1991年09月26日 証券及び金融問題に関する特別委員会

○衛藤(征)委員長代理 これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。

 次に、仙谷由人君。

 

○仙谷委員 鈴木会長から、いわばこの特別委員会のまとめになるようなお話をお伺いしましたのですが、そして、私が少々細かい話をさせていただくことになりますので恐縮なんでありますが、先ず大蔵大臣、一昨日この委員会で発表いただきました九一年三月期の損失補てんの件でございます。

 まだ余り詳しく検討してございませんのですが、そして、より詳しい資料もいただかなければならないというふうに考えているところでもあるわけですが、例えば日興証券岩崎副会長が証人としてこの委員会に出頭されて、九〇年の三月期に通達に反しておることがわかっていながら補てんをした、そして大蔵省から通達に反しておる、違反しておるということで厳しい御叱正を受けたということを証言をしておるわけでございます。ところが、中身を見てみますと、にもかかわらず日興証券、随分多額の補てんをしております。さらにかてて加えて、例えばトーメンに対する補てん

というのを、これを拝見いたしますと十三億一千百万円でございますが、二月八日、つまり九〇年の二月八日に確認書を入れておる。それから、にもかかわらず、いつなのか明確ではございませんがいその後にまたまた三年連続で十三億一千百万円の補てんを受けたことになっておるわけでございます。丸紅も同様に九〇年の三月期に続いてことしの三月期、十三億八千七百万円の補てんを受けている。これは昨年の三月期に営業特金を解約して残りを顧問づき特金に、投資顧問をつけた特金に移管をしたというふうに大蔵省から言われておりますが、にもかかわらず、投資顧問がついても次の期に十三億八千七百万という、こういう補てんを受けておる。先ほど同僚議員からも質問ございましたけれども、公立学校共済組合も、同様に確認書がありかつ顧問つきに移管をしておるにもかかわらず、連続して補てんが行われているというふうな事例も見られるわけでございます。

 通達が出て、証人喚問の証言などを聞いておりましても、九〇年の三月期については、株価の急激な下落、あるいは営業特金を早急に解消しなければならないという事情があって、やむを得ず通達違反の行為に及んだんだ、そういう弁解をされておって、多少の情状酌量の余地があるかなというふうにも思わないでもなかったわけでございますが、確約書を入れて顧問づきに移管をしながらこれらの大会社が補てんを受ける、日興証券が補てんをする、こういういわば通達を無視し、本当だとすれば大蔵省の厳しい御叱責もすべて無視し、大蔵省を歯牙にもかけないというふうなことが証券業界と事業会社の間で行われたということになるんではないかと思います。この点について、大蔵大臣、改めて御見解をいただきたいと存じます。

○橋本国務大臣 今回中間報告を本院にいたしますにつき説明を受けましたとき、今委員がお述べになりましたとおりの事態を知りまして、私自身、どういう言葉にしたらいいのかわかりませんけれども、形容しがたい思いがいたしました。そして、まさにいろいろな御批判はありながら今日まで日本の行政というものが、通達行政と言われるくらい、あるいは行政指導という言葉が海外にも知られるぐらいに、いわばお互いの信頼関係の上で行われてきた部分を持っておりますだけに、少なくとも証券業界についてその信頼関係は打ち砕かれた。しかも証券会社という企業の側から打ち砕かれたという事実をいや応なしに認識をさせられております。当然のことながら、そういう状況にあることを前提に、我々はこれから信頼回復へ向けての努力をしてまいるということになりましょう。この中間報告で終わるわけではありません。この特別検査の終了までにまださまざまな問題があるいは出てくるのかもしれません。今後に対し、我々としてはこうした現況というものを踏まえて対応を迫られているということであります。

 なお、一点補足をいたしたいと思いますが、今回の特別検査におきまして、証券会社側から我々が聞かされた、聞いたことによりまして申し上げますならば、証券会社側からは、三年三月期の損失補てんのほとんどは顧客の要望を受けやむを得ず行ったものであるという説明を受けております。相手側をまだ確認をいたしておりませんので、証券会社側からの聴取の内容としてこの場で申し上げておきたいと思います。

○仙谷委員 私は今大蔵大臣のお話をお伺いいたしまして、信頼関係に基づく行政指導でうまくいっていた時期があった、こういう趣旨のお話を伺ったわけですが、これは大蔵省と証券業界あるいは各証券会社という、いわばそういう人間と人間の関係に擬制するか、できるかのような、信頼関係で律することができない、そういう構造的な問題がこの問題にはあるんだというふうに思います。つまり、いわば合法的、反合法的、脱法的利益追求行為が許される、そういうものがそもそも市場経済である。極端な違法行為についてはいろいろな規制の仕方ということが必要なんでしょうが、やはり利益追求行為自体を認めるということになりますと、事業会社もしかりでございますし、それから最も浮利を追うことに走りがちな金融と証券の世界では、やはり信頼関係だけでは律することができない、そういう構造がこの金融、証券という営業体の中にあるんではないかというふうに思うわけでございます。せんだっての予算委員会の質疑の中でも、私が大蔵省の方にもいわばお願いをしましたといいますか要請をしました事柄の中に、やはり適宜こういう違法、私は違法行為だと思いますけれども、非違行為を発見した場合に、一般条項を使って、信頼関係に基づく指導ではなくして、処分をしてこなかったということに大きな原因があるのではないかと思います。

 ちょっと話題変わりますが、先ほど顧客の要望を受けてこの補てんをせざるを得なかったという説明が証券会社からあったというふうに私はお伺いをしたわけですが、岩崎副会長は本委員会の証言で、これは私がお伺いしたわけですが、伊藤忠との補てんが二千九百万でございましたか、非常に少ない、だから伊藤忠とは厳しい交渉があって、当時の副社長が席を立って帰ってきたという話があるではないかという話をしたわけですが、そのときは一切知らないとおっしゃっておったわけでございます。ところが、今度の補てん先一覧表を見ますと、伊藤忠商事十三億一千七百万というふうに、つまり平成二年の三月期までは補てんをしなかったけれども、翌年にその交渉がまとまって、つまり顧客の伊藤忠の強い要望を受け入れて補てんをしたということが明らかになっておるわけでございます。

