1992年04月14日 法務委員会

○浜田委員長 仙谷由人君。

○仙谷委員 相当な時間の審議を今まで行ってきたわけでございますが、指紋の押捺の問題それから常時携帯の問題について、せんだっての参考人の意見を伺っておりましても政府の御答弁を聞いておりましても、現時点ではもうほとんど論理的な説得性もなければ一貫性もない。また、今の日本の国際化という観点から考えますと、指紋の押捺の制度あるいは常時携帯の制度を維持していくのはむしろ非常に難しい。有害無益という言葉がございますけれども、無益であってかつ有害な側面といいますか色彩が非常に強いんじゃないかと私は実感をいたしましたし、そしてまた、この問題の重要性を大臣の方も御認識いただいたのではないかと私は考えております。

 そこで、今まで論点が出てなかったわけでございますが、附則の六条に関して質問をいたしたいと存じます。

 まず、現時点でも指紋の押捺を拒否し続けておる方というのが、いろいろな理由があるのでしょうが、いると思います。この方の人数、そして法務省レベルでは現在公判請求、つまり起訴をして審理中のもの、それについてお伺いをいたしたいと思います。

○高橋政府委員 まず指紋押捺を拒否されている方の数を申し上げます。

 私たちが把握しているところでは、平成三年十二月末日現在の指紋押捺拒否者の数は百五十六名でございます。そのうち永住者は五名、特別永住者の方は百三十八名でございます。それから、公判の係属中は現在一名でございます。

○仙谷委員 公判請求をされて裁判を受けておる者の拒否をした日時と、それから起訴をされた日時を、おわかりになりましたらお教え願いたいと思います。

○濱政府委員 この事件は、昭和五十六年十一月に、神戸市在住の米国籍を有する被告人が、新規の外国人登録の申請をした際に指紋の押捺を拒否したという事案でございまして、昭和五十七年六月に公判請求されております。六十一年四月に神戸地裁におきまして罰金一万円の判決が下されました。その後、弁護人控訴がございまして、平成二年六月、大阪高裁で控訴棄却の判決がなされました。さらに弁護人上告により、現在最高裁に係属中であるというふうに承知いたしております。

○仙谷委員 百五十六名の指紋押捺拒否者のうち一名だけ裁判が残っておる、こういうことだと思うのです。例の恩赦のときになぜ一緒に免訴にならなかったのか私はちょっとわからないのですが、その点はさておくとしましても、百五十六名の残りの者について、現在捜査に着手しておるか、市町村から告発を受けておるか、あるいは検察官に送致をされたものがあるかないか、これをわかる範囲で説明をいただきたいと思います。

○奥村説明員 ただいまの百五十六件の指紋押捺拒否事件、この捜査状況等につきましては、私ども本年に入りましてからの分は把握していないところでございます。

 なお、昨年の指紋押捺拒否事件の送致件数はゼロ件、ゼロ人でございます。

    〔委員長退席、星野委員長代理着席〕

 

○仙谷委員 そういたしますと、この一年少々は指紋押捺拒否者が出ても全く捜査権を発動してないということになるのでしょうか。あるいはもう少し前の段階からここ数年は、例えば三年とか四年の間は押捺拒否事件については立件してないといいますか、あるいは検察官送致をしてない、こういうことに客観的にはなるのでしょうか、いかがでしょうか。

○奥村説明員 警察といたしましては、違法行為を認知いたしました場合にはこれを捜査するのが責務でございまして、今後とも捜査の端緒を得た事件につきましては、その事案の軽重に応じて適正に処理をしてまいりたいと考えております。

 なお、最近における指紋押捺拒否事件の送致件数でございますが、昨年がただいま申し上げましたとおりゼロ件、ゼロ人、それから平成二年がやはりゼロ件、ゼロ人、平成元年が二件、二人、昭和六十三年が四件、四人となっております。

○仙谷委員 法務大臣、いずれにしても今伺ったような状況なんですね。警察庁の方はやはり違法事犯があれば事犯に即して捜査しなきゃいかぬ、一般論を言われたわけですね。一般論はそれはそのとおりなんだけれども、押捺拒否についてどうなんですか、どうされますか、百五十六名という押捺拒否という犯罪を犯した人を。とりわけ、いわゆる永住者の場合には、この法案が成立すれば、少なくとも永住者についてはそういう構成要件該当性とこの押捺義務違反罪の対象者からは外れるということになるわけですね。今からまた改めて総ざらいということで、これを機に百五十六名のうちの百五十五名捜査をして立件をせよ、こういう指示を大臣なさいますか。

