1991年03月11日 予算委員会第四分科会

○古賀(誠)主査代理 これにて小沢和秋君の質疑は終了いたしました。

 次に、仙谷由人君。

    〔古賀(誠)主査代理退席、主査着席〕

 

 

○仙谷分科員 私の方からは、依然としてなかなか改善が進みません、いわゆる被差別部落の労働の実態と申しますか、あるいは不安定就労というふうな言い方をされておるようでございますが、その問題、そして各職場における差別事件、これらの点について時間内にただしていきたいと思います。

 まず、一九八八年ですから一昨々年ということになりましょうか、第百十二国会で三月九日に、我が党の永井孝信議員に対するお答えで当時の岡部政府委員が、一般常用雇用が昭和六十年には五三%と上昇している、それから三十人未満の事業所への就職率が六五・八%から六十年には四二・四%というふうに、全体の平均の三三・八%に比べるとまだ十分でないけれども、徐々に改善をしておるという答弁をなさっておるわけでございます。この点につきまして、ここ数年、一九八八年からどういう状況になっておるのか、その点についてまずお伺いしたいと思います。

○若林政府委員 ただいま御指摘の同和関係住民の労働実態の問題でございますが、これにつきましては、ただいま先生御引用になりました六十年の同和地区を対象にした生活実態調査というもの、私どもはその調査で認識をしておるわけでございまして、ただいま御指摘のように、臨時、日雇い等の不安定就業者の割合が一五・一%と全国平均の一・八倍も高いこと、一方、常用雇用労働者の割合が五三・三%で全国平均に比べて七ポイント低いこと、また、従業員三十人未満の小零細企業で雇用されている者の割合が四二・四%で全国平均より九ポイント高くなっており、一定の改善は見られるわけでございますが、なお雇用情勢は厳しい、こういう状況でございます。

○仙谷分科員 ちょっと角度を変えまして、これは調査が昭和六十二年の七月から八月、調査結果が出ましたのが昨年の六月という資料でございますが、徳島県教育委員会が総合教育実態調査分析というのを行ったわけであります。私の選挙区であります徳島で見ますと、常勤の実態を見ますと、父親では八ポイント、母親では二二ポイント、いわゆる同和地区に住んでおる人は低い。それから無職の状況では、父親が五ポイント、母親では七ポイント高いという報告がされておるわけであります。

 あるいは、徳島県企画調整部が八九年十一月に発行しております徳島県婦人の生活実態調査というのを見ますと、この報告書には、三十ないし五十代では臨時雇い、日雇い、パート、内職の合計の数字を比べるとかなり差があり、地区内では、二十代は別にして不安定就労が多い。これは女性ですね。それから就労内容についても、全体に占めるいわゆるホワイトカラー的就労者の比率を見るとかなり差がある。それから二十代についても、就労内容、給与形態、企業規模等については格差が見られる点にも留意する必要があるということですね。さらに、その就職先の社会保険制度や福利制度の実施状況を見るとかなり差が見られておる。これは全国的な調査あるいは他県、大阪、京都、広島、鳥取、香川というところをとっておるようですが、同様な結果が出ておる。こんな調査結果が出ておるわけであります。

 同和対策審議会の答申から、六五年でございますので既に二十八年ぐらいでしょうか、そういう年月の中で労働省は非常に熱心にこの就職差別の問題といいますか、主要な生産過程に同和地区の方々が入らない限り職業選択の自由といいますかこの問題は解決しないのだ、基本的な問題だという御認識のもとにいろいろな施策を講じてこられていらっしゃると思うわけでございますが、二十数年一生懸命やってこられて、今日のこの実態についてどのようなお考えをお持ちなのか、その点についてお伺いいたしたいと思います。

○若林政府委員 先ほども六十年の数字で申し上げたとおりでございまして、これまで私ども努力を重ねてまいりまして一定の改善が見られるわけでございますけれども、雇用状況はなお厳しいものがあると認識をいたしております。就職差別事案の解消につきましても努力を重ねてまいりました。しかし、依然として年間八百件ぐらいの事案があるということでございまして、まことに遺憾に存じておるわけでございます。

 そういった観点から、私ども安定した職業への就職が可能になるようにいろいろな施策を講じてまいりますとともに、企業の公正な採用選考が行われるような指導を行っておりますし、そういったような就職差別の解消に向けて一層の努力を重ねていかなければならないと思っております。

○仙谷分科員 採用時の差別の問題が出たわけでございます。最近判明したことでありますけれども、防衛庁で、大阪地方連絡部の中の少年工科学校の採用あるいはその他陸上自衛隊の生徒、海上自衛隊の生徒、航空自衛隊の生徒の採用をめぐって、どうも面接時点に要求する書類、それから面接内容というものが就職差別につながるのではないか、こういう問題が出ておるようですが、その種の事件といいますか事案がございましたでしょうか。