 私は、この証券会社の首脳の証言態度あるいは今回の補てんというのを見ておりまして、もう大蔵省が信頼関係をまさに維持する必要は全くないんで、今回の事態を前提にひとつ証券取引法五十条を使って処分に臨んではいかがなものか、臨むべきである、処分をすべきであるというふうに考えますが、証券局長、いかがでございますか。

○松野(允)政府委員 確かに御指摘のように、今回の特別検査、私ども全力を挙げてこの実態の把握に努めているわけでございますか、その過程におきまして、御指摘のありましたように確認書をとっていながらその後に補てんが行われているというようなケースがあるわけでございます。そういうことを考えますと、確かに行政指導の限界といいますか、あるいはその信頼関係に基づく指導というものがもう十分効果を出さないというふうに考えざるを得ないところでございます。

 そういったこともございまして改正法をお願いをしているわけでございますが、この特別検査で把握いたしました損失補てんにつきまして現行法を適用するという観点に立ちましたときに、私ども、現行法の損失保証あるいは特別の利益提供というような行為がないかどうか、現在検査で調べているところでございます。その点について、必要に応じては補てん先に対しても事情聴取をして、五十条の適用ができないかどうかという点を非常に重要な問題として受けとめて検査を続行しているわけでございます。現在までのところは、五十条を適用するという判断をするに至っていないわけでございますけれども、私どもとしてはそういう問題意識を持って検査をしているということは御理解をいただきたいと思うわけでございます。

    〔衛藤(征)委員長代理退席、穂積委員長代理着席〕

 

○仙谷委員 この証券取引法五十条、健全性省令一条二号の問題でございますが、私はせんだっての予算委員会で、いわば法の解釈をねじ曲げるというふうな失礼なことも申し上げたわけですが、今大蔵大臣の御答弁にもございましたように、交渉の内容が、つまり補てんをする段階における証券会社と事業会社、補てんを受けた会社の交渉の内容がある程度明らかにされれば、証券取引法五十条、健全性省令一条二号を適用して行政処分をすることは何ら難しくない、そんなに難しいことではない。そしてその行政処分を公開審理で行うことによって、その積み重ねがまさに補てんの中身をつくることであるというふうに私は考えるわ

りでございます。例えば、このトーメン、丸紅、伊藤忠というふうな大商社、それからこれはたまたまでございますけれども野村と日立の例というのが大蔵省からも明らかにされまして、補てんの割と典型的な例として明らかにされております。これは日にちと金額が今明らかにされておるわけでございます。その前段階、直前の段階にいわば特金口座の残高がどういうふうに減少してきておったのか、プラスになっておったのか、その補てん直近の現在高の事実とそして交渉の中身がわかってくれば、これはそんなに難しくないと思うんですね。この間私が申し上げたことは、補てんというものが金銭で行われる限り、金銭で、現金で行われる場合には、これは証券取引法の問題は出てまいりません。出てこない。しかし、補てんを有価証券取引の形をとって行う場合は、その有価証券取引をする、つまり日立と野村の例で言いますと、ワラント債の売買を、一日で売って買う、買って売るという行為を行う約束はどこかに成立をしておるわけでございます。そうしなければ、売って買うという履行行為がないわけでございます。契約が成立している以上、これは局長も学生時代に我妻さんの契約総論で習ったと思いますけれども、申し込みと申し込みの承諾というのが必ずあるわけでございます。そうしないと意思表示は合致しないわけであります。申し込みがある以上、申し込みの誘引というのもあるわけであります。申し込みの誘引がある。つまり野村の方から日立に、この穴のあいた二十一億円をワラントを使ってひとつ埋めさせてください、ワラントを買って売ってください、いかがでしょうかという誘引、つまり勧誘行為があるはずであります。日立がそうしましょうという申し込みをする、野村がその申し込みに対して承諾して初めてこの有価証券取引行為の契約が成立するわけであります。そこから、一たん信託銀行からお金を払って、払ったことにして、そうですね、信託銀行の口座にあるお金を払ったことにしてワラントが一たん信託口座に入って、もう一遍出ていく、あるいはその反対かもわかりませんけれども、そういう契約の履行行為が行われる。契約というのは、申し込みの誘引から始まってそういう順序ていくんじゃないですか。利益提供行為があるということは必ず誘引行為があるんですよ。誘引行為というのは勧誘行為じゃないんですか。そうでしょう。

 だから、例えば今大蔵省がお知りの事実の中で、要求があってもなくてもいいんですよ、一番最初打診とかそれから、何といいますか、要望があってもいいと思いますね。その場合にこういう有価証券取引行為で穴を埋めましょう、あるいは利益を提供しましょうという話し合いがあっなかなかったか、それを大蔵省が見つけてくるかどうかが、まさに勧誘行為があっなかなかったかのそういう事実認定の問題じゃないですか。私はそれはそんなに難しい話じゃないと思うのです。法律論として誘引行為のない申し込みもないし、申し込みのない承諾もない。契約はそうなると成立しないわけですから。これだって契約ですからね。そうでしょう。いかがですか。そういう観点から、事実問題として今まで大蔵省が典型的事例として、昨日も公明党の日笠委員やあるいは私どもに対する回答として、損失補てん事例四社、補てん額二十億円以上の事例ということで典型的な多額の極めて外形的にわかりやすい行為、これをお示しになっていらっしゃいます。そしてまた、おととい発表された補てんの中でも典型的な事例があるはずであります。そういう典型的な事例についてどういうネゴシエーションが行われたか、交渉が行われたか、そしてそのときに要するに証券会社の方で有価証券取引という形をとって補てんをするということを持ちかけた、提案した、誘った、こういう事実があるかないか、今把握しておる事例というのはないんでしょうか。