○高橋政府委員 大臣のお答えの前に私からお答えさせていただきます。

 永住者や特別永住者につきましても、改正法施行前は指紋押捺制度が同一人性確認の手段としてまだ残っておりますし、その必要性、重要性は制度改正を前にしても失われるものではございませんので、指紋押捺義務違反を処罰の対象とするということで、先生御指摘の附則の規定があるわけでございます。

 ただ、これらの者については改正法施行後は指紋押捺にかわり署名及び一定の家族事項の登録が

採用されることになりますけれども、やはりこの改正法施行前における指紋押捺の必要性、重要性が失われるものではございませんので、指紋押捺義務違反を不問に付すということは望ましくないということで、これは現行の外国人登録制度を揺るがすものじゃないかという考えから、今先生御指摘のあった附則第六条の規定を置いておるわけでございます。

○田原国務大臣 建前上はやはり罪は罪という解釈をとるのが本当だろうと思いますけれども、実際問題として、じゃ果たして今おっしゃったようなことをやるかどうかという問題になりますと、私はせっかくの御指摘ですので、少し外国人の気持ちになって血の通った運用ができないかどうかということを考えてみるのもやはり一つの行き方じゃないか、こういうふうに考えております。

○仙谷委員 警察庁いかがですか、その点。裁判にかかってないけれども、百五十五人も押捺拒否者がおるわけですよ。不問に付すことは望ましくない、それはそうだと思います。法律があるのに違反者がおる。それを例えば個人的な考え方で、あるいは現場の判断だけで、ある人は逮捕され、ある人は逮捕されない。ある人は検挙され、ある人は不問に付された。そういう不平等があっては困るのじゃないか、法の運用という面から甚だ遺憾なことだということになると思うのですよ。私は、押捺義務違反罪があること自体が問題だという立場からそういうふうに言っているのだけれども、いかがですか、警察庁は。今から捜査するかどうかだけ。

○奥村説明員 警察といたしましては、市区町村の告発等によりまして指紋押捺拒否事件を認知した場合には、事案の軽重に応じまして適切に対処してまいりたいと考えております。

○仙谷委員 非常に抽象的で、ここにもう現に犯罪を犯した人がおるわけですね、政府当局の判断からいくと。不問に付せないということもおっしゃっておる。ところが、あんな一般論しか出てこない。大臣は柔軟に対応したい、こうおっしゃる。ここが私は日本の法治主義の大問題だと思うのですよ。まさに恣意的な運用じゃないか。あるいは対象者からいえば、そんな不安定な地位にいつまで置くんだ我々をということになると思うのです。こんなことをやっておりますと、国際的な信用??ルールはあるけれどもルールは守らなくてもいいとか、あるいは守らせなくてもいいとか、そういう話になってくるのじゃないですか。要するに、いいですか、このルールが、本当はあってはならないのにこんなものつけたから、つまり附則六条をつけたからこういう事態になってきているんだと思うのですよ。

 そこで刑事局長、きょう来ていただいておりますので刑事局長にお伺いするのですが、もし附則六条をつけなければ、永住者について今度の法改正で押捺義務がなくなったという事態の中で、これは附則六条がなければどういうことになりますか。

○濱政府委員 もう委員は十分御承知のとおり、刑罰規定の刑が廃止される場合には、その従前の行為について、刑の廃止の施行時期前の行為について、これを罰するかどうかにつきまして経過規定を置くわけでございます。今御指摘の六条につきましては、まさしく「従前の例による。」という経過措置を置いているわけでございます。本来、この経過規定がなくて刑の廃止ということになれば、刑罰を規定した規定がなくなりますれば、それはもう刑の廃止ということに当然なるわけでございます。

○仙谷委員 刑の廃止になる、こうおっしゃったので、よくわからないのだけれども、要するに、起訴をされておる人は刑事訴訟法三百三十七条によって免訴になるわけですね。起訴をされてない人については、これは多分刑法六条の解釈によって、行為時法じゃなくて現時点の法によって構成要件該当性があるかないかを決められるわけですから、もう要件そのものがなくなればその人は今後捜査の対象にもならない、こういうことになるという解釈でよろしいでしょうか。

