1992年03月27日 法務委員会

○浜田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仙谷由人君。

○仙谷委員 大変重大な法案が提起をされたというふうに思料いたしております。

 そこで、重大な法案でありますけれども、政府そして自民党の方はどうもこの法案の審議を非常にお急ぎになっているやに私は聞いておりますが、委員長、現在の時点で国会法四十九条の要件が充足されておるかどうか、ちょっと御確認をいただきたいと思います。

○浜田委員長 過半数に達しておりませんので、仙谷君のただいまの御質問に対しては、現在のところ条件を満たしていないという状況にあります。

 委員部、大急ぎで委員の出席要請をなすってください。??申し上げます。できるならば質疑を続行されて、その間に委員の出席を要請させていただきたいと思います。

○仙谷委員 理事に取り扱いをお任せいたしますけれども、極めて重要な法案だという認識を私は持っております。急がれております。国会法の規定では議事を開くことができないというふうに書いてあります。開くことができない委員会を開くというのはこれまたいかがなものなのか、こういう話になるわけでございます。理事にお任せいたします。

○浜田委員長 暫時休憩いたします。

    午後一時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十七分開議

○浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。仙谷由人君。

○仙谷委員 なぜ定足数の話をしたかといいますと、事は、私どもの理解といいますか考え方からいきますと、本法案はまさに外国人の人権にかかわる問題だというふうに考えているからでございます。もっと言えば、マイノリティーの権利の問題あるいは人権の問題であるかもわからない。そういう重要な法案を審議するときに、国会が人数が足りなくていいかげんな審議をしたというふうなことになっては、日本の国際化というふうなことが言われながら何をやっているんだという話になるのではないんでしょうかということで申し上げたわけでございます。

 それでは、中身に入らせていただきます。

 政府案を拝見いたしました。提案理由説明のところを拝見しました。この提案理由説明のところあるいは法案を全部通読しましても、在日韓国人、朝鮮人あるいは中国人あるいはその他の外国人を含めて、その人たちの人権尊重ということが一言も書かれてないわけであります。この法案には書かれてない。

 なぜそうなんだろうか。つまり、歴史的な経緯を振り返ってみますと、在日韓国人の二世、三世の方々を中心にしてこの指紋押捺の問題というのは、とりわけ、常時携帯の問題もそうでございますが、人権問題として社会的に提起をされてきた。それで、それが本国に打ち返されてといいますか、韓国政府からいいますと、在日キョッポの人権問題として、この日韓条約の協議の期間終了前に協議を日本政府とやらなければいけないということで、日本政府と協議がぎりぎりに行われて、そして覚書等々もつくられてきた、こういう経緯があるわけです。そういういきさつがあるにもかかわらず、これは人権問題としての位置づけが全くない改正案であるということで、私は、今の時点での改正案としては非常に奇異に感ずるわけであります。

 法務大臣、どうしてこうなっておるのでしょうか。

○田原国務大臣 指紋というのは、御存じのようにある人の同一性を確認するための他に類例がないはど正確な手段であることは間違いないわけであります。したがいまして、長い間法律の中にそういうことが仕組まれてきてずっと運営されてきたわけでありますけれども、今度改正することになって、ある一定の人たちを除いては全廃することになったわけであります。そのときに当たって、私ども、人権侵害しておるなんということは考えもせずに、現在の人々の感情と従来の実効性とのうまい中間点を見つけたというような感じで、日本人と日本に定着性を持っている人たちと

の関係という感じでこれをとらえたわけであります。

○仙谷委員 確認いたしますけれども、今、この指紋押捺の問題は人権問題とは考えてなかった、こういうお話でしたが、そう確認していいですか。??大臣に聞いているのです。大臣が言ったのだから、大臣答えてください。

○田原国務大臣 先生も御存じのように、法案をつくるに当たって過去からのいきさつがあり、細かい事務的な積み上げや法制局との打ち合わせ等もありますから、私に結論を聞く前に、初めから、結論の前に政府委員からお聞きになっていただいてもいいのではないかと思うのです。

○仙谷委員 私は最高責任者の法務大臣の御認識、御見解を聞きたいのですよ。刑罰をもって指紋押捺を強制することが人権問題であるかないか、その認識、判断を聞きたいのです。??いや、局長はいい。大臣、どうです。これは全く政治家マターの話ですから、どうですか。

