1990年05月30日 公職選挙法改正に関する調査特別委員会

○中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。仙谷由人君。

○仙谷委員 仙谷由人でございます。

 先ほど池田委員の質問に自治大臣お答えになって、秋ごろまでには成案化を急ぎたいというふうなお話をされたと思うのです。海部総理大臣は、ちょっと範囲が私にとっては不明確でございますけれども、政治改革に命運をかけるというふうなことを公言をなさっておるやにマスコミ報道等で我々はお伺いをしておるわけですが、自治大臣も、どうなんでしょう、この政治改革あるいは選挙制度改革というふうなものにみずからの政治生命をおかけになるという御決意でいらっしゃるのでしょうか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。

○奥田国務大臣 海部総理は、今度の答申を得られて、議会開設百年という年に当たって、今日の政治改革でも原点はまさに、原因は今日の選挙制度をも含めての問題、政治資金の対応において国民の政治不信をいかにして払拭するかという形にこたえられる意味で、政治改革に命運をかけるという形は公にも発言なさっておるわけであります。選挙担当大臣と申しますか、私もこういった形で席を持つことになったわけです。私も総理と思いは同じと申しますか、これだけの大改革、これだけの制度改革をやるという、並み大抵の決意ではとても、議員の身分、政党の運命に関する重大な制度改革でございますから、この問題には命運をかける気持ちで当たりたい、成案化に努力したいということであります。

○仙谷委員 そこで、多少限定をしながらお伺いをしたいわけでございますが、この場合の命運をかける政治改革というのは、いわゆる小選挙区比例代表並立制という、狭い意味での選挙の制度をつくるために命運をかけるというふうに海部さんも自治大臣もおっしゃっておるのか、あるいは広い意味での政治改革といいますか、本当に国民が必要としておるきれいな政治を実現する、あるいは先ほどの議論でも出てまいりました民意が正しく反映されるような政治をつくるんだ、そういう意味での、例えば腐敗防止、あるいは政党に対する公費の補助、あるいは政治資金の規制等々、まだ答申では具体化されてない部分も含めて命運をかける、そういう政治改革をやるために命運をかけるというふうな御決意なのか、それとも、いやいや小選挙区比例代表の並立制だけできればいいんだという趣旨なのか、その点を重ねてお伺いしておきたいと思うのでございます。

○奥田国務大臣 大きく言えば政治改革に命運をかける。しかし、政治改革という形になれば、つまるところ今日の政治不信というものを除くためには選挙制度にまで立ち入らねばならぬ。選挙制度にまで立ち入るということになれば、広く民意集約と申しますか、政党に、一党一派の利害にこだわらないで、いろいろな学識経験者が一年近くにわたって行われた答申を尊重した線で政治改革に取り組みたいということであろうと思っております。私の場合、政治改革、政治制度改革にまで立ち入った改革に命運をかけるということであります。

○仙谷委員 今の自治大臣の御決意と選挙制度審議会の答申についてお伺いするわけですが、今の観点からこの答申を拝見いたしますと、二ページ目に「選挙制度及び政治資金制度の改革を一体として速やかに行うべきであるとの結論に達した。」と記載されております。ところが、ちょっと細かく読み過ぎるのかもわかりませんですけれども、第一が「衆議院議員の選挙制度の改革」、第二が「参議院議員の選挙制度のあり方」、第三が「政治資金制度の改革」、こうなっております。用語だけからいきますと、この第一から第三までを一体として速やかに行うべきであるというふうに読めないこともないといいますか、そういうふうに読むのが答申の読み方ではないかと私は思うのです。そうしますと、第四の「公的助成及び政党に関する法制」、第五の「選挙の腐敗行為に対する制裁の強化」等々は後回しにしてもいいんだ、速やかに行うのは選挙制度及び政治資金制度の改革を一体として行うというふうに読めるのでございますが、その点はいかがでございますか。