○吉免説明員 先生ただいま御指摘のうちの防衛庁関係の事案につきましては、現在のところ承知はしていないわけですけれども、そういう事案がわかりますれば私どもも関係省庁と連携をとりながら対応していきたいと思いますし、従来そういう形で就職差別問題解消に努力しているところでございます。

 私どもが全国から集めておりますデータで見ますと、例えば、平政元年度で就職差別案件という

のは八百十二件でございました。そのうちの七五%は、先生今御指摘もありましたけれども、面接時の不適切質問でありますとかいうようなものが占めておりまして、こういった点においても私どもの啓蒙啓発というものは、さらに努力する必要があるのではないかというふうに現在考えておるところでございます。

○仙谷分科員 防衛庁に限らず、どうもこの就職差別事件関係で、民間の会社もさることながら、官庁各出先機関が相も変わらず、結果としての場合もございましょうし、本人は無意識というふうにおっしゃる場合もあるのでしょうけれども、差別事案を惹起させておるというのが多いようでございます。今申し上げました防衛庁のこの事案でございますが、面接試験の段階で戸籍抄本を要求する、面接内容として住居とその環境を聞く、それから家族関係を聞く、それからクラブ活動についても問いを発して答えを求める、それから趣味についても問いを発して答えを求めるということが行われたようであります。

 これについて労働省、いかがでございますか。従来から御指導なさってきた観点からいいまして、こういう項目について問いを発する、あるいは面接試験の段階で戸籍抄本を要求するというふうなことがあったとすれば、これは労働省の職安行政といいますか、指導との関係ではどういうことになりましょうか。

○吉免説明員 就職問題について私ども労働省で所管をしておりますし、御指摘のように採用あるいは面接に係って戸籍謄本をとるとかあるいは不適切質問をする、こういうことは避けるべきという認識で対応しております。それぞれの所管の関係の官庁のところの分については私どもも連携をとりながら対応しているところでございますし、御指摘のような事案がございますれば早速に防衛庁とも連絡をとって対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○仙谷分科員 今の点について、防衛庁の課長さんでございますか、おわかりになる範囲でそういう事実があったかなかったか、あるとすればその後どういう経過になっておるのか、お聞かせ願えればと思うのです。

○太田説明員 御指摘の自衛隊生徒にかかわる試験、少年工科学校等に入るわけでございますけれども、その試験の際に戸籍謄本になり抄本等の提出を求めているということはございません。また、面接等に当たりましても、受験者の信条ですとか社会的身分等にかかわる差別につながりかねないような質問を行わないように指導しているところでございます。この種の問題で隊員の採用に関しまして特に問題があるという事例の報告は、私どもとして受けておりません。

 

○仙谷分科員 確認をしておきたいのでございますが、大阪府の教育委員会なり大阪府の労働部、ここからいわゆる受験報告書、就職試験を受けた方から報告書を今教育委員会等がとっておるわけでございますけれども、そこにこの陸上自衛隊少年工科学校の件が報告をされておるわけであります。今私が申し上げたような件として報告されているわけです。これについては、大阪府の教育委員会なりあるいは同和教育という部署から何らの申し入れも来ておりませんですか。

○太田説明員 御指摘のように、昨年大阪府教育委員会が調査されたという事実はあったようでございますけれども、調査の結果、特段問題ありとの御指摘を自衛隊側が受けているようなことはないというふうに承知しております。

○仙谷分科員 では、その点についてはこちらの方ももう少し調べてみたいと思いますけれども、いずれにしても、今教育部局では差別につながる十四項目ということがほぼ確認的に挙げられておって、この十四項目については、差別につながらないような方法で採用選考試験を行うようにというのが各府県で行われておると思います。先ほど防衛庁の少年工科学校の件を出したわけでございますけれども、まだまだいわゆる就職差別事案というのが絶えないということでございますので、より一層の厳しい指導あるいは研修等展開をしていただきたいというふうに考えております。

 続きまして、日本公認会計士協会東京会というのが「経理不正行為の見つけ方・防ぎ方」という図書を出したそうでございます。その場合に、公認会計士事務所への採用に当たって「健康度合、家庭環境、本人の生立ち、性格、学業成績、趣味、その他、に区分して採用ラインを決めておくとよいでしょう。」それで、その件について「調査」として「これは興信所を利用したり、会社自らが行なうというような方法で、本人の素行、風評を調査することです。」こういう本を公認会計士協会東京会というのがお出しになったというのですが、そういう事実は、労働省、そして法務省の方は確認をしていらっしゃいますでしょうか。

