1991年03月12日 本会議

○議長(櫻内義雄君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。仙谷由人君。

    〔仙谷由人君登壇〕

○仙谷由人君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました地価税法案につきまして、この法案が不十分な改革にとどまっているものの、各党の意見に配慮しつつ、一定の修正を経た上、速やかに成立をさせるべきであるとの立場に立って、総理並びに関係各大臣に質問いたします。(拍手)

 まず最初に、総理にお尋ねをしておかなければならない点は、地価税法案が必要となった地価高騰の原因についての総理の認識についてであります。

 私は、戦後三度目の一昨・昨年をピークとする今回の地価高騰は、一九八五年のプラザ合意以降の金融緩和が直接のきっかけとなり、これを日本の制度的欠陥、すなわち、現行土地税制が土地の資産としての有利性、とりわけ金融的資産価値を極端に高めているという欠陥にその構造的要因がある、少なくとも地価高騰を助長、増幅させたと認識をしているところでありますが、この点につきまして総理の御見解を伺いたいのでございます。

 そして、今回の地価高騰のもたらした社会的経済的悪影響は極めて大きく、資産格差を拡大し、額に汗して働く普通の市民の持ち家願望を打ち砕くとともに、その勤労意欲をそぎ、大都市における遠距離通勤の苦痛を強い、都市部における福祉施設の建設をほとんど不可能とし、企業におきましても、研究技術部門に投資をして創意と工夫を重ねて商品開発を行って利潤を上げるという堅実な企業経営が、あたかも愚かしい経営であるかのような風潮を生み出し、加えて社会資本の整備さえ困難とするなど、総理が常々主張される消費者中心社会、公正で公平な社会とは全く逆の経済社会構造いすなわち、投機経済社会、不公正で不公平な格差拡大の社会をつくってしまったのではないか。税制のみならず、土地政策、都市政策に関する政治の無策が引き起こしたこのような結果に対する政府の責任は重大であると考えます。この点につきまして、総理の真摯な反省と御認識を伺いたいのであります。(拍手)

 今、平成元年十二月十四日に成立をいたしました土地基本法に基づき、土地の保有コストを高め、土地の資産としての有利性を縮減し、投機的土地取引を抑制し、もって土地神話を打破し土地の有効利用を促進するといたしまして本法案が提案されているのでありますが、より質の高い生活を求めるという国民の立場から検討いたしますと、この法案は不十分であると言わなければなりません。

 一部に、こんな不十分な法制では土地の有効利用が図れないし、土地供給促進にも無益であるとの論や、地価税の導入がマクロ経済に悪影響を与え、増税分が価格に転嫁されてインフレを招くといった主張、はたまた土地税制改革が湾岸戦争による経済成長の鈍化を加速するとの牽制、あるいは、土地は信用製造の基盤であって日本経済に深くビルトインされており、土地税制改革は金融恐慌につながり、国際経済の不況を生む、あるいは高金利政策のもとで地価は下落して、地価税は必要ないといった消極論が聞こえてまいるのであります。

 しかし、これらの論理は、経済理論としても誤っておると考えられますし、一部業界や、土地投機の中で甘い汁を吸った者たちの個別利害を代理する、ためにする主張でしかないのであります。日本経済を健康体に回復させ、まじめに働く国民が勤労意欲を持続し、良質の住宅を保証されて、ゆとりのある生活を実現するという政治課題からはほど遠いところにあると言うべきであります。

 地価が下がれば、値上がりを見込んで土地投機を行った者が打撃を受けたとしても当然でございます。土地投機をした者の救済のために、地価を引き下げる政策努力をせずに、投機に関係のない消費者に住宅価格の上昇やインフレとしてツケを回すことは許されないと考えますが、これら消極論並びに先ほど申し上げました転嫁論につきまして、大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。

 理論上、地価が地代収益と期待値上がり益と節税益を加えたものを利子率で割ったもの、除したものとの数式であらわされるといたしますと、地価税を課すことによって地代収益を縮小し、地価税及び譲渡益課税を適正化して期待値上がり益を圧縮し、さらには節税効果を失わせれば、地価は低下するのであります。協調、共存が要求される国際経済のもとでは、日本の経済政策、とりわけ金利政策は、日本の国内的要因によってのみ決定することは困難でございます。また、民間の設備投資資金の必要性は、金利政策を専ら土地投機対策として使用することに限界があることを明らかにしております。