○松野(允)政府委員 今詳細に法律的な問題について御指摘がございました。私どもも率直に申し上げまして、今のようなお考えも我々としても中で議論をしている過程で、あるわけでございます。ただ、私どもがこれは完全に確定的に判断をしてしまったということではございません。ただ、この証取法五十条及びそれに基づきます健全性省令などで禁止をしております損失補てんを約しての勧誘あるいは特別の利益提供を約しての勧誘という行為の禁止の考え方というものにつきましては、これはその投資家に対してそういうことをすることによって投資判断に影響を与える、それがひいては証券市場全体の正常な機能発揮を妨げるというようなことでこういう勧誘行為を禁止しているというふうに考えられるわけでございます。

 そういう観点から申し上げますと、今御指摘のありましたように、確かに個々の補てんのための有価証券取引行為というのは、それは行為が行われたわけですから契約であることには間違いがないわけでございまして、その契約の締結の過程においてその誘引といいますか、申し込みといいますか、これはあるのは当然のことでございます。ただ、それをとらえて今私が申し上げたようなこの五十条あるいは健全性省令で禁止している勧誘行為の趣旨というものを曲げることになるのかどうか、つまりそれに抵触するのかどうかというところについての議論が私どもの中でもまだ続いているわけでございまして、これは繰り返しになって恐縮でございますが、証取法が禁止しているという、こういう勧誘行為を禁止しているというのは、あくまでも証券市場全体に対してそれが非常に悪い影響、悪影響を与え、市場の機能をゆがめるということにあるわけでございます。損失補てん取引自体は、これは例えばワラントを安く売って高く買い戻すという単発行為だけをとらえてみますと、そういう行為が果たしてここで禁止している勧誘行為というものに該当するのかどうかという点について私どもはいろいろと議論をしておりますが、まだ今の段階でそれが該当するという判断ができないというのが率直なところでございます。

○仙谷委員 歴史的に非常に法解釈と法の運用に慎重でいらっしゃると、今のお話をお伺いしておりまして感じました。私は最高裁判所ほど権威がございませんけれども、この五十条の構成要件でそんなに何を逡巡する必要があるのか。今局長がおっしゃったように、いわゆる市場の価格形成をゆがめ、市場の公正さを害し、市場の信頼性を損なう、そういう有価証券取引行為ではないかと思います。

 つまり、それじゃ今のようなスタイルを、補てんじゃなくて、ある証券マンが私のところへ来て、きょう二百億円用意してくれ、そしたらワラント債を売って買って必ず二十億円あなたの懐へ余分に入りますという話を持ちかけてきた場合にはどうなんですか、これは。証券取引法五十条、健全性省令一条二号のいわゆる利益提供を約しての勧誘行為に当たらないのですか。売って買ってする、買って売ってする、その二回の取引を繰り返すことによってそういう有価証券取引を今から行いましょう、必ず二十億円そこに利益が落ちますよということを言った場合には、これは勧誘行為にならないのですか。その点だけもう一度お聞かせください。

○松野(允)政府委員 今御指摘のように、ただ単純に何の、例えば損失補てんという目的もなくただ通常といいますか、一般の投資家に対して外務員がもしそういう行為が、これはなかなか外務員限りでそういう行為が可能かどうかという問題がもともとあるわけでございますけれども、もしそういうようなことをやるということになりますと、それはやはり五十条に違反する可能性が高いのではないかという感じはいたします。

 

○仙谷委員 そうしますと、一般的な場合であると特別の利益提供を約した勧誘行為ということにもなると今おっしゃいましたけれども、補てん目的であればなお悪いじゃないですか、悪性が強いじゃないですか。それを構成要件の、つまり五十条に該当する可能性がないという前提で処分手続に入ることも逡巡されるということでは、これは行革審の答申どおり行政処分手続を大蔵省の権限の中にとどめるというふうなことになることが果

たしていいのかどうなのかという重大な疑問が出てくるのではないんでしょうか。

 私は今の時点で、これだけ、顔に泥を塗られたなんという言い方をすると下品だから余り言いたくないんだけれども、この今回の補てんだけは大蔵省さんは内心ふつふつと怒っていると思いますけれども、そういう感情は抜きにして、行政的な手続としてけじめをつけていくんだ、そのことを始めない限り、法律ができないとそんなことできませんなんということを言っているようでは、市場に対する信頼も返ってこないと思うのですね。ひとつその点、鋭意、もう一遍民法の理論から勉強していただければすぐわかること。でございますので、こんなことは、大胆にならなくても常識的な法律判断でひとつ行政処分手続を進めていただきたいと存じます。

 大蔵大臣、今の点いかがですか。

○橋本国務大臣 先刻来御論議をいただいております問題点もじっくり拝聴させていただきました。いずれにいたしましても、今中間報告をいたした段階でその推移を見通すことには問題があろうと思います。いずれにいたしましても、その結果を受けて厳正な処分というものは当然行わなければなりません。御注意は十分にとどめておきたいと思います。

○仙谷委員 今の点に、その勧誘目的の問題でございますが、証券局長、この営業特金とか特別金銭信託と言われておるものは、法律形式としては顧客と信託銀行の契約書が基本なんですね。運用指図を法律上は委託者が信託銀行に出す、信託銀行は証券会社に注文をする、こういうことで証券取引が行われるという、こういう格好になっておるのでしょう。そうですね。本来は委託者が運用指図をしなければいけないんだけれども、どうも投資顧問のついてない場合は証券会社が、実質的な関係は証券会社とこの委託者の間の方が関係が深くて、そこのあうんの呼吸なのか、あるいは一任勘定的取引なのか、ともかくといたしまして、証券会社が勝手にやった場合もあるし一々報告をしている場合もあるし、あるいは委託者の意向余聞いてからやる場合もある。こういういろいろなパターンあると思いますけれども、にもかかわらず証券会社が買う場合に、買ったり売ったり取引をする場合には、委託者からは必ず運用指図書というのが出るんじゃないのですか。いかがですか、