○浅野(大)政府委員 答申の読み方の問題でございますので、私から答えさせていただきたいと思います。

 それは答申に書いてあることを全部と、簡単に申しますとそういうふうにお考えいただいたらと思います。つまり、第四とか第五を除く趣旨ではないというふうにお考えいただいたらと思います。

○仙谷委員 今は、マスコミの議論でもそうでございますし、マスコミ報道に見られる自民党内のけんけんがくがくの御議論も、いわばこの答申に書かれている第一の部分について議論がされておって、参議院の問題についても何か提言とかなんとか出ておるようでございますけれども、参議院などは答申にもなきがごとき内容でございますね。さらに申し上げれば、政治資金制度の改革についても、あるいは公的助成というふうなところについても、なお検討すべきであるとか、全く具体化されていない。

 具体化されておるのは、いわゆる小選挙区比例

代表制の問題だけが具体化されておって、ほかはほとんど具体化されていない。それで「速やかに行うべきである」、こういうことになっておるわけですから、答申を速やかに行おうと思えば、つまみ食いをするか、それとも速やかに行うのを断念するか、どちらかしかないことになるのじゃないか。私は、この答申と今の自治大臣の御発言をお伺いしまして、そう考えざるを得ないわけでございますけれども、その点はいかがでございますか。

○奥田国務大臣 私は、答申が求めておられるのも、今委員がお使いになりましたけれども、いわゆるつまみ食いしない、クリームスキミングしない、一体的にやるところに初めて改革の、制度改革を含めての意義があるというふうに解釈しておりますから、今自民党内でも論議の対象になっておるのは、第一の関門の問題で論議が沸騰していることは御承知のとおりでありますけれども、あくまでも委員が一から幾つが御指摘になった形がワンパッケージで、つまみ食いをしてはならないというふうに解釈いたしております。

○仙谷委員 それでは先ほどの、一番最初の成案化の問題に戻るわけでございますが、この成案化を急ぎたい、成案化をするというふうな御意向をお示しになったのは、あくまでも参議院の問題、あるいは公的助成の問題、あるいは腐敗防止の問題を含めてワンパッケージで成案化するということで、決して、成案化するに当たって、小選挙区比例代表制の並立型と言われるこの答申のいわゆる衆議院議員選挙制度そのものをつまみ食いして成案化しない、こういうことはお約束いただけるわけですか。

○奥田国務大臣 成案化するに当たってはワンパッケージで、しかも各政党、各議員の論議を十分踏まえてやるということでございますから、委員の御指摘のとおりだと思っております。

 

○仙谷委員 そうしますと、私、常識的に考えまして、揚げ足をとるようで申しわけないのですが、秋ごろか秋までかわかりませんけれども成案化を急ぎたいというのは、参議院が何にも答申も出ていないわけですから、秋というのはやはり無理なのじゃないか。というよりも私は、参議院のことをワンパッケージでというふうに海部さんが言い出して、今自治大臣もおっしゃったのを聞いておりますと、本当は一体としての政治改革をやるおつもりがないのじゃないか、きれいな政治を実現するという政治改革をやる意思は余りないのじゃないか。そのために野党がこぞって反対をする小選挙区比例代表制並立型というのを持ち出されたのではないか、そんな感じすらしてならないわけであります。本当に秋までに、秋ごろに、参議院を含め、公的助成の問題を含め、腐敗防止の問題を含めて成案化をできるというふうなめどといいますかもくろみといいますか、そういうものがおありになるのでしょうか。

○奥田国務大臣 全く純粋な気持ちで成案化を急ぎたい。しかし、成案化するに当たっては、各党の真摯な御論議を踏まえてやるということでございます。しかも参議院の制度改革も踏まえて答申を得て、ワンパッケージということになれば相当な御論議に要する時間もありましょうし、いろいろな形は予測されますけれども、私としては開設百年という記念すべき年に、何としてもそういった形にめどをつけてまいりたいという真摯な努力目標であるということを御理解賜りたいと思います。