 この前提を承認いただけるならば、現下の高騰した地価を引き下げ、次の金融緩和時に四度目の地価高騰を引き起こさせないために、今こそ制度改革、すなわち適切な土地税制改革が必要であることは疑いを入れません。

 この点につき、総理並びに大蔵大臣の本法案成立に向けての真意をお伺いしたいのであります。

 資産としての有利性減殺のためには、民間研究機関の研究結果や漏れ聞こえてきました政府税調の意向でございます地価税の税率一%、この一%の税率が必要ではなかったかというふうに私は考えます。税率〇・三%では理論上の地価は六%程度しか下がらないという試算もございます。また、一%の税率は地代収益が年五%の割合で得られるという前提に立ちますと、他のもろもろの資産の保有コストと土地資産からの収益率を均等にするという公平の観点からも首肯し得るのではないでしょうか。

 資産の規模が大きくなればなるほど、保有コストは安くなり、相続のコストも低くなり、逆に収益性は高くなるという、まさに持てる者と持たざる者の格差拡大の制度からこれを是正する必要があることは明らかであります。地価税の税率の修

正、例えば〇・五%、法人の短期譲渡益課税も超短期のそれと同様の分離課税とすべきではないかと考えております。大蔵大臣の御意見を伺います。

 さらに、本地価税法案は、税率を〇・三%とするほか、自己居住用の住宅敷地については千平方メートル以下の部分を非課税とし、所有土地面積すべてに一平方メートル当たり三万円を乗じた額か十億円(個人、中小法人にあっては十五億円)の多い金額を基礎控除とする、加えてこの税の納付は、事業者にあっては損金算入を認めるとしております。

 私は、この非課税措置と基礎控除はいささか過大に過ぎ、庶民感覚とはずれていると考えます。百万社の法人のうちの一万社で五〇%の土地を、千社で三〇%の土地を有しているとの現実、日本国内の一九九〇年度土地価格総額がGNPの五倍強となる二千百二十八兆円という額に達しているとの事実を前にして、地価の低下、資産格差是正、土地供給の促進という要請に誠実に対処するとすれば、住宅用敷地の非課税範囲を五百平方メートル以下とし、基礎控除を一平方メートル当たり一万円として、面積を無制限とするのではなくてしかるべき範囲、例えば三千三百平方メートルとする、加えて損金算入は認めるべきではない、そのような提案をいたしたいのであります。

 総理及び大蔵大臣は、非課税範囲、基礎控除、損金算入について、ただいま述べました提案につきいかがお考えなのか、所見をお伺いいたします。

 また、大蔵大臣は、本税率等では地価低下に効果的でないことが判明したとき、本法案附則第八条による所要の措置として、五年を待つことなく、そして時期を失することなく税率等の是正を提案する用意はあるのか、そのお考えを質問をしておきたいと思います。

 続きまして、税収の使途の問題でございます。

 税収の使途につきまして、政府税調は、地価税が増収を目的とするものではないとしまして、主として所得課税の減税財源とすべきだと指摘しております。私は、この税収こそ、自治体が公的土地を取得し、良質の公的賃貸住宅を建設することに優先して充当することが本税の目的によりかない、あわせて多極分散にも資することになると思料いたします。税収の使途につき、総理並びに大蔵大臣の答弁をお願いをいたします。

 自治大臣に対してお尋ねをいたします。

 地価税法案第三十八条による市町村の協力義務を土地基本法第十八条との関連でどのように解して、いかなる指導をされようとしておるのか、御意見を賜りたいのであります。

 また、私は、固定資産税に係る土地評価につきまして、その均衡化、適正化を図るべきであって、さらに土地評価を公開することが緊急に求められていると考えますが、自治大臣はいかなる施策をとろうとなされておるのか、御所見をお伺いしたいのであります。

