1990年04月26日 予算委員会第二分科会

○町村主査代理 これにて小森龍邦君の質疑は終了いたしました。

 次に、仙谷由人君。

 

○仙谷分科員 日本社会党の仙谷由人でございます。

 今、小森議員からも、いわば日本の人権感覚あるいは日本の政府の外交姿勢の前提である人権問題についての所見を問うといいますか、そういう質疑がなされておったように伺っておったのですが、私も、今一方では日米構造協議という格好で、日本の民主主義、自由、人権というふうな考え方あるいは実態が、先進資本主義工業国と言われるヨーロッパ、アメリカ社会の人権、自由というふうなものと異質なのではないかという問題提起がなされておる。他方、本日の新聞報道を拝見しましても、在日韓国人三世の、朝鮮人の日本における諸権利をどう私どもが保障していくのか。在日韓国人の、在日朝鮮人の方々の処遇をどうするのかということが問われておるというふうに考えるわけでございます。それで、この問題は実は非常に前提的な問題であると同時に、これから日本が国際社会で憲法前文に書かれてありますように名誉ある地位を占められるのかどうなのかという点から考えますと重大な問題だというふうに考えまして、本日主として外務大臣に質問をさせていただきたいというふうに考えておるわけでございます。

 まず第一番目に、本日、新聞報道で、在日韓国人の三世の問題につきまして大枠の方針を固めたというふうな報道がなされております。昨日の新聞報道では、昨夜急遽局長を、谷野さんというのですか、韓国の方に派遣をしたというふうなことが報道をされておるようでございます。きょうの新聞で、「在日韓国人三世の法的地位・待遇問題で大枠の方針を固めた。」こういう報道があるわけですが、その固まった内容を、概略で結構でございますけれどもまずお聞かせをいただきたいと思います。

○福田(博)政府委員 けさほども他の委員から御質問がございましたいわゆる三世の問題につきましては、あの方たちは、まだ生まれた方は四人しかおられませんが、まだ赤ちゃんでございます。その方たちの待遇をどういうふうに考えていくかという問題につきましては、この人たちが日本で生まれ、日本で育って、日本を生活の根拠にしていく人々であるという認識の上に立って、どういうことを考えるべきかということを目下鋭意検討中でございます。日韓間の法的地位協定に来年の一月までに協議を行うという規定もございますし、長期的な日本と韓国との間の友好的な関係にも重大な影響を及ぼす問題でございますので、鋭意検討中でございまして、韓国側からは九項目にわたって先方の要望が出てきていることは御承知のとおりでございますが、それぞれの問題につきまして確定的な方針が固まったという段階ではまだございませんので、それぞれの概略を報告せよという御要望ではございますけれども、現時点ではまだそれを申し上げる段階に至ってないということでございます。

○仙谷分科員 新聞報道等々で「三世に特別戸籍」

とか、指紋押捺の廃止とか、こういうことがなされるわけでございますけれども、そうしますと、これは外務省がまだここまで方針を固めたあるいは政府全体としてこういう方針が固まったということではないのでございますか。

○福田(博)政府委員 報道にいろいろなことが出ていることは、それはまさにそのとおりでございますが、よくごらんになりますと、毎日内容がそれぞれ違っていることにお気づきいただけると思います。外務省を初め、関係各省で鋭意検討しております。できるだけ早く関係者が納得する結論が得られるよう努力はしておりますが、意見がまとまったということではございません。

○仙谷分科員 話を先に進めますが、四月十八日の衆議院の外務委員会で中山大臣がサハリン残留韓国人問題について謝罪をされたというふうに聞いております、何かまだ議事録ができてないようでございますけれども。この謝罪をされた大臣でございますが、謝罪をするに至ったと申しますか、謝罪をするその基本的な大臣の認識を、歴史の認識ということになろうかと思いますが、お伺いをしたいと思います。

○中山国務大臣 さきの衆議院の外務委員会で、社会党の五十嵐委員の御質問に私はお答えをしたわけでありまして、戦前のいわゆる日本の政府が、現在の朝鮮半島から御本人の意思に反して強制的にサハリンに移住させられて、そして敗戦の結果、無条件降伏をした日本の政府が、この移住をさせた方々をもとの既に住まっておられた朝鮮半島に戻す手段もなくそのままそこに今日まで残留せなければならなかったということについては、私はまことに済まなかったと思っています、こういう答弁を申し上げたのであります。

