社会保険庁の国民年金保険料免除問題

5月26日 厚生労働委員会 

年金制度の空洞化が問題なのに小手先で

収納率をあげようとした責任は重大

どう見ても私文書偽造の罪にあたる

○岸田委員長 次に、仙谷由人君。

○仙谷委員 法務省大林刑事局長においでいただいておると思いますが、今、この委員会に配付をしていただいておりますその中の資料、最後のページ、十一枚目、国民年金保険料免除・納付猶予申請書、裏表になっているコピーがございます。同じものを委員会の皆さん方にもお配りをすると。先ほどの長妻議員の質問のときにも添付はされておりましたが、改めてちょっとビジュアルに審議をさせていただければと思います。

 これをごらんになって、権利、義務もしくは事実証明に関する文書ですかどうですか、法務省刑事局長。

○大林政府参考人 お尋ねは犯罪の成否にかかわる事柄であり、収集された証拠に基づいて判断されるべきものであると考えておりますが、あくまで一般論として申し上げれば、刑法第百五十九条第一項に言う権利、義務に関する文書には、権利、義務の発生、消滅等の要件となる文書のみならず、その存否を証明する文書も含まれるものと解されており、また事実証明に関する文書は、実社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書と解されているものと承知しております。

 私文書というのはかなり広い範囲、このような割合と抽象的な表現になっておりますので、この文書が私文書に当たるか否かということはちょっと私の方で断定はできませんが、今のような定義で当たるものならばその範疇に入るというふうに考えております。

○仙谷委員 わかっていておっしゃっているんだと思うけれども、この程度のことは、もうそんないいかげんな答弁はやめたらどうですか。

 判例によりますと、お読みになっていると思いますけれども、私立大学の入学選抜試験の答案でも、権利、義務に関するあるいは事実証明に関する文書、百五十九条所定の構成要件に該当するということになっているんですよ。

 私は、犯罪の成否を聞いていないんですよ。ここの刑法の規定にある構成要件にこの文書が該当するかどうか、明らかじゃないですか。具体的に言えないとか言えるとか、私は、本件事案について言っているんじゃないんですよ。だれがどうしてこうしてなんて言っていないんですよ。こういう文書は、基本的に、刑法百五十九条一項による「他人の印章若しくは署名を使用して」というところを、ここは行為でありますから、行為の客体である「権利、義務若しくは事実証明に関する文書」と、客観的にも明らかじゃないですか。何か否定できるんですか、刑事局長。

○大林政府参考人 先ほども御答弁申し上げたとおり、権利、義務に関する文書、事実証明に関する文書というのは、広く社会生活に交渉を有するというような非常に広いとらえ方をしております。

 ですから、私の方で、今、文書自体を私文書に当たるか否かということをちょっと言うのは申し上げにくいんですが、ただ、先ほど申し上げたとおり、私文書偽造の対象となる文書というものが広く保護するために解釈されている、あるいは言い方を変えれば、権利、義務に関する文書と事実証明に関する文書というものが重複するというか、どちらにも当たるというふうな解釈がなされていると承知しております。

○仙谷委員 後で私の方からも申し上げますが、それでは次に、この構成要件中、偽造というのがございますが、これは改めて、偽造というのは、私が大林刑事局長の名義をもって文書をつくった場合には、これは偽造になりますか、どうですか。

○大林政府参考人 偽造の解釈といたしましては、作成権限を有しない者が他人の名義を冒用して文書を作成することを言うと解釈されております。冒用というのは、一般的には同意を得ないでというように解釈されております。

○仙谷委員 私が大林さんの同意を得ないで大林さんの名前で文書をつくった場合には、これは原則として偽造になる、こういうお答えですね。作成権限冒用、冒用とは同意を得ないことということですね。これは冒用したかどうかは、普通はどういう徴憑(ちょうひょう= 事実を証明する材料となるもの)、つまりしるしで見きわめておるんでしょうか。法律的には何なんですか、冒用したかどうかというのは。何でそこを区別するんですか。

○大林政府参考人 基本的には収集した証拠による判断であろうと思います。

 もう委員は御案内のとおり、文書にはいろいろな性質がございます。その人間関係においては、いわゆる推定的承諾ということで、承諾があったとされるものもありますし、そういう文書の性質、あるいはそういう関係から見て、そういうものはあり得ないと言ったらおかしいですけれども、推定されないようなケースもありますし、いずれにいたしましても、これは証拠関係から偽造かどうかということを判断するものだと考えております。

