総理、総理は昨年九月の会談の際、沖縄問題についての談話を発表し、「米軍の兵力構成を含む軍事態勢について、継続的に米国と協議してまいります。」と述べられました。しかし、総理のこの言葉は、一体いつどこで実行されたとおっしゃるのでしょうか。確かに、総理はこの二月、オルブライト国務長官と会談した際、沖縄の海兵隊問題を含めて軍事態勢について協議することを提案したということのようでありますが、その後、ゴア副大統領が海兵隊削減に対する消極姿勢を示した途端に、海兵隊の削減、撤退を求める考えはないと態度を大幅に後退させたのであります。

 民主党は、我が国の安全とアジア太平洋の安定を確保する上で、日米安保条約を堅持することが重要であると考えるものでございます。しかし、同時に、国際情勢に対する認識や在日米軍のあり方について両国の間で意見の相違があることはごく自然なことであり、むしろ、そのような違いの上に立って日米両国が同盟関係を良好なものにする努力を続けていくことこそ、民主主義国家の強みであると信ずるものであります。

 アメリカが言うから、アメリカが賛成しないからという理由だけで、海兵隊を含む在沖縄米軍の兵力構成の問題をアメリカに対して口にすることすらはばかるというのでは、一体、日本外交のどこに自主性、主体性があると言えるのでしょうか。(拍手)

 「過ってはすなわち改むるにはばかることなかれ」であります。今からでも遅くはありません。来るクリントン大統領との会談において、沖縄県民が強く望んでいる、海兵隊を含む在沖米軍の段階的削減と撤退について提起し、今後、この問題について日米間のしかるべき機関において継続的に協議するよう努力すべきであると考えるものでありますが、総理の決意と見解をお聞かせいただきたい。

 沖縄との信頼関係を一瞬のものに終わらせないとの総理の思いを生かすことができるかどうか、それは総理の一身にかかっているということをぜひ強く御認識いただきたいのであります。

 海兵隊を含む在沖米軍の削減、撤退については、朝鮮半島情勢が不透明なときに、日本から話をとても持ち出せるものではないとの主張が一部でなされております。しかし、それでは、その不透明な朝鮮半島情勢を少しでも見通しのいいもの

にするために、政府はどのような外交努力を行ってきたのか、また行おうとしているのか。みずから努力する姿勢を見せることなしに、沖縄県民にだけ犠牲を強い続けることはもはや犯罪的ですらあります。

 少なくとも、朝鮮半島情勢の安定化に向けて、我が国単独で、またはアメリカや韓国、中国、さらには北朝鮮をも含めた二国間、多国間の重層的な外交戦略を打ち出し、その着実な推進を図ることなしに、総理がさきの沖縄談話で表明した「アジア情勢の安定のための外交努力を行う」という言葉は絵そらごとになってしまうのであります。総理、今後、朝鮮半島及び中国を含む北東アジア地域の緊張緩和と多国間協調の枠組みの確立に向けて、我が国としてどのような政策展開を図っていこうとしているのか。沖縄県民の方々も御納得いただけるように、総理自身の言葉で明快に語っていただきたいのであります。

 総理も御承知のとおり、我が党は、昨日、沖縄米軍基地問題の打開のために緊急に取り組むべき課題として、海兵隊の削減、撤退を初めとする五項目の提言を政府に対して行ったところであります。この中で、日米地位協定にかかわる課題として、国内法に準じた環境保護の徹底、軍事演習に関する規定の整備について、日米間で新たな合意を得ることを求めたところでございます。

 この二月に起きた鳥島における劣化ウラン弾誤射事件並びにキャンプ瑞慶覧でのPCB廃液事件は、いかに軍事演習の規制に関する規定が弱いか、また、いかに環境保護が無視されているかを示す象徴的な出来事でありました。

 そして、この誤射事件の通報をおよそ一カ月にわたって隠ぺいし続けたことは、日本政府、外務省が、絶えず日本と日本人の立場に立って国益と市民益を擁護することに努めるよりも、アメリカ政府の側に立って、日本人に対しては知らしむべからずよらしむべしとの姿勢でアメリカ政府をかばう、相変わらずの主体性の欠如を露呈しているところであります。

 過去三回にわたってボン補足協定を改定し、環境保護及び軍事演習について詳細な規定を設けたというドイツの事例をも参考にしながら、これらの課題について日米間の協議を開始することが極めて重要であると私は考えるものであります。この点について、外務大臣のお考えをお尋ねいたします。

 また、沖縄に駐留する米軍にかかわる諸活動について地元の要望をできる限り反映させていく上で、沖縄県、那覇防衛施設局、在沖縄米軍各軍の代表で構成される三者協議会の活性化を図ることも重要な課題であります。そのためには、この三者連絡協議会を日米合同委員会などにおいて承認し、日米間の正式な機関として位置づけることが必要であると考えるものでありますが、外務大臣及び防衛庁長官の見解を求めます。

