1991年03月12日 予算委員会第五分科会

○町村主査代理 これにて和田貞夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、仙谷由人君。

 

○仙谷分科員 昨年の予算委員会第五分科会で吉野川北岸用水の持っておる問題、現行の土地改良事業の問題性を私の方からお伺いをしたわけでございます。負担金が高くて払えない、こういうふうに農家が悲鳴を上げておる、あるいは北岸用水という二十年間六百億円をかけた大事業が完成したにもかかわらず、後継者はいない、あるいは支線が通水をしていない、あるいはそんなものがなくても既設の水路で十分にやっていける、払いたくないし払えない、こういう北岸用水周辺の住民が相当数存在する、この問題をどういうふうにして解決するのかということで、当時の山本農林大臣にお伺いしたわけでございますが、お答えの中に、こういうくだりがございます。こういう問題があるのであれば、「土地改良区とか県から本問題について何か言ってきているかということをすぐ言った」、「県から言ってこないはずがないと私は思っております。」そういう声はないんだ、いわば吉野川北岸用水に問題性はないんだというふうな感じのお答えもいただいたわけでございます。私はいわば選挙の準備活動の中でじかに農民の声を肌で聞いておりましたので、これは問題があるぞということで分科会で取り上げさせていただいたわけでございます。

 現在、この北岸用水の負担金の支払い問題をめぐってどんな紛争が徳島県で起きておるか、農林省の方からまず御説明ください。

○片桐政府委員 吉野川北岸農業水利事業、これは平成元年度に完了いたしまして、平成二年度から償還を開始するということになっているわけでございますけれども、この負担金に関しまして、土地改良区に対して異議申し立てが六十九件、関係受益者千六十一名、これは受益者全体の約八%の方々から異議申し立てが出ているというふうに聞いております。

 また、この異議申し立てに対しまして、昨年の九月十七日に土地改良区が棄却しましたところ、土地改良区の賦課処分の取り消し及び異議申し立てに対する決定の取り消しを求めた提訴がなされているというふうに聞いております。

○仙谷分科員 私が持っております徳島県発表の資料によりますと、まず未納者が一万三千百十人の農家のうち四千二百五十人、三〇%強でございますか、この方々が未納である。三分の一くらいございます。

 それから、異議申し立てをした者は、今農林省の方からお答えになったとおりだと思いますが、四百四十九人の農家から土地改良区の賦課処分に対する取り消し訴訟が提起をされて、賦課処分が違法である、法律にかなっていないという訴訟が出ておると私は聞いておるのですが、そのとおり間違いございませんでしょうか。

 そして、もし私が今指摘した問題が量的に間違いないとすれば、例えばなぜ払わないか、払えないか、訴訟でこの点について農家はどういう主張をされておるかということをお伺いいたしたいと思うのです。

○片桐政府委員 私どもが現地の土地改良区に当たって聞きましたところ、平成二年度分の徴収の実績でございますが、三月四日現在で申しますと、建設事業費賦課金は徴収済みが約六八・六%、それから維持管理費につきましては七九・六%が徴収済みであるというふうに聞いております。現在、土地改良区では関係機関の支援を得つつ、その徴収についていろいろ努力をしていると聞いております。

 それから、訴訟の件でございますけれども、先生の御指摘になりました四百四十九名の方々からの訴訟が出ているということについては、私どももそのように聞いている次第でございます。

 それからまた、どういう理由でそういう訴訟なり異議申し立てがなされているかという点でございますけれども、それを分類いたしますと、まず第一番目の形としては、末端水路が施工されていないということを理由として賦課取り消しを求める方々、それから末端水路が完成するまでの間の維持管理費賦課の基準の変更を求める方々、また維持管理費賦課の取り消しを求める方々、それから既設ポンプ等により水源が確保されているとして地区除外を求める方々等があるというふうに聞いております。

○仙谷分科員 いわば現に利益を受けたる限度をどう解するかという法律論はさておいて、素朴に、現実に北岸用水の水をみずからの農耕に、耕作に使っていない、あるいは使える状態にないのだ、こういう理由がほとんどだというふうにお伺いしてよろしいですね。

 そういたしますと、この土地改良事業の中で、やはり広域的大規模な事業ということになりましょうから、一方では、個人それぞれの言い分を聞いておったら、こんなことはできない、こういう話になるわけであります。ところが一方では、農家の方々は、いや、そんなことを言われたって、うちは必要ないのだから、あるいは支線も来てないのだから払う必要はない、あるいは農業をやめたからもう要らないんだみたいな話まで出てく