○濱政府委員 そのとおりと理解いたします。

○仙谷委員 とすれば大臣、まさに附則六条を置くかどうかという政策判断、その点が一番重要だったということになるのですよ、この問題については。あくまでも、この百五十六名という存在について、政治的には多分おっしゃったように、今から捜査してしょっぴいてきて逮捕して押捺義務違反で起訴をする、そんなことはできるはずがないということは皆さんわかっているわけですよ。ここのところは政治的判断でしょう。わかっているわけですよ。ところが、あくまでも附則六条というのをつけて、しかしおまえたちは許さないんだぞ、こういうことを口では言いたい、これがこの法案の一つの底に流れる基本的な思想だと私は思うのですよ。なぜこんな附則六条なんていうのをつけてあくまでも、現実には逮捕したり起訴したり立件したりできないのに、できないと私は思うのですよ、その方が政治としては正しい、法の運用としては正しいと思いますけれども、できないのにこんなものをつけたか、附則六条をつけたか、なぜこんな政策判断をしたのか。この際、すっぱり、過去の押捺義務者についても罪に問わない、捜査の対象にしないということが法案の上でも必要だったのではないか。附則六条を今の段階で削除するおつもりございませんか。

○高橋政府委員 いろいろ、法案の趣旨からいってそういう必要はないんじゃないかということかと思いますが、やはりこの制度が最後まで、最後といいますか切りかわるまで厳然として存在するわけでございますから、それに伴う罰則制度もきちっと整合性を持って継続すべきであるという考えで「従前の例による。」という附則第六条を設けた次第でございまして、これは、運用と今先生おっしゃいましたけれども、それとは別といたしましても必要ではないか、こういう考えでございます。

 

○仙谷委員 法務大臣にもお伺いしたいのですが、過去にも、判例をちょっと調べましたら、刑の廃止によって免訴になった事案、これは戦後すぐの法律体系とか憲法の変更というか、新しい憲法ができたとかあるいは連合軍の占領が終わったとか、いろんな事情があるようですけれども、法律が変わって刑の廃止によって免訴になった事例なんか随分あるんですよね。なぜそうしなかったのか。法的にきちっと、もうあなた方は捜査対象にしないということが本当は私必要だったと思いますけれども、整合性などということで済む問題ではないと思います。

 法務大臣、政治的にも、この間のこの委員会の議論の中で、法案が成立した後施行されるまでの間に十六歳になった人については考えなきゃいかぬという話だったですね。今まで、法案が成立するまで、あるいはこの法案が施行されるまでの間に指紋押捺を拒否する人一般、これについて、法務大臣は先ほど柔軟に考えるとおっしゃったけれども、いかがですか、ここでもう捜査の対象にしないというふうに明言されたらどうですか。

○田原国務大臣 明言せよと言われるとなかなか明言しにくい建前論がございますけれども、私も何度も申し上げるように法律家ではなく政治家でありますし、それから、この法律を依頼するに当たってのいろいろ法制局等を含めた法律論争には参加しておりませんが、おっしゃる気持ちはわかりますが、ただこれは、駆け込み的な指紋押捺拒否というのが続発したりとかいうようなことも想定できるとか、いろんなことがあったんじゃないかなと思うのですが、私は先ほど申しましたように、血の通った考え方をしたいということで、御了解を得たいと思うわけでございます。

○仙谷委員 駆け込み的というのは甚だ理解しがたいのですよね。つまり、時期が来ないと再登録の問題とかはないわけでありますから、何というのかな、拒否者が駆け込み的にふえるなんということは、とても想定をこの問題についてはできないわけですよね。だから、せんだっての答弁でも、拒否者に対する例の在留期間の問題、今まではペナルティーとして二年に短縮していたけれども、本法が施行されるときには五年に返すという答弁

ございましたね。だから、過去のことはもう問わないんだ、新しい法体系ができるんだから問わないんだという趣旨のお話だったと思うのですが、この刑罰法規との関係もひとつ法務大臣の方から、つまり政治判断として捜査の対象にしないということを閣議あるいはその他の所管庁との関係で申し入れてほしいのですよ。常時携帯義務違反については、柔軟、弾力的な運用というようなことでやってきたわけでしょう。私は、柔軟、弾力的な運用というのはよくはないと思いますけれども、政府の方でこういう条項を削除しないというのであればそれしか方法がないわけですから、過去のことは問わないということを強力にリーダーシップをとって大臣の方からやっていただきたいと考えております。その点、念を押しておきます。

