181 - 衆 - 本会議 - 2号  平成24年10月31日

○議長(横路孝弘君) 仙谷由人君。
    〔仙谷由人君登壇〕

○仙谷由人君 私は、民主党・無所属クラブ・国民新党を代表し、総理の所信表明演説に関連して質問を行います。(拍手)
 今月八日、山中伸弥教授がiPS細胞研究でノーベル賞を受賞されることが発表されました。また、昨日は、文化勲章を受章されるとのことであります。心から敬意を表し、お祝い申し上げます。
 同時に、私が思い起こしましたのは、一九四九年に湯川秀樹教授が日本人初のノーベル賞を受賞され、焼け跡、闇市の中で日本の復興に向けて雄々しく立ち上がっていた日本人に大きな希望と勇気を与えたという歴史的事実であります。
 大変な危機のただ中にある今日の我が国において、この山中チームの快挙は、日本と日本人に大きな希望と勇気を与え、日本人のありようと特質に自信を取り戻させてくれたと存じます。山中教授を初め、京都大学iPS細胞研究所の皆様方の御尽力と御労苦に改めて感謝申し上げます。
 今日の日本は、四重五重の大変な構造危機にあります。
 昨年三月十一日に起きました東日本大震災と原発事故が、目の前の最も大きな危機として存在しております。
 加えて、日本は、バブル崩壊以降、失われた二十年と呼ばれるゼロ成長、低成長の時代が続き、この十五年間、国民の可処分所得と貯蓄率は下がり続けています。今日の世界経済も、欧州政府債務危機から始まった景気後退がアメリカ、欧州、新興国へと伝播をし、同時減速しかねない状況であります。
 人口減少と少子高齢化の進展は、日本経済から活力を奪い、日本の虎の子である社会保障制度の持続可能性を危うくしております。
 他方、閉塞状況がナショナリズムを激しくさせ、その発散はとんでもない事態を招きかねないことも、私どもは真剣に捉えるべきでありましょう。
 そしてもう一つ、我々国会議員自身一人一人の問題として、政治の危機、政治主体の危機が存在すると自覚する必要があります。我々政治家、国会議員と政党のレーゾンデートル、存在理由が問われています。
 この政治の危機は、この国会で喫緊の二つの課題を解決することによって、克服する方向に向かうと信じます。そして、新たな政治文化、熟議の民主主義をつくり出すことができます。
 一つ目の課題は、特例公債法を成立させることであります。
 今の財政状況から見て、これは日本版財政の崖であります。四月に成立した予算、その財源確保のために必要な特例公債法が成立していません。これは、国民生活、地方財政を苦しめ、そして、世界経済に対するクラッシュの引き金を引くことにもなりかねません。
 もちろん、予算執行の一次責任は政府・与党にあります。しかし、ねじれ国会では、野党は予算執行について実質上の拒否権を持っているわけでありますから、野党の皆様方にも、責任野党とは何なのかをお考えいただきたいのであります。
 国民生活目線で、大局的な観点で、政局的思考を超えて、前提条件なしで、特例公債法を速やかに成立させていただきたいのであります。(発言する者あり)

○議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

○仙谷由人君(続) 毎年毎年、歳入法案が政局の思惑で成立せずに円滑な予算執行が妨げられるという制度的な欠陥を正すために、さきの党首会談で野田総理は、予算と特例公債を一体処理するルールづくりを提案しました。新しい仕組みやルールは、どの政党が政権を担おうとも必要不可欠だと考えておりますが、総理がこのような提案を行った理由を御説明いただきたいと思います。
 二つ目の緊急課題は、一票の格差是正であります。
 これは、最高裁が違憲状態と厳しく指摘しているとおり、まさに待ったなし。その解決に与党も野党もありません。政党の大小も関係ありません。内閣総理大臣の解散権が制約を受けないことはもとよりでありますけれども、根幹は、国民主権の問題であります。一票の価値を平等に近づけなければならないとの要請は、議会制民主主義、とりわけ議院内閣制の根本にかかわる問題であります。
 衆議院は、選ばれた議員が政治権力、内閣をつくり上げるのがその使命でありますから、違憲状態の定数で選ばれた首班の内閣では、その権力の正統性、レジティマシーに疑いを生じさせます。違憲の衆議院のそしりを受けかねません。
