1990年04月18日 公職選挙法改正に関する調査特別委員会

○中山委員長 仙谷由人君。

 

○仙谷委員 続きまして、日本社会党の仙谷由人でございます。

 私も今度の選挙で徳島から当選をさせていただいたわけでございますが、弁護士を十九年間やっておりました。松原委員と同じでございます。せんだっての参議院選挙までは、選挙違反のおそれがある人の相談を受けたり、たまたま逮捕された人の弁護をしたり、そういう立場にあったわけでございます。

 多少そういう点の経験も踏まえてお伺いするわけですが、そしてまた候補者としての、いろいろなうわさ、風聞等を踏まえて質問をさせていただくわけですが、今回の選挙で今松原委員が言いました三百億円、あるいは各選挙区における、とりわけ保守候補の選挙資金として、まあ後援会活動も含めておるんでしょうけれども、徳島あたりですと三億円ないと選挙にならない、五億円ないとなかなか届かない。隣の県ですと、何か十七億円使った、それで当選してきた、こういうことがうわさをされておるわけでございますが、それにしましては買収事犯の摘発が非常に少ない。率直な感想でございます。あるいはマスコミの方がいらっしゃいますけれども、マスコミの方が選挙の取材を通して肌で感じた事柄とこの買収事犯の少なさ、いわば私は氷山の一角がたまたま買収事犯となって出てきているんだろうと思いますけれども、大臣、二十年間選挙をされて、今の摘発件数、人員、額、実際に行われておることと比べてこれは氷山の一角だと思われますか、どうですか。

○奥田国務大臣 先生は徳島の選挙区で戦われたわけですけれども、それは選挙区それぞれの選挙区情勢にもよるでしょうし、強いて言えば、私は石川県一区ですけれども、各侯補者とも、おたくの党からの立候補者の先生も含めて、きれいな選挙をやっていると思いますよ。それはポスターでも、公示前には事前運動のたぐいのビラ一枚張ってないという珍しい選挙区であると言われておりますけれども、しかし、私の選挙区が珍しいと言われるくらい、逆に言ったらほかのところはそういった御指摘の面があるのかもしれません。しかし、それ以上の形については意見を差し控えたいと思います。

○仙谷委員 私、今の質疑を聞いておりまして、この選挙の問題で、そしてまた選挙が国民に対して与えておる問題、政治不信の問題で一番大きい問題は何か。金の問題だと思うのですね。第二番目は、建前と実態の乖離といいますか、公職選挙法の規定と実際に行われておる選挙活動、ここのところが国民からいえば、うそといいますか虚偽といいますか偽善といいますか、そういうことが今の選挙の実態として多かれ少なかれあるんじゃなかろうかと思うのですよ。

 今、石川何区か、自治大臣の選挙区は非常にきれいとおっしゃいました。私も弁護士でございますので、地元へ帰りますと、保守系の候補者が今まだ調べられておる。その方々は私のところへ相談に来られます。相談を受けておるのですけれども、その中で取り調べの警察官が、仙谷陣営のようなきれいな選挙をしなきゃだめだよ、こう言ったというのですね。私、警察に褒めていただいて、うれしいのやら悲しいのやらわかりませんけれども、それでも私は率直に申し上げますけれども、私の陣営でも形式的な公職選挙法違反、今おっしゃったポスターあるいは演説の問題、戸別訪問あるいは飲食物の提供、こういう問題では公職選挙法に違反している事実があったということを認めざるを得ないと思うのですね。というよりも、そうしなければ選挙にならないということだろうと思うのです。

 自治大臣の選挙ではあれでございますか、飲食物は一切提供していないのでございましょうか。それともやはり選挙事務所に食堂がつくられておって、昼飯あるいは晩飯、これを食べた方が運動に出かけられる、こういうシステムになっておるのでしょうか。いかがですか。

○奥田国務大臣 食堂は設けてあります。私も選挙戦中四日間くらいは自分の選挙区へ帰りますから、帰って、やはり飯を食う形のところには食堂が設けられております。

○仙谷委員 食堂の問題はこのくらいにして、次の問題にいたします。

 率直にお伺いしたいわけですが、新聞報道等で奥田陣営は非常に動きが活発であると例えば書かれますね。あるいはローラー作戦を展開しておる、支持率が急上昇してきたというふうなことが堂々と報道される。大臣、こういう報道を見ますと、奥田陣営は、あるいは仙谷陣営は選挙の運動

