1990年04月26日 予算委員会第五分科会

○内海主査 これにて上野建一君の質疑は終了いたしました。

 次に、仙谷由人君。

 

○仙谷分科員 日本社会党の仙谷由人でございます。徳島県選出でございます。

 徳島県に吉野川北岸用水という極めて立派なかんがい用水路がつくられたわけでございます。関係市町村が、あの池田高校のある池田町ほか十一カ町、六十九・二キロメートルの国営幹線水路ができ上がったわけです。十九年をかけてつくられた。水利費の軽減と用水の安定を図るということがうたい文句になっておるわけでございます。ところが、今度の総選挙に際しまして、私が関係市町村の、市はございませんので町村を歩いてみますと、農家の方々はこの北岸用水の償還金、要するに農家の負担経費について大変な不満を持っていらっしゃる。改良区を実質的に運営する町の理事者の方々も、口に出しては言いませんけれども、非公式の場ではとんでもないことになっておるという御意見をお持ちのようであります。

 まず、昭和四十三年に計画着工されたこの吉野川北岸用水でございますが、農林省の立場でごらんになって、当初の目算、もくろみと異なった点、何がこの目算外れというかもくろみ外れになったのか、農家に大きな不満と不安を呼び起こすようなことになっておるのか。農林省の立場ではいかがでしょうか、当初の目算、もくろみ、あるいは計画と大幅に違った、こういうことは何でございましょう。

○片桐政府委員 先生御指摘の国営吉野川北岸農業水利事業でございますけれども、この事業は全体実施設計昭和四十五年、実際に着工したのが昭和四十六年ということでございますので、完了が平成元年度完了、先生御指摘のようにかなりの長期間を要したということでございます。確かに当初着工するときにはこんなに長期間がかかるというふうには思っておらなかったわけですけれども、その後の予算の事情とか、それからまたいろいろな資材、労務費の高騰とか、そういうようなことで計画変更も二度ほどやっておりますけれども、そういういろいろな事情の変化に応じて計画変更したり、また場合によっては農用地造成面積を縮小するとか、そういういろいろな変更をしながら今回完成を見たというものでございます。確かに、そういう長期間のうちに農業事情も相当変わってきたというようなことで、当初の予定どおりの成果というものが多少変更されたということは事実でございますけれども、私どもといたしましては、この事業は吉野川北岸の地域の従来のかなり不便な水利事情を抜本的に改善するという効果があらわれてくるのではないかというふうに期待している次第でございます。

○仙谷分科員 時間がございませんので私の方から具体的に言いますが、今長期間かかったというのが当初の計画とは違うというふうにおっしゃいました。そうでございますね。うなずいていらっしゃるからそうだと思いますが、それから、資金が当初計画ではおよそ百四十七億ぐらいですか、それが六百六億ぐらいかかってしまった。具体的には、幹線水路は当初の計画は三面張りの水路をつくる計画だったのに、ほとんどが隧道、トンネルにしてしまった。そのことが費用が百四十七億から六百六億になった大きな原因。それから今おっしゃったように農業事情が変わって、特に開墾というふうな問題は、当初の開墾面積、この農業用水が行きついてそれによって多分開墾がこのぐらい行われるだろう、六百二十ヘクタール計画。それが、五十三・一ヘクタールというふうに地元で聞きましたけれども、五十三ヘクタールぐらいにしか開墾実績がなくなった、そのことがまた農家の負担金を上げておる。こういう見込み違いといいますか、あるいは状況違い、情勢の変化、具体的に申し上げますとその四点ぐらいが指摘できると思うのですが、間違いないでしょうか。

○片桐政府委員 大体先生が御指摘のとおりだと思います。

○仙谷分科員 こういう見込み違いの結果、農家に負担増となって迫ってきておるやに私は聞くのですけれども、この資金が多くかかった、したがって負担金も農家に多くならざるを得ない、あるいは十九年という年月がかかったために農業を取り巻く情勢あるいは行政、農政といいますか農業政策、これも変わった。こういう農家にとっては余りいい条件でないことがふえてきたということも言えると思うのですけれども、そういう事柄については、何か農家に責任を帰すべきような事情といいますか、事由というのはございますでしょ

うか。

○片桐政府委員 先生御指摘のように、この事業は長期かかった、その長期間の間にいろいろ農業を取り巻く事情、情勢が変わって、事業計画を二度にわたりまして変更をいたしたわけでございますけれども、その間いろいろ資材の高騰とか工事手法の変更とかそういう形で事業費も相当高くなった、その結果、農家の負担の額もかなり増大したということは、そのとおり事実でございます。私どもそういう状況の中でできるだけ農家の負担を軽減する努力というものを国、県及び市町村ともどもいろいろ努力をしておりますし、また、今後ともいろいろ努力をしたいというふうに考えておる次第でございます。