るわけです。ここに構造的矛盾があるわけでございますが、例えば徳島県で各町がこの問題について、町議会とか町長が何らかの政治的、行政的対応策をとろうとしておるのを御存じでしょうか。

○片桐政府委員 本地区の問題は、末端水路の整備の度合いに差が生じているということについて問題が発生しているというふうに考えられるわけでございます。末端水路の整備の推進につきまして、県、市町村、それから土地改良区、いろいろ努力をしているというふうに聞いているわけです。具体的には、末端水路の整備は県営とか団体営によって実施されるわけでございますけれども、現在まで着工した地区は、これは全体五十一地区の予定でございますけれども、そのうち三十一地区が完了しているわけでございます。この結果、国営事業の受益面積六千八百七十ヘクタールのうち平成元年度までに末端水路が完成した面積は四千九百ヘクタールということで、約七一%完了しているということでございます。平成二年度は、二十地区におきまして十四億三千万円の予算で約三百ヘクタールの整備を行いまして、年度末までに約七六%に相当する約五干二百ヘクタールが完成する予定というふうに聞いております。今後とも予算の確保、それから関連事業の推進、そういうことにつきまして、県、市町村を指導いたしまして、早期に末端整備を完了するように努めてまいりたいというふうに考えております。

○仙谷分科員 そんなことを聞きたいわけではなくて、いいですか。例えば後継者がいない、あるいは減反の問題、そういうさまざまな要因があって、あるいはこの事業そのものが開墾予定面積の一〇%そこそこしか開墾できなかったということだって、農業事情の変更ということで、この事業の、吉野川北岸用水の事業のいわば挫折といいますか、今の状態をもたらしておるんではないかと私は思っております。各町村は非常にひしひしと農家の方々が払えないし払わないというのを身をもって感じておる。御存じないのであれば私の方から申し上げますけれども、例えば吉野町という町は未給水地区への対応を前向きにすると町長が答弁しているわけですね。つまり一般財源から農家の方に補助を出す、あるいは肩がわりして支払う。土成町というところも同様のことを言っております。私が聞いた範囲では、あと二ないし三カ町村の町長は、やはりそういうふうにせざるを得ないだろう、一般財源を農家の方々の肩がわり資金に納入するといいますか入れていくというのは甚だ筋が違うように思うけれども、どうしても農村ではそういう施策をとらざるを得ないだろう、こういうふうな判断も持っておるというふうに聞いておるのですが、その種の議会の声とかあるいは首長さん、町長さんあるいは村長さんの声というのは農林省には聞こえてきておりませんですか。

○片桐政府委員 この償還に当たりまして、町及び県の助成額がかなりの額に上っておるということは、私どもも把握いたしております。

 

○仙谷分科員 従来の助成額の上に重ねてもっともっと負担をしなければいけない、やむを得ない、それは選挙があるからなのか、もしくはその住民の、農家が多い、非常にお困りだという現実、いわばそれを受けとめると、そうならざるを得ないというのか私はわかりませんけれども、いずれにしてもそういうことになっておる。

 もう一つだけお伺いしておきたいことは、昨年のこの分科会での審議の中で、払わない、払えない人についてはどうするんだというふうな質問をいたしましたら、法論理的には滞納処分になる、しかし、土地改良区の中で十分検討した上で判断されるというふうなお答えがあって、いわばこの滞納処分は簡単には発動をしないというふうな趣旨の答弁があったわけでございます。この点につきましては、今異議申し立てをして未納の方が、おっしゃったように三三%ぐらい未納の方がいらっしゃるわけでしょう。その未納の方のうち素朴であるか法理論的であるかは別にしまして、未給水地区とか、現実にそれを使う必要のない人、こういう理由で負担金を払ってない農家に対しては、いわばこの訴訟とかあるいはこの件が解決するまで滞納処分をしないということを、この場で言明できますか。

○片桐政府委員 本年度はこの負担金の徴収の初年度に当たるわけでございまして、農家への納入事務手続の説明不足とかいろいろな事情によりまして徴収率が低くなっている面があるわけでございますけれども、私どもといたしましては、土地改良区、それから関係県、市町村に対しまして、できるだけ農家の理解を得るように努力をしてほしい、こういう指導をしている次第でございます。