として何をやっておるというふうにイメージなさいますか。

○奥田国務大臣 いや、支持母体がそれだけ積極的に動いていただいていることを大変うれしく思います。

○仙谷委員 動くのはいいけれども、どういう動き方を、動いてどこへ行くのかということですね。公園へ行って弁当食べるだけじゃないと思うのです。やはりこれは、私どもが戸別に支持を訴えかける運動員が走っておるということを率直に認めざるを得ないと思うのです。たまたま町で会った人だけに奥田敬和をよろしくと言って済むようなのが選挙ではないということは、みんな暗黙の前提にしているわけですね。

 ところが、法規制を見ますと戸別訪問は一切禁止されておる。そうでしょう。それから先ほどの食堂の話も、これは自治大臣も率直にお認めいただいたので、私とともに選挙違反をされておることをお認めいただきたいと思うのですけれども、飲食物の提供というのはお茶とお菓子以外は禁止されておるのですね。運動員については、特に労務者については何か十五人分ですか、食事を提供していいということになっていますけれども、そのほかについては、食事をしてもらって運動に出てもらうというのはどうも禁止されておるようなのですよ。こういうインチキは、選挙がインチキなのか法律がインチキなのか、どっちかですよ。こういうことが行われている。ここにも私は、どうも政治家のやっていることは表と裏が違うという国民の不信を生んでおる原因があるのじゃないかと思うのです。

 その最たるものが、どうもきれいな選挙、きれいな選挙と言っているけれども裏ではお金を渡しておるのではないか。とりわけ、さっき運動買収ということが出てまいりましたけれども、一票一票買わなくても、後援会の幹部に動いてもらうためにまとまった金を渡すというふうなことが行われておるのじゃないか、そういう常識が蔓延しているわけですね。その点についての御認識と、どうやればこの庶民の、市民の常識をひっくり返すことができるのか、御見解を賜りたいと思うのです。

○奥田国務大臣 それは先生のように弁護士活動を通じた中で、現在のいわゆる法規制と実態というのが多少のずれがあるのじゃないかという御指摘でございますけれども、先ほど申し上げましたように、個人名を挙げての御指摘ですから、私の選挙事務所にも食堂がある。しかし、食堂はあるけれども、多数の人が出入りしているのにやたらめたらと飯を食わしている、そういうわけではありません。選挙運動に従事しておる、事務所に従事している人間のあれですから、厳密に言えばそれは適法だと思っております。

 良識の範囲を出るか出ないかの問題で、先生のように条文を説かれると、一日十五人とか、延べてそれに掛ける選挙日数で何人以上やっておるじゃないか、違法じゃないかと言うけれども、しかし、運動実態と世間の良識、実績の中でやっているわけですから、それは違反だと言われればそういうこともあるかもしれませんけれども、あくまでも法の趣旨を逸脱しない範囲内でやっている形ということで、私たちは別に良心的に、そういったことは良識の範囲内でやっていただいておるということで認識しております。

○仙谷委員 私が言いたいのは、私も違反をしているという前提で質問しているわけですから。

 自治大臣もおっしゃっておりますけれども、百三十九条を見ますと今自治大臣がおっしゃったようなこと、じゃ選挙部長どうですか、これは百三十九条違反になりますか、なりませんか。

○浅野(大)政府委員 公職選挙法では、弁当を提供できる場合、その数の限度について規定を置いております。私どもとしては、その規定に従ってやっていただきたいということを申し上げる以外は申し上げようがないわけでございます。

 

○仙谷委員 私が申し上げたいのは、結局、戸別訪問なんかは公然の秘密として選挙活動として我我はやっておる。こういう実態を認める。議事録を見ましても、戸別訪問を禁止しているのは日本だけだということですから、もう戸別訪問禁止規定なんかやめようじゃないかということを言いたいわけですよ。