○若林政府委員 私ども、かねてより企業に対しまして、応募者の適性と能力のみに基づく、予断と偏見の入らない公正な採用選考システムを確立するように啓発指導に取り組んでおるわけでございますが、特に就職の際の身元調査は無責任な予断と偏見が入って応募者の適性と能力がゆがめられて報告されるということが多いわけでございまして、就職差別事象につながったケースが数多く見られるところでございます。この観点から、企業が採用に当たって身元調査をしたことが認められた場合には、その企業に対しまして個別指導を行うことといたしておるわけでございますが、先生ただいま御指摘の図書におきましては、就職に際しての身元調査を奨励しているかのごとき記述があることはまことに遺憾でございます。この編者である日本公認会計士東京会に対しまして、関係省庁と連携の上で適切に指導してまいりたいというふうに考えております。

○佐竹説明員 ただいまの御指摘の事案につきましては、私どもとしては現時点においては承知しておりません。

○仙谷分科員 いわば税理士事務所というようなところでこういう差別的な採用が行われるとすれば、幾ら啓発というふうなことを言ってみても、どうも国民の間にもむしろ逆の、やはり人間はレッテルがあるとか、肩書があるとか、親御さんがいい人を採用した方が安心だという差別的な風潮につながっていくのではないかと思うのですね。公認会計士とか税理士というのは割と事業者に対する影響力の強いところでございますので、これは法務省の人権擁護の担当部局でもひとつこの辺について調査をして、労働省ともどもこの種のことがないように、あるいは公認会計士東京会というのは研修的な事柄とかそういうことが必要ではないかというふうに私思いますけれども、その点について人権擁護の担当の法務省としてはいかがですか。

○佐竹説明員 法務省の人権擁護機関といたしましては、企業が人を採用するに際し、部落差別等人権侵害を意図した身元調査を行うことはもとより、部落差別等人権侵害につながるおそれのある身元調査を行うことも許されないもの、そのように考えているところであります。

○仙谷分科員 ちょっと話題を変えますけれども、企業の研修でございます。いわゆる同和問題あるいは被差別部落の問題についての企業の研修というのが、従前に比べますと相当活発になってきたといいますか、盛んに行われるようになってきておるのではないかというふうに私も外形的には感じておるところでございます。にもかかわらず、例えばこれは有名な事案でございますけれども、リクルートという就職あっせん誌の大手の会社の新入生の歓迎号に、例の三菱化成の社長さんが極めて明らかな差別発言をしたというのが、これは八八年でございますけれども、ありましたですね。私はこの研修について、一つは企業のトップの理解と熱意がどこまであるのかなと。そうしないと、私が聞き及んでいた範囲では、三菱化成というのは同和研修について相当熱心な企業であるというふうにこの一九八八年までの間は伺っておったわけでございます。そしてまた、リクルートは当然のことながら労働行政の関係で、いわば職業安定部局との関連を持ちながら職業あっせんに関連する業を行っていた会社でございますか

ら、リクルートの雑誌にまさか三菱化成の社長さんがこのようなことを書く、つまり二重三重の、ある意味では差別問題についての軽視といいますか、そういうことがあったのではないか、こういうふうに思って、当時もこのことについて重大な問題だなというふうに感じておったのですが、このトップに対する研修でございますね、これは今労働省の方でつかんでいらっしゃる範囲ではどういうふうになっておるか。いかがなものでございましょう。

○若林政府委員 やはりこういった問題の解決のためには企業のトップの方々、人事採用のトップの方々が十分理解をされるということが極めて重要でございますので、私どもそういった観点から企業のトップクラスに対する研修を重ねてまいっておるわけでございまして、年々回数、人数もふえてまいっておりますが、平成元年度で申しますと、回数で四百件でございまして、対象事業所数が約三万ということになっております。

○仙谷分科員 内容的にも効果が上がっているというふうに労働省の方は見ていらっしゃるんでしょうか。

○若林政府委員 私どももとより、先ほど来申し上げておりますように、毎年約八百の事案というものがあるということはまことに遺憾でございますけれども、やはりこういった研修というものの効果は浸透してきているというふうに考えております。しかしながら、なお今後とも一層この研修の徹底を図っていきたいというふうに考えております。

 

