1990年04月26日 予算委員会第四分科会

○金子(一)主査代理 これにて常松裕志君の質疑は終了いたしました。

 仙谷由人君。

○仙谷分科員 日本社会党の仙谷由人でございます。

 私は、本日の質問におきまして、今新聞紙上でも連日のごとく報道されておるわけでございますけれども、そしていわゆる九一年問題として日本の国際性といいますか、あるいは日本及び日本人が国際社会の中で人権、とりわけ外国人の人権というふうなものをどのように認識をして政治を行っていくのか、あるいは物事を処すことができるのかという問題が現在問われているというふうに理解をしておるわけですが、とりわけ日本の場合にはここに居住する在日韓国人、朝鮮人、つまり居住することが彼らの自由と責任ではなくして存在し生活せざるを得ないという、この在日韓国人、朝鮮人の方々の労働権、生活権にまつわる事柄を労働省に質問をさせていただきたいというふうに考えるわけでございます。

 といいますのは、私は昭和四十六年に弁護士登録をしたわけでございますが、一番最初に依頼を受けた事件が日立製作所の朴鐘碩という青年に対する就職差別です。在日韓国人であるがために採用を取り消したという事件でございました。これは日立側の言い分によりますと、本名を名のらなかった、新井鐘司というのが日本名でございましたが、本名を名のらなかった、本籍地に出生地を記載した、こういう理由で経歴詐称である、あるいは朴君という青年はうそつき人間であるということで採用を取り消したのであります。横浜地方裁判所に提訴をいたしまして、約四年の後に勝訴判決を受けて、その後日立も非を認めて朴君を採用いたしました。朴君は現在でも日立製作所でソフトウエアのプログラマーとして元気に働いています。

 皆さん方もここまで申し上げるといろんなイメージが浮かんでくると思いますが、今在日韓国人、朝鮮人が、いかに能力があろうとも、学歴があろうとも一部上場企業といいますか、二部上場企業といいますか、いわゆる一流企業にほとんど

採用されないという実態があるというふうに私は思うわけでございますが、こういう状況について労働大臣、いかがお考えですか。

○塚原国務大臣 まず企業の採用選考の件につきまして、国籍を理由としました差別的な取り扱いが行われる、これは大きな問題ではございますし、人権尊重の観点から見ましても極めて遺憾なことであると考えております。

○仙谷分科員 大臣から基本的な御認識を伺ったわけでございますが、新聞報道等によりますと、いわゆる三世問題ということで日本側の主張といたしまして、就職差別がないように企業へ指導、啓発に努めているという表現とか民間企業については政府として差別解消を積極的に訴えるということが報道されております。企業への指導、啓発に努めているという部分でございますが、今までに労働省が企業に対して、いわゆる在日韓国人・朝鮮人の就職に関してどのような指導あるいは啓発行動をなさったのか、お伺いをいたしておきたいと思います。

○塚原国務大臣 具体的な話ですので政府委員の方から。

○清水(傳)政府委員 職業安定法におきましても、職業紹介等について国籍を理由とした差別的取り扱いを禁止いたしているわけでございます。その趣旨にかんがみまして、企業の就職に当たりましてはあくまでもその本人の適性と能力を基本として行うべきである、こういう大原則のもとに企業に対してずっと粘り強い指導を行ってきております。

 具体的な活動といたしましては、できるだけ多くの企業にそういうふうな形でそういうふうな考え方を徹底する、そういう機会というのは、一つは、新規学卒者の採用に当たりまして全国の安定所単位で求人説明会というのを各地で多数の企業を集めまして行ってまいるわけでございます。そうした機会を通じまして、在日韓国人であるかどうかを問わず、応募者本人の適性、能力を中心に採用選考を行うように事業主に対する指導、啓発活動を展開をしてまいっておるところでございます。

○仙谷分科員 今指導とおしゃったのは、求職説明会ですか。その場で口頭で労働省の担当者が企業関係者に話をする、こういう話ですか。それとも何か通達を出したりあるいはパンフレット等々で啓発活動をするとか、そういうことをなさっておるのかおらないのか、そのことを御教示願いたいのですが。