○仙谷委員 先ほど村瀬長官が、今回の審議の中で初めて聞きましたが、委任状、突如、委任状という言葉が出ました。この委任契約とか委任行為とか、これと先ほど局長がおっしゃられた作成権限の関係はどうなりますか。

○大林政府参考人 委任と一概に言いましても、これはいろいろなケースがございます。当然、文書作成を託すといいますかそういうものから、相手に対して文書を作成していいよという同意のあるものもあろうかと思います。

 ですから、今おっしゃられる委任というのも世の中でいろいろな形の形態があろうと思いますので、今のような判断から、最終的には証拠判断をするしかない、このように考えております。

○仙谷委員 通常は、代理権限が授与されたかどうか、委任がされたかどうかというのは、書面をもって区別するということでよろしいですね。そういうふうに理解しておればいいですね。お答え願います。

○大林政府参考人 一般的にはそのように思いますけれども、これも先ほど申し上げたとおり、人間関係の問題でございます。

 こんな話が適切かどうかわかりませんけれども、例えば、御主人が奥さんに預金をおろしてくれと頼んで通帳を渡し、その奥さんがだんなさんの名義で預金払い戻し請求書を書く、これは通常、同意があることが前提になっています。ですから、先ほど私が申し上げたとおり、人間関係あるいは文書の性質等もろもろを考えて委任なり同意なりを考えなきゃなりませんので、委任状がなければ同意がない、逆にそういうことは必ずしも言えないのではないかと考えております。

○仙谷委員 私的な法律関係でも、あるいは公的な法律関係でもいいんですが、相手方、対抗者、この人に何らかの代理や代行という格好で委任をする関係というのはどういうことになりますか。

 つまり、申請者が申請を受け付ける相手に委任をするということは、普通、法律構成としてあり得ますか、あり得ませんか。つまり、対立当事者なんですよ、法律的には、これはどういうことになりますか。

○大林政府参考人 社会現象、いろいろな現象があろうかと思います。例えば、自動車を買う、相手は当然売り主になります。これは対立的な当事者であろうと思います。ただ、もろもろの手続を業者に委任することは、これは少なからずあると思います。ですから、それは社会現象、いろいろな場合がありますので、委員がおっしゃられるように、本当に対立関係があって、それはおかしいじゃないかという場合もあろうかと思いますし、それはいろいろなケースがあるんじゃないかなというふうに私は考えております。

○仙谷委員 今の関係はちょっと違いますね。自動車のディーラーにその後の保険の事務を委任する場合と、そうじゃなくて、今おっしゃられたケースだと売買契約そのものを売り主も買い主も全部委任してしまう、買い主に売り主としての署名と押印を委任するというケースを私は聞いているわけですよ。そういうことはあり得ますかと聞いているんです。法律関係として成り立ちますかと言っている。つまり、もし代理人であれば双方代理を問われる、その問擬される問題を聞いているんですよ。それはあり得ていいんですか、あるいは行政上そんなことがあり得るという想定は想定できますか、どうですか。

○大林政府参考人 今委員がおっしゃった双方代理の問題について、それがいいかどうかという問題については、これまたケースだろうと思います。

 それから、今の行政官庁との問題につきましても、これはケースを見ないと、先ほど申し上げたとおり私どもは犯罪の成否の問題を取り上げる役所でございまして、それはあくまでも証拠関係によるということで、私の方で一概にお答えできないということで御理解いただきたいと思います。

○仙谷委員 もう一つだけ法務省に聞いておきます。

 これは最高刑が懲役五年以下ですね。今法務省が国会に出されている共謀罪の関係からいうと、これは共謀罪の適用対象の犯罪になるんでしょうか。

○大林政府参考人 具体的な案件でございますし、まだ成立していませんので、私の方でこの件について成立するとかしないとか言うことはちょっと控えさせていただきたいと存じます。

○仙谷委員 だけれども、そんなに遠慮しないでも、四年を超える法定刑を持つ犯罪類型については共謀罪の対象になるんでしょう。うなずいていらっしゃる。それでは、やはり共謀罪の対象になりますよ、言っておきますけれども、村瀬さんも。共謀罪というのは実行行為なくても全部犯罪になっちゃうんですよ、こうしようと。