○仙谷分科員 私も、農林省の方でもあるいは県、市、町段階でも農家負担の軽減のために努力なさっておるというふうに聞いておりますので、そのことについてはまた改めて要望申し上げますけれどもひとまずおくとしまして、この北岸用水の一環であります池田ダムから香川用水というのが香川県の方に行っておりますね。この香川用水というのは昭和四十三年に着工して五十年に完了した。そこから通水が始まっておる。水資源開発公団が施行したといいますか計画実施したということなんです。ここと比べまして、特に農家で結構でございますけれども、農家の負担金と比べまして、この吉野川北岸用水で今償還あるいは賦課される維持管理費、これの額の比較をしながらちょっとお答えを願いたいわけですが、どうなっておりますか。

○片桐政府委員 香川用水関係の負担金の額につきましては、今手元にちょっとないわけでございますけれども、この吉野川北岸農業水利事業についての国営事業の負担金につきまして先生からの質問通告がございましたので、地元の方にいろいろ問い合わせてみた次第でございます。

 この国営事業の負担金は、国の方は県を通じて納めていただく、県はまた、県の負担分とそれからその下の土地改良区なり市町村の負担分というものをあわせて県が国に納める、こういう仕組みになっておりますので、具体的に農家の負担がどうなっているかということは最終的には土地改良区が決めているというような状況になっております。それで、私ども地元の方に、確かめましたところ、この地区の農家の十アール当たりの負担金は年間五千三百円程度というふうに聞いております。ただ、これを一律に長期間五千三百円ということではございませんで、当初の十五年間は五千三百円程度、その後四千円、二千円と逓減をしていく計画であるというふうに聞いております。

○仙谷分科員 維持管理費がどうなっておるかということですが、水田、畑について大体三千七百円から三千円、そのぐらいの金額が維持管理費として定められようとしておるといいますか、定められておるということで間違いございませんでしょうか。

○片桐政府委員 この維持管理費十アール当たりにつきましても、地元に問い合わせましたところ、平均で年間三千五百円程度であるというふうに聞いております。

○仙谷分科員 当初、この償還金については一反当たり、十アール当たり三千円を十五年払えばいいのだというおおよそのもくろみがあって、そのことを改良区あるいは農家の方々に伝えてあったといいますかそれで同意を得たということのようですけれども、現時点では先ほどあなたがおっしゃったように十五年間が五千三百円、五年間が四千円、それからその後五年間が、先ほど二千円とおっしゃったけれども二千二百円ということになっているようですが、香川用水の方は全く負担金がないという部分と、多くても維持管理費を含めて三千円です。本件の場合には当初の十五年間は約九千円になりますね。そのくらいの差がついておるということで事実関係としてはよろしいのでしょうか。

○片桐政府委員 香川用水の負担金の関係、詳しい資料を持っておりませんけれども、香川用水の場合には都市用水の方とアロケーションをやっているということ、それからまた市町村がかなりいろいろ負担をしているということもありまして農家の負担金はほとんどないのではないかと聞いております。

 

○仙谷分科員 十アール当たり約九千円の負担が本年の六月から始まるということでございまして、さらに地元の改良区、いわば幹線用水の改良区から支線を、農業用水を引く、それを管理する改良区に対する支払い、負担金及び維持管理費が約一万円くらいかかる、つまり北岸用水ができたために十アール当たり一万九千円ぐらいの負担をしなければ農業をできないのだ、こういうふうに言っておるのですが、その点いかがですか。

○片桐政府委員 この国営水利事業の末端水路といいますか、それにつきましては関連の県営事業というものが現在行われているわけでございますけれども、それの負担、工事費の負担なり管理費の負担がどうなるかということについては、現在のところ私ども詳細な数字を持ち合わせていない次第でございます。

○仙谷分科員 それはしかし負担がかかるということですね。自分の田んぼに、畑に水を引いてくるまでに支線の水路の負担がかかるということはお認めになりますね。非常に農家がこの負担に耐えかねて、負担金を払うためにほかへ働きに行かなければいかぬということまで起こっておるというふうに聞くわけでございます。この点については後からも私の方から要望をさせていただきますけれども、今の農業情勢から見ましてもっと負担金軽減の政策、行政がなされなければならないと思います。

 次に大臣にお伺いしたいのですが、幹線用水路を引いたわけですが、減反という問題がございまして、三〇%減反というのが今行われております。減反の田んぼに、受益をする可能性があるということで負担金と維持管理費、支線の維持管理費も含めて要するに反当年間約一万九千円の負担がかかってくる、こういう問題が起こっているというのですよ。これをどういうふうにお考えになりますか。??いやちょっと大臣にお尋ねしたい。

