169 - 衆 - 議院運営委員会 - 10号  平成20年03月11日

○笹川委員長 次に、仙谷由人君。

○仙谷委員 民主党の仙谷でございます。
 先ほどのお話にも余り出てこなかったことを中心にお伺いいたしたいと存じます。
 日銀のこの間の超低金利・円安政策によって、福井総裁も、家計から三百兆円の利子所得が企業部門に移転をされた、こういうことを国会でもおっしゃっているわけですね。こういう長期間の超低金利政策で得をしたのはだれで、損をしたのはどの部門なのか、例えば生保とかあるいはいろいろな奨学金などのファウンデーションというようなこともあると思いますが、そのことについてまずはお答えいただきたい。
 そして、時間の関係で三問続けて質問いたしますが、資料を用意してまいりました。
 一枚目の資料は、一八九〇年から二〇〇七年までの日銀券あるいは日銀の保有する国債残高、これの名目GDP比でございます。一枚目の下の方は、名目GDPに対する国債発行残高でございます。そして二枚目は、消費者物価の推移、一八九〇年から、これも二〇〇七年までとってございます。三枚目は、日本の名目GDPとマネーサプライの関係でございます。
 これを参考にしていただいて、まず、この資料から見てとれるところは、財務省発行の国債発行残高並びに日銀券の発券残高と、日銀が保有する国債残高の対名目GDP比から見て、日銀のバランスシートは非常に肥大化、悪化しているというふうに私は考えておりますが、副総裁はどうお考えでしょうか。
 そして、こういう事態をもたらしている、つまり、一九四四年、敗戦の一年前とほとんど同じかそれよりも悪化したバランスシートというのは、日銀が二〇〇二年から行っております毎月一兆二千億円の、年間十四兆四千億円の長期国債の買い切りという、つまりボンドマーケットに対するある種の介入に原因があると私は思っておりますが、そういう見解に対してどういうふうなお考えを持っているのか。
 さらに、日銀の発券残高など、そして先ほどのCPI、消費者物価の歴史的な推移から見て、インフレリスクをどうお考えなのか。資料の三枚目でありますが、マネーを十年間ふやし続けても、名目GDPはたった〇・二%しか成長しなかった。このことをどうお考えになるのか。今後もマネーをふやし続けて、この十年間のようにデフレを続けるのか。
 あるいは、マネーの過剰な積み上げが極端なインフレのトリガーを引く、このリスクについてどうお考えなのか。つまり、一九四四年あるいは四六年、これはCPIが五一三%の物価上昇を来したわけであります。
 そして、もう一つ。副総裁が主計局長から事務次官で退任されるまでの間に発行された国債は、二百八十五兆円であります。この国債をどのようにこなしていくのかというのが、日本銀行というのは大変重要な役目があるわけでありますけれども、現時点で、先ほど申し上げました買い切り行為によって、債券市場の裁定による財政規律がなくなりつつある。つまり、ボンドマーケットディシプリンが全然きかない。長期金利は市場にゆだねる、そういう市場原理にゆだねるということが必要ではないのかと私は考えておりますが、いかがでございましょうか。
 もう一つ。アメリカ経済の問題が出ておりますが、アメリカ経済が減速、あるいは後退と調整が明白になった現時点において、日本の経済政策の基本を内需拡大、そしてその内需拡大の起点を家計部門に置かなければならないということになりますと、個人消費と住宅に代表される実物投資を促すという税制上金融政策が必要であると私は考えておりますが、いかがお考えでしょうか。
 以上の三点についてお答えをいただきたいと存じます。