 今からちゃんと申し上げますけれども、もし、この申請書を偽造していたという法的な評価を受けたら、あなた、何か集団的な不正行為とさっき堂々と、組織的行為と言ったけれども、これは本当は、偽造に至らないまでも、未遂とか何とかじゃなくて共謀罪のあれになる可能性がありますよ、今度法律が成立したら。共謀罪というのはそのぐらい怖いんだけれども。

法違反という認識があるか 

それよりも何よりも、川崎大臣、今の私と法務省刑事局長のやりとりをお聞きになって、おとといの五月二十四日ですか、我が党の内山議員の質問に答えて、やはりそれは当然法違反であろうと、つまり、申請書を勝手につくった行為は法違反であろうと、こういう、法違反という言葉を使ったのですが、どういうレベルで、何法違反のつもりでおっしゃったんですか。つまり、刑法百五十九条に該当するという意味までも含んでおっしゃったんですか、それともそうじゃないんですか。

○川崎国務大臣 今、仙谷委員と大林局長の話を実は興味深く聞いておったんですけれども、正直言って、私、法律的な知恵がないものですから、たしかそのときの答弁で申し上げたんですけれども、どういう罪に当たるかよくわからない、法律的にはよくわからぬけれども、少なくとも、本人の了解なしに文書をつくり上げたとしたら何らかの法律にひっかかるだろう、こういう認識を示した、こういうふうに御理解ください。

○仙谷委員 きょうお聞きいただいている皆さん方もこれで大体すっきりしたと思うんですが、もし委任状なくして他人の名義を、この申請書の一番下の欄に人の名前を書き込んだ人がおったとすれば、署名をした人がおったとすれば、これは少なくとも刑法百五十九条一項の構成要件には該当する、こういう評価を受けることは間違いないですね。これは、だれが何と言おうとそうなります。ただ、違法性を阻却する事由があるのかとか、一枚ぐらいだったから勘弁してあげようとか、そういうことで犯罪の成否というのは決まってくるんだけれども、構成要件に該当することだけは間違いないですよ。他人の権利義務関係に関する、あるいは事実証明に関する書面であることは、だれが見たって疑いないじゃないですか、こんなものは。そうでしょう。

 そうすると、作成権限があるかないか。原則として、人の名前を書いて文書をつくるという権限は、だれにもないんです。委任状があるときだけです。だから、印鑑証明書の交付申請書には代理権限授与欄というのがあるんじゃないんですか。委任欄をちゃんとつくってあるじゃないですか。でしょう。そんなことは、これはそんなに難しい法律論じゃないんですよ。当たり前の話なんですよ。常識の範囲にかかる話じゃないですか。

 人の名前を勝手に使って行政に出す書面なんかを申請したときには、形式的には、ほとんどの場合が百五十九条の構成要件該当性があるということですよ。さっき局長がおっしゃられたような親族関係があるとか友人関係があるとか、そういう場合に、実質的な代理権限が付与された関係があるかないか、あるいは、職業的な委任関係があるかないか、会社内、従業員と会社とかいう関係で、そこには当然、委任関係類似の関係がうかがわれるというようなことがあるのかないのか、こういうことじゃないですか。

 申請書なく免除することはできない

私は、この議論をずっと聞いていまして、どうしてもごまかしたいと、社会保険庁が今回のこの不正免除というものを。これは年金法の規定からいうと、あるいは施行規則の規定からいうと、示しているこの申請書が社会保険庁に届くまで、届かない限り動かないんでしょう。この一枚目を見てくださいよ。被保険者から、市区町村を通じるかどうか、あるいは直接の場合には、下のここに申請書が届いて初めて審査が始まるんでしょう。申請書なしで何かが始まるというのは、何かどこか予定されているんですか、手続の問題として。どうです、長官。

○村瀬政府参考人 委員おっしゃるように、申請書が社会保険事務所へ来て、初めて免除は申請になる。それをチェックするときに、所得情報自体は市町村しかわかりませんので、市町村に確認してそこで了解をもらったものが私どもに来て、正式に免除発行になる、こういう仕組みになってございます。したがいまして、申請書がなくて諸手続をするというのは、やはり不適切な対応だろうというふうに思います。