 与野党は直ちに精力的に協議を行い、この国会で区割り審設置法と公職選挙法改正を実現するよう、御努力、御協力を切にお願いいたします。
 特例公債法と一票の格差是正、この二つの課題の解決にかける野田総理の意気込みをお聞かせください。
 一昨日、野田総理は、この衆議院において所信を表明されました。これに対して、参議院では、自民党を中心とした野党が、先例となっている総理大臣の所信表明演説の衆参同日聴取を拒否したのであります。
 確かに、いわゆる両院独立活動の原則からすれば、衆議院と参議院の議事は、それぞれ別個に進められるものなのかもしれません。しかし、所信表明演説の衆参同日聴取の先例、この慣例は、参議院の地位を高らしめ、ひいては内閣に対する国会の行政監視機能をより十全たらしめようとする、そのような先人たちの知恵があらわれているものだったはずであります。
 このような趣旨を理解せず、総理に何らの対抗措置もない問責決議を口実に、総理に所信表明演説をさせないなどというのは、参議院にとって、みずからの地位をおとしめることにつながりかねません。
 この動きを主導したのが、かつては参議院の地位向上に熱心に取り組んでいた参議院自民党であります。彼らは、問責決議という強力な武器を振り回して、これが手に余るようになってしまい、かえって自縄自縛に陥っていると言わざるを得ません。議会人としての冷静な対応を期待するばかりであります。
 また、このような参議院自民党の行動を許した自民党総裁のガバナンスには、重大な疑問を呈せざるを得ないのであります。
 東日本大震災が発生してから一年半が過ぎました。被災地は、いまだ厳しい状況にあります。
 政府・与党は、野党の協力もいただいて、復興基本法、復興財源確保法、復興特区法、復興庁設置法、福島復興再生特別措置法などを整備し、三次にわたる補正予算を組んで、迅速な復興に向けて取り組んでまいりました。引き続き、国の総力を挙げて取り組む必要があります。
 ところで、本来なら一般会計で行うべき事業が、東日本大震災復興特別会計の各省所管分及び全国防災対策費四千八百二十七億円という区分の中に計上されていると指摘されております。被災地の復旧復興に真に直結するものを最優先すべきことは当然でありましょう。
 そもそも、どのような経緯で、どのような理由で、被災地の復旧復興に直結しないと言われる事業が、全国防災対策費、東日本震災対策費として計上されたのか。全てが否定されるべきものなのか。与野党協議の反映として計上されることになったものがあるのか、それとも、省庁の悪乗り分があるのか。復興担当大臣と財務大臣の見解を聞きます。
 民主党は、これまで、福島と東日本の復興再生と日本全体の防災、減災に向けて、地元の方々の御意見、御要望を受けとめ、予算の確保や制度の改正につなげてまいりました。今後も、新たに設置した民主党の福島復興再生プロジェクトチームを中心に、その取り組みを強化していきます。
 特に、民主党が主導して成立させた原発事故子ども・被災者支援法にのっとり、避難者支援、住宅支援、健康管理調査などの具体化が重要であります。その基本方針や予算の確保について、総理の御見解を伺います。
 冒頭で述べましたとおり、今、日本経済を取り巻く状況は、かつてなく深刻です。日本の貿易構造も、中国、ASEAN、NIES向けが米国向けをはるかに上回るなど、劇的な変化の中にあります。
 歴史的な社会保障と税の一体改革関連法の成立をなし遂げた野田内閣の次の使命は、新しい成長戦略、すなわち日本再生戦略を自信を持って強力に実行、推進することであります。
 日本再生戦略は、グリーン、ライフ、農業の六次産業化、そして中小企業を重視した成長戦略であります。私流に申し上げれば、特に重要なのは、グリーンイノベーション、ライフイノベーション、とりわけ医療イノベーション、そして、アジアを中心とした外需の内需化の三つであります。
 脱原発依存という新しい国是のもと、政策を総動員してグリーンエネルギー革命を起こし、同時に新しい需要と新しい雇用を生み出すことは、経済政策、産業政策、雇用政策としても有効であります。
 世界経済の低迷が見込まれる今、太陽光、地熱、風力、小水力などの再生エネルギー、エネファームや省エネルギーの促進、スマートシティーづくりの拡大を政策誘導して、日本国内に新しい需要と雇用の場をつくるのです。