○松野(允)政府委員 御指摘のように、営業特金の仕組みからいいますと、注文を出すのは信託銀行の名前で出るわけでございますから、委託者は信託銀行に注文を出すように指図するということになります。

○仙谷委員 そうしますと、この補てんの有価評券取引自体も運用指図書が委託者から信託銀行に出されて、信託銀行から証券会社に注文書が出される、こういうことになるんじゃないですか。

○松野(允)政府委員 そのとおりでございます。

○仙谷委員 そうすると、実質上、事業会社といいますか委託者の方は、その取引が行われたことを知らないとか、補てんが行われたことの認識ないなんということをおっしゃるわけだけれども、

      式法律上は、法形式上は、あるいは書類上はそんな言い逃れは絶対にできない、そういう建前に、つまり、信託契約書と協定書というのがあるようでございますが、協定書ですね。三者契約の場合もあるようですし二者の契約の場合もあるようですが、知らないというようなことは絶対に言えない仕組みになっている、つまり認識が必ずあるという建前になっておるのじゃないですか。

○松野(允)政府委員 個々の取引、これは損失補てんの取引も含めまして、当然委託者には連絡が行きますから、その取引があったということを認識しないということはないと思います。ただ、その取引が非常に異常なものであって明らかに形式的に補てんのための異常な取引だというふうに認められるものもございますけれども、中には、例えば先物を使ったりいたしますと、その取引だけを見た場合に、果たして、市場で執行されておりますから、異常な取引だということが認識できるかどうかという問題、認識できないというケースもあろうかと思うわけです。取引自体があったということの認識は、それは当然できるというふうに考えます。

○仙谷委員 私は、この補てん問題をいろいろ見ておりまして、証券会社もなかなかのものであるけれども、要求をする方も、あるいは補てんということで利回り保証的な金額が口座に落ちておることを当たり前とするこの体質ですね、事業会社も大変、モラルというよりも、何というのですかね、利潤を得ることについての緊張感が欠けておるのじゃないか、そんな感じをいたします。

 それで、この認識の問題それから要求の問題というのはまさに今度法改正の問題につながってきておるわけでございますがい先ほどから執拗に行政処分の問題を申し上げておるのは、実は私は、余りこの種の補てん行為を刑罰をもって予防することは実効性を期しがたいのではないかという論理に立っておるからなんであります。

 ちょっと細かくなりますけれども、この改正案でお伺いをしていくわけですが、五十条の一項の方、ここの、「してはならない。」という禁止される行為が書かれてあるわけですが、その行為の主体は「証券会社又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。」という記載の仕方になっております。五十条の二は「証券会社は、次に掲げる行為をしてはならない。」というふうになっております。つまり、「役員若しくは使用人はこというのが抜けておるわけでございます。何か意味があるのでございましょうか。

○松野(允)政府委員 これは、役職員の場合は両罰規定でその適用ができるという考え方でそういう規定にしてあるわけでございます。

○仙谷委員 両罰規定にするということと自然人の実行行為者を書かないということは全く別の次元の話なのでありますが、つまり、普通の両罰規定というのは、自然人の行為があって、それが会社の、法人の行為というふうにみなされる場合に、自然人を罰すると同時に法人も刑罰を科す。つまり、法人は犯罪行為能力がないんだという前提で従来の刑法理論は考えられておったわけでありまして、したがって、法人の禁止行為だけ書いて自然人のことが両罰規定という規定の仕方は、無理ではないと思いますけれども、甚だ珍しいのではないかというふうに感じますが、法務省の方、いかがでございますか。

○井嶋政府委員 お答えいたします。

 この改正法案の五十条の二は「証券会社はこと書いてございまして、これは犯罪の主体でございます。いわゆる身分犯でございますが、証券会社は企業としてしてはいけないという規定を置いておりまして、それを処罰する場合には、当然、従業者、その他使用人、代理人が事実行為は行うわけでございますから、それを罰する規定は百九十九条でございまして、先ほど証券局長、両罰規定だと述べられましたが、それはちょっと間違いじゃないかと私は思います。

 百九十九条には、ここに書いてございますとおり、次に掲げる違反があった場合において、その行為をした証券会社の従業者は云々、こういう書き方にしてありまして、それとあわせまして、従業者が処罰できる。それから同時に、法人そのものを、証券会社そのものを処罰するにつきましては、二百七条の両罰規定で処罰をする、こういう関係になるわけであります。

 

○仙谷委員 それで多少整理されてきたわけでございますが、そういたしますと、この証券会社の行為というのはどういう要件が必要でございますか。つまり、取締役会の意思決定というふうなものが必要なのか、そうじゃないのか。もっと反対から言いますと、外務員が損失補てん行為をする、いや、あれは外務員個人が単独でやったんだ。支店長がやる、ああ、あれはあの支店だけだ、あれは支店長の行為だ、こういうものが証券会社の行為というふうにみなされるわけでございましょうか。それとも、それは本五十条の二、つまり証券会社の行為が前提になっておるわけですからそこではくくれないんだ、カバーできないんだということなんでしょうか。