 次に、指紋押捺については、その必要性について、成りかわり論というのがあったのですね。これは、そこにも冬柴委員がいらっしゃいますけれども、八七年の九月一日、当委員会での審議だと思いますけれども、当時の小林さんという政府委員が、「これらの在留者がもし可能であれば取ってかわろうあるいは成りかわろうとする相手は、ほとんど例外なく長期在留者あるいは永住者であります。したがって、長期在留者、永住者であればこそその身分関係、居住関係を明確にして、こうした不正規在留者が利用する余地を排除する必要があるわけでございます。そのために、例えば米国においても例外なく最も厳しく指紋の押捺を求めているのは永住者であります。」「永住者こそ不正規在留者と区別して正規に永住している者であるということを立証する手段を、本人にもあるいは行政側にも確保しておく必要があるということによるわけであります。」つまり、永住者は成りかわられる余地が非常に大きいから永住者から指紋をとるんだという話だったわけですね。この理屈はもう法務省は放棄したのですか。

○高橋政府委員 その趣旨の、今先生読み上げました議論が行われたということは十分承知しております。確かに、観光客等短期間に出国するものと異なりまして、長期的に在留する外国人は我が国の社会との結びつきが非常に、あるいは行政とのかかわりが深くて、その正確な登録の維持のために人物の同一人性を確実に確認する手段を設けておくことが必要で、確かにそういう、長期在留者に成りかわりたい、それの方が蓋然性が高いということは、それはそうではないかと思います。

 ただ、現在、私たちが今回採用した制度というのは、指紋にかわる同一人性確認のために有効な手段は何かということで、写真と署名と家族事項、こういうものを見つけたというか開発したわけでございまして、これは永住者に、我が国の社会と密着性、定住性が強い、こういう人には有効であるという結論が出たわけで、これならこういう永住性のある人に有効であるということでしたので、これで代替することとしたわけでございます。そうだからといって、その成りかわりが必要性がなくなったとかそういうこととは全く関係ございませんで、ただ永住者の方についてこれは非常に有効な、指紋にかわるものであるという結論でかえた。ですから、ちょっと事態といいますか、技術の進歩とかいろいろ変わってきたのじゃないかというふうに感ずるわけでございます。

○仙谷委員 何かこうもやもやしてよくわからぬですね、今の説明じゃ。

 要するに、成りかわられるから指紋が必要だ、指紋しかないんだということをおっしゃった。そのほかにも、登録外国人の同一人性の継続を担保するためにはある期間を置いて二度三度と押させなければ意味がないというようなことまでも往時というか昔は言っておったわけですね。指紋で同一人性を確認しようと思ったら、こういう論理にならざるを得ない。

 それで、今局長は代替手段が発見できた、こうおっしゃるわけでしょう。一番成りかわられる可能性があって、一番指紋をとらなければならない永住者について、過去の論理からいうと、代替手段ができたわけだから、それはそれほどの成りかわられる必要性がないのか、それほどの指紋をとられる必要性がないのかわかりませんけれども、その他の外国人についての代替手段にならないなんということがどういう理屈から出てくるのですか。つまり、定住者についても十二分の代替手段になるのじゃないですか。いかがですか。

○高橋政府委員 昔の議論を正確に覚えておりませんけれども、議事録等から拝見いたしますと、今先生おっしゃったように議論は成りかわり防止の必要性から論じたわけでございますけれども、今回の私たちの提出している法案による新しい手段というのは、同一人性確認のための有効性というところから提出したわけでございます。その有効性を考えてみますと、永住者については有効であるけれども永住者でない人には有効と言えない、こういうところで新しい制度は永住者、特別永住者についてのみ適用する、こういうことでございます。

    〔星野委員長代理退席、委員長着席〕

○仙谷委員 全然答えになってないじゃないですか、そんなの。同一人性の確認のために有効な手段が発見できた。それは、あなたのおっしゃるその論理は定住者についても同じく当てはまるのじゃないですかと言っているわけですよ。なぜそれが当てはまらないのか、その理由をおっしゃってくださいと言っているのですよ。

○高橋政府委員 これはいろいろな場面で形を変えて申し上げましたけれども、一定の家族事項を写真と署名というものとを組み合わせて同一人性の確認の手段として指紋にかえるものでございますので、家族事項によって同一人性を確認できるというのはやはり我が国の社会に定着性のある永住者及び特別永住者であるということであって、それ以外の人についてはこの三つの手段は指紋にかわるものとして有効に働かない、あるいは働くというまでいかない、こういうことでございます。