○田原国務大臣 私は、これは純粋なる法律問題であって、実務的な指紋とかその他同一性確認のための手段として論じておるのであって、人権問題として取り上げてはおりません。

○仙谷委員 だからこういうことになるのですね。

 では、大臣に続けて聞きますけれども、少年少女から始まって大人まで、日本人から指紋をとるのは人権問題ですか、それとも人権問題ではないですか、言ってください。

○田原国務大臣 なぜ日本人を、そうして全部とらなければいけないのかよくわかりませんが。

○仙谷委員 今の大臣の答弁の中身は、国家権力としての必要性の話はあっても、国家権力の国民や人間に対する行為が人権問題であるかどうかというお答えには全くなってないのですよ。そんな認識だから日本の人権行政はおくれるのですよ。日本人から指紋をとることは人権問題だというのははっきりしているじゃないですか。警察だって、今人権問題を気にしてというか、人権問題があるからそんなことはできないと言っているじゃないですか。そうでしょう。そんなことを知らないのですか、あなたは。

○田原国務大臣 日本人から、だれでもかれでもひっつかまえて、何もしてないのにすぐ指紋をとるというのはそれは問題でしょうが、とるべきときにとる、とらざるべきときにとらないということで従未来たわけでありますから、そういう御議論は成り立たないと思うのですけれども。

○仙谷委員 指紋押捺自身、指紋を採取すること自身は、人間の側からいうと人権問題だから特別の場合に限って法律で規定されている、それしか方法がない、そういうふうなときに許されるのですよ。

 それじゃ、あなた、さっきおっしゃった法律によって許される場合というのはどういう場合ですか。御存じの場合を言ってください。

○田原国務大臣 私は、専門の法律家でございませんから、そういう具体的な細かいことは正確には答えられません。

○浜田委員長 高橋入国管理局長。

○仙谷委員 この人に質問していませんよ。僕はあなたに質問してない。(発言する者あり)

○浜田委員長 ちょっと御静粛に。

 仙谷君に申し上げます。

 局長も補足的な答弁をしたいということでありますので、まずお聞きをいただきたいと思います。入国管理局長。

○高橋政府委員 まず私から、外国人についての基本的人権と指紋押捺制度についてちょっと説明させていただきたいと思います。

 我が国に在留する外国人につきましても基本的人権が尊重されるべきことは当然でございます、日本国憲法のもとにあるわけでございますから。しかし、同時に人権は無制限に保障されるわけではなくて、公共の福祉のため必要ある場合には相応の制限を受ける、こういう一般的なことはまさに先生御案内のとおりでございます。

 指紋に関して言いますと、みだりに指紋を採取されないという自由は憲法の保障する私生活上の自由の一つとされておりまして、外国人につきましてもひとしく保障されるものでございますけれども、指紋押捺制度は正確な外国人登録を維持するために外国人登録法に取り入れられました制度でございまして、このように合理的必要性によって自由の一部が法律によって制限されても、このような制約が人権侵害に当たらないというふうに考えておるところでございます。

○仙谷委員 先ほどの武部先輩からの抗議がありましたので、私、言っておきますけれども、大体委員長だってそうお考えだと思いますけれども、委員会審議というのは政治家同士がディベートするのが基本でしょう。そうでしょう。私わかりませんから関係当局に任せますなんて話は、これは原則としてなしですよ。とりわけ私が今お伺いしているのは立法政策の基本にかかわることですよ、こんなことは。細かい話なんか全然聞いてないじゃないですか。そんなことが政治家同士で議論できなくてどうするのですか。それだったら大臣要らないことになるじゃないですか。

 高橋局長の答弁はさておきまして、では議題を変えます。

 昨年の十二月に、いわゆる自由権規約、国際人権規約の中のB規約でございましょうか、この規定に基づく報告義務を尽くすために報告書を国連人権委員会に提出をされておりますね。

 この報告書の中の「外国人の地位、権利」というふうな項目がございますね。これはいわゆる国際人権規約の二条に関する、つまり外国人の地位とか基本的人権、指紋押捺とかあるいは外務省の方で出されたこの報告書に書かれておる外国人登録証携帯義務とか永住許可、再入国許可、退去強制、その他地方公務員への採用等々の問題もございますが、この種の問題が日本における外国人の人権問題であるという観点からB規約の二条関係として報告されたのじゃないのでしょうか。