 それから飲食の提供にしましても、今自治大臣がおっしゃった常識の範囲内を法律でも認める、そういうことがまさに必要なんじゃないかということを申し上げたいわけです。自治大臣がおっしゃったように、何とかレストランなんというのをつくって、バスで呼び込んできて票集めをする、そういう非常識なのは例外ですよ。だけれども、運動に出てくれる方が飯を食って出る、それすらが違反になっているこの現状ですね。つまり、常識の範囲内で実態をみんなが守るように法定化する、そうして守らない人については刑罰あるいは資格の問題等々でペナルティーを科す、そういうけじめをつけていかないと、いつまでたっても本当はこうだけれども法律はこうだなんというのが通用する。ここが選挙と政治にまつわる庶民から見てでたらめといいますか、不信を買う一番の原因じゃないかと思うのですね。そういうことを申し上げて、時間がございませんので次に移ります。

 先ほど松原委員の質問に対するお答えの中で、妻、弟、子供、後援会幹部、市会議員、県会議員、秘書、こういう人たちが愛知等々で選挙違反をしているというのが出ておりました。本日の新聞を見ますと、選挙制度審議会の答申で、五年間立候補禁止を一方ではするというようなのが出ております。公職選挙法二百五十一条の二の当選無効の規定は、一つは各号で当選無効になる。つまり、自分の妻とか近親者とか総括主宰者とかいうものが選挙買収事犯を起こした場合には当選無効になるという規定があるわけでございますけれども、何か今の警察庁の御見解では、愛知のケースなんかは二百五十一条の二に該当しない、検察官が当選無効訴訟を提起する場合に当たらないという御見解をお持ちだというふうに聞いておりますが、そうなんでしょうか。

○中門政府委員 ただいまお尋ねの件は、公職選挙法二百五十一条の二の第一項第四号で、いわゆる連座の対象者として「公職の候補者の父母、配偶者、子又は兄弟姉妹」云々という規定がございますが、この部分についてと思うわけでございます。

 公職選挙法におきましては、公職の候補者というのと公職の候補者となろうとする者というのを使い分けをしております。したがいまして、ここに言う「公職の候補者」というのには、当然公職の候補者になろうとする者は含まれていないものというふうに承知をしておるわけでございます。

○仙谷委員 そこで、時間がございませんので自治大臣にお伺いするわけですが、選挙の腐敗防止という観点からは、私が申し上げた二百五十一条の二の四号、つまり肉親ですね。選挙違反をした者の肉親の範囲ということに四号はなっておりますけれども、そのほかにイギリスの腐敗防止法のような代理人といいますか、あそこは代理人というような規定のようでございますけれども、後援会の幹部あるいは選挙運動を担っている市会議員、県会議員というような地方議員あるいは秘書、こういう者を連座制の規定に含める、相当広く含める、それがまず一点ですね。

 そしてもう一つは、今おっしゃった公職の候補者といっても、昨年十二月の買収行為をつかまえて選挙運動とみなしているわけですから、要するに選挙運動規定、選挙運動の概念として、最高裁判所の判例にありますように、候補になることが予測される者についての選挙運動として、あるいは実質的な選挙運動として、買収事犯を起こした場合には候補者、候補者となろうとする者について当選無効になる、あるいは立候補禁止の規定がかぶってくる、そういうふうな腐敗防止の法体系をおつくりになるおつもりは、自治大臣どうですか、おありになりませんでしょうか。

○奥田国務大臣 今の選挙制度審議会の答申を近くいただくわけでありますけれども、その委員会審議の過程の中で報道されている内容から見ます

と、公示後の連座制適用と公示前の行為に対する連座制の適用という形の拡大が検討されておるやに聞いております。

 それで、地方議員まで含む云々のお話でございますけれども、この範囲拡大の中には立候補制限を科するというようなことも聞いておりますし、あるいは親族以外の秘書までその適用範囲を拡大するというふうにも聞いておるわけであります。いずれにしてもこれは大変重要な問題点でございますし、今後とも各党との論議を踏まえて検討してまいる課題であろうと存じております。

○仙谷委員 まだ反対尋問の癖が抜けませんので、何か厳しい口調になったかもわかりませんけれども、きれいな選挙、きれいな政治を実現するための情熱のほとばしりということで、ひとつお許しをいただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。