○仙谷委員 不適切とおっしゃるけれども、免除というのは強制処分と同じ質の行政処分じゃないんですか、差し押さえまで行く処分と。これは行政処分じゃないんですか、公定力を持つ、どうです。

○青柳政府参考人 免除は行政処分に当たると考えております。

○仙谷委員 だから、今村瀬さんが言ったことは、何か途中のことを言うけれども、そんな話じゃなくて、申請が出て初めて、行政庁として免除という公定力のある処分をするのかどうなのか、審査を始めるわけですよ。

 今回のこの問題になっているケースというのは、結局のところ、行政処分をしたときですよ、免除処分をした段階で申請書が何件あったんですか。申請書が出ていない、うその申請書も含めてですよ、うその申請書か本当の申請書か、全部どちらかあったんですか。例えば、きょうの東京新聞は七万二千人と書いてある。このうち申請書が出ていたのは何人分ですか。申請書が出ていなかったのは何人分ですか。

○青柳政府参考人 申請書を全く出すことなしに手続を行ったものというのが、既に公表しております五つの事務局で、およそ五万七千六百八十六件ございました。それからそのほかに、電話で確認をした後、事務所にて申請書を代理作成したというものがございました。したがって、これは形式的には申請書はあるわけでございますが、その代理作成というのが、言ってみれば、委任なりをきちんと受けたものであるかどうかという点に若干疑義がございますので、その意味では、そういったもの合計で一万四千件ぐらいについては、場合によっては、きちんとした申請としての形式を経ていない可能性があるというふうに考えております。

○仙谷委員 今のはこの七万二千人の内数ですか。七万二千人の内数。

○青柳政府参考人 いずれにいたしましても、きちんとした数については、明日以降、きちんとした形で整理をしたいと思いますので、現時点で私どもが何とか把握できている数だということで御理解を賜りたいと存じます。

○仙谷委員 そうすると、申請書なしに免除処分した分が極めて多いということですか。五万と言ったの。そういうことですか。

○青柳政府参考人 したがいまして、申請書を出すことなしに処分を先行して、しかも、その処分をしてしまったという件数が先ほど申し上げました五事務局管内の事務所で約五万八千件ございますので、これらすべて取り消しをすべきものということで、現在作業中でございます。

なぜ、申請がないのに免除処分をしてしまったのか

○仙谷委員 国民年金法施行規則七十七条の一項、二項、こういうところに申請書をもってすると書いてありますよね。こういう明文の規定を堂々と無視をして手続がなされた。つまり、読んでみますと、「法九十条一項の規定による申請は、次の各号に掲げる事項を記載した申請書を社会保険事務所長等に提出することによって行わなければならない。」提出することによって行わなければならない、行われていない、つまり申請がない。申請がないのに免除処分をしちゃった。これは何なんですか。何でこんなことが起こるんですか。

○青柳政府参考人 平成十六年十月以降に各市町村から個人の所得情報というのをいただくことができるようになったものですから、その方が相当高い蓋然性をもって免除に該当するということの情報を私ども把握することができるようになった。

 そのために、本来であれば、その方々に勧奨して免除を申請するということの働きかけをして、御本人が申請書を出したものを受理した後に処理をするというのが法の予定している取り扱いでございますが、その情報があることをいわば利用して、申請書なく、御本人にそういったことについて申請を出していただくという手続を経ずして、免除の手続をしてしまったものがあったということだろうと理解しております。

○仙谷委員 お答えになっていないのです。つまり、こういう事情があったからという理由を聞いているんだけれども、経過を言っただけで全然理由を言っていないじゃないですか。

 しかし、申請書のない分は偽造の問題が起こらないかもわからないから、罪が、そこは私文書偽造集団にならなくてよかったのかもわからないですよ。だけれども、偽造というか、職員が手書きした人がおるというんでしょう。手書きをした分について、印鑑はどうしたんですか。つまり、この申請書という用紙を見ると、自分で本人が必ず自署をせいと書いてあるじゃないですか。自署をしない人については印鑑を押さなきゃならないと書いてあるじゃないですか。一万五千人も印鑑はどこから持ってきたんですか。