○仙谷分科員 また、四月十八日の報道で私は知ったわけでございますが、四月十四日に韓国人被爆者らが来日をして長崎市役所で本島市長にお会いになった。その際、本島市長が「長い間、日本の植民地支配で皆さんに迷惑をかけた。非常に遅くなりましたが、謝罪を申し上げたい。韓国人被爆者は日本人以上に援護すべきだ」というふうに謝ったという報道がなされております。この本島市長の謝罪でございますけれども、これについての中山大臣の御所見と、そしてまた、今の御答弁でも、私の理解では、サハリン残留韓国人に対しては済まなかったというふうに大臣が謝罪された、謝罪の意を国会で答弁されたということなのですが、この韓国人被爆者の人たちについては、大臣、どういうふうにお考えになっておるのか、その点をお聞きいたしたいと思います。つまり、本島発言と、そもそも韓国人被爆者らに対して外務大臣としてどういうふうにお考えになっておるか。

○中山国務大臣 本島市長の御発言は、心情を率直に吐露されたものと理解をいたしております。

 また、私がどのようにこの韓国人の被爆者の方々に対する感じを持っておるかというお尋ねであろうかと思いますが、私は、日本人であろうと韓国人であろうと、いわゆる原子爆弾の被害を受けられた、そして被爆後何十年もその放射能によって身体上の、精神的にも肉体的にもこの後遺症が残っているという方々については、まことにお気の毒だという気持ちを持っております。

○仙谷分科員 韓国人被爆者は日本人以上に援護すべきだ、その理由は、日本の植民地支配で皆さんに迷惑をかけた、つまり、被爆をしたことの原因が、強制連行であるとか、あるいは土地調査事業により土地を奪われて日本に来ざるを得なかったとか、そういういわば強制、半強制のもとに日本に、広島、長崎に居住せざるを得なかったために被爆をした。日本人の被爆者の方々も戦争の犠牲者として非常にその気の毒さというのは私も考えますけれども、より以上に、被爆をした契機が、日本の戦前の権力による強制あるいは半強制的な力によって連れてこられた、そこで被爆をした。そのことに、日本の現在の政治を担当する外務大臣という職にある方としていかがですか。やはり特段のお気持ちが、歴史的な認識があってしかるべきなのじゃないでしょうか。

○中山国務大臣 私は、率直に申し上げて、当時の政府によって強制的に連行されてこられた方々が不幸にして長崎あるいは広島等で被爆をされたという事実については、まことにお気の毒であるという気持ちであります。

○仙谷分科員 そこで、もう一つ話を進めたいと思うのでございますが、先般、東ドイツが自由選挙のもとに東ドイツ人民議会というふうなものを構成いたしました。そして、まず最初に、これは四月十二日ということでございますけれども、人民議会が「ユダヤ人に対する侮辱、迫害、殺害に共同の責任を負うことを認める。我々は悲しみと恥辱を感じ、ドイツの歴史に対するこの重荷を自らに受け入れる。」ということ、そしてまた「ドイツ人がソ連の人々に加えた恐ろしい苦しみを忘れていない。」さらにはチェコスロバキア侵略について「国際法違反を防ぐことをしなかった。」この「不正に対する許しをこう。」、こういう人民議会での声明がなされておるわけですが、この点について大臣は、一政治家としてでも結構でございますし、外務大臣としてでも結構でございます、どういうふうにお考えになりますか。

○中山国務大臣 今の先生のお話の、東ドイツ人民議会共同声明のことでございますね、これは、一政治家として率直に申し上げれば、ナチス時代にドイツ人が諸国民に与えた困苦に触れつつ、東独在住ドイツ人の歴史と将来に対する責任についての立場を表明したものであると思っており、同国の民主化を反映したものと認識をいたしております。とりわけ、同声明が改革以前の立場を改め、ユダヤ人迫害の責任を認めたこと、またプラハの春への出兵の責任を公式に認めたことは注目に値すると思っております。

○仙谷分科員 何か客観的な論評をされるんで、政治家として、外務大臣としての大臣の本音の部分を、いい格好しておるわいということなのか、政治はかくあらねばならない、政治家はこのような深刻な反省と陳謝の上に立たなければ侵略の歴史を清算することはできないんだ、あるいはそのことを絶えず心に刻みながらでないと政治をしてはならないんだというふうなところまでお考えなのか、それとも、まあこんなものはドイツのことだ、日本とは関係ないというふうにお考えになっておるのか、改めて御所見を伺いたいと思います。