○吉澤説明員 先生から御指摘ございました昨年十二月十六日に国連に提出いたしました市民的、政治的権利に関する国際規約、通常B規約と言っておりますけれども、この規定の四十条に基づきまして報告いたしました報告書の中には、確かにB規約二条関係の問題といたしまして、いわゆる日韓三世協議の決着内容として指紋押捺にかわる手段をできるだけ早期に開発すること、所要の改正法案を本年の通常国会に提出するべく最大限の努力をしているということを報告しているところでございます。

 このB規約の関連条文で申しますと、二条には、この規約の締約国はいかなる差別もなしにこの規約において認められる権利を尊重し及び確保することを約束するというような趣旨の規定があるところでございますし、また第二十六条には、すべての者はいかなる理由による差別に対しても平等がつ効果的な保護を保障されるべきであるという趣旨の規定がございますし、また第七条には、何人も品位を傷つける取り扱いを受けないといったような趣旨の規定があるところでございまして、確かに外国人の人権というものも憲法と同様国際人権規約によっても保障されているところでございます。

 ただ、国際人権規約の規定というものも、例えば二条、二十六条の差別の問題につきましても、合理的な差異を設けることまでも禁じているものではないというふうに考えておりますし、またこの指紋押捺、日本で行われているものがこの品位を傷つける取り扱いに当たるものではないというふうに考えているところでございます。

○仙谷委員 今の結論部分だと、なぜ今度指紋押捺をやめるのか、理由が全くわからなくなってくるのです。

 外務省、ひとつお答えをいただきたいのですが、この報告書の中の「外国人の地位、権利」という項目の中に「参政権等性質上日本国民のみを対象としている権利を除きこいいですか、「日本国民のみを対象としている権利を除き、基本的人権の享有は保障され、内国民待遇は確保されている。」という記載があるんですよ。先ほど高橋局長

がおっしゃった指紋を強制されない自由とおっしゃる基本的人権は、これは性質上日本国民のみを対象としている権利ですか、それとも人間としての普遍的な権利ですか、どちらですか。

○吉澤説明員 参政権等につきましては、B規約上も「すべての市民はこという書き方になっておりまして、ほかの規定が、例えば「すべての者はこという規定ぶりになっているのと比較いたしますと違った書き方になっているということがございまして、この参政権というのはその性質上その国の国民に特有のものであるというふうに考えられるところでございますけれども、その指紋押捺といったことを含めましてそういったことというのは、みだりに外国人にのみ適用されるということは当然にそれでいいということにはならないと思。いますけれども、先ほど申し上げましたとおり、このB規約の二条とか二十六条といった規定も合理的な差異というものであれば許されるということでございます。その合理性といったことについては所管の官庁からお聞きいただくのが適当かとも思いますけれども、合理的な差異であるということが認められる限り許されるというふうに考えられると思います。

○仙谷委員 端的なお答えじゃないのでよくわからないのですが、今のお答えは、みだりに指紋を強制されない自由というのは、参政権等性質上日本国民のみを対象としている権利ではない、人間としての普遍的な基本的人権であるということはお答え総体からは確認いたしましたが、それでよろしいんですね。

○吉澤説明員 先生御指摘のとおり、参政権といったものと法のもとの平等というのは明らかに性質が違っているというふうに考えます。

○仙谷委員 先般の予算委員会の分科会でもこの報告書に関連して、人種差別撤廃条約、百三十カ国の国連加盟国が締結しているのに日本は二十数年放置したままになっているんですね。外務大臣に対しまして、これはどうするんですか。国会で二十数年ずっと、いや検討中です、作業中ですと、この答えばかり。言葉の端々から聞きますと、外務省は批准をしたいんだけれども他の省庁が足を引っ張っておる、どうもこういう感じがあるんですね。また後にお聞きしますけれども、今度のこの指紋押捺問題も、どうも法務省はこういう区分の仕方ではまずいんじゃないかと思っていた節があるのだけれども、ほかの省庁に足を引っ張られてどうにもならなくなった、そんな感じが私はするのです。

 まず、この報告書作成、これは外務省が主として最後には英語で書かれたのだろうと思いますけれども、そもそもつくるときに、法務省、関与していらっしゃいますか、この報告書の作成に。