 今日、沖縄県民の抱える苦悩は、島全体を覆うように存在する多数の米軍基地から基本的に発生しているものでありますけれども、そのことが経済的な自立を阻み、結果として、基地の重圧と経済的困難の重圧の二重の重圧に沖縄の人々は苦しめられているのであります。その意味において、基地負担の軽減と経済的自立を同時に追求しようとする国際都市形成構想は、国として真剣に受けとめるべきものであり、少しでもその構想の実現に近づくことができるように各種の措置を講じていくべきであると考えるものであります。

 中でも、法人税の軽減や独自関税制度の導入、輸入割り当て制度の見直しなどによる自由貿易地域制度の拡充とともに、ノービザ制度の導入による国際観光の発展のための環境整備を図ることが極めて重要な課題となっております。また、昨年十一月に発表された沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会報告の具体化も求められております。

 こうしたさまざまな懸案に対して、総理並びに関係大臣たる外務大臣、大蔵大臣はどのように取り組んでいこうとされているのか、明確な決意の表明を求めるものであります。

 橋本総理、私は、日本の安全とアジア太平洋の安定を確保する手段として日米安保条約を重視する立場から、条約の円滑な運用に支障を来すような法的空白を招くことは避けるべきであると考えております。同時に、米軍に提供される用地については、本来政府がその使用期間内に収用手続を完了する義務を負っているにもかかわらず、それができない事態を発生させようとしていることは、基本的に政府の責任であると言わざるを得ないのでございます。

 現行法に従って、民主党が要求した緊急使用の申し立てを行うことができたにもかかわらず、そうしなかったことは、明らかに政府の失態であります。政府の施策が、法定の手続よりも別途の思惑によってなされているとの疑いなしとしないのであります。

 したがって、もしどうしても特措法の改正が必要というのであれば、真に必要最小限度の改正にとどめるものでなければなりません。ところが、改正法案を見る限り、必要最小限度といいながら、収用委員会の却下裁決があっても、防衛施設庁が審査請求をしさえすれば、建設大臣が却下裁決を取り消すか、あるいはこの審査請求に対して建設大臣が判断をしない状態が続く限り、正権原が取得できるまでいつまでも暫定使用権が認められることになっております。また、既に使用権原が切れている楚辺通信所にも暫定使用制度を適用するなど、沖縄県民にとっては必要最小限度の改正を超える見直しであるとの批判も出ているところであります。

 さらに、仮に収用委員会が防衛施設庁の求める使用期間を大幅に減ずる使用期間しか認めず、これについて施設庁が審査請求を行った場合に、ずるずると半永久的に暫定使用が続けられることも許容されるという法律構成になっていることに、多大の危惧を感じざるを得ないところであります。すなわち、暫定の使用が永続的、半永久的になし得るという論理矛盾の体系となっていることが法律上の問題なのであります。

 こうした批判に少しでもこたえでいくためには、例えば、今回の特措法改正について五年間の時限を付すような方法も検討すべきではないかと考えるものであります。このような法案修正は、政府に対して、限られた期間内において沖縄の諸懸案に積極的に取り組むことを強く促していくという効果も期待できるものであります。今後の委員会における審議を通じて、そのような修正についても検討する用意があるかどうか、総理の見解をお尋ねいたします。

 橋本総理、私もまた、総理がおっしゃるように、日米安保条約上の義務を果たすことは、同盟関係を維持する上で極めて重要なことであると信ずるものであります。しかしながら、同盟をその根本において支えるものは、やはり国民の意思であります。国民の理解と合意がなければ、幾ら形式が整っていようとも、そのような同盟は力強いものになることはできないのであります。

 日米安保条約の適切な運用を図ることを念願するからこそ、安保条約を維持するための重圧と負担を受け続けてきた沖縄県民の苦痛を和らげ、在沖縄米軍基地の恒久化、固定化から脱却し、基地縮小に希望の曙光を見出すことのできる最大限の努力を払うべきであるということを最後に強く申し述べて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕

○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 仙谷議員にお答えを申し上げます。

 まず、昨年九月の総理談話において述べた、米軍の兵力構成を含む軍事態勢について、一体その言葉をどこで実行したかというお尋ねがありました。

 これは、昨年四月の日米安保共同宣言に基づきまして、日米両政府間におきまして、日米安全保障協議委員会や日米高級事務レベル協議等、定期的に軍事態勢や防衛政策について緊密に協議を行

う場があります。また、先般の米副大統領またオルブライト国務長官の訪日の際には、私から、国際情勢の趨勢を視野に入れながら、軍事態勢などについて引き続き静かにかつ緊密に協議をしていくことが大切だということを申し上げてまいりました。