○片桐政府委員 まず私の方から数字的なことについて説明させていただきたいと思います。

 先生御指摘の、いわゆる転作を行いまして水を使わない水田から負担金を取るのはどんなものか、こういう御指摘でございますけれども、私どもの考え方といたしましては、土地改良事業が実施された水田について、転作が行われている場合でも土地改良事業による利益を受け得る状態にある、その年たまたま転作をやって水を使わなかったことがあるとしても、その後、稲をつくる場合にはいつでも水は使えるような状況になっていることから、この国営事業の利益を受け得る状態にあるということで負担金を負担していただくのが妥当ではないかと考えている次第でございます。

 それからまた、確かに最近の農業情勢から農家の負担金がかなり過重になっている、負担金の償還が困難な状態も地域もかなりあるということを考えまして、平成二年度の予算で土地改良負担金総合償還対策事業を予定いたしております。これは五年間で一千億の資金をつくりまして、それで償還円滑化のための対策をやるということでございますが、特にこの吉野川北岸の事業につきましてはいわゆる特別型の国営事業でございまして、新計画償還制度適用地区ということでございますので、償還時に利子助成が予定されているわけでございます。したがいまして、先ほど地元にお伺いした年間五千三百円、十五年間、こういう負担金の額につきましても、この平成二年度の予算案が成立いたしましたならばもう少し引き下げるということで努力をいたしたいと考えている次第でございます。

○仙谷分科員 揚げ足を取るつもりはないわけでありますけれども、減反をして今草ぼうぼうの田んぼで、稲作をいつか行うことになる可能性があるから負担金を徴収するのだとおっしゃいました。

 農林大臣、現実的な話、本当に今の減反政策が

やまって稲作をもう一遍復活させる可能性はあるのですか。お米の自由化が問題になって、通産大臣は一粒たりとも入れないというのは間違っている、そういう論理は間違っていると言っているわけでしょう。自由化でもっと減反をしなければいけないかもわからないという恐怖感に農家の方々がおびえていて、だれが見たって今の減反政策を、減反部分がふえることはあっても減ることはないというのは常識じゃないですか。その国の政策で米をつくらせないということをやっておきながら、その部分から十アール当たり一万九千円も毎年払わなければならないなんという、こんな矛盾した話がどこにあるのですか。大臣、これをどう考えますか。

○山本国務大臣 減反政策についてのいろいろな議論はさておきまして、先生が今ずっとお触れになりました吉野川の北岸農業水利事業、当初の計画変更が大きく今のしかかっておるということについては、今の先生の御質疑でよくわかりました。非常に苦しい状況にある、事情があるということもよくわかりました。ただ、構造改善局長が答弁しておるとおり、平成二年度予算、これはこれから成立をさせていただくわけですけれども、成立をいたしましたならば、償還対策のための財源措置なども講じております。全部が全部これに当てはまるということでもないと思いますけれども、できるだけ工夫をいたしまして、農家の方々の負担を少しでも和らげるようにしたいと考えております。

○仙谷分科員 甚だ納得できないわけでございますけれども、さらに進んで、効果未発生水田、効果未発生畑というのが存在するようであります。つまり支線が引かれていない、あるいは引く計画もない。というのは、山の上の方は当初の計画では支線を引くことになっておったわけですが、減反政策、後継者の問題でもう米をつくれない、ましてや畑は、労働力の問題からして畑作をする余裕もないということで、県営の水利事業としましてもそこまで水路を延ばさないというところが多いようでございます。あるいは、もともと区域内には含まれておるけれども、ため池や谷水といいますか用水で、こんなもの要らないと言っておったところがあるわけでございます。

 効果未発生水田、効果未発生畑、こういうものも負担金と償還金と維持管理費を負担しなければならないということになっておるようでございます。私は、この部分は、先ほどの減反部分と含めまして同様に、客観的に土地改良法九十条の負担金の徴収の項目に言う「その者の受ける利益を限度として、」という項目に法律上どうも該当しないのじゃないか。国の政策として利益を受けることがない、あるいはまた水路がついてないわけですから客観的な利益を受けることがない、そういう田畑、したがいましてそういう農家の田んぼ、畑から負担金、償還金、維持管理費を徴収することは土地改良法に違反するのではないか、そういうふうにむしろ考えるわけでございます。そしてまた、土地改良法の施行令によりますと、「これらの者の農業経営の状況からみて相当と認められる負担能力の限度をこえることとならないこと。」というのが土地改良事業に要する費用について農家が負担することとなる金額というふうに定めておりますから、この条項から照らしても、現実にもう畑作、稲作をする余地が客観的にないところ、国の政策によって畑作、稲作をしないところ、こういうものから徴収をするというのは政治としても甚だ穏当を欠くと思うのですが、いかがでございますか。