○高橋政府委員 具体的にまる、ぽつというところまではいきませんけれども、基本的には私たちも、法務省も関与しているところでございます。

○仙谷委員 そうしますと、先ほど言いましたように、おっしゃるようにみだりに指紋を強制されない自由は、基本的人権の享有が保障され、内国民待遇が確保されているのだから、堂々と国連に報告してあるわけですから、内国民待遇を確保してなかったらこの報告書がうそということになるわけです。??いやいや、内国民待遇ですよ。そんな簡単に公共の福祉で制約されるものじゃないです。

 そこで外務省、次回の報告のときには、今回の法案のような外国人を区分して指紋押捺、つまりみだりに指紋を強制されない自由を取り戻した人たちと、いや、まだ三十二万人というグループが、みだりに指紋を強制されない自由をこういう合理的な、あなた方の言葉で言うと合理性のある手段、方法、範囲で制約をされているんだという報告をしますか。お答えください。

○吉澤説明員 このB規約に基づく報告書につきましては、今回三回目でございますけれども、二回目の報告書までは比較的日本の制度の説明ということに終わっておりまして、二回目の報告書の審査の際に委員の方から、日本の実態といったようなものにつきまして、この指紋押捺の問題も含めましていろいろな質問がございましたので、今回の報告書におきましては、そういった制度の説明だけではなくて、実態の説明も加えるようにしたところでございまして、四回目の報告書以降どういうふうにしていくのかということにつきましては、三回目の報告書の審査といったことも踏まえまして、あるいは先生から今御指摘のあった点も含めましてよく検討してまいりたいと思います。

○仙谷委員 これは、日本が国連においてまさに国際的に、国際社会の中で名誉ある地位を占めているかどうか、人権問題をどう扱っているか、ちゃんと報告しなければいけないと思いますよ。今の水準で国連人権委員会にこういうものをちゃんと書いて出したら、矢のような質問にさらされるはずですよ、人権委員会では。だから、先ほど申し上げた人種差別撤廃条約についての批准をしない、それからもう一つは自由権規約の第一選択議定書を批准しない、こういうことになっているわけですよ、法務大臣。

 第一選択議定書を批准しないというのはどういうことを意味するかといいますと、選択議定書に個人の国連人権委員会に対する直接の被害救済の申し立て権が書いてあるのですよ。つまり、今までであれば在日韓国人、朝鮮人、中国人その他の外国人、この法案がもしこのとおり通るとすれば、ビジネスマンや弁護士やあるいは海外から日本に来ている報道機関の人やそういう人が一年以上の滞在者としてみだりに指紋を強制されない自由を侵されたということで国連人権委員会に訴え出ることができるようになるのですよ、この選択議定書を批准しておれば。だから、そういうことをされるのが嫌だから第一選択議定書を批准しないというふうなことであればなおさら、人権の点では日本というのはどうなっているんだ、甚だ異質な国だなということになってしまうわけですよ。だから、私は法務大臣にもこの機会に、人種差別撤廃条約とB規約の選択議定書、これに日本が加入し、締結し、批准をするようにひとつ努力をしていただきたいと思うのですよ。

 なぜそんなことを言うかといいますと、例えば経団連あたりでももう十年も前に、国際的な経済の面における人的の交流面からいって指紋押捺だけはやめてくれという要望をしているのでしょう。例えば、きょう日経新聞を見てちょっとびっくりしたのですが、野村総合研究所の一面広告「「グローバル・フェアネス」。それは共生のための国際ルール。」と書いてある。いっぱい書いてある。もう共生とグローバルがはやり言葉になっているんです。「グローバル・フェアネス」と書いてあるのですね。ここに書いてあることは、「日本経済が今後、真にグローバル化してゆくためには、誠意よりもフェアネスを評価基準、行動原理にしてゆく必要があると思います。しかしながらそのフェアネスは、その国ごとのフェアネスであるべきではありません。」と書いてあるのですよ。