○井嶋政府委員 違反の形態といたしまして、いわゆる会社ぐるみと申しますか、会社全体として例えば常務会のようなところでお決めになったというような形で行われるケースがあるわけでありますが、そういったケース以外に、いわゆる支店長限りで支店だけで行うということもありましょうし、今委員御指揮のような外務員だけが行うということもあるわけでありますが、いずれにいたしましても、罰則の適用上は、そういった行為が業務として行われる、証券会社の業務として行われるという形がとられた場合には、支店限りでありましてもそれが証券会社の業務であると認定できれば、それは証券会社の行為になります。また、外務員が顧客に補てん行為をいたしましても、それが外務員の個人の行為ではなくて証券会社の業務として行われるということになれば、これまた五十条の二の証券会社の行為というふうに当たるわけでございます。そういった場合にもちろん、それから常務会といった形で行われれば、それが全部共謀者になって会社の行為として行われるということになるわけでありましょうけれども、いずれにいたしましても、要するに証券会社の業務として行われるというところでとらえることができるわけでありますから、それぞれの段階において行われた実態をよく調査いたしまして、そういったことになるかどうかということが決め手になるということになるわけであります。

○仙谷委員 まさにこの種の、普通の取引行為、経済行為を犯罪構成要件にする場合の難しさはそこにあると思うのですね。そうですね。

 つまり、じゃ、富士銀行の中村課長という方がああいうことをやった、あれは個人の行為だ、こういうことになっていますね。今局長のおっしゃった法人の業務として行われたかどうかというのが、まさに業務上過失の業務じゃなくて、反復すればいいだけという話じゃなくて、それが野村証券なら野村証券という会社の営業行為の一環であるという実質性がないと、会社総体を罰したり、これ、行政処分にも連動すると思いますので、会社総体が犯罪の主体になるというふうなことはあり得てはならないということになると思うのですね。

 したがいまして、業務であるかないか、そこのメルクマールは何なのかというのが、もし法廷へ出た場合でも、行政処分をする際にも、法律屋が出てくれば必ず問題にして、争点になり得る、大争点になり得る場所だと思うのですよ。これはやはり「証券会社はこという法人の行為が前提である、法人の行為を規制するということになっているからそうなるのではないかと思いますが、何か今局長がお手をお挙げになりましたけれども、メルクマールとして二、三でもございますでしょうか。

○井嶋政府委員 もちろん会社の行為、つまり会社の業務と認定し得るためには、もちろんいろいろな要素が必要であることは申すまでもないわけでありますが、例えばその補てん行為を行った行為者の地位あるいは会社の中でどういう権限になっているか、あるいはある程度任されているのかといったような、そういった地位あるいは権限関係、それからその他そういう行為を行いました動機でございますとか、あるいはその態様、それからいわゆる原資と申しますか、その損失が会社の損失になる計算で行われているのかどうかとか、いろいろ判定する要素は実務的にはいろいろありまして、企業の中の行為がそういった会社の犯罪なのかというような形で問われる事件はたくさんあるわけでございますが、そういったところに通常あらわれてくるメルクマールが、その会社の行為がどうか、業務がどうかということを判定するための要素になるわけでありますが、通常は地位、権限、それからどこまで認められているかとか、あるいは外務員にもそこまでは認められているのかどうかとかいったようなことなどが判断の要素になると思います。

○仙谷委員 証券局長、今のような法務省の刑事局長の答弁で、大蔵省の予定されておる規制対象というのは、そのとおりでよろしいんですか。

○松野(允)政府委員 私どもも基本的に今法務省からの御説明と同じ考え方でございます。

○仙谷委員 そうしますと、今度の野村証券の場合、専務会で決定した。それに基づいて本部長、部長とおりていき、そして、各支店の中で顧客相当者が交渉に行って、そして話し合いをまとめて、だろうと思うのですよ、で、こういう補てん行為に及んだ、こういうことになりますね。この場合には、そうすると、被疑対象者は、末端の事業会社に交渉をした人、担当者から部課長から全部そのラインを上がって専務会まで全部被疑者になるんですか。

○井嶋政府委員 野村証券のケースというふうに限定されますと答えにくうございますから、ケーススタディーとして一般論で申し上げますが、今お話しのようなことが証拠上認められるようになれば恐らく共謀、つまり共犯規定でくくれるものは、全部共犯者という形になるんだろうと思います。

○仙谷委員 証券局長、今の刑事局長のお話を聞きまして、果たして??いわば何回も通達が出されても取引先との関係でやらざるを得ないということで補てんをやった証券業界ですよね。にもかかわらず、これは経済行為を装っているわけですね。それから、商取引上の駆け引きと言えば言えないこともないかもわからない。あるいは国税庁的認定でいくと交際だと、交際費だと。こういう話になるわけでございまして、その種の経済行為について、経済行為的行為、あるいは企業の非違行為について、野村証券のケーススタディーでいきますと、多分百人以上の被疑者が出ますね、これ。日興証券だってもっと出るかもわからない。そういう規制の仕方が、捜査官憲が、司法官憲が手を入れるというようなことが果たしていいんだろうか、妥当性があるんだろうか、国民の法感情に沿うんだろうかというのが私の一つの疑問なんですよ。弁護士をやっていたから余り犯罪人をつくりたくないという観点で言うんじゃないんですよ。

 そもそもこの種の行為に、そもそもは古典的な刑法理論の、自然人の行為を罰するもので規制しようということがなじむのかどうなのか、こういうふうに私、感じるんですね。その点、刑事局長、どうですか。

○井嶋政府委員 今回の証取法の場合のみならず、いろいろ経済罰則その他におきまして、いわゆる企業犯罪と言われる、企業を主体とする刑事罰則があるわけでございまして、そういったものはほとんど今申しましたような中身で捜査上運用されるわけでありまして、違反者は従業者でありましょうけれども、それと、どの辺、どの程度までの人が共謀なのかということは常に企業の場合には問題になるわけでございます。