○清水(傳)政府委員 就職差別問題そのものは、私どもの安定機関の全国的な活動の展開の中でそういう事案に遭遇することは従来からもあったわけでございますし、その都度そうしたことを強く是正をするための指導通達的なものはもちろん出しつつ、パンフレット等におきましてそうしたことを企業に徹底をするように指導をいたしております。

 ともかく本人の適性と能力に応じた採用選考が行われるように、また具体的な行為の中では、選考関係の書類なんかにおきましても、あくまでも本人の適性と能力ということが中心となるようなそういう書式を通じて行えるように、そういうことを繰り返してこれまで指導してまいっております。

○仙谷分科員 通達とパンフレット等がおありになるということでございますので、それは後ほど私のところにお持ちいただきたいと思います。

 時間の関係もありますので、次に進みます。

 そういたしますと、いわゆる被差別部落に住む方々の就職問題のように、研修を企業の中で行うよう指導するというふうなことまではなさってないのでしょうか。

○清水(傳)政府委員 在日韓国人や在日朝鮮人の方々の採用、就職の問題に限りまして研修等を行ってきたということはございません。

○仙谷分科員 労働省のそういう通達等を含めた指導で、七〇年の十二月に発生した日立の就職差別事件以降どの程度就職差別がなくなった、あるいは在日韓国人・朝鮮人の採用が促進されたというその効果ですが、どのようにお考えですか。

○清水(傳)政府委員 職業紹介そのものに当たりまして、在日韓国人や在日朝鮮人であるかどうかによって異なる取り扱いは行っていないわけでございますが、そうした方々の採用、就職状況につきまして、逆にまた人権侵害につながるおそれもなきにしもあらずということもございますので、現在までのところ特別にそういう面について調査をしたという形をとってきてはおりません。もちろんそういう事案が生じたような場合には、個別に十分な調査を行って指導強化をしてまいるということは当然でございます。

○仙谷分科員 そうすると、労働省の今までの指導等ではどのくらい効果が上がったかわからない、こういうふうにお伺いしてよろしいですか。

○清水(傳)政府委員 件数的にどうのこうのというのは非常に難しい問題でございますけれども、しかし採用、就職に当たりまして、本人の能力と適性を中心として行っていくべきであるという考え方は相当程度浸透してきつつあるというふうに私どもは考えております。

○仙谷分科員 ちょっと話題を変えますけれども、上場一部と二部の企業で在日韓国人・朝鮮人が、特に大卒の男子が何人程度採用されて現在働いているか、高卒の方が何人働いているか調査なさったことはないのですか、あるのですか。

○初谷説明員 御指摘のような問題について今まで調査した結果はございません。

○仙谷分科員 なぜこういうことを言うかと申しますと、皆さん方も、既に自民党の代議士になっていらっしゃる方もいるわけでございますけれども、東京大学の法学部を出ても、朝鮮人のまま、韓国人のまま日本の一流企業に就職したいということを念願しても採用されないというのが実態なんです。私の二年後輩の親しい友達も、どこかの会社に就職したかったけれども、就職させてくれぬ、つまり門前で受けつけてくれない。そのために故郷に帰ってお父さんの仕事を手伝っています。事業なんていうレベルじゃない仕事を。それが実態なんです。

 そして、日立の事件以降二十年がたったわけであります。私は日本の労働市場が、企業経営者がもっと自由に、オープンになってきたのではないか、労働省も強力な指導をその後なさったのではないかということを期待しておったわけでございますけれども、今お伺いしますと、調査もなさってないのですね。これはある意味ではゆゆしい問題だというふうに私は考えます。早急にその点を調査していただきたい。そして調査をしていただくときには、必ず日本名で採用されて日本名のまま働いている人数、それから在日韓国人・朝鮮人として本名で採用されて本名で働いている人数、これをぜひお調べをいただきたいと思います。