○武藤参考人 いろいろたくさん御下問をいただきました。順次お答えさせていただきたいと思います。
 まず最初に、このところの超低金利政策、これの功罪いかんということかと思います。
 確かに、二〇〇一年に量的緩和政策を採用して以来、五年間にわたりまして短期金利はゼロ%という状況でありました。それの副作用があるではないかという御指摘だと思いますが、それはおっしゃるとおりだと思います。
 まず第一に、預金金利が低位に据え置かれましたので、預金者がそれだけ利益を失っているのではないかということであります。第二に、さまざまな機関投資家の運用利回りというものが非常に低下しておって、そこに問題が生じております。そのほか、ゼロ金利ということになりますと、マーケットがなかなか機能しないといったような、そういう状況もございます。
 しかし、このことは、第二の御質問にもかかわってくると思いますけれども、デフレスパイラルのふちにあった、あのバブル崩壊から失われた十年という中からどうやって日本経済を立ち上げるかということに関連しているわけでございます。そういう状況の中で、金利を引き上げるという政策が本当に適切だったかどうかということだと思います。
 私どもは、この低金利によって、やはり企業家にとっては、企業金融に潤沢な資金を供給しましたので、煩わされることなく、専らみずからの構造改革に専念することができたというふうに思います。当時、過剰債務、過剰設備ということを抱えていた企業にとっては、それを専ら構造改革によって乗り切ろうとしたわけでございます。
 そういうことでございますので、低金利には確かにプラスもあるしマイナスもございますが、我が国経済の置かれた状況を考えた場合には、やはり低金利政策が必要かつ適切であったというふうに私は思っております。
 それから、この表、いろいろ意味するところが非常にたくさんありますので、全部お答えする時間があるかどうか、ちょっと私もわかりませんけれども、確かに、この最初の一ページにありますとおり、日銀の保有国債残高が非常に膨れ上がりました。ただし、これは、まさに量的緩和政策をやった結果であります。
 この中で、日銀券に対応する部分といたしましては、長期国債の買い入れ、そういう問題がございます。これは、この点についても一番最後に御下問がございました。この保有国債残高の中の大体四十数%が長期国債でございます。
 十年物の長期国債の買い切りオペをなぜやったかということでございますけれども、これは専ら金融調節上の必要性に基づいて、これは二〇〇二年に行われましたので、私が副総裁になる前の年でございますけれども、日本銀行の政策委員会で決定されたわけでございます。
 これが、国債を買い入れることによって長期金利を引き下げる、要するに、財政を支援するために行われたのではないかという御懸念かと思いますが、そういうことでこれを実施しているわけではありません。あくまでも、ここにありますとおり、日銀券が非常に大きく伸びておる、これは金融緩和の結果なのでございますけれども、これは日銀の、日銀券というのは負債でございますので、資産の方にどういう資産を持つかということが問題になるわけでございますけれども、そこには短期の資産と長期の資産の望ましいコンビネーションが必要なわけでございます。いわゆる成長通貨の供給のためには、長期国債を買うのが合理的だ、結論だけ申し上げますとそういうことでございます。
 したがいまして、仮に、日銀券が何らかの要因でもってもうちょっと下がってくる、残高が減ってくるということになりますれば、この長期国債の買い入れオペというものに対しても何らかの影響を与えるという可能性は十分あると思いますが、現時点におきましては、日銀の政策委員会の総意によりまして長期国債の買い入れを続けているということであります。繰り返しますが、あくまでも金融調節上の必要性に基づくものだということでございます。
 それから、私が次官時代に二百八十五兆円の国債発行があって、それに対して日銀は買い切りオペをやっているので財政規律がなくなりつつあるじゃないかということでございます。この点は、確かに非常に重要なことでございます。
 国債も国債市場において価格が決まる、マーケットによって決まるということでありまして、これに何らかの介入をすれば必ず後からしっぺ返しを受ける。要するに、利払い費がかさまないように長期金利を引き下げたらいいではないかというような御意見もありますけれども、そんなことをしたところで、それは結果的に長期的に見れば、経済が何らかの要因で悪化して、それは財政に不利に働くようになる。決して長い目で得にならない。マーケットにおける国債価格というものを尊重するべきだと私は思っております。
 そのためには一定の財政健全化というものが必要でありましょう。なぜならば、国債金利といいますものは、実質経済成長率プラスインフレ率プラス財政プレミアム、財政の信認の部分によって国債金利というものは動くわけでございますので、財政のサステーナビリティーというものを向上させ、国民が国債というものに信認を置けば、おのずと長期金利は安定し市場は安定する、そういうことでございまして、それを何か人為的に、日本銀行が買い取ることによってそれを操作するというようなことは考えてはいけませんし、また、そんなことは実現不可能なことだというふうに私は思っております。
 それから、アメリカ経済減速というのはおっしゃるとおりでございます。この問題は非常に深刻でございまして、時間の経過とともに事態は少しずつ悪化の方向にあるように私には思えます。一体この先どういう状態になるのかというのが非常に問題でございます。
 したがって、今は、アメリカ経済が減速しても、すなわちアメリカに対する日本の輸出が減少しても、その他の経済が非常に堅調でございます。BRICs等の経済が堅調でございますので、日本の輸出はそちらの方向に向かって伸びておりますので、全体としては、世界経済が成長し日本の輸出も順調でございますので、日本経済の最初の活力の起点であります輸出は今のところ順調でございます。ただ、これがいつまで続くかという課題がございます。そういう中で、内需に基づく経済成長ということが必要なことはもう御指摘のとおりでございます。
 ただ、個人消費なり設備投資なりをどう活性化させていくかということになりますと、税制というお話がありましたが、私は今の立場では税制問題に対してコメントすることは差し控えさせていただきますけれども、日本銀行といたしましても、この個人消費でありますとか設備投資の動向というものには十分注意してまいりたいというふうに考えております。
 すべてお答えできたかどうかちょっとわかりませんけれども、以上、お答えさせていただきました。