 今回の証取法の改正によって考えております形というのは、従来と全く違ったことを考えておるわけでございませんで、全く同じことでございます。ただ、今おっしゃった中で気になりましたけれども、今回は新たにこの改正法が通りますと補てん自体が禁止されるわけでございますから、そういったものが常務会の決議などで行われるというようなケースはまず考えられません。そういう意味におきまして、あらゆる経済罰則その他、あるいは公害罰則でもそうでございますが、企業そのものを犯罪として捜査するケースというのはたくさんあるわけでございますから、そういったものと何ら変わらない手法で、考え方で行うものであり、また、今回の改正も全く変わらない考え方でつくっておるということを申し上げておきたいと思います。

    〔穂積委員長代理退席、委員長着席〕

 

○仙谷委員 禁止行為についての共謀があり得ないだろう、それをやれば共同謀議だと、こういう話になるわけでございますが、ただ、やはり共同謀議という観念と取締役会、通常の姿を考えてみますと、それほどぴったりくるものでもない。

 それから、その取締役会の決定を受けて動く従業員の、補てんに走る従業員の行為というのを考えてみましても、完全な道具でもない。しかし、

相当程度意思決定、みずからの意思決定を制約されておるという部分がございますね。で、極めで悪性のある行為の指令をなぜ拒否しなかったのかということ、言えるかもわかりませんけれども、悪性の程度からして、その第一線の従業員を果たしてそういう格好で逮捕したりすることがふさわしいのか、あるいは取締役会に出席しておっただけで、物も言わずにただ反対しなかったということで共謀が成立するのかというようないろいろな問題が出てくると思うのですね。

 私は全く刑罰が要らないと言っているのではありません。それは極めて悪質な、この種の中でも悪質な行為というのも散見されるでしょう。例えばこれだけ通達を重ねられてもまだやっておる、念書までとりながら、確約書までとりながらまだやっておるというようなことだってあるわけですから。したがいまして、全然必要がないというふうには言いませんけれども、ただこの種の非違行為については、特に企業の行為というものを観念する以上、別のシステムが必要なんではないだろうかというふうに考えるわけでございます。

 そこで、次にお伺いしたいのは、今度の、先ほど大蔵大臣は、おととい発表されました補てんについては事業会社の要望があって、それを受けて行ったんだというお話でございましたけれども、それ以前の九〇年の三月期までの損失補てんについては認識がないとかそういう話でございましたね。そういう会社が、我々は報道機関から聞く限りでございますけれども多いわけですね。そして、どういう行為が要求と言えるかということも次に問題になると思うんですね。証券局長、この要求をしたものに、「要求による場合に限る。」という五十条の二の二項の各号、この構成要件に該当するようなそういう事実を今度のこの補てん問題での調査で何か把握していらっしゃるところはございますでしょうか。

○松野(允)政府委員 検査の過程で、今回中間報告でお示しいたしました補てんのほとんどは、先ほど大臣から申し上げましたように顧客の要請、要望があった、その中身は要するに運用改善要望だ、こういうふうなことでございます。その中で私ども、幾つかについては補てん先についても反面的に調査をしたわけでございます。中には要望を認めている補てん先もいるわけでございまして、そういうふうなケースの場合には、これはケース・バイ・ケースで一概には申し上げられませんけれども、要望の中身にもよりますが、「要求」に該当するというようなことも可能性としてはあるんではないかというふうに私どもは考えるわけでございます。

○仙谷委員 刑事局長、今、運用改善要望というふうな話がございましたですけれども、運用改善要望と「要求」というのは、これはちょっと直ちに同様には考えられないと思うんですね。つまり、補てんを要求する行為じゃないと、運用改善要望あたりでは「要求」というふうな構成要件該当性があるというふうには言えないんじゃなかろうか、そういうふうに私今感じたのでございますが、その点いかがでございますか。

○井嶋政府委員 この改正法案におきまして「要求」という場合には、当然その損失の補てんを求めるということを中身とする要求行為、意思表示でなければなりません。したがいまして、運用を改善してくれといったことが補てんの「要求」に当たるのかどうかということが問題になるわけでありまして、個々のケースごとに考えるわけでありますけれども、他の罰則にも要求罪は幾つもございますが、もう委員も御案内のとおりまさにそのそれぞれの罰則の本質を包含した要求行為でなければならないということであろうと思います。

○仙谷委員 当初大蔵原案というものがあって、それは、損失補てんの目的をもってというふうな文言が書かれておったり、それから受け手の方、顧客の方は、要求したものに限るというのはもちろんなくて、その情を知ってといいますか、損失補てん等の目的をもってされることを知りながら行う場合というふうに書かれておったわけでございます。御存じのように自民党の方でお伺いを立てる段階で、この要求したものに限るというふうになったわけでありまして、私は今度の事実関係を見ておりまして、これはやっぱり「要求」という概念といいますか構成要件を入れてきたために、まあ顧客の方を刑罰をもって制裁した方がいいのかどうなのかという問題はさておきまして、にもかかわらず刑罰が科されないと、昨日の答弁にもございましたように付加刑としての没収ができない。つまり、補てんを受けた人がただ取りになってしまうということになるわけでありまして、この点こそまさに経済事犯としてのこれをどうコントロールするかについて、何といいますか、国民の納得性のない結果に陥るのではないだろうかと思います。やはりこの問題につきましては、刑罰を科すよりもこの補てんという行為、これを禁止すると同時に、補てんを受けたその金額が必ず国庫にでも入る、つまり課徴金というシステムをつくる、あるいは補てんをした方にもそのものに加えて制裁金というふうな規定でもつくる、こういう経済罰が必要なんだろうと思います。その方が国民の法感情にも合うと思いますし、そしてそもそも経済行為を規律する仕組みとしてもふさわしい。先ほどのお話を聞いておりましても会社員の、まあサラリーマンの重役なのかなんか知りませんけれども、重役さんを初め個々の従業員が百人にも及んで取り調べを受けて被疑者扱いをされて、東京拘置所にも入ってこなければいけないなんということになりますと、これは大問題だというのが私の感想なのであります。むしろ経済事犯として適正な行政処分と、それと経済的な罰則を加えることの方が望ましい、そういう新たなシステムをつくるべきであるというふうに思います。