 あなたは、大臣は、これ、全部正しいと思わなくてもいいけれども、たかだか野村だと思ったらそれでも結構ですが、まあそろそろこの種の考え方が、利益追求の野村ですら言わざるを得なくなってきたというのがこの時代なんじゃないでしょうか。だから、改正しようということをおっしゃったけれども、日本だけ通用するフェアネスであってはならないということなんですよ。先進国で、アメリカは指紋押捺があるなんということを言う人がおりますけれども、では、ヨーロッパ先進国、どこにあるのです。アメリカは、国籍について属地主義をとっております。そういうことを考えますと、日本だけ独特の、定住の外国人を二つに分けて、片方の人からは相変わらず指紋をとり続けるというようなことがその国ごとのフェアネス、大臣もその他の自民党の大先生方も日本のフェアネスだとお思いかもわかりませんけれども、どうもそれでは通用しない時代に入ってきたんじゃないかということを申し上げたいわけでございます。

 もしお答えしていただけるんでしたら、さっきの人種差別撤廃条約と選択議定書、それと基準とかフェアネスというのはその国だけのものであっ

てはならないというふうな事柄について、大臣の御見解をひとつ承りたいと思います。

○田原国務大臣 先ほどおっしゃった国連のそういう問題とか、今のフェアネスはまだ見ておりませんから、これから勉強させていただいて、よく自分なりに考えてみたいと思います。

○仙谷委員 法務省には人権擁護局というところもありまして、建前上は国民のそして日本に住む外国人の人権を擁護するという職務もあるわけでございますので、ひとつよくお考えをいただきたいと存じます。

 次に、この改正案が出てきたいきさつについて聞いておきたいわけでございますが、まず、平成三年つまり昨年の一月、海部さんが韓国から帰ってこられて、そしてメッセージを発せられて、一月十一日の閣議で左藤法務大臣が何か所感を述べたというふうになっております。そして、四月の二十三日に法務省は、指紋押捺撤廃有識者懇談会をつくったということが報道をされておるわけでございます。つまり、平成三年の四月二十三日にそういう懇談会をつくったということが報道されておるわけですが、間違いないでしょうか。

○高橋政府委員 昭和六十二年の外国人登録法改正案の国会審議の際に、衆参両議院法務委員会におきまして附帯決議がございました。それから、今先生御指摘になりましたように、当時の海部総理大臣が訪韓に際しまして平成三年一月十日に日韓外相間で署名した覚書がございますが、その趣旨を踏まえまして、法務省におきましても、外国人登録制度のあり方について早急に検討する必要があるということで、各界の有識者の意見を聴取するということの一環として懇談会を設けたところでございます。それで、開催回数としては、今おっしゃいました平成三年四月から本年三月まで六回開催しております。

○仙谷委員 懇談会のほかに、外国人登録制度検討促進委員会というのも存在するのでしょうか。

○高橋政府委員 これは、省内におきましてもこういうのを設けまして、私たちの中でもいろいろ勉強したわけでございます。

○仙谷委員 そうすると、懇談会は第三者機関的な、第三者に集まっていただいて、検討促進委員会の方はお役人といいますか官僚の方々でおつくりになった、こういう理解でいいのですか。

○高橋政府委員 そのとおりでございます。先ほど先生御指摘になったかと思いますけれども、法務省の中にも、入管局だけではなくて、外国人を扱っているところがたくさんございますので、そういう法務省内部でいろいろなノウハウをあるいは意見を聴取するために、コンセンサスをつくるということもございまして、内部的な委員会を設けたところでございます。

○仙谷委員 昨年の秋ごろに結論を出すんだというふうなことも報道に書かれておるようですが、懇談会と検討促進委員会、結論が出たのでしょうか。出たとすれば、どういう結論が出たのか、お聞かせいただきたいと存じます。

○高橋政府委員 懇談会におきましては、指紋押捺の制度そのもの、それから指紋押捺にかわる措置がどういうものがあるか、それから外国人登線証明書の携帯制度、特に常時携帯制度など、広く外国人登録制度全般に及んでおります。

 ただ、ここでちょっと申し上げたいのは、この懇談会といいますのは、諮問などを行う審議会とは異なりまして、いわば自由に意見を交換する場、そういう性格のものだったということを一言つけ加えさせていただきたいと思います。

○仙谷委員 そうすると、この懇談会も、言いっ放しで、意見集約というか結論的見解というのですか、全くなかったのでしょうか。

 それから、法務省の検討促進委員会ですか、これも全く方向性も打ち出さなかった、こういうことでしょうか。

○高橋政府委員 指紋押捺制度にかわる制度についてはどういうものがあるかということに関しましては、鮮明な写真、それから各国の例なんか氷参考にしまして、署名それから一定の家族事項かつけ加えるのがよろしいのじゃないかというようなことが懇談会での大体の意見でもございますし、私たちの検討委員会においても、新しい手段としてはこういうところが妥当なところではないかということが、方向といいますか、そういうようなことでございました。