○中山国務大臣 ドイツの過去の歴史、またヨーロッパの歴史を見て、あるいはまた世界の歴史を見ながら、侵略をする者、また侵略をされた民族、これがお互いに持つ長い恩讐というものは消えていかない、数世代続くものであるということは私よく認識をいたしております。そういう意味で、あの戦争が終わった後の日本の人々は、再びこのようなことがあってはならない、我々は平和国家を目指して生きていかなければならないという国民的なコンセンサスは既にでき上がっていると信じております。

○仙谷分科員 話を進めます。

 外務大臣もドイツのワイツゼッカーという大統領を御存じだろうと思うのです。一九八五年の五月八日に、つまりドイツの終戦といいますか、戦争終結の記念日であるようでございますが、そこで演説をされたものが本になっております。お読みになったことがあると思います。この中で、例えば「罪の有無、老幼いずれを問わず、われわれ全員が過去を引き受けねばなりません。全員が過去からの帰結に関り合っており、過去に対する責任を負わされているのであります。」というようなくだりもございますけれども、このワイツゼッカー大統領の演説をお読みになって、日本の日韓併合から始まる朝鮮支配、これについて大臣はどのようにお考えになりますか。

○中山国務大臣 我が国の過去の歴史に対する認識は、昭和四十年の日韓共同コミュニケ、昭和四十七年の日中共同声明にも述べられておりますとおり、この気持ちには、考え方には何らの変わりもございません。我が国が過去において戦争を通じて近隣諸国等の国民に対し重大な損害を与えたことは事実であります。このような我が国の過去の行為において侵略的事実を否定することはでき

ないものと考えております。また、我が国としては、かかる認識を踏まえ、平和への決意を新たにするとともに、このようなことを二度と起こさないよう、平和国家として世界の平和と安定のために貢献をしていく考え方でございます。

 さきの大戦についての私の考えは、今御答弁を申し上げたとおり、軍国主義的による侵略であったということを認めたいと思います。

○仙谷分科員 例えば、昨年ですか、パチンコ疑惑をめぐって国会で論戦が行われて、その影響なのか影響がなかったのか、本質的な因果関係はわかりませんけれども、在日朝鮮人の子弟といいますか、生徒さんに対するいじめというふうなものがありました。それに対して海部首相は、僕がいじめたわけじゃない、こう言っておる。何か後に撤回されたやにも聞きますけれども、基本認識として、僕がいじめたわけじゃない、こう言っておるわけですが、この在日韓国人・朝鮮人の方々は、このワイツゼッカーの言葉をかりるならば、日韓併合がなければ、日本の朝鮮支配がなければ、あるいは強制連行がなければ、今の朝鮮半島の分裂状態というのもないわけでありますし、いじめもない。まさにそのことを認識する、そこからしか始まらないのではないかと思いますけれども、在日朝鮮人生徒に対する暴行というふうなものが起こったときに、外務大臣自身はどういうふうにお考えになりましたか。

○中山国務大臣 今お尋ねの学校等における在日朝鮮人の子弟に対する暴行というものはあってはならない。外国人子弟だけではなくて、学校における暴力行為というものには私は強い反発を持っておりまして、そういうことのない世界、特に日本におられる外国人の子弟、こういう方々に対するそういうふうないじめ等はあってはならないものだと私は考えております。

○仙谷分科員 もう少し哲学的といいますか、政治の基本姿勢についてお伺いしたいわけでありますけれども、時間がございませんので、先に進みたいと思います。

 そうしますと、外務大臣のお言葉をかりれば、朝鮮に対する軍国主義的侵略ですか、これについて日本は謝罪は終わっておる、こういうふうに外務大臣はお考えですか。そして韓国の人々から、韓国政府から許されておる、こういうふうにお考えでしょうか。

○福田(博)政府委員 日本と韓国の関係はどうなっているかということを事務的に御説明いたしますと、一一十五年前に国交正常化をいたしまして幾つかの条約を結んでおりますが、その中の基本となる条約に、日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約というのがございます。その前文に、「日本国及び大韓民国は、両国民間の関係の歴史的背景と、善隣関係及び主権の相互尊重の原則に基づく両国間の関係の正常化に対する相互の希望とを考慮し、両国の相互の福祉及び共通の利益の増進のため並びに国際の平和及び安全の維持のために、両国が国際連合憲章の原則に適合して緊密に協力することが重要であることを認め、」云々とありまして、この基本関係に関する条約を締結することに決定したと書いてございます。この精神に従って今両国関係は律せられているというのが条約的な基礎でございます。