○青柳政府参考人 申請書を代理作成したという形と承知をしております。

 代理作成をした、いわば申請書があることを用いまして、みずからそれぞれの社会保険事務所で入力をして、それによって言ってみれば免除の処分というものにつなげていったということでありますので、場合によっては、全部のものをちょっと確認しておりませんが、捺印がされていなかったものもひょっとしたらあるのではないかと今の段階では推測をしております。

○仙谷委員 ということは、簡単に言っちゃうと、申請手続はどちらでもいい、電話で確認できればいいんだ。もっと言えば、電話で確認したと称すれば、そういうふうに報告すれば、報告を受けた部局でコンピューターに入力する、そうしたら大事な大事な行政処分たる免除処分も行われたことになる、こんなふうにしか聞こえないじゃないですか。そういうことだったんですか。

○青柳政府参考人 実際の事例については、先ほど申し上げましたようにさまざまであったかと思いますが、私ども、いずれにいたしましても、これについては国民年金法が予定している手続とは離れているものであるという認識を持っておりますので、申請を改めて出し直させていただくということが必要であろうと現時点では考えております。

明らかに国民年金法違反

○仙谷委員 それは、離れているというよりも、明らかに、少なくとも川崎大臣が言われるように、国民年金法違反ですよ。そこのところはもう間違いない。あえて刑事事件に問うというふうなことを私申し上げているんじゃないですよ。つまり、国民年金が予定した国民と日本国政府との関係における年金に関する公的な契約、そのときの権利者、義務者、それは局面局面で変わるでしょう。国民だって、国民年金保険料の支払い義務者になる局面もある、年金の給付を受けるという権利者になる局面もある、免除申請という権利を行使する局面もあるんですよね。これはそういう関係でしょう。

 その関係において、一方当事者の国、社会保険庁が、相手方当事者に成りかわってというか代行して何か行為をする、法律的な効果を伴う行為をする。代行と言い、代理と言っているけれども、そもそもそんなことができるのか。行政法の法律関係において、対立当事者にある人が相手の立場に立って、自分がその法律的な意味のある行為を受け取る相手側の立場も重ねて成り立って行為を行って自分がそれを受ける、そんなことは、常識的に考えても法律論で考えても、これは無理なんじゃないですか。幾らお手軽にいこうとしても、それは無理だ。こんな便宜的なことが行われるはずがないと思います。そういうことに気がつきませんでしたか。

 おとといから、代行とか代理とかあるいは不適切何とかという話を聞くんだけれども、これはそんな話じゃないんですよ。私に言わせれば、明らかに刑法上は私文書偽造に該当する。罪一等減じられるというか情状のゆえをもって、個人的には被疑者、被告人にならなくて済む場合が相当あるとは思うけれども、集団としては、まさに集団的に、さっき組織的とおっしゃったけれども、刑法百五十九条の犯罪行為を犯していると言っても過言でないと私は思うんですね。

 私がここまで言っても、永田君のようにはならない。自信があります。どうですか。長官、本当にここは率直にお認めになった方がいいと思いますよ。

 そして、治癒されるとか、行政行為が後で治癒される、行政処分をやった後に治癒されるなんという法理論がどこにあるんですか。民事の行為だったら、代理権限を証する書面を後で追完したら、委任行為が無権代理が有権代理になるということはあっても、あり得るはずないじゃないですか、行政処分をした後にそんなもの、書類を追完したって。

 これはもう一つだけ聞いておきたいのは、免除という行政処分をする主体はだれですか。厚生労働大臣ですか、それとも社保庁の長官ですか。

○青柳政府参考人 法律的には現場の事務所長までおりております。

○仙谷委員 法律的には現場の事務所長におりている。権限がおりている、どこにそういうことが書いてあるんですか。(発言する者あり)

○岸田委員長 どうでしょう。時間がかかりますか。(発言する者あり)

 青柳運営部長。

○青柳政府参考人 大変申しわけありません。

 まず、法律上は、国民年金法の第九十条において社会保険庁長官の権限とされ、この権限を国民年金法施行規則の第七十七条によりまして社会保険事務所長に提出することによって行うとされているところでございます。

○仙谷委員 どこか、その免除処分を社会保険事務所長ができるという規定があるんですか。ないけれども、そんなことは当然読み方でできるということになっておるんですか、これは。ちょっと私、わからないから聞くんだけれども。(発言する者あり)