○仙谷委員 そういう代替措置があるんだ、代替措置とし得るんだという大体の方向が出た、こういうお話に伺っていいですね。

 指紋押捺を廃止するとすればこういう代替措置があるんだという方向が出たんだというお話でございますが、対象はどの範囲にするか。つまり、今の法案のような範囲にするのか。もっと狭く限定する方法もあると思うのです。あるいは、全外国人、つまり現行法上指紋押捺義務を課されている全外国人にするのか。その点についての結論めいた方向性というのですか、それはどうなっておりますか。

○本間政府委員 お答えいたします。

 ただいまの御質問の指紋押捺廃止対象の範囲についてということは確かに大きな議論でございまして、細かいことは抜きにして大ざっぱに申し上げますと、全廃の方が数としては過半数であったというのも事実でございます。

 それから、もう一点つけ加えますけれども、懇談会は局長の私的な諮問機関といいますか、局で意見をつくる際の一つの有識者としての御意見を拝聴するという趣旨でやったものでございます。それから、省内検討委員会と申しますのは、入管局ももちろんでございますが、その中心といたしまして事務次官が委員長となった委員会でございまして、やはりこの問題は非常に重要であると同時に、韓国との覚書の内容というのもありますので、やはりこれは早急に内容をまとめていかなければいけないのじゃないのか、そういうことで、各省の局長級の方を??失礼しました、局長クラスをメンバーといたしまして意見を闘わせた、こういうことでございますので、入管局が中心ではありましたけれども、省全体としても取り組んだ問題でありました、こういうことでございます。

○仙谷委員 今、私の聞き方が悪いのかもわかりませんが、懇談会も検討促進委員会もいずれも全廃の方向が相対多数、多数のようであったと、いうお話なんですが、そのおおむねの意見の理論的な根拠というのはどういうところにあったのでしょうか。

○本間政府委員 一点、誤解のないように申し上げておきますが、今先生、省内でも廃止が多かった、こういうふうにおまとめになったように思いますが、これはそうではございませんで、最終的には、省内検討委員会としては、この案のごとき結論になったということでございます。

 それから、廃止の理由というのはいろいろございますけれども、やはり代替手段というものがありますれば、それはなるべく統一して適用していくというのが制度としては本来のあり方じゃないかというのが一つ、それからもちろん永住者それから特別永住者、このたび私どもが廃止対象としようとしておるもの、これについては特段異論はないところでございましたけれども、それ以外のものについてどうするかということにつきましては、それぞれ先生方の中にもいろいろな意見がございました。

 廃止される方の御意見というのは、いわゆる外国人の管理といいますか、同一人性確認ということについて多少それは緩むといいますか、今よりも後退するということがあってもやむを得ないのじゃないだろうか、そういう考え方が基本にあって、全廃ということを言っておられた方もおりました。

○仙谷委員 そこで、次にお伺いしたいのですが、この検討委員会の方に、検討促進委員会ですか、これ、何か各省庁の局長さんも入っておったというふうにおっしゃいましたか。違いますか。違うのであれば、それはそれで結構なのですが。

 この問題に警察庁は何らかの権限なり根拠で意見を言うというふうなことがありましたでしょうか。

○本間政府委員 もしかして私さっきちょっと言い間違えたかもしれませんけれども、あくまでも

省内検討委員会でございますので、他省庁の方々は一切参加、出席はいたしません。あくまでも省内だけのものでございます。その点だけ申し上げておきます。

 それから、警察庁との関係、今お触れになりましたけれども、この省内検討委員会の結論が出るまでの間に別途いろいろ警察の御意見も承ったということはございます。

○仙谷委員 ほぼ公知の事実のようになっておるのですが、大臣、予算編成に向かってこの法改正について二十五億円の予算請求をして、十二月二十二日ですか、大蔵原案でこれを留保された。その理由は、どうも指紋押捺全廃の方向に法務省があってこれに警察庁が厳しく対立したというのが、これは報道も一紙だけじゃないですからほぼ間違いない事実じゃないですか。私はほかの筋からもそういう話を聞きました。こういう事実はあったのですか。