 で、今の大蔵省のこの証券取引法と、それと大蔵省組織令ですか、こういう制度のもとでも行政処分手続をもうちょっと整備すれば行政処分できる。そのうちの行政処分の一つの内容として課徴金の納付命令という規定をつくれば、課徴金を課すこともできると思います。そういう方向に歩み出すおつもりがあるかないかだけ、簡単で結構です、大蔵大臣もしくは証券局長お答えください。

○橋本国務大臣 私は今の委員の御指摘、一つの考え方であるということは率直に認めたいと思います。ただ、今回の損失補てんにつきましては、先ほど来御答弁を申し上げておりますように、証券会社に対する罰則の適用によりまして相当に強力な抑制効果が期待できる、また損失補てんを要求した顧客に対しまして没収、追徴規定を設けるということから、再発防止策としての実効性は十分担保されていると判断をいたしております。

 しかし、確かに今委員が御指摘になりましたような考え方というものは一つの考え方として私どもとしても拝聴すべきものと思いますし、今後において検討をしていくべき課題の一つである、そのように思います。

 

○仙谷委員 この補てん問題だけが原因ではないと思いますが、今郵便貯金がこの一年間で十兆円ぐらい増加しておるんですね。で、投資信託はそれに見合う分ということはないでしょうけれども、大幅にその設定率が、設定額が減少しておる。つまり国民が、庶民が証券市場を見放しつつあるんではないだろうか、嫌気が差してもう投資信託も嫌だということを感じ始めているんではないか、そういうふうに私は最近認識をしておるわけでございます。しかし、個人投資家がいなくなったら、法人の会社間の株式の持ち合いだけで証券市場が成立するということは、これまたないんではなかろうかと私は思います。

 そして、今私が持っておりますパンフレットでこういうことを書いてあるのですね。アメリカの大恐慌前の証券市場が何でこんなに崩壊したか。一つは、開放経済体制の不手際が証券界に集約的にあらわれた。これはアメリカ連邦準備銀行というのですか、連銀が行き当たりばったりの公定歩合の設定をして、つまり、イギリスやドイツやフランスの懇請によって低金利政策をとった。投機化しつつある証券市場に油を注いだ。企業収益と

株価のギャップが非常に出てきた。さらに、発行会社は実質的価値の裏づけのない、つまり設備投資と関係のない大量の証券を発行した。発行会社の方、つまり事業会社でございますが、発行会社が株主保護憲識に欠如しておった。それから、証券界がルーズな金融膨張を起こした。つまり、お金が証券界にどんどん流れ込んできた。さらには、行き過ぎた証券の民主化と証券知識の未発達があった。これがアメリカの証券市場崩壊の外部要因だったということが書かれております。

 さらに、証券界の内部に潜む原因としては、安易な引受業務、それから投資信託の急膨張と株価のつり上げが行われた。株価操縦、安定操作、はめ込み、相場操縦が横行した。さらには、証券界の経営が膨張をした。これがバブルを生んでアメリカの証券市場崩壊、一九二九年の大恐慌につながったということを書いてあるパンフレットを私は読んでおります。

 それで、今私が申し上げた骨子は、いわばそのまま当てはまるとは言えないかもわかりませんが、非常に共通する部分が多い。そうですね。低金利政策あるいは株価収益率の問題、あるいはエクイティーファイナンスで設備投資とは関係のない発行、あるいは発行会社が株主保護憲識、つまり配当性向のことなどほとんど考慮しない。あるいは最近の事例では、ワラント債の問題というのがあって、これはワラント債のワラントの部分だけを買った人が紙くず同然になって持たなければならなくなるかもわからない、こんな問題があるわけでございます。そして、証券知識が未発達。ワラント問題などは、ワラントというものがどういうものであってどういうリスクがあるかということが大衆にも知識としてもわかってない。証券会社もそれをわからせようとしない。こんなことが日本にもあって、そして今の証券市場の低迷につながっておるのではないか、こんなふうに考えますが、おいでいただいておりますので、長岡理事長、ひとつお答えいただけますでしょうか。

○長岡参考人 お答えを申し上げます。

 私からお答えすべき問題であるかどうかはよくわかりませんけれども、しかし、そういったような傾向がやはり日本の現状に一部あったということは申し上げてよろしいのではないかというふうに考えております。

○仙谷委員 実は私が今申し上げましたパンフレットというのは、事もあろうに野村証券の総合企画室が昭和四十年の七月につくったパンフレットでございます。「アメリカの証券市場はいかにして再建されたか」という本でございます。御存じの方は御存じだと思いますが、つまり四十年の証券不況において、野村証券が何とかして日本の証券市場を活性化しなければいかぬということで、こういうことはやってはならないんだよという戒めのためだったと思うのですが、つくったのがこの「アメリカの証券市場はいかにして再建されたか」というパンフレットだったわけでございます。

 対策としまして、営業態度がどう変わったか、あるいは、それから御承知のようにアメリカではSECがつくられたというふうなことが書かれておるわけでございますが、大蔵大臣、ここで、先ほど行革審の鈴木会長もおっしゃいましたけれども、証券業界自身が、投資勧誘態度あるいはそのための教育、それからそもそもの基本的な視点として、大衆投資家を、毛を刈り取られる小羊ではなくて金の卵を生むガチョウである、その健康を損なってはならないという前提で大衆投資家を育てるのだというふうな方向に動く、そして、そのための社員トレーニングと報酬のシステムをつくるということで約十年ぐらいかかってアメリカの証券市場を再建した、こういうことを言われておるのですね。先ほど行革審の会長も、業界自身の、あるいは会社自身の問題、あるいは証券業協会、証券取引所の問題というのをおっしゃったわけでございますが、もちろん検査機関あるいはルール問題のほかに、この点についてはもう今後は大蔵省の方から指導なんかすべきじゃないと思いますけれども、大蔵大臣の御意見として、証券業界あるいは自主規制機関ですね、どういう態度であるべきだとお考えになりますか。