○仙谷委員 そのように承りまして、次に進みます。

 先ほどから民意の反映ということが議論をされておるわけでございます。私は、民意を量的に正しく反映させるというのは、比例代表制を基本にする選挙制度しかないのではないかというふうに確信をいたしておりますけれども、民意を反映するというときには、あくまでも民意というふうに縮めて使っておる言葉というのは、国民の自由意思、こういうふうに置きかえなければならないと思うのです。そのためには、国民の自由な意思というときには、その意思がお金でゆがめられる、あるいは利権でゆがめられるということがあってはならない。そうしないと、量的に、つまり投票数に応じた議席が配分されたとしましても、それはゆがめられた自由な意思による投票、それに基づく議席ということになりますので、民意の反映というときにはあくまでもきれいな選挙、お金にゆがめられない自由意思が正しく反映されるということでなければならないと思うのです。

 そういう観点から、今度の答申におきましては、例えば腐敗防止についてある種の援言というものがなされておるようでございます。自治省の方にお伺いいたすのですが、立候補予定者の親族あるいは立候補予定者の秘書というふうな者を「連座制の対象となる者の範囲の拡大」というふうに書かれておるわけですが、自治省のイメージですと、この場合の立候補予定者というのはどういうふうにくくるのですか。

○浅野(大)政府委員 お答えに先立ちまして、若干現行制度の説明をさせていただきたいと思います。

 現在は、連座制の規定につきましては「候補者」という字を使っております。ですから、親族も入っておりますけれども、候補者の親族でありますから、候補者という以上は、公示日に届け出をしてそれで候補者になる、それ以後のことであるという規定になっております。これを、公示前に行った行為でも、ですから行為を行ったときは候補者とは現行法では言えないけれども、そういう人も親族が買収等を行った場合は連座制の対象にしたらどうだろうか、こういう考え方でございます。

 そこで、一体いつの時点から立候補予定者になるのかということをあるいはお尋ねかと思いますが、実は現在でも寄附禁止の規定につきましては「候補者となろうとする者」というのがございまして、これは一般にその人がこの選挙に出るであろうというふうに認められる状態になっておれば、立候補予定者としてとらえております。そういうことでございますから、この事前の連座制を立法化する場合にも、その辺が一つの手がかりになっていくのではないだろうか。しかし、具体的には法制的な詰めの議論はいろいろしていかなければならぬだろうと思っております。

○仙谷委員 そうしますと、客観的な日時で立候補予定者であるかないか、あるいはある種の届け出をさせて立候補予定者であるかないかという区分けをするのではなくて、実質的に例えば政治資金規正法上の届け出をすれば立候補予定者とみなす、あるいは立候補予定者であるというふうな法解釈、あるいは文言が予定されておる、こういうふうにお伺いしてよろしいのでしょうか。

○浅野(大)政府委員 具体的に法律案という形にするときには、いろいろな議論はしなければいけないと思っております。と申しますのは、罰則あるいは連座制という非常に強い効果が生じることでございますから、今度は取り締まり上の実務の問題等もあるわけでございます。ですから、口で言う場合は割合、立候補予定者というのは一応説明をしやすいのでございますけれども、本当にそういう罰則をかけるということも含めましてどういうふうに法律上押さえていくかということは、相当いろいろな工夫をしなければいかぬだろうというふうに思っております。

○仙谷委員 前回のこの委員会での議論でも、運動員はいわゆる買収の選挙違反者として逮捕されて刑が科される状態になっておるのに、候補者はその時点では立候補予定者であったということで、連座制の適用はないという愛知県の二つの例が議論になったかと思いますけれども、確かに刑事罰を科す場合には、構成要件の問題として厳密でなければならない、特定性がなければならない、こういう厳然たる要請があるわけですから、困難かとも思いますけれども、選挙に関しては買収、利益誘導的な行為というのはゆゆしい行為であるという観点から、ひとつ自治省の方でも工夫をしていただきたいと思うわけであります。