○片桐政府委員 土地改良事業は、土地のつながりとか水系による一定の地域内の土地を対象に受益農業者の申請によりまして実施するということでございますので、当該一定地域内の受益農業者の三分の二以上の同意で事業を実施しているというものでございます。したがいまして、土地改良事業の負担金といいますのも、先生御指摘の土地改良法九十条という規定がございますけれども、当該事業による利益を受ける者、こういう表現でございますけれども、その表現の中には、現実に受けたというばかりでなく、たまたまいろいろな事情で受けられないということもあるかもしれませんが、受け得る状態にあればやはり受益農家が現実に水を使用するしないにかかわらず負担させることができるというふうに私どもは解釈している次第でございます。

 

○仙谷分科員 減反とか水路がついてなくても受け得る状態にあると強弁なさるのであれはそれはそれで結構ですけれども、そんなことは裁判所の常識からいっても我々の常識からいってもあり得ないじゃないですか。その点ひとつよく農家の立場に立って、あるいは社会通念の上に立って再考を願いたいと思います。昨日、こういう判例がありますということで御指摘をいただきました愛知用水事件の判例を見ましても、これは現実に、間接的に利益を受けていることが認められる。ちゃんと自分が水を引く池に用水が来ておるという場合ですよ。そうですね。時間がございませんので、この判例をよくお読みいただければ、私が指摘している減反、効果未発生水田、畑について、裁判所の判例からしてこういうものを徴収できるというふうにはならないという私の考えを述べておきます。

 そしてもう一つ。これは徳島の農家の方々の負担能力を超える、払えない、要するにその土地から生産ができないわけですから、利益を生まないから当然払えないのです。こんなことをされると、ほかへ行って土方をしたり、どこかへ勤めたりして稼いできた金で払わなければしようがないわけです。払えないし、払いたくない、払わないという場合には、これは現実問題として都道府県知事が、あるいは土地改良区として地方税の滞納処分ということになるということのようなんですが、間違いございませんか。

○片桐政府委員 土地改良区の賦課金を滞納した場合には、土地改良法第三十九条の規定によりまして、土地改良区は強制徴収を行えることになっているわけでございます。しかし、この強制徴収を行うか否かということにつきましては、土地改良区の判断にゆだねられているということでございますので、土地改良区の中で十分検討した上で判断されるというふうに思っております。

○仙谷分科員 質問の時間がほとんどなくなりましたので、私の方から要望申し上げておきます。これは法律的には滞納処分、強制処分できるわけですね。そうしますと、吉野川北岸用水ができて、減反があって、あるいは効果が発生していない畑でも北岸用水の負担金を課されるために、滞納処分によって公売処分に付されたら自分の田畑がなくなるというばかなことになるのですよ。そんなことにだけはならないように、ひとつ指導をよろしくお願いしたい。それから、先ほど補助金を予算化してもっと軽減するというふうにおっしゃいました。これもひとつ今後とも特段にお取り組みをいただきたいと思います。

 それからもう一点は、農林省管轄の水路でございますので、農家にだけ負担がいっておるわけでございますけれども、この水路を、これだけ農業事情が変わってきて、つまりこの水を使う田畑が少なくなってきておる、あるいは広がらないというような事情もあるようですから、他の目的、工業用水あるいは上水道、あるいは徳島でいえば淡路島にこの水を持っていくとか、他の省庁との関係で非常に難しいと思いますけれども、その点をひとつ御苦労いただいて、農家の負担が少なくなるようにお進めをいただきたいと思います。ちょっと答弁をお願いします。

○山本国務大臣 これは、先生は法律家としてお聞きになったり御指摘をなさっているはずではない、政治家として、しかも地元を代表し、地元を愛する政治家としておっしゃっているのだ、私はこういうふうに受けとめておるのです。

 一番最後にありました、この事業で供給される水をほかへ持っていって利用可能な道を探せ、こういうことですけれども、もちろんこれは勉強させます。させますが、非常に難しいということだけはぜひ御承知を願いたい。

 それからまた、現状に即して農家負担ができる

だけ減るようにしっかりやれということにつきましては、私、よく受けとめた次第です。私はこの話を聞きましたときに、土地改良区とか県から本問題について何か言ってきているかということをすぐ言ったのです。聞いておりませんということですから、先生が御指摘される前に、今御指摘のような数々があれば、当然地元と不離一体でやっている土地改良区なり県から言ってこないはずがないと私は思っております。ですから、これは土地改良区や県にもよくお尋ねをいたしまして、せっかく勉強をして農民のためになるようにできるだけ努力をしたい、こう思っております。

○仙谷分科員 どうもありがとうございました。

○内海主査 これにて仙谷由人君の質疑は終了いたしました。

 午後零時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