○岸田委員長 では、一たん速記をとめてください。

    〔速記中止〕

○岸田委員長 速記を起こしてください。

 青柳運営部長。

○青柳政府参考人 国民年金法の施行令の第二条に権限の委任規定が包括的に規定されております。その中で、社会保険庁の長官の権限、先ほど申し上げました法律第九十条の権限につきましては、「地方社会保険事務局長に委任する。」と。でありまして、さらに、「前項各号に掲げる権限であつて社会保険事務所の管轄区域に係るものは、当該社会保険事務所長に委任する。」というのが第二条の第二項にございますので、最終的には、この国民年金法施行令第二条の第二項によりまして、社会保険事務所長に委任されておるところでございます。

 申しわけございません。

違法性を認めるしかない

○仙谷委員 では、この問題はちょっとおいておきまして、別の観点から質問します。

 結局、村瀬長官、これは、じっと心静かに考えると、不適切処理というふうなレベルでお考えに、この間ずっと言ってきたけれども、そういう問題なのか、明らかに違法なことがこの免除をめぐって行われたということなのか。やはりこの違法性を、大臣が言うような観点も含めて違法性をお認めにならざるを得ないんじゃないですか。つまり、刑法との関係、国民年金法との関係で、違法性をお認めにならざるを得ないんじゃないですか。いかがですか。

○村瀬政府参考人 まず、申請を前提でございますので、申請がないまま手続をとったということでいえば、国民年金法の規定に違反をしているということでございます。その中で、形態が、現段階でつかんでいるのが三点ございます。

 一つは、御本人から免除申請がなくて、職権的な関係で免除を差し上げた、こういう部分がございます。この部分につきましては、明らかに申請書なしでやってございます。

 それから二点目に、代行して代筆をした、こういう部分がございます。これは、申請書はございます。ただし、この申請書は、御本人から委任を受けたという部分の確かなものがございません。確かなものが場合によってはあるかもわかりません。この部分について、御本人の委任をなしでやったということになれば、これもおかしいと思います。

 それから三点目に、手続上は、先に申請書を仮に書きましたけれども、御本人からちゃんと、遅まきながら申請書をきちっとおとりした、補足したという部分でございます。この部分は、事前申請ではありませんけれども、事後申請という観点からいえば一応申請書はあるということで、情状酌量の部分はあるのではなかろうかと思います。

○仙谷委員 だから、結局、あなたがおっしゃったことは、一番初めのは、法律上規定をされていない職権免除類似のことをやってしまった。権限踰越とか、権限がないのに行政が行政処分をやってしまった。これは大変なことですよね、国民の権利義務にかかわることについて。

 それから二番目のは、これは甚だ刑法上の私文書偽造、同行使。限りなく近いというよりも、私に言わせれば、明らかに、明々白々、犯罪として真っ黒だ。構成要件該当性は少なくともある。

 それで、三つ目の部分は、これは行政処分として、免除処分をやったときには全然法の予定する手続がとられていないのに、やってしまったと。これも治癒されるような話ではない。

 代行とか代理とかという話は、もちろん委任状の問題はありますけれども、委任状を受ける相手は、行政庁の中の人間が、何で民間人の委任状を受けて行政行為ができるんですか。そんなこと、あなた、でたらめなこと言っちゃだめですよ。

むちゃくちゃだ 長官は結果責任を問われる

 いずれにしても、むちゃくちゃなのよ、これは。(発言する者あり)ええ。全部、ちょっと考えてみれば、むちゃくちゃなんですよ、これは。

 私は、この責任は極めて大きいと思います。これはコンプライアンス違反とか、そんなええ格好するような話ではないんじゃないか。これはもう、何か突如違法集団が出現したみたいな話でありますから、これは大変まずいというよりも、やはり責任者としては腹をくくって、あなたの在任中に起こったことですから、これは責任をとってもらわなければならない。少なくとも結果責任をおとりになるべきだと思いますが、いかがですか。

○村瀬政府参考人 先ほどから申し上げますが、まず、私がやらなければならぬことは、遅まきながら、やはり申請書なしで免除をしたという部分について、これを御本人にしっかりお教えして、この部分について、申請書をとらせていただいて的確な免除ができる。遅まきながら、これをやる必要があるんだろうと思います。

 それと同時に、現状、さまざまな県で行っているものを一度明らかにした上で、その実態を明らかにするとともに対策をしっかり講じる。これをまずやってから考えたいというふうに思います。