 さらに、この連座制の対象になる者の範囲でありますけれども、従前から、私どもが議員になる前から、この委員会でも、果たして現行規定の範

囲でいいのかということが問題になっていたようでございます。

 昨年十一月十七日、百十六国会の当委員会の審議でも森清衆議院議員、自民党の方が、多分公職選挙法改正の議員立法としての提案をなさるについての発議者としての答弁をされた中で、いわゆるイギリスの腐敗防止法上の、日本で言えば運動員、あるいは運動員の重要な地位を占めるというふうに言ってもいいかもわかりませんけれども、そういう人の選挙違反行為があれば当選無効になる、あるいは立候補制限の規定がかぶってくるということについても踏み込んだ検討が必要である、非常に参考にすべきであるという議論を展開されておるわけであります。

 この答申にはその辺まで踏み込んだことは書かれていなくて、現行規定が候補者である、だから立候補予定者も含めるということで拡大をするんだ、こんなことですね。なぜ今選挙運動の中でも問題になっている運動員買収といいますか票を金で買うだけではなくして、票をとってくる人を金で買うという最も重要なところが連座制適用になるような制度にしようとしないのか。自治省の見解はいかがですか。

 

○浅野(大)政府委員 まず一つは、答申が出ておりますから答申の関連で申し上げさせていただきますと、選挙制度審議会でも連座制の強化ということは相当多くの議論が闘わされております。それで結論といたしましては、立候補予定者にまで広げるという部分と、秘書に広げる、秘書は従来は入っておりませんから、その分が範囲として拡大したということでございます。

 今お尋ねの点は、一般の運動員というところまで広げられるかどうかというお話だと思いますが、結論的にいきますと、今の時点でそういう一般の運動員にまで広げるということは難しかろうというのが大方の御意見でございます。

 イギリスの場合は、御案内のとおりでございますけれども、向こうの言葉ではエージェントという言葉を使っておるようでございまして、しかも、イギリスはいわば判例法の国とでも申しますか、ああいう国でございますから、実際の裁判を通じてかなり具体的妥当性を求めて対象が特定されるようでございますが、日本の場合は御案内のような法体系をとっておりますものですから、構成要件として決める場合によほどいろいろなことを考えないとうまく決められない。と申しますのは、本当に末端の運動員まで入れてしまいますと、その人が、本当に候補者として全く責任がないにもかかわらず、たまたま何か間違ったことをやったら途端に連座になってしまうということでいいのかというような問題が一方でありましょうし、おとりの問題とかいろいろな問題もありましょう。そういう相当いろいろなことを十分見きわめをつけなければいけないというところがあるのではないだろうか、これは私の見方でございますけれども。

 審議会としては、範囲の拡大としては、この際は秘書に広げようというところで一応結論を出したということでございます。ただ、別途、制裁措置を強化するためのいろいろな新しい発想での検討もしなければいけないのではないかということで、それは答申の一番終わりの方に書いてあると思います。

○仙谷委員 秘書の問題は、国会議員要覧を見ましても、まさに親族と秘書が重なっておる方々が割と多いようでございまして、もしこういう規定をつくっても抜け道で、公設秘書にはならない、私設秘書という名刺は使わせないみたいなことがなされるのではないか。そんなことを考えますと、ないよりましかという程度じゃないか、そんなふうに思います。

 そして、先ほど選挙部長がおっしゃった運動員を連座制の対象に含めるかどうかという問題でございますけれども、どうも一般の運動員、末端の運動員というふうな極端な例を引いて、だから運動員買収あるいは運動員の腐敗行為についての連座制の適用には否定的なんだ、そんな御議論じゃないかと思うのですが、選挙で常識的に言われているのは、大柱、中柱、小柱とかいうことを特に保守の選挙では言われているわけでしょう。あるいは後援会の幹部とかいう言い方があるでしょう。そういう重要なポジションを占めておる人を構成要件としてどうくくるか、技術的に多少難しい問題があるかもわかりません。だけれども、そういう重要なポジションを占めておる運動員が腐敗行為を行った場合には、候補者も運座制で当選無効のペナルティーを受ける、そういうことが今日本の選挙で、政治で求められておるのではないか。