○橋本国務大臣 本来、一番願わしい姿は、取引所であれ証券業協会であれ、自主規制機能を持つ団体というものがしっかりと根づき、そしてその自主規制団体そのものが証券業界を監視監督し、あるいはその市場を監視監督する、行政は、その取引所であれ証券業協会であれ、自主規制団体がその規制機能を十分に発揮しているかどうかをチェックする、そして、それで足らない場合において個別の業者に対する指導に入る、あるいは取引所の、市場のメカニズムに手を入れる、それが私は一番願わしい姿だと思います。

 ただ、先般来の御論議の中におきましても、ある委員からは、取引所あるいは証券業協会に対して積極的にそのルールづくりまで大蔵省が入れという御指示をなさる、ある委員からは、触れるべきではないという御指摘がある、双方の御質問を私は受けております。基本的に私は、業界の自主ルールというものは自主的におつくりをいただくべきものでありますし、行政の立場としてはそれで足れりとするか、あるいは不足であると見るか、その判断は我々はいたすわけでありますけれども、その作成過程に介入をするあるいは指導を行う、それは決して望ましいものではない、基本的に私はそう考えております。

 

○仙谷委員 私も、基本的には今大蔵大臣がお答えになった御見解と同様の見解を持っておるわけですが、ただ、大蔵省が今までの行政、取引法の適用問題とか行政指導の問題というふうなことも、今度の補てん問題で真摯に反省をしていただくと同時に、やはり地価の問題と同様に、バブルにどうも、資金の流れをコントロールするという観点から、あるいは資金が株の方向に向かうという観点から、大蔵省当局も、NTTあるいは国債発行、ここでやっぱり市場設置者としての大蔵省と発行主体の大蔵省というのが矛盾をする局面があるんではないだろうかという懸念を私は持っておるわけでございます。

 例えば昨日堀先生の議論の中でございました簿価分離の問題。簿価分離という法人税基本通達があって、その上に今度は一九八七年のブラックマンデーがあってどうも相場がおかしいぞというときに、八八年の冒頭に、これは大蔵省は私のところでしたんではないというふうにおっしゃっておりますけれども、新聞報道では、大蔵省が低価法の採用を延期するという方針を固めた、で、改めて公認会計士協会がその旨を特定金銭信託及び指定金外信託の会計処理ということで出す、そうするとこの特金あるいは指定金外信託の中の株が会計処理上うまくいくということで市場に流れ出してこないものだから、あるいは企業によって買い進まれるので株価がまたまた上がり始める。これが一九八八年の事例ですね。一つ一つの政策がどうも証券業界に対する保護育成というよりも、何か活性化するためにむしろ手をかすというふうなことが従来あったんではなかろうか、そんな感じすらしておるわけでございます。

 したがいまして、これから新たな制度が次の国会で論議されることになろうかと思いますけれども、ここは、大蔵省が証券市場という非常に公共性の強い、そして唯一の設置者であるわけでございますので、これができるのは大蔵省だけでございますので、どうかひとつ、公正な市場をつくるため、そこを基本的観点から外れないようにしていただきたいと考えるわけでございます。

 そうして、最後に若干の点をつけ加えておきたいと思います。

 この国会でも問題になりましたけれども仮名取引というようなもの、これはもう当然禁止されなければならないわけでございますけれども、この仮名取引というふうなものについて、証券局長、法律で規制するというお考えはございませんでしょうか。

○松野(允)政府委員 仮名取引につきましては、確かに累次通達を出し、本人確認義務づけをしているわけでございますが、完全に徹底がされてい

ないという事実がありまして、私どももそれを大変重く受けとめているわけでございます。証券市場に対する信頼感ということからいいましても、仮名取引あるいは借名取引というようなものは排除しなきゃいけないというふうに思うわけでございます。現在、私どもたくさん出しております通達を見直しまして、特に証券会社に対する指導通達につきましては、これは透明性を確保するという観点から、法令化するものは法令化する、あるいは自主規制団体のルールにゆだねるものはゆだねるという仕分け作業をしている最中でございます。仮名取引の問題につきましても、今の御指摘を踏まえまして、私ども、その仕分け作業の中で十分検討して実効の上がる方法を考えていきたいというふうに思っております。

○仙谷委員 ほとんど時間がないんでございますが、せっかく来ていただきました。どうも御苦労さんでございます。関専務理事と長岡理事長に一言だけお伺いしておきたいと思います。

 この業協会及び取引所の方て要するに苦情処理機関というふうなものを、現時点でもあると言われればそうでございましょうが、これをもうちょっと社会化された、つまり、そこの例えば調停担当をする委員とかなんとかを第三者を入れる。つまり、業界以外の人を入れる、あるいは法律家を入れる、会計士を入れるというふうな、そういう、何というんですか、権威のある機能を持った委員会にするというお考えはございませんでしょうか。簡単で結構です。

○長岡参考人 調停機関につきましては、恐らく証券業協会の方からお答えがあると思います。

 東証といたしましては、曇同意思決定機関である理事会に公益の理事をふやす、あるいは内部の規律委員会にも公益委員をふやしまして会員の規律を厳正に維持していくということに努力してまいりたいと考えております。

○関参考人 現在、証券業協会の中に調停委員会等の制度は設けてございますが、今後こういう事態を踏まえまして、また、今度の法律に関係いたしますところですと、証券事故に伴う顧客に対する金銭の支払いと損失補てんを明確に区別をしなければならないという新しい問題も出ておりますので、そういった制度の整備に当たっていきたいと思っております。

○仙谷委員 それでは、終わります。

○大野委員長 これにて仙谷君の質疑は終了いたしました。