○仙谷委員 さっきも入管局長、あなた、その家族事項というのは間接的な手段だとおっしゃったばかりでしょう。だから、今の議論を聞いていると間接的な手段が主であって、主たる写真と署名、これがむしろ従であるというように聞こえるわけですよ。今あなたは有効性がないと言った。家族事項の確認がなければ有効性がないというようなことを言いましたけれども、思想的には多分それは日本人の単一民族幻想なのですよ。

 外国人がいっぱいふえてくるから、むしろその人たちをどうやってうまく折り合いをつけながら受け入れて日本人が生活していくかという発想じゃなくて、いかに区別するか、日本人同士だったら何かすぐわかるけれども外国人はわからぬからみたいな、そういうものがあるのですよ。だから、思想的にもこれからの時代には非常に問題だと私は思いますし、それから今のような間接的な手段が何か非常に重視されたようなことではこれからもたないだろうと思いますよ。

 では、家族を連れてくる人あるいは今の定住者の中で家族がおる人については、それを登録させたらあなたの言う三点セットができるわけだから、その人たちだけはまた指紋押捺義務を外すという話にだってなり得るわけでしょう。そういう法律の書き方はできるじゃないですか、家族事項を登録する者はこの限りにあらずとか二、三行書けばおしまいだから。そういうことになると思うのですよ。それで、家族を連れて日本に働きに来ている人だって私はそんなに少なくないと思うのです。それから、例えば日本人と結婚している外国人の方というのは家族がまさに日本人として存在する、この問も議論になっていましたけれども。その人は、家族事項を登録すれば指紋押捺にかわる有効な手段になるというのであれば、そうなってしまうわけですよ。

 それで、この辺はもうこの辺でおきますけれども、この問題はやはり指紋押捺を維持しておかないと何か治安管理的に不安だみたいな意識がどこかにあるのですよ。そういう意識は早くお捨ていただかなければいけないというふうに私は考えております。

 次に、犯罪との関係をちょっとお伺いしておきます。

 今度の審議に当たって調査室からも配られた資料、あるいはこの指紋押捺あるいは常時携帯等と絡んで、この警察白書を見ておりましても、外国人労働者の急増と警察の対応というふうなことがありますね。せんだって私の方からお伺いをしましたら、外国人のいわゆる犯罪、外登法違反も含めた犯罪について、在留の期間あるいは在留の資格との比較、つまりどういう在留資格、在留期間で日本に滞在する人がどういう犯罪をどのくらいの数、犯しておるかという統計がほとんどないそうですね。あるいは今度の法案を立案するについてもそれはどうもお調べになっていない、こういうことをお伺いしたわけでございますが、わかっておる範囲で、いわゆる急増する外国人犯罪、これと在留資格、在留期間の関係、法務省から私どもに手渡されました関係資料、これの資料の九ページというふうに言えばいいのでしょうか、九ページの円形の表との関係でひとつお答えをいただけますか。

○本間政府委員 お答えいたします。

 これまでとっております統計の中に、先生の御質問にありました在留資格別あるいは在留日数別による外国人犯罪統計というものはございません。

 最近でございますけれども、ちょっと調べて、かかっているものがございまして、これの結論というか集計結果が完全に出ておりませんが、今まで明らかになったところだけ御紹介させていただきます。

 平成三年一月から同年の六月までに全国の検察庁で受理いたしました外国人を被疑者とする事件のうちの約三千名分でございますが、これにつきまして上陸後罪を犯すまでの期間を集計いたしましたところ、まず入国後三カ月以内に罪を犯した者は約三百二十人、率にいたしますと約一一%でございます。次に、三カ月を超え一年以内に罪を犯した者は約二百五十人、率で約八%。次に、一年を超える者が約六百六十人、率で約二二%。最後に、永住者等は約千七百七十人、率にしますと約五九%ということになっておりまして、在留資格別につきましてはまだ調査ができておりませんので、この程度で御勘弁いただきます。

○仙谷委員 私の方から念のため言わせていただきますけれども、今のパーセンテージは約三千名のうち、被疑者として検察庁に送られた者のうちの九十日未満が一一%という意味ですね。人数的にいわゆる永住者が例えば六十四万人いる、そのうちの五九%という話ではなくて、被疑者のうち永住者が千七百七十人であるということですね。今の数を割り算してみますと、永住者あるいは長期滞在者、短期滞在者、この辺をとってみますと、ほぼ〇・二一%から〇・二五%ぐらいなんですね。むしろ永住者の方が〇・二五%ということでございます。日本人の犯罪率より高いのか低いのか私わかりませんけれども、多分そんなに高くないと思われるのですね。