 しかし、現時点における海兵隊というその一点をお尋ねでありますならば、私は、本院におきましても、現時点においで海兵隊の削減あるいは撤退を求める考えはないということはしばしばお答えを申し上げてきたとおりであり、そのとおりの言葉を現在も申し上げなければなりません。なぜなら、アジア太平洋地域における状況というものは、依然として不安定、不確実な要因というものが存在をしております。現時点においで、私はこれを求める時期ではないということを本院における御答弁の中でも申し上げてまいりました。

 同時に、日米安全保障共同宣言の中で確認されておりますように、国際的な安全保障情勢においで起こり得る変化に対応しながら、在日米軍の兵力構成を含む軍事態勢や防衛政策につき両政府間で緊密な協議は継続をいたします。

 次に、北東アジア地域の緊張緩和についてのお尋ねがございました。

 域内の信頼醸成、そのために地域的な対話と協力の枠組みの構築が重要であることは、議員の御指摘のとおりであります。そして、残念ながら、北東アジアにおきまして、政府間での安全保障面での協力の枠組みというものは、現在のところ存在をいたしておりません。しかし、政府としては、民間レベルの安全保障対話を関係諸国と協力しながら進めておりますし、例えば北朝鮮に対する軽水炉供与の問題、いわゆるKEDOの問題を通じての努力等もこうした一環とぜひお考えをいただきたいものだと考えております。

 次に、沖縄の持っておられるさまざまな御希望、例えば自由貿易地域等についてのお尋ねがございました。

 これは知事さん御自身にもお入りをいただいております沖縄政策協議会で今後のあり方の検討を進めることとしており、現在、沖縄開発庁を中心にしながら、関係各省庁、沖縄県で鋭意作業を進めていただいております。今後ともこの協議会で検討を深めるとともに、県の方において例えば規制緩和について検討委員会をおつくりになります。ここからの具体的な提言がございましたなら、協議会等の場において、何が可能なのかを当然のことながら私どもとして十分に検討をしてまいります。

 ただ一点、ノービザ制度の導入についてだけ申し上げたいと思いますが、査証を含む外国人の入国問題について、これは基本的には国レベルで統一的に対応すべきものだと思います。また、よく言われておりました外国人の不法就労、不法残留の問題に加えまして、御承知のように、現在、特定の組織が背景にあるのではないかと疑われる密航者の取り締まりの問題が生じております。こうしたことを考えますと、この問題にはなかなか難しい点がありますが、県からは大変強い御希望がありますだけに、ビザの面で何が可能か、この政策協議会の場等で十分な検討をさせていただきたいと思っております。

 次に、必要最小限という法改正であるなら、今後の委員会審議において時限を付することを検討する用意があるかという御指摘がありました。

 国会の御審議は、また国会における御意見がどう集約されるかは、私どもが介入すべきことではございません。その上で、私どもは、駐留米軍の用に供することが必要な民公有地におきまして、契約による合意が得られないものにつきましては、これは本土であろうと沖縄県であろうと、駐留軍用地特措法に基づいて、原則として一定期間の使用権原を得て使用せざるを得ないわけであります。その場合、近い将来におきまして今般と同様の事態の発生する可能性というものを否定できない状況の中で、今回限りの時限立法という選択は政府としてはいたしませんでした。

 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)

    〔国務大臣池田行彦君登壇〕

○国務大臣(池田行彦君) まず、環境保護に関する規定について日米間で協議を開始すべしとのお尋ねでございますが、日米地位協定は、米軍が公共の安全に妥当な考慮を払うこと、また我が国の法令を尊重すること、この二点を定めております。在日米軍の行動はこのような地位協定の規定に従っており、特に環境につきましては、我が国の国内法令を踏まえた評価基準を作成し、これに基づいて環境管理行動をとっております。いずれにいたしましても、政府といたしましては、日米合同委員会の枠組み等を活用して、環境問題等に適切に対処してまいります。

 次に、三者連絡協議会についてのお尋ねですが、この機関は、米軍に係る問題を政府間で協議する機関である合同委員会とは別個に、県、施設局、在沖米軍の三者が現地において拘束されない自由な立場から話し合いを行う、そういったものとして設けられておるものであり、合同委員会とは趣旨、目的を異にする機関であります。しかし、政府といたしましては、この三者協議会の一層の活性化に努めてまいりたいと存じます。

 最後に、ノービザ制度については、総理から御答弁があったとおりでございます。(拍手)

    〔国務大臣久間章生君登壇〕

○国務大臣(久間章生君) 先ほどの三者連絡協議会の活性化につきましては、ただいま外務大臣から答弁されたとおりでございます。防衛庁としても精いっぱい努力してまいりたいと思います。(拍手)

    〔国務大臣三塚博君登壇〕

○国務大臣(三塚博君) 私からは、自由貿易地域の拡充についてのお尋ねでございますが、基本的な考え方は総理大臣から申されたとおりでございます。大蔵省といたしましても、検討委員会の議がまとまり、政策協議会に提示をされ、正式に御要請を受けまして、税制、関税等を所管する立場から、何ができるのか真剣に検討いたします。(拍手)