 今政治に求められておりますのは、国民の前にどのような地価水準に持っていくかという政策の目標を提示することであります。そのためにどのような税率や基礎控除を設定するのかということが、私どもに課された課題であると考えます。

 国民から問われておりますことは、地価を引き下げるという国会の強い意思があるのかないのかということでございます。議員各位の国民的立場に立った真摯な議論と、本法案の修正による成立を訴えまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕

○内閣総理大臣(海部俊樹君) 仙谷議員にお答えをいたします。

 地価高騰の原因をどう思うかとのお尋ねでありましたが、大都市圏都心部中心に業務用地需要の急激な増大があったこと、それに端を発しました金余りの状況のもとで住宅地の買いかえ需要の増大、これらの需要増大を見込んだ投機的取引、これらが主な原因でこのような事態になったと私は受けとめますが、また顧みて、土地を持っていれはもうかるという土地神話があったり、税制自体か土地の資産としての有利性を助長しているとの指摘があることも、これはそのまま受けとめております。今回のこの高騰が資産格差の拡大による不公平感の増大をもたらすなど、我が国経済社会に深刻な影響を与えていることは、そのとおりと認識をいたしておりますし、このような事態に対処するため、これまでも土地取引の規制、あるいは土地関連融資の規制、住宅宅地供給の促進、土地の有効高度利用の促進などの需給両面にわたる各般の施策を行ってきたところでございます。最近においては東京、大阪等で地価の鎮静化傾向が見られるなど、土地対策の成果の兆しか見えてきているところでございますが、今後とも総合土地政策推進要綱に従って政府一体となった取り組みを展開していく考えでおります。

 土地問題の解決には適切な土地税制改革が必要であるとの御認識は、まさに御指摘のとおりと私も受けとめております用地価税の創設は、固定資産税の評価の適正化と相まって、土地の保有コストを引き上げ、地価の抑制、低下、土地の有効利用促進など土地対策に資するものと考えております。

 地価税は、公共的性格を有する土地という資産に対する適正公平な税負担を確保しつつ、土地の資産としての有利性を縮減する、その観点から、一定水準以上の資産価値を有する土地保有に対し、その資産価値に応じた負担を新たに求めるものであります。地価税の創設は、固定資産税の評価の適正化と相まって、土地の保有コストを引き上げ、地価の抑制、低下、土地の有効利用等土地対策に資するものであると考えておりますので、内容の変更は考えておりません。

 地価税の税収の使途については、平成四年度の予算編成時までに検討すべき旨提言されております税制調査会の答申を踏まえて、政府は適切に対処してまいりたいと考えております。残余の問題については、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕

○国務大臣(橋本龍太郎君) 仙谷議員にお答えを申し上げます。

 まず第一点は、消極論、転嫁論といったものについてでありました。

 地価税の負担の転嫁によりまして一部の財・サービスの価格が上がるかどうか、どの程度上昇するかといった点は、市場が競争的か否か、それぞれの市場の状況に依存することでありますが、いずれにいたしましても、全体として見るなら二回限りの価格上昇ということでありまして、一般的なインフレに結びつくものとは考えておりません。

 また、土地保有者に対してコストの増となる。しかし、新税は増収を目的とするものではありませんで、税収が何らかの形で国民に還元されることなどを考えますと、地価税の導入が経済に悪影響を及ぼすという懸念は当たらないものと私は考えております。むしろ、地価税は、土地の収益性の低下や過大な値上がり期待の縮小、あるいは中長期的な土地の有効利用促進などを通じて地価の抑制、低下というものをもたらす効果があると考えられますので、経済に対しては好ましい影響を持つものと期待をいたしております。

 また、制度改革についての決意というお話でありました。

 四度目の地価高騰を引き起こさないために適切な土地税制改革が必要という御指摘は、私もそのとおりだと思います。地価税は、土地基本法の理念を踏まえ、土地に対する適正公平な税負担というものを確保しながら土地の資産としての有利性を縮減する観点から、その資産価値に応じた税負担を求めるものでありますから、地価が上昇すればそれに応じて土地保有コストが増加することから、地価高騰の防止のために有効な仕組みと考え