 こういう議論は以前の国会でも議論されておって、自民党の議員の方も、それは参考にしなければならない、真剣に検討しなければならないということをおっしゃっておるわけでございますので、その点について、答申には書かれておりませんけれども、自治省としてはそこまで踏み込んで、腐敗防止を徹底的に厳しく、例えば当選無効の対象になる連座制の中に入れていきたいという御意向はあるのかないのか、その点についてお伺いをいたしたいわけでございます。

○浅野(大)政府委員 私どもも、具体的にこういうふうにすればこの範囲まで対象とし得るのではないかというようなものがございますれば、もちろん審議会でいろいろ御審議いただいているわけでございますから、事務局として説明もさせていただきますが、現在までのところ、私どもとしても、それ以上広げたらいいという対象が、確信を持って出せるようなものがなかなか見出せなかったということでございます。範囲がそれだけでいいのかということは、私どもも問題意識としてはもちろん持っております。

 もう一つは、やり方の問題なのですけれども、今は刑事裁判を経まして、その確定を待って連座、こうなるわけでございますが、イギリスの場合、日本と違う特徴的なことは、刑事裁判とは別に資格剥奪に関する裁判が行われるということでございます。そういう方法がとれないのかということも実は大きな問題としてはあるのだろうと思っております。先ほどちょっと申し上げましたけれども、それが答申の最後に触れておりますことでございまして、そういう新しい制度は考えられる、しかし、これは司法制度の根幹ともかかわりのある問題でございますから、今後若干時間をかけてよく検討してみよう、こういうことになっているわけでございます。

○仙谷委員 私が今から聞こうと思っていたことを先にお答えになったわけでございますが、刑事裁判と別に「刑事罰を科することなく公民権停止等の資格剥奪を行う」ということがまさに答申にも書かれております。あるいは「連座による当選無効等の処分を刑事裁判とは別に迅速に処理する」というふうなことが答申にも記載されております。今の日本の司法制度を中核とする制度の中で、自治省のイメージとして、例えばどういう制度と似たものといいますか、どういう制度にすればいいというような、どんなイメージを持っていらっしゃいますか。

○浅野(大)政府委員 二通りあろうかと思います。一つは、もともと刑事罰にかえて、何らか裁判とまた別の手続で資格剥奪だけのような措置がとれないか、しかし、それが果たして連座制のようなものに適するかどうかというのは必ずしもわからないと思います。それからもう一つの問題は、連座等によるいわゆる資格剥奪みたいなものを必ずしも刑事手続によらないでやることができないかという、二つあろうかと思います。

 最初に申し上げましたような部類につきまして、もし本当にモデルになるようなものが現にあれば、これは割合制度化しやすいのですが、今のところなかなか見当たりません。強いて似ているものを考えれば、例えば海難審判でありますとか公正取引委員会が、そこまで言っていいのかどうかわかりませんけれども、行政機関的なものである程度の処分ができるというような形が果たして参考になるのかどうかという感じは持つわけでございます。

 それから、後者の方は、これはいわばまさに新

たな制度ができるような感じになりますので、これこそ司法の本当の根幹に触れるような問題になるのではないか。私どもも、ちょっと具体的にどういう制度がいいのかというところまでは、今のところイメージとして持ち得ないところがあるわけでございます。

○仙谷委員 ここに書かれておることを素直に解釈いたしますと、司法制度上三審制をとる日本の裁判の中で、刑事事件が確定するかどうかというのをさておいても、その中に当選無効、立候補制限の問題を別途の訴訟形態として入れるということになりますと、確定まで時間がかかりますから余り実効が上がらないのではないかそんなふうに思うのですね。おっしゃったように、やるとすればいろいろな配慮と考慮と検討が必要なんでしょうけれども、行政委員会で、いわば行政処分として当選無効の効力が出るというふうな公定力をその段階で発生させる、その後に取り消し訴訟なりなんなりで争うというふうなことにならないと、本当の意味でも即効性といいますか実効性が上がらないのじゃないかと思うわけでございます。ところが、行政委員会でそこまでの行政処分をすることが果たして憲法上の要請と合致するのか、背反するのかその辺、自治省及び法制局の御見解はどういうふうになっておりましょうか。