○仙谷委員 いや、これはちょっと看過できない事態だと思うんですね。

 コンプライアンスとかなんとかおっしゃるので、その観点からもちょっと議論しておきますが、これは資料で3、三枚目、「納付率向上に向けた戦略」、こう書いてあります。「高所得層 中間層 低所得層」と書いてあります。これは中間層と低所得層を分ける基準というのは何ですか。所得基準か何か置いてあるんですか。

○青柳政府参考人 この表の上では低所得層というふうに包括的に書いてございますが、具体的には免除あるいは猶予を受ける方ということになりますので、それぞれの例えば家族の規模でありますとかに応じまして、その所得金額幾ら以下の方が対象になるという整理をしておるところでございます。

○仙谷委員 決めるのはだれですか。判定者、認定者。

○青柳政府参考人 これは市町村からいただきます前年度所得、これを基準にいたしまして、法令に当てはめましてこれを決定するということになっております。

○仙谷委員 主語を聞いているんです、主語、主体を。だれが決めるんですか。

○青柳政府参考人 免除、猶予の行政処分を行う主体ということでございますので、先ほど申し上げましたように、法律上は長官、そして、この権限が委任されて各社会保険事務所長が行っております。

○仙谷委員 気がついてみたら、ある日から私が低所得層に入っていた、勝手に社会保険庁が決める、こういうことですか。

○青柳政府参考人 免除あるいは猶予の制度は、先ほど来お答えを申し上げておりますように、申請によって行うわけでございますので、もちろん、それを希望されない方はこの制度を御利用されなくても結構だという形になっております。

○仙谷委員 低所得層のところは納付督励の実施とか一切書いていないじゃないですか。全部、免除の対象、「免除などの周知・勧奨」じゃないですか。おまえたちはこの国民年金制度からは出ていけ、これはこういうやり方じゃないですか。あなた方は低所得層だ、だから免除などを周知してやる、勧奨するぞ、何でこういうスタイルになっているんですか。

○青柳政府参考人 最初から免除と決めつけて何かするのかというお尋ねであるとすれば、これはあくまでも、勧奨をする際に御本人の御意思を確認いたしまして、例えば免除基準に該当する所得であるけれども自分は払いたいという方については納付書をお送りいたしますし、自分はもし免除基準に該当するのであればぜひこの制度を利用したいという方には、免除制度の申請をしていただくという形でございます。

○仙谷委員 いろいろおっしゃるけれども、納付率向上のための戦略としては、低所得層に納付督励をしたりいろいろするのはもう面倒くさい、納付率向上に向けた戦略だから。納付率を上げるためには、どんどんどんどん分母からこういう人がいなくなってほしい、これはそういう戦略じゃないですか、そうじゃないの。

 だから、次の四枚目、アクションプログラム策定手順書の送付について、ここから始まるアクションプログラム策定手順書、全部見てください。

 六枚目、「低所得者層」、これは低所得者層は「免除制度等の周知・改善」しか書いていない。

 次に、例の分母対策、ちゃんと七枚目の括弧の中に注記してあるじゃないですか。「(留意事項) 納付対象月数の削減対策(分母対策)に係る納付率換算値の目標について、目標」、次が何とも言えないですね、「獲得者数も含め、」あなた方が獲得するんですよ。「既に事務局で具体的な目標値を設定し、これを事務所別に展開して取り組んでいるところもあるが、未設定の事務局は今回、責任を持って精査のうえ策定し、事務所展開して取り組むこと。」になっているじゃないですか。削減対策の対象を獲得目標をつくって獲得するというんだから、いや、まことに恐るべき感覚だと私は思うんですよ。

 八枚目、ステップ二のところを見てくださいよ。同じ「目標獲得者数を設定(分母対策のベース部分)し、既獲得者数、未獲得者数等を把握する。(様式3)」と書いてある。

 次の九枚目、「納付対象月数の削減対策(分母対策)」「十七年度目標納付率を達成するための重点対策の一つが納付対象月対策(学特・申請免除・若年猶予)であり、」と書いてあるじゃないですか。

 つまり、分母対策というのは明らかに、納付率をよくするために分母を小さくするということでしょう。そのために低所得層はもう免除の対象にしよう、そのための獲得目標を決めて運動をしよう、これはこういうことじゃないですか。そういうノルマを事務所ごとにつくって、みずから設定して頑張れ、これはこういう話でしょう。そうじゃないんですか。