○高橋政府委員 政府部内におきまして最終的な予算あるいは法案をまとめるに当たっては、政府一体として一つのポジションをまとめる必要がございましたのでいろいろ協議はいたしました。その結果、結論が出たわけでございます。

○仙谷委員 では、もう一遍正確にいきますよ。大蔵原案の段階では予算が留保されています。その理由は法務省と警察庁の意見対立てあったという事実はあるのですかと聞いておるのです。なかっならないでいいですよ。そのかわり、こういうところで事実と反することを言われたら困りますけれどもね。事実のとおり答えてください。

○高橋政府委員 私たちの出している案がうまく説明ができなかったということはございます。

○仙谷委員 今の話を聞いておりますと、私なりに翻訳しますと、要するに警察庁を説得し切れなかった、こういう話でしょう。それで、政府の統一見解が出なかったから大蔵原案の段階において予算が留保された、こういう話になるのですね。それはそういうふうに聞いておきましょう。

○本間政府委員 お答えしますが、政府部内でいろいろ意見があって、それが調整の結果今回の案にまとまったということは局長からもお答え申し上げたとおりでございます。もちろん法務省部内でもいろいろな意見があったわけでございまして、先ほどの政府原案の問題との兼ね合いでいきますと、当初は一応全廃ということで出してみて、それで意見調整をしながら最終的に結論を出そうか、こういうことでございましたから、動きとしては先生御指摘のようなやや全廃論が部内では強かったということは間違いありませんが、最終的な結論が少し見送られていた段階で先ほど言った予算の問題が起きている、こういうことでございますので、御理解いただきたいと思います。

○仙谷委員 ちょっとお伺いすることを変えます。

 指紋押捺が、対象範囲が部分的にせよ、八七年の九月の段階では一回の押捺でいいんだというふうに変わってきた。もうちょっと詳しく言いますと、五八年の二月の段階では一年以下の滞在の外国人については押捺義務を課さないんだ。それから、大きい改正としては、八七年九月の段階では一回だけでいいんだというふうに変わってきた。それで今度の改正ですね。表向きの議論を聞いていますと廃止の理由が余りないようにも聞こえるのだけれども、それぞれ部分的に押捺義務を廃止していった段階における廃止の理由をここで陳述してください。

○高橋政府委員 昭和三十三年の外国人登録法の一部改正について申し上げますと、一年未満の在留期間が決定された者について指紋押捺を免除することとしたわけでございますが、これらの者は観光客等短期在留者で、短期間の滞在の後出国するというものでございますので、我が国社会や各種の行政にかかわりを有することが少なくて、指紋の押捺を求めてまでその人物を特定する必要に乏しいという考え方によるものでございます。

 昭和六十二年の外国人登録法の一部改正は、指紋の押捺を不快とするといいますか、そういう外国人の心情を考えながら、外国人登録の正確性を損なわない限度において制度の一部を緩和しようというふうにしたものでございまして、指紋押捺を原則一回限りとしまして、人物の同一性に疑いがある場合には再度押捺させて同一人性を確認するようにしたものでございます。

 今回の改正は、長年我が国に在留する外国人の我が国の社会における定着性というものに着目いたしまして、永住者及びいわゆる特別永住者につきまして、指紋押捺にかわる同一性確認の手段として採用することとしました写真、署名及び家族事項の登録による複合的手段を採用することとしたものでございます。

○仙谷委員 そこで、いわゆる定住外国人と言われております一年以上の滞在期間の外国人については指紋押捺義務が残っておりますね。ここだけ残っておるわけですね、三十二万人。この人たちだけ。つまり、一年未満の外国人の方々はもともと指紋押捺義務がない。永住者、特別永住者、こういう人たちは今度指紋押捺義務を外すのだ、こういう話ですね。短期間??短期間でもない、中期間というのですか、相当期間滞在しておる外国人だけ指紋押捺義務を残すということになっておるのですね。これらの人たちは大体どういう資格で、どのくらいの期間滞在をされるのが傾向的に多いのか。そして、このグループといいますか、外国人の人たちだけに指紋押捺を残す合理的な根拠は何ですか。