 次に、問題をもう一歩進めますけれども、政府はこの三世問題等々で、民間企業については政府として差別解消を積極的に訴えるというふうな御意向をお持ちだということが新聞報道されております。その点は今後どのように積極的に差別解消策をとろうとしておるのか。調査もしないというふうな今までのレベル、まあ求職説明会で一般的に労働基準法三条がある、国籍によって差別してはいかぬ、そういうことをただ述べるだけなのか、本当に上場一部、二部企業の会社、こういう会社でも在日韓国人・朝鮮人が一つの民族として生きていく、そのために彼らの能力に応じて、適性に応じて採用するような強力な指導を具体的になさるおつもりがあるのか、ないのか。具体策があるのだったらお聞かせください。

○清水(傳)政府委員 やはりこの問題につきましては、新聞等にも出ておりますような状況の中で一般的な関心もこれから非常に高まってくる問題であろうというふうに存じますし、そうしたことも背景としつつ、私どもといたしまして、就職差別がないようにするために通達を改めて出して、そういう指導を徹底することを行ってまいりたいと考えておるところでございます。

○仙谷分科員 通達のほかには今お考えになっているようなことはございませんか。

○清水(傳)政府委員 当然それはそうしたことを徹底させるための活動を展開するための基本的な施策でございまして、できる限り、いろいろな機会を通じての徹底のための方策というのをそうした中に盛り込んでまいりたいと考えております。

○仙谷分科員 大臣、通達を出すというようなことで、行政当局の方は、まあ人の問題だから具体的に在日朝鮮人・韓国人の就職状況が改善されなくてもそれは労働市場は自由なのだからいたし方ないというふうに私には聞こえるのですね、こういう発言を聞きますと。今、日本が全世界の国々から求められる、特にアジアの国々から求められておるというのはそんなレベルの話ではないのじゃないかという気がするわけです。とりわけ在日韓国人・朝鮮人というのはパスポートを持っていない方々です。パスポートを持っていないというところにこの問題の本質がある。今、盧泰愚大統領の来日問題、三世問題ということで連日国民の関心も集め、かつまた韓国国内におる方々の関心も非常に集めておるようでございますけれども、労働法制の問題といたしまして、一歩進めて在日韓国人・朝鮮人の方々の就職を促進する、雇用を促進する法制を、あるいは通達の中であるいは行政指導の中で予算の裏づけを持ったそういう制度をこれからつくっていこう、そういうお気持ちになりませんですか。いや大臣に聞いているのです。

○塚原国務大臣 一番の基本は、やはり雇用をする方とそこに働かれる方の関係ということになってきますので、逆にどうなんでしょう、その調査のときに、これは私、後で先生から御指導いただかなくちゃいけないと思うのですけれども、本当にその調査を絶対した方がいいのかどうか、まず冒頭にその話をこういう場じゃないところでまたいろいろと御指導もいただかなくちゃいけないと思うのですけれども、そういう問題とか、また特定の形で特別な措置を講ずるようなことがいいのか悪いのか、これは物すごく難しい問題だと思うので一生懸命勉強をさせていただきたいと思います。

 

○仙谷分科員 障害者雇用促進法という法律があります。企業に障害者の雇用を促進させるために、枠を決めていわば半ば採用義務を課しておる、採用された方には金銭で給付金が出る、こういう制度があります。私は必ずしも大会社に給付金を与える必要はないと思うのです。そしてまた、個別の労働契約の中で能力があるか適性があるかという問題はまた別途の判断だろうと思うのです。しかし、ある種の割合で在日朝鮮人・韓国人という方々が存在するにもかかわらず一般的に学卒者を採用するのは皆無であるというこの実態、いわゆる一流企業において皆無であるという実態は、何らかの法的規制のもとに採用が促進されるような法制をつくらないと、何だ日本の国は、ということになってしまうのじゃないでしょうか。ひとつその点、労働省の当局の方でも、技術的にやや問題があるのかもわかりませんけれども、これは日本の歴史の清算ができていないということについての大変な深刻な問題でございますという受けとめ方から努力をしていただきたいと思います。