 つまり、在日外国人や外国人労働者があたかも犯罪者あるいは犯罪予備軍であるかのような議論は間違っておるのではないか。ちゃんと統計をとってみれば、何か怖い者であるかのような言論をしたり、急増する外国人犯罪というふうな警察白書の書き方なんかもどうも間違っておるのじゃないか。外国人がふえればある一定比率で犯罪は発生します。それは日本人であっても同じだと思うのです。つまり、社会状況とか経済状況によって犯罪というのは出てくるのではないだろうかと思うわけです。

 この警察白書を見ますと、なぜか女性だけについては在留資格別の統計がとられているのですね。警察白書の平成二年版四十七ページの「外国人女性に係る風俗関係事犯の取締り」という項目だけは在留資格が書いてあるのですね。この指紋押捺の問題もあるいは常時携帯の問題も、犯罪との関係でもしこれが問題になるのであれば、ちゃんとした統計をおとりになって議論をすべきではなかったのかなというふうに、今の統計がないんだというお話も含めて、私は感じます。先ほど小澤さんの方からも、他の件についてどうも科学的なデータに基づく議論あるいは法案作成になっていないじゃないかという議論がございました。この犯罪との関係もまさに科学的に、冷静に我々考えてみようじゃないかということを申し上げたいわけでございます。法務省の方でどなたか御答弁をいただければ幸いです。

○本間政府委員 私どもは外国人犯罪の抑止とか防止あるいは取り締まりという観点で今度の法改正をしたということではございません。外国人犯罪というのは別な要因で起こってくるものであろうということは、先生と同じ認識でございます。

○仙谷委員 しかし、にもかかわらず、前回私がお伺いしましたけれども、法案で指紋押捺義務が全廃できなかったのも、あるいは常時携帯についても厳しい罰則があるのも、何省とは言いませんけれども、どうもその辺の感覚がまだ残っているのじゃないか。それならばきちっとした統計をおとりになった方がいい、とっていただきたいということを申し上げておきます。

 時間がなくなりましたけれども、もう一点だけお伺いします。

 自治省の方、来ていらっしゃると思うのですが、地方自治法第十条に「住民」という規定がございますね。この住民の中には当然のことながら在日外国人が含まれるだろうと私は考えておるわけでございます。さらに、十三条の二で市町村は住民について台帳を備えなければいけないということが記載をされています。この点について、今各市町村でその種の台帳的なものをつくっているところがあるのかないのか。ないとすればどういう処理を、先ほど小澤委員の方から各種権利義務関係といいますか、サービスとの関係を個別にお伺いしておりましたけれども、その点について何を、つまり外国人登録原票をお使いになっておるのだろうと思いますけれども、そういうやり方でいいのか。やはり法的根拠がある統一的な??外国人だけ別にするのか、それとも住民基本台帳に在日外国人も載せていくことにするのか、その辺についての自治省の御見解をいただければと思います。

○芳山説明員 地方自治法の十条は、先生御指摘のとおり、国籍を問わず生活の根拠があれば外国人も住民となるということでございます。

 また、台帳の関係でございますが、先ほどいろいろお尋ねがありましたように、外国人登録法に基づく原票を作成し、その原票をもとに各種行政サービスを行っておりますが、その具体的な市町村の対応としては、登録原票の閲覧によりまして対象者を把握する場合と、また住民記録システムに連動して対象者を把握する方法と、いろいろ市町村の対応があると聞いております。また、お尋ねの住民基本台帳と外国人に対する行政サービスの関係ということでございますが、おのおの法の目的、また利用の仕方等もございますので、住民基本台帳で即外国人登録を中に包含するのは難しいのじゃないかと思っております。

○仙谷委員 住民基本台帳法の三十九条で外国人を適用除外してあるのですね。それで、地方自治法では外国人も住民に含まれる。そして、十三条の二では「住民たる地位に関する正確な記録を常に整備しておかなければならない。」ということになっているけれども、どうも法的な根拠がないということでございます。在日外国人も権利義務の主体として位置づけてちゃんと処遇するということが必要な時代になってきたんだろうと思いますね。その点を法務大臣にもひとつ銘記していただきたいということを申し上げて、質問を終わります。