○高橋政府委員 今先生御指摘になりました一年以上在留する外国人は、一年から三年の期間滞在する資格を持って、更新する方もおられますが、そういうことで在留資格を持って滞在する外国人でございます。他方、在留外国人の人たちの公正な管理を図るためにはやはり人物の同一人性確認の手段ということがどうしても必要になるわけでございまして、今度の改正で指紋押捺にかわる手段として採用することといたしました写真、署名及び家族事項の登録による複合手段というものは、私たちがいろいろ検討した結果、長年本邦に在留し、定着性の高い永住者及び特別永住者についてはまあ有効と言える、しかしそれ以外の外国人については、一般的に言いますと、我が国社会への定着性が認められていないということで、今回は現行どおりこの指紋押捺制度を維持することが必要である、そういう結論に至ったわけでございます。

 なお、指紋押捺というのは、外国人の同一人性確認の手段として必要かつ合理的な制度であると私たち考えておりますので、永住者及び特別永住者以外の外国人についてこれを維持し、永住者及び特別永住者に対する取り扱いと違っているということになっても、我が国社会への定着性の有無という合理的な理由による区別であって、法のもとの平等に反することにならないと考えているところでございます。

○仙谷委員 結論まで言われてしまったわけでございますが、定着性と同一性の確認というのはそんなにストレートに結びつくものか、理論的にも事実上結びつくものか、大いに疑問ですね。そしてまた、今のいわゆる定住外国人に対する指紋の押捺義務も一回だけになっておるわけですね。そうですよね。入管局長ですから当然のことながら覚えていらっしゃると思いますが、もう数々の法務委員会の審議、予算委員会の審議で、同一人性の確認については指紋の押捺が一回だけというのは意味がないんだということを、今まで入管局はあるいは法務省は答弁してきたんじゃないんでしょうか。答弁もそうですし、入管局の課長さんや担当者は、入管局が実質上お出しになっているんでしょう、この「外人登録」という雑誌、こういうものにも、たびたび「一度だけ押させることとすれば、登録における指紋制度はその意義を全く失い、外国人に対するいやがらせ以外の何ものでもなくなってしまう」というようなことまで、だから何回も期間を置いてとって、照合をしなければいけないんだということを法務省としては言ってきたわけですね。

 ところが、さあ中身を調べてみようということになったら、一九七〇年から法務省の方で同一人性の確認として、以前にとった指紋と現時点でといいますか、三年とか五年経過後にとった指紋の照合は一切していない、するような陣容になっていない、警察庁のようにコンピューターを入れているわけでもない、担当者もいない、専門家もいない、こういうことがはっきりしてきたわけでしょう。ということになると、定住外国人についても、同一人性の確認といったって、一回だけの指紋押捺をさせてどうやってやるのですか。あるいは、具体的に聞きますよ、法務省としては一年以上の外国人についてどういう同一人性の確認を行おうとするのか。市町村を除きますよ。まず、それをお答えください。

○山崎説明員 御説明いたします。

 法務省に保管しております指紋原紙は登録番号順に整理しておりまして、各自治体から法務省に対しまして指紋原紙の写し等送付要請がありましたときは、それを送付しておりますし、また同一人性確認のために関係機関から照会があった場合には、指紋原紙の写しを送付する等しまして利用しておるところでございます。

○仙谷委員 何か同じことをテープレコーダーで繰り返しておるようなことを言って、それは全く理由になっていない、あなた。

 法務省に具体的に聞きますけれども、指紋を鑑識照合できる専門家は今おるのですか。技官はおるのですか。

○山崎説明員 先生御指摘のとおり、現在、指紋は換値分類はしておりませんが、登録番号順に整理してございます。一指指紋というのは、その同一であるかどうかを確認するために指紋係という係が設けられておりまして、そこの係員が、照会があった場合には同一人かどうかという確認をしています。保管しております指紋を地方入国管理官署なり、入れかわり事案等があった場合で警察から照会があった場合には、指紋の写しをつくりまして送付するという作業で同一人性の確認に役立てておるわけでございます。

○仙谷委員 時間が来たからまた次の機会に譲りますが、今のは全然答えになっていないですよ。専門家がおるのかという問いに対して全然答えていない心鑑識照合できる専門家がおるのかおらないのかの答えになっていないのですよ。それから、法務省で照合しているかどうかという答えにも全くなっていないじゃないですか。そんないいかげんなことを相変わらず言っているようでは本当にこれは大変な問題になりますよ。

 いずれにしましても、時間が参りましたので、残余の質問は次の機会に譲ります。どうもありがとうございました。