 例えば、今日本は経済力が非常に大きくなったと言われております。ドイツのワイツゼッカーという大統領が一九八五年五月八日、まさにドイツでいえば戦争の終わった記念日でございますが、この日、こういう演説をしております、この経済力で諸民族の間の社会的不平等の調整に寄与する責任を担っていることを承知しておる。こういうことを、日本の総理大臣とか労働大臣とか、今の段階でもおっしゃる方がいないというのが日本の政治の不幸だと私は思うのですね。そして、アメリカから構造協議というふうなことで、日本の民主主義って何だ、日本は民主主義でも異質じゃないかということを言われる大きな原因にもなっておると私は考えます。どうかこの在日韓国人・朝鮮人の法的な権利の問題もさることながら、生活の実態に直接最も関係のある就職差別の問題を具体的、実践的に解決できるような方策をお考えいただきたいというふうに思います。

 もう一点、日本の企業が特にアジアに進出をいたしまして、つい最近では特に韓国では亜細亜スワニーとか韓国スミダ電機とか、労働紛争を惹起させて日本に逃げ帰ってくるというふうな事態があります。韓国の労働法制と日本の労働法制とは違うと思いますけれども、やはり先進資本主義工業国と言われる国での労働法制、この中で共通の部分もいっぱいあると思うのですね。団体交渉しなければいけない、労働条件は労使合意のもとに進めなければいけないというふうなことはあると思うのですね。せんだっての亜細亜スワニー等々の労使紛争について、労働省として何か指導なさったのかどうなのか、その点についてまずお伺いをいたしたいと思います。

○岡部政府委員 韓国・馬山地区におきまして、御指摘のスワニーあるいはタナシン、スミダ電機等々の労使紛争が発生をいたしております。このうち、スワニー、タナシンにつきましては既に解決を見ているわけでございますが、スミダ電機はまだ解決の糸口をつかんでおりません。

 その間にあって労働省は何か指導をしたのかというお尋ねでございますが、公式的に申し上げますと、これは日本の民間企業が出資している現地企業における現地の個別的な紛争でございまして、つまり、適用法規、労働法は、現地主義と申しますか属地主義でございますので、韓国の法令が適用になる、それからまた、紛争解決に当たっての機構も韓国の労働省傘下の機構が当たる、こういうことが建前でございます。

 したがいまして、基本的には日本政府が直接に関与すべき立場にはないわけでございますが、これにつきまして日本の労働省としては、話し合いの再開に向けましていろいろ期待を申し上げますとともに、これはまことに非公式ではございますが、そういう労使にお会いをしたり、あるいは韓国大使館の方から事情を聞いたり、そのようなことが非公式にはございますが、公式な立場といたしましてはやはり当事者間の自主的な話し合いを期待する、こういう立場でございます。

○仙谷分科員 進出されておる大企業も中小企業もあると思うのですけれども、こういうところに日本の労働省として、日本の労働法制はこうだ、経営者として守らなければならないことがありますね、あるいは、先進資本主義工業国と言われている国での共通の労働基準権に対する考え方というものも当然存在しますね。そういうことを踏まえた上で、確かに現地に行けば現地の法制に従うということはまず一番です。しかし、現地の法令に形式的に合致するからといって切り捨て御免というふうな、何をしてもいいということにはならないと思うのですね。合法的であっても、解雇してたたき切って、自分たちだけ財産を日本へ持って帰ってきてぬくぬくとする、そんなことはだれが見たって許されないわけであります。

 労働省としては、あらかじめそういうことのないように、今後、進出企業に対する指導をなさるおつもりはありませんでしょうか。

○岡部政府委員 御指摘のとおりに存ずるわけでございます。

 現在、政労使三者構成の多国籍企業労働問題連絡会議というものを開催しているわけでございますが、これも近々開きまして、先生御指摘のような事情につきましては十分に協調してまいりたいと考えております。

○仙谷分科員 時間が参りましたのでこの辺で終わらせていただきますが、労働行政も、労働もついに国境を越える時代になったんだということをひとつ十二分に御認識いただいて労働行政を進めていただく。そしてまた前提としては、どうしても在日韓国人・朝鮮人の問題を私ども自身の問題として解決しなければ、就職差別の問題も解決しなければ、アジアの中で日本が尊敬される存在には絶対にならないということを肝に銘じて取り組んでいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

○金子(一)主査代理 これにて仙谷由人君の質疑は終了いたしました。