○仙谷分科員 話が飛びますのですが、昨年私、やはりこの委員会で質問をさせていただきまして、在日朝鮮人・韓国人の就職差別の問題について労働省に質問をしたわけでございます。そして、この在日朝鮮人・韓国人の労働実態がどうなっておるのかということをお伺いしまして、いわば在日韓国人・朝鮮人については研修なんかを企業に求めてはいないというお答えともども就職差別は許さないようなことを我々やっているんだ、それで通達とパンフレットがある、通達とパンフレット等におきまして企業に徹底をするよう指導いたしておりますと言うので、ではパンフレットと通達をいただけますかという話をしましたら、その後に持ってこられたのは通達という、これを持ってこられた。パンフレットは「採用と人権 大阪府労働部公共職業安定所」、これを一つだけ持ってこられた。これです。それで私は、当時の政府委員が通達とパンフレットがあるというふうに委員会の席上で見えを切ったものですから、立派なものをおつくりになって相当熱心にこの点についてやっておるのかなというふうに思ったのでございますけれども、これじゃ幾らなんでも、この二つじゃ、力を入れて外国人、在日韓国人・朝鮮人の就職差別をなくする施策をやっている、量とか格好だけの問題ではなくて、何と言うのですか、いかにも力が入っていないというのが見え見えのような感じなんですね。その点についてはその後何か昨年の盧泰愚大統領の来日を機に一層企業の啓発といいますか、あるいは企業に対する理解を求める、こういう施策をするというふうなことも報道ではなされておるのですが、昨年の四月以降具体的な在日韓国人・朝鮮人に対する就職差別をなくする何らかの施策を行ったのかどうか、その点をお伺いしておきたいと思います。

○若林政府委員 毎年、新規学卒者の募集採用時期におきまして、全国の公共職業安定所におきまして事業主を集めて求人説明会を行っておりますけれども、そういった機会を利用して企業の採用選考が応募者本人の適性、能力を中心に行われるよう指導啓発に努めてまいっておるわけでございます。在日韓国・朝鮮人の方々の採用の問題につきましても、ただいま先生御指摘のようにパンフレットなどにその問題を指摘しましてPRに努めているわけでございます。

 さらに、労働省では、先般の日韓法的地位協定に基づく両国の協議の中で、在日韓国・朝鮮人に対します就職差別問題が提起されたことなどその問題の重要性にかんがみまして、各都道府県の労働担当責任者を集めた会議におきまして、在日韓国・朝鮮人の就職の機会均等の確保について指示をいたしてまいっております。さらに、ことしの二月に各都道府県に文書で同趣旨の通知を行ったところでございます。

 加えまして、韓国政府に対しましていろいろの場で、私ども就職差別の解消に向けて行政指導を強化するというお約束をいたしておりますので、このことにかんがみまして、来年度は、事業主が在日韓国・朝鮮人に対する正しい理解と認識を深めるために、新たに在日韓国・朝鮮人の就職の機会均等を図るためのリーフレットの作成、配布、事業主啓発説明会の実施等、指導啓発の一層の強化を図っていく考えでございます。

○仙谷分科員 時間がなくなったようでございますが、昨年のこの委員会でも私が申し上げましたのは、実態調査をぜひ、この在日韓国人・朝鮮人の就職がどういうふうになっておるのか、特に、まさに主要な生産過程、主要産業にどういうふうに採用されておるのか、これは調べてみていただきたいという話をしたのですが、そのときの労働大臣は、寝た子を起こすことになるからこれはまずい、こういう答弁をなさっているわけであります。にもかかわらず、この問題は、本籍問題というよりも国籍問題のところでまずはねられる。あるいは、彼らが民族的な主体性を保持しながら生きよう、つまり本名を名のって生きていこうとすればこれは容易でないことだ。それで、この際本名を名のって例えば主要産業に就職をしている方がどのぐらいいるのか。最近はぼつぼつ、テレビなんかを見ておりますと本名を名のった方がスポーツ選手で出てきたり、あるいは大証券会社のアナリストで出てきたりしておりますので、ふえてきておるかもわかりませんですけれども、それをぜひやっていただきたい、こういうふうに要望をしておきたいわけでございます。

 この被差別部落の就職差別の問題あるいは不安定就労の問題、そして在日韓国人・朝鮮人の問題、いずれにしましても、私は、差別が人を殺す、特に就職差別というのは若い能力を持った方々が差別を受けて自分の希望した職種であるとか会社に入れない、そのことで人を殺すことがあるのだ、こういうことを痛感をいたしておる一人でございますので、どうかその点、今後ますます就職差別事案が起こらないような強力な指導と施策をお願いをいたしておきます。

 労働大臣、その点について一言いただければありがたいと思います。

○小里国務大臣 就職差別につながるような事案が発生いたしておりますことは極めて遺憾でございます。これが適正化のために、先ほど局長など答弁いたしましたような気持ちで最善の努力を尽くしてまいりたいと思っております。

○仙谷分科員 終わります。

○粟屋主査 これにて仙谷由人君の質疑は終了いたしました。