ております。したがって、今回の土地税制改革の中で、地価税は極めて重要な柱をなすものと考えておりまして、速やかな実現を図りたいと心から願っております。

 また、税率についての御指摘がございましたが、地価税に係る税率につきましては、税制調査会土地税制のあり方についての基本答申におきまして、土地保有そのものに担税力を認めながら毎年保有土地の資産価値に応じて負担を求める観点、土地の資産としての有利性を政策的に縮減する観点などを総合的に考え、適正な水準を設定すべきである。その際、税率は、事業経営の継続に配意すると同時に土地の資産としての有利性を縮減する程度であることが望ましいと指摘をされております。

 政府といたしまして、税率を設定するに当たりましては、この指摘を踏まえながら、基礎控除の水準や今般の土地税制改革において固定資産税の評価の適正化も行われることなど、そうした要素も総合的に勘案し、〇・三%とすることにしたものでありまして、私どもとしては適切な水準のものと考えております。

 また、短期譲渡課税についての御指摘がございました。

 今回の土地税制改革で、超短期所有土地等に係る譲渡益の重課制度につきまして、通常の法人税率に三〇%の税率を加算した税率による分離課税方式に改めることにいたしましたのは、土地の投機的取引の抑制効果を高めると同時に、赤字法人を利用した税負担回避防止に資することを目的としたものであります。こうした分離課税制度は、赤字法人に極めて重い負担を求めるものでありまして、また、土地譲渡の個別事情のしんしゃくが困難でありますので、土地等の譲渡益一般について分離課税とすることには無理があるのではなかろうか、そう考えております。

 また、非課税範囲、基礎控除、損金不算入等について、議員のお考えを述べられた上でその感想をただされました。私は、一つの御見識と承っております。

 しかし、同時に、政府としては、居住用地については、国民生活の本拠として不可欠のものという点に配慮をし、原則として非課税という方針をとりました。この場合、大規模な邸宅の敷地を除いてほとんどの居住用地の所有者が非課税になるような水準として千平米までの部分を非課税とすることにいたしました。

 また、基礎控除につきましては、土地の資産価値に応じた税負担を求めるという地価税の趣旨に照らしまして、資産価値の小さな土地保有は課税対象から除外することが適切である、そう考えて設けたものであります。その水準については、土地の資産としての有利性を縮減するという観点とあわせ、個々の納税者に対する負担や我が国経済に与える影響を配慮するという視点にも十分考えながら設定をいたしました。

 また、個人事業者や法人が保有する事業用地につき納付した地価税額につきましては、事業遂行上土地を保有し、その土地保有に伴って生じたコストであり、収益に対応する費用であると見るべきものでありますので、固定資産税等の租税公課と同様、個人の事業所得等あるいは法人の所得の計算上、損金に算入することとしたものであります。

 私どもは、以上申し述べたような理由から、今回御提案申し上げております地価税の具体的仕組みにつきましては適切なものと考えております。

 また、この効果を見ながら、必ずしも五年という時間を待たず見直す意思はあるかという御指摘でありました。必要があれば、機動的、弾力的にその見直しを行っていくことは可能である、そのように考えております。

 また、地価税の税収の使途につきまして御意見がございました。税制調査会の基本答申を引用して総理が御答弁いただきましたとおりでございます。(拍手)

    〔国務大臣吹田あきら君登壇〕

○国務大臣(吹田あきら君) 仙谷議員のお尋ねが二点ありまして、まず第一点は、地価税法案の市町村の協力義務についてのお尋ねでありました。

 これは、土地基本法第十八条の趣旨というよりも、国と地方公共団体との税務協力関係について定めようとするものでありまして、自治省といたしましてもその趣旨に沿い、市町村に対し適切な指導をしてまいりたいと考えております。

 次に、固定資産税に係る土地評価についてのお尋ねでありますが、平成六年度以降の評価がえにおいては、土地基本法の趣旨を踏まえて、地価公示制度の改善とも相まって、その一定割合を目標に評価の均衡化、適正化を推進すべきものと考えております。また、評価の均衡化、適正化に資するためには、路線価の公開を積極的に進めることといたしておるわけであります。

 以上であります。(拍手)

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