 例えば、エネファーム、太陽光パネル、蓄電池という、私流に言わせれば新三種の神器とスマートメーターを各御家庭に普及させて、一人一人の国民が電気の消費者であると同時に生産者であり管理者であるというプロシューマーの考え方を普遍化、常識化していく必要があります。
 このことが、化石燃料を多大に使うことによる交易損失を減少させて、日本のGDI、GNIを増大させることにつながります。そして、このことが、可処分所得の減少を防ぎ、賃金デフレを反転させてデフレ脱却につなげることができ、国民一人一人を豊かにすることになります。
 発電部門に競争原理を導入するためには、送電部門の中立化も避けては通れません。国際的に高値で購入している天然ガス価格も引き下げていく戦略が重要であります。
 脱原発依存とグリーンエネルギー革命推進に対する総理の決意、電力システム改革に関する基本的考え方について質問をいたします。あわせて、先般の予備費を使った経済対策の狙い、特に新エネ、省エネ促進への取り組みについても御説明ください。
 山中教授のノーベル賞受賞で一躍脚光を浴びている医療イノベーション分野でも、民主党政権は重点的に取り組んでまいりました。新しい産業をつくり出すため、新薬、創薬開発や医療機器、再生医療の分野へ各省庁の垣根を越えて重点的に資源を投入し、大胆な規制改革と人材育成を推進する必要があります。
 民主党政権は、医療イノベーション分野にどのように取り組んできたのか、今後どのように取り組むのか、総理に伺います。
 アジア、中東地域のインフラ建設へ日本のシステムをパッケージとして売り込み、アジア、中東の旺盛な需要を日本の内需とするという戦略は、鳩山内閣のときに検討を開始し、菅内閣の新成長戦略、野田内閣の日本再生戦略へと進化、発展をしてまいりました。その一例がパッケージ型インフラの海外展開であり、日本勢受注の実績も着々と上がっています。
 政府は、民間と二人三脚で相手国のニーズに応え、日本企業のビジネスチャンスを広げるべく、積極的な経済外交をさらに加速すべきであります。その際、官民ファンドをつくって、企業のバランスシートの限界を超えた投資を進めることも必要です。
 官民連携による外需の内需化について、総理の力強い抱負をお聞かせください。あわせて、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、インド等におけるこの間の展開と実績についても御紹介ください。
 我々はどのような社会をつくり、生き抜いていくのか、今、多くの日本人が自問しています。民主党政権が理想とする社会像ははっきりしています。目指すのは、野田総理が言う、分厚い中間層を守り育てること、人々に居場所と出番が保障される社会であります。
 米国の経済学者でノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツは、今日のアメリカを評して、一%の上位所得者が九九%の下位から富を吸い上げるグリード資本主義、そういう社会だと述べております。社会保障や雇用保険を含むセーフティーネットが貧弱なために不平等が進んで、中間層が搾取され、社会が分断化され、ひいては経済の足を引っ張っていると言っているわけであります。もって他山の石とすべしであります。
 分厚い中間層復活の基盤は社会保障制度であります。
 二〇一二年六月三十日付のロンドン・エコノミストの記事によれば、国連の調査報告でも、失われた二十年の日本がまだ国連報告でも世界ナンバーワンの一人当たり国富を持っていると評価されています。これは、国民皆保険制度に裏打ちされた医療ケアサービス、戦後に構築した社会保障制度のおかげだと私は思います。だからこそ、社会保障制度を維持させるため、我々は、大きな犠牲を払ってまで社会保障と税の一体改革関連法を成立させたのであります。
 一体改革では、コンクリートから人へ、チルドレンファーストの理念に基づき、それまで軽視されてきた現役世代と将来世代を社会保障の対象として明確に位置づけました。子ども・子育ての分野を初め、この一体改革を具現化するために、三党合意に従って国民会議を早急に立ち上げ、一刻も早く議論を開始することが必要です。それは、与野党を問わず政治の責任でもあり、また、政府の責任でもあります。