○浅野(大)政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、私は、当選無効のようなものを行政委員会的なところで措置をすることは適当でないだろうと思っております。したがいまして、当選無効の措置を迅速にやるといたしますれば、それは今お触れになりました三審制かどうかということがまずあるのでございますが、これは今の法務当局のお考えでも、三審制を二審制でいいというわけにはいかぬだろうということでございますから、刑事処分の問題として三審制を二審制というのはなかなか議論しにくいだろうな、それをいわば刑事裁判とは別の手続で、しかし裁判手続で、必ずしも三審ということをとらないでやれないのだろうかという問題意識があるということでございまして、審議会でもそういう御議論は出ておったということでございます。

○仙谷委員 今おっしゃったのは、例えばある種の別の選挙訴訟を担当する裁判所をつくる、こういう趣旨ですか。それとも今の裁判所の中で、まあ大きく言えば民事部、そういうところに選挙訴訟専門担当部をつくってもらって、そこで早急にやるという、そんなイメージでしょうか、どちらでしょうか。

○浅野(大)政府委員 ただいま申し上げましたのは、必ずしも裁判所の組織そのものをどうするかという観点と申しますよりも、刑事裁判という形態と民事裁判という形態があるのではないかと思っておるのでございますが、そのほかに別途そういう選挙についての特別の裁判制度というものができないのだろうかどうなんだろうかというような感じでございます。

 そういう発想の一つのもとになりますのはイギリスの腐敗行為防止法でございまして、イギリスの場合も裁判所自体はコモンローの裁判所でやっているようでございます。ただ、俗にそれを選挙裁判というふうに名前をつけまして、二人の裁判官を任命してスピーディーに事に当たらせるという制度になっているようでございますから、訴訟手続とでもいうものにおいて、何かそういう特別なものが考え得るのかどうかという問題意識を持っておるわけでございます。

○仙谷委員 時間がそれほどございませんので、次の議題に移ります。

 この答申でも公的助成ということがうたわれておるわけでございますが、まず第一番目に、今度の衆議院選挙における選挙費用、国庫支出といいますか、公営で行われる分といいますか、ポスターとか自動車とか運転手とかそういうものがあるわけでございますが、総額として今度の総選挙費用は幾らかかったのかそしてまた一人当たりに換算いたしますと金額としてどうなるのか。できれば内訳もお教えいただきたいと思います。そしてまた、供託金没収ということで没収をされた人数とその合計金額、それがわかりましたら御教示をいただきたいと思います。

○浅野(大)政府委員 今回の二月の衆議院議員の選挙についてでございますが、我々がいわゆる公営費として整理しておりますものの予算額は百九億六千五百万円でございます。これは議員一人当たりにいたしますと二千百万円でございますが、実際は候補者の数によって違いが出てまいりますから、候補者一人当たりにしますと千二百万円に相なります。

 それから内訳でございますが、これには例えば選挙公報の費用でありますとかそういうものも含まれておりますので、一々申し上げるのは避けさせていただきまして、いわゆる新公営と言われておりますものを中心に申し上げますと、一つはポスター作成の公営費というのがございます。これがトータルで七億六千二百万円でございます。それから自動車の公営費が三億九千六百万円、例えばそういう数字になっております。実際にお金がかかりますのは、あとはポスターの掲示費でありますとかそういうものもかかるわけでありますが、いわゆる新公営費といいましたらそんなところでございます。

 なお、没収いたしました供託金でございます。これは候補者九百五十三名中対象者が二百二十二名でございまして、お一人二百万円でございますから、掛け算いたしますと四億四千四百万円に相なります。