○仙谷分科員 全く答えになってないじゃないですか。滞納処分をするのかしないのかということを私は聞いているのですよ。農林省は今そういう理解を得るなんてきれいごとを言っているけれども、土地改良区の理事長は何と言っているのですか。裁判してくれた方がいい、裁判で決着つけたいと言っているじゃないですか。そういうふうに言っているのですよ、新聞の中で。私もそれを聞いております。農林省の方は一生懸命理解を求めても、現場の土地改良区が裁判で決着つけてくれ、我々の方はどんどん滞納処分でも何でもやってやる、こういうことになったらどうなりますか。その点についてどうですか、もう一度。農林省の方から、滞納処分、手荒なことはしないように、そういう指導をするというふうにお約束できませんか。

○片桐政府委員 土地改良法の手続で強制徴収を行えることになっているわけでございますけれども、強制徴収を行うかどうかということにつきましては、土地改良区の判断にゆだねられているわけでございます。したがいまして、実際に強制徴収を行うかということについては、土地改良区の中で今後十分検討した上で判断されるというふうに承知いたしております。

○仙谷分科員 非常に不満足でございますけれども、時間がたっていきますので、次の問題に移ります。

 いわゆる土地改良事業で、この種の、北岸用水で現在問題になってきておるように、負担金を払えない、払わない、払いたくないというふうなところで問題になっているケースというのはどのくらいございますか。

○片桐政府委員 土地改良事業は地元からの申請に基づいて行う事業でございますので、こういうような異議申し立てというようなケースは極めて少ないわけでございます。私ども聞いておりますのは、この吉野川北岸以外の地区では、一地区だけ土地改良区からの地区除外等を求めて訴訟を提起されているという件を聞いております。それからまた、最近国営農地開発事業の計画変更に当たりまして、負担金の軽減措置の要望を背景として国に対して異議申し立てがなされた事例がありましたが、これにつきましては、ほぼ円満に解決いたしまして、大部分はその異議申し立てを取り下げたというような事案もございました。

○仙谷分科員 時間の関係で質問はいたしませんけれども、どうも私が雑誌等々によって調査しました結果、あるいは同僚議員等々と話をしましても、相当の箇所でこの土地改良事業、それから今局長がおっしゃった国営農地開発事業でございますか、これらでまあ大きい農政の構造変動とでもいうような事態も絡んで、不払い、払えないというふうなことで問題になっておるケースが私が今持っておるだけでも四カ所ぐらいございます。それで、やはりこの事業というのがどうも十分には農家の方々の御意思を、とりわけ負担金との関係での御意思を尊重せずにといいますか、聴取しないで村の、町の顔役といいますか世話人というのか、影響力のある人と、町や県の、まあ土地改良区のボスとでもいいますか、こういう方と農林省がどうも農家の個々の御意思を余り重視しないで進めておることに原因があるのではないか、そんな実感を最近持っておるわけであります。したがいまして、この辺は土地改良区に対しても、農林省の方はきめ細かい農家のあるいは農村の合意形成をするようにひとつ指導をしていただかない

と、これからもますますこの種の問題が出てくる。我々から言えば、ある意味では税金のむだ遣いで、農家の方から見れば災難が降ってきたより悪い、人災が降ってきたみたいな話になりますと、これは農業を私どもが国民の財産としてどうしても保護育成しなければいけないというところに、そういう国民の世論形成に甚だ障害になる事態が出てくるのではないか、我々と農家の方々が敵対せざるを得ないような状況が出てくるのではないか、そのことを私は憂えておりますので、こういう質問をしておるわけでございます。

 今の問題で最後の質問になろうかと思いますけれども、この問題、先ほど各町村が農家の負担を公費で行う、一般財源で行うというふうな腹も固めざるを得ないのだという意向も随分徳島ではあるわけですね。ただし、その場合に何にもなしでは、つまり見返りなしではそんなことはなかなか難しいのですよというのが率直な町長さんのお考えなのですね。私昨年のこの分科会で当時の山本農水大臣に、上水道に一部転用するということはどうか、あるいは他に水を売るというのはどうか、それで農家負担を減らしたらどうか、こういう提案をしました。そうしますと、山本大臣は、勉強はさせますけれども、非常に難しいということだけは御承知願いたいという回答をされたわけであります。その後勉強もしていただいたし、これは政治的にやはり解決を図らざるを得ない問題である部分も非常に大きいと思いますので、その種の道があるのかないのか、お答えをいただきたいと存じます。