○中山国務大臣 ただいま条約局長は、国家としての条約上のいわゆる経過を御答弁申し上げたものと思います。

 私どもも政治家という立場で、これからの日韓関係が過去の悲しい歴史を何とかして乗り越えていかなければならない。こういう一つの大きな理想に向かってこれからの新しいページをめくるために、これから引き続き私どもは過去を振り返って、過去のみずからの犯した消えがたい歴史というものを頭に残しながら、新しい時代に向かって二つの国民が手を握って努力していかなければならない、このように考えております。

○仙谷分科員 今の大臣の御答弁はまあまあ心が感じられたわけですが、先ほどの外務省の方が基本条約ですべて済んでいるんだと言わんばかりの発言をされますと、私は非常に抵抗があるのでございます。その姿勢では、少なくとも韓国に住むあるいは朝鮮半島に住んでおる方々、在日朝鮮人・韓国人と言われる方々は白々しい気持ちになると思うのです。特に、両国の悲しい関係とか言いますと、悲しみを与えたのはだれだということを感じると思うのです。この問題は、偶然悲しみが降ってわいたわけではないのです。そのことが、例えば韓国の大統領盧泰愚さんが来日すると言われている問題がございます。ところが朝鮮日報、東亜日報等によりますと、日韓間で歴史の清算がまだなされていない、大統領、行くのは控えた方がいいのじゃないかという報道が韓国からなされております。

 いかがですか。韓国の方々あるいは在日韓国人・朝鮮人の立場に立ってみて、いわゆる日韓間の歴史の清算がまだなされていない部分があるというふうにお考えになりませんか。そしてそれは、ワイツゼッカー大統領のような真摯な謝罪、あるいはブラントさんがポーランドに行って拝跪をして謝った、そういう真摯な姿勢が、日本の私も含めて国民に、政府に、彼らから見て感じ取れない、そのことが問題だというふうに大臣はお感じになりませんでしょうか。

○中山国務大臣 私ども政府という立場で、国際法規に基づいた条約とか、あるいはまた両国間の事務の問題、このような問題が厳存をし、あるいは解決がされていくという経過の中で、国としての法律的あるいは国際条約的な処理が終わっている、このような考え方が国家の行政機関として存在することは現実であろうと思います。しかし、少なくとも外交をお預りしている私としても、日本政府の一員として、精神的な、いわゆるこの方々の心の中にわだかまりがあるとすれば、そのわだかまりを取っていただくために、これらの方々に対して、過去の悲しい侵略という問題について、我々は心から謙虚に反省しなければならない、このように思っております。

○仙谷分科員 今の大臣の謙虚な反省を、盧泰愚大統領が来日するに際しまして、今までの私どもが見ると、ちょっと第三者的、客観的過ぎる意思表明を、突っ込んだ真摯な謝罪の公式の態度を表明するというお考えはありませんでしょうか。

○中山国務大臣 今私が御答弁申し上げておること、これが日本の外務大臣の率直な気持ちであります。御理解をいただきたいと思います。

○仙谷分科員 私は、この今の時点こそ、日本があるいは日本人が国際社会の中で名誉ある地位に近づけるかどうかの大きな分水嶺に差しかかっているというふうに考えます。その一つは、日韓併合に始まる朝鮮支配の問題である。このことの謝罪あるいは深刻な反省なくして、アジアの国の方々から尊敬される存在といいますか、対等の立場でつき合う存在にならないのではないかという気がしてしようがないのです。それで、やはり朝鮮に対する植民地支配、軍国主義的侵略、これに対する真摯な反省を国会で決議する、そういう決議をする必要があるのではないかと考えますけれども、外務大臣、いかがですか。

○中山国務大臣 私は、日本政府の閣僚の一人としての立場で、私の率直な気持ちを申し上げております。全国民を代表される国会において、そのようなお考えがもし行われるとすれば、それは将来の両国の友好と発展のために価値のあるものというふうに私は判断をいたします。

○仙谷分科員 どうもありがとうございました。終わります。

○町村主査代理 これにて仙谷由人君の質疑は終了いたしました。