○仙谷委員 選挙制度審議会の答申の中にも公的助成を進めるべきであるというふうなことも書かれておるわけでございますが、諸外国の中でいわゆる公的助成というのを本格的に行っている国はどのくらいの数があって、具体的にはどのくらいの金額を拠出しているのか、おわかりになる範囲でお答えをいただきたいと思います。

○浅野(大)政府委員 いろいろございますけれども、かなり徹底した形で公的助成をやっている国としては、西ドイツ、スウェーデンを例に挙げさせていただきたいと思います。

 西ドイツの場合は、選挙運動費用の補助ということで公的助成が行われておりますが、実際にはその使い道について特段の制限はないと聞いております。西ドイツの場合は有権者数を基準として助成総額を決めております。これについては細かい内容もあるようでございますけれども、ここで一々を申し上げることもいかがかと思いますので、柱となっておりますものだけ申し上げますと、有権者一人につき五マルクということで積算をして、総額を決めて補助を出しているというものがあるわけでございます。一応トータルを日本円に換算して出しますと、換算レートの問題もございますけれども、一九八七年総選挙のときで大体百七十億円程度でございます。ただ、これは選挙費用補助ということで出しておりますものですから、いわば四年に一回の額。ただし、支出は毎年ならして出すわけでございますので、四年分の額ということでお考えいただいた方がいいかとは思いますが、約百七十億円という計算になるわけでございます。配分方法は、原則として各党の得票数に応じて配分いたしております。

 それからスウェーデンでございますが、スウェーデンはまさに一般的補助として制度自体が組み立てられております。それで、原則として議席を持っている政党に対して助成をいたしております。一九八八年分の補助額でございますけれども、日本円にいたしまして約十八億円強でございます。そのほか割合大きな金額として政党事務局補助というものがございまして、これが六億七千万円程度出されておるというふうに承知いたしております。

○仙谷委員 今の点でちょっと話を変えるわけですが、先ほどの、選挙運動費用補助という格好で西ドイツは出しておって、スウェーデンは一般的な補助という形で出しておる。西ドイツの場合は、一般的な補助というふうにして出すのは憲法違反だという判決が出て、それでこういう選挙運動の費用補助という格好で出されておるというふうに

聞いておるのでございますけれども、日本の場合に、憲法二十一条との関係で、国家が政党にお金を出す、この点に関しては憲法違反の問題というのは生じないとお考えでしょうか。

○浅野(大)政府委員 どういう出し方をするかということとのかかわり合いもあるいはあろうかと思いますが、私は憲法違反にはならないと考えております。

○仙谷委員 お金を出す、今度はそれに対する管理監督というものが、私は必然的には生じなくてもいいんではないかというふうにも思いますけれども、ある種の、特にお金の出し入れの面についての監査なり調査というものが行われる可能性も出てくるのじゃないかと思います。憲法上の結社の自由との関係においてどこまでの、お金の点だけでも規制といいますか制約といいますか、そういうものがあれば、憲法違反の問題が発生しないというふうにお考えでしょうか。

○浅野(大)政府委員 ただいま御指摘いただきましたような点について、まさに今選挙制度審議会でも御議論をいただいておるわけでございますが、そういう段階で私の意見を先走って言うことはいかがかと思いますが、現実問題として、政党の中に行政当局が立ち入るということはおよそ考えられないことだろうとは思っております。

○仙谷委員 時間が参りましたので、ちょっとしり切れトンボになりましたけれども、終わりたいと思いますが、いずれにしましても、今度のこの選挙制度改革論議といいますか政治改革論議、どうも小選挙区比例代表並立制の問題だけに傾斜をし過ぎている。つまり、最も民意を正しく反映するために政治腐敗を正さなければ、選挙制度だけをいじっても民意が正しく反映されるような選挙、政治は行われないということを、日本社会党の意見としましてもあるいは個人的な意見としましても申し上げて、質問を終えさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

○中山委員長 この際、暫時休憩いたします。