 国民会議の始動について、総理の意気込みと方針を伺います。
 中間層を守り抜くためには、経済戦略の遂行によって雇用をつくり出すのと同時に、雇用のセーフティーネットを充実することも不可欠です。
 知識経済化するこれからの経済社会に対応する人材育成、職業訓練の視点を含め、民主党政権が行ってきた、そして行おうとしている雇用対策、積極的な労働市場政策について、総理から御説明ください。消費者が安心して暮らせる社会を構築するため、消費者行政についての抱負もぜひお聞かせ願います。
 中間層を守るためには、コミュニティーの再生も重要であります。その際、家族、御近所、地域、行政の役割はもちろん大事でありますが、それだけでは対応できないこの現代社会の現実を直視する必要があります。
 民主党は、新しい公共という考えのもと、NPOを含めたさまざまなセクターが公を支える新しい社会づくりに取り組んでまいりました。
 総理、過去三年間、民主党政権が新しい公共を促進してきた公益認定の簡素化や税額控除制度など、この取り組みと成果を述べていただきたい。あわせて、深刻化しているいじめ、そして児童虐待の問題について、内閣としてどのように取り組むおつもりか、お聞かせ願います。
 総理が所信で述べられた外交、防衛に関する姿勢は、極めてバランスがとれております。高く評価できるものでした。
 尖閣諸島の一部の所有権を国に移転したことも、その平穏かつ安定的な維持管理と大局的な日中関係を視野に入れ、熟慮に熟慮を重ねた上で行われた重い決断であったと言えます。
 その上で言えば、中国や韓国など近隣諸国との関係で意思疎通チャンネルを確立することが、日本外交の積年の課題だと考えます。
 野田総理には、いかに首脳レベルで信頼関係を再構築し、率直に物を言い合える関係をつくろうと考えているのか、セカンドトラックを含めた重層的取り組みについてもお聞かせ願います。
 一般にはまだ人口に膾炙しておりませんが、日本の安全保障政策は、民主党政権下で大きく進化しております。
 例えば、野田総理も財務大臣としてその作成過程に参加し、平成二十二年十二月十七日に菅内閣でまとめました防衛大綱は、それまでの自民党政権では何十年もできなかった、北重視を南西重視、基盤的防衛力の整備を動的防衛力の整備、陸重視を海空重視に大転換をいたしたのであります。昨今の地域情勢を見るにつけ、極めて時宜を得た対応でありました。
 総理、あなたの国を守る覚悟と今次の防衛大綱のもとでの具体的な施策について、ストレートにお聞かせください。あわせて、役割を充実拡大させた国連PKOへの派遣人数について、政権交代前と今日との比較を含め、野田内閣の実績を御説明ください。
 政府の行政改革について、特別会計の数を十七から十一に減らす、独立行政法人制度を廃止する、法人数を四割弱削減する改革案を国会に提出してございます。
 総理に、行政改革の断行にかける決意を伺います。
 また、一票の格差是正に加え、定数削減を実現することこそ、国会の身を切る政治改革であります。自民党、公明党を初め定数削減を公約に掲げた各政党は、我が党の比例定数八十削減に反対するのみならず、この国会で具体的な削減案を示すべきであります。
 政治改革に取り組む総理の姿勢をお聞かせください。
 今、政治家一人一人が、そして政党が、その立ち位置を問われています。
 民主党は、一九九八年四月二十七日につくりました「私たちの基本理念」という綱領的文書において、民主中道の道を創造すると高らかにうたっています。
 総理が所信で表明された方針、すなわち、強欲資本主義に陥ることのない分厚い中間層の確保、脱原発依存とグリーンエネルギー革命、チルドレンファーストに力点を置いた社会保障像の再構築、そして日米同盟の深化と新防衛大綱に基づく現実的な防衛政策、この方針は、民主党が今後も推進しようとする改革志向の民主中道路線をまさに具現化したものと考えます。
 最後の質問として、日本を導く立場にある野田総理から、みずからの立ち位置、民主党の立ち位置と進む道を国民にわかりやすく説明していただくようお願いいたします。
 総理には、ど真ん中の中道をどこまでも突き進んでいただきたい。そして、日本の改革に邁進していただきたい。そうエールを送り、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