○片桐政府委員 吉野川下流地域、これはかなり都市化が進展をしているというふうに聞いておりますので、そういう人口増が見込まれまして、上水の需要量というものがふえるということも予想されるわけでございます。一方、農地の方がまた転用とかそういう形で水の使い方が変わってくる、農業用水の需要が減るということも予想されるわけでございます。ただ、この辺のところは今後下流地域の農業のあり方とか、また土地改良区等の関係者の調整とかいろいろ問題になるわけでございますので、上水道側からの具体的な要望があった場合に、関係機関との調整を図りながら検討をしてまいりたいというふうに考えております。

○仙谷分科員 農業用水の転用あるいはかんがい用施設の途中から流水を他に転用する、これは水利権問題がどうも絡むようですね、私は余り水利権の問題知りませんけれども。転用とかあるいは水利権の一部譲渡になるのか何かわかりませんけれども、その種のことは一般論としてはできないわけではない。私は愛知用水ではその種のことが行われているというふうにも聞き及んでおるのですけれども、その種のことが行われている例がありますれば、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。

○片桐政府委員 私どもは農業用水の一部を合理化いたしまして、他の用水に振り向けるということで、いわゆる農業用水合理化事業というふうに称しておりますけれども、こういうような事業でもって農業用水の一部を他用途に振り向けたケースというのは、私が承知している限りでは、埼玉県とか愛知県、そういうところで行われたということを承知いたしております。

 

○仙谷分科員 最後の質問をさせていただきます。

 この問題に関連しまして、私が持っておる新聞で平成二年二月十六日の新聞によりますと、国営の土地改良事業については、地方交付税で支援をして農家の負担軽減を図るというものと、三月八日、つい最近でございますが、土地改良法を改正して、農家の負担を軽減して、市町村、自治体がこれを負担をする、こういう法改正を行う予定があるという趣旨の報道がなされておりますけれども、その種の予定と、もしそういう方針がおありになるとすれば、あるいは自治省側の話もおわかりになる範囲で内容をお示しいただきたいと思います。

○片桐政府委員 土地改良事業の事業費の負担につきましては、国、県、それから地元ということで、法律上は受益農家というのが現在の土地改良法の建前になっております。私ども、最近土地改良事業がかなり広域的な、地域住民全体に対してもいろいろ役割を果たしているという観点から、市町村の負担の明確化ということを法制度上明らかにしたいということで、現在土地改良法等の一部を改正する法律案というものを国会に提出をして審議を願っている次第でございます。この法律によりまして、市町村の負担が法律上明確にされた場合に、その裏打ちといたしまして、地方財政措置で、交付税の算定基準、それからまた地方債の充当、そういう形で地方財政措置で市町村負担分を手当てをしていただくということも自治省の方にお願いをいたしておりまして、自治省の方もそういう方向で準備をしていただいているというふうに聞いております。

○仙谷分科員 そうしますと、その法改正ができたときには、吉野川北岸用水の負担金問題というのは何らかの影響があるのでしょうか。

○近藤国務大臣 今先生と構造改善局長とのやりとりをるる聞かしていただいて、この問題に私が熟知しているわけじゃありませんけれども、私のわずかな経験の中でお話し申し上げさせていただきたいと思うのです。

 三三%の未納者の中に、必ずしも全員がこれに反対だということではなくて、その地域の中で、まだ同意が四分の三とれないでいる人たちも多分いるのだろう、そう推察をいたしておるわけでありますから、その点については、さらに同意をしていただいて、水を御利用いただく方に努めていきたい、こう思うわけであります。

 今市町村の段階での交付税の問題は、従来私どもが自治省と折衝してきた段階では、市町村が徴収をする、そしてお納めするという分について、負担の明確化で交付税の対象になるわけでありまして、土地改良その他で徴収をすることについて交付税の対象ということには話を進めて今日まで来ていないわけでありますので、関係の町村が町村徴収ということに全員が切りかえるような状態であれば、また御相談をさせていただきたい、こう思います。

 それから、多目的に使う場合には、一応農業用水としての水利権を確保させていただいておるわけですから、別途に水道その他に利用されるという水は、水利権は一たん水利権者にお返しして、そこから多目的のものに使うということになろうかと、私の経験の中でお話をさせていただきます。

○仙谷分科員 終わります。

○町村主査代理 これにて仙谷由人君の質疑は終了いたしました。