○青柳政府参考人 この対策の前提は、まず、未納である方々についてどのような取り扱いをしていくかということが前提でございます。

 したがいまして、仮に、所得が所得基準に該当し免除を受けることができるような方々であっても、何らかの形で納付ができるという方に対して、例えばこの免除対策を講じようというものではございません。したがいまして、未納である方の中で低所得の方については、その方々は放置をいたしますと年金受給権を喪失するということにもなりかねませんので、こういう形で対策を講じさせていただいている。未納であるというところが入り口であることをぜひ御理解賜りたいと存じます。

○仙谷委員 小泉流に言うと余計なお世話じゃないですか、そんなことは。自己責任の原則でいけば、払ってくださいという働きかけをあなた方がしてでも、年金の受給権を失うから勝手に免除処分をしてやろうとか、免除を勧奨してやろうなんて勝手なお世話じゃないですか、そんなことは。そこは、制度自身がおかしいんですよ。あなた方が分母対策とか削減対策とか、そんなことをやるような話じゃないんだよ、これは。

 つまり、三分の一だけは将来あげるから、ちゃんと手続しておいてあげるねという話でしょう、これは。三分の一、今の金額でいえば二万二千円だ。そうでしょう、あなた方が言っている年金受給権を失うとかなんとかいうのは。だとすれば、そんな額でいいのか、あるいは、基礎年金というのは考え方がどうなのかということを制度設計として考えなければ、年金の問題というのは解決しないんですよ。あなた方が小手先で、そういうことをおためごかしに恩着せがましく言う話じゃないの。私はそう思いますね、そこは。

 問題は、納付率を上げるということの意味は、一番に収納額を上げるんでしょうが。空洞化をどうやって充実させるかという話でしょう。納付率だけ上がって収納額が減ったらどうするんですか、これは。何のために汗をかいているんですか、一線の職員の皆さん方が。納付率は上がりますよ、どんどんどんどん。日本国民の三分の一ぐらいを全部を外しちゃったらどうですか、納付率上がりますよ。

 現に今、人間の数でいえば、国民年金の対象の人で納付していない人というのは大体の数でどのぐらいおるんですか。

○青柳政府参考人 平成十六年度末の数字でお答えを申し上げますと、国民年金の納付対象、いわゆる一号被保険者というのは二千二百十七万人となっております。これに対しまして、二年間以上保険料を払わない、いわゆる未納者、これが四百二十四万人、それから未加入という方々が三十六万人、こういう数になっております。合わせまして四百六十万人でございます。

 

完納者が半分弱とは

○仙谷委員 私が持っておる資料、多分同じ資料があると思うんですが、平成十七年国民年金被保険者実態調査速報、年齢階級別保険料納付状況(平成十六年度末)。調査対象者、千九百八十四万五千人。いいですか、千九百八十四万五千人のうち、納付者は千百三十五万一千人、完納者が九百二十八万八千人じゃないですか。つまり、完納者は調査対象者のうち半分弱じゃないですか。一号期間滞納者が四百九十五万七千人、申請全額免除者が百八十一万一千人、学生納付特例者が百七十二万六千人じゃないですか。つまり、あなた方は、そうやっていつも納付率がどうだとか未納付者がこうだとか数字を言うけれども、納付された額とかちゃんと納付している人の数から物事を考えないとどうにもならぬじゃないかと私は思いますよ。こういうことでしょう。

 こういう事実を前提にして、つまり、調べた一千九百八十四万五千人のうち、納付者が一千百三十五万一千人、この数を前提にして、納付率を上げるという目標値を掲げて、ノルマをかけてやったときに、何が起こってくるか。みやすい道理じゃないですか。さっき損保ジャパンの例も出ていましたけれども、単に民間手法を持ち込んでグランプリだ何だ。生命保険の会社でも損保会社でも行ってごらんよ。行ったことあるでしょう。全部グラフ書いてあるじゃないですか。何等賞と書いてあるじゃないですか。毎日毎日ノルマで、何件契約数を伸ばしたか、契約高を伸ばしたか、解約率がこの人についてはこれだけ少ないとか多いとか、解約者の数が何人だったかとやっていますよ。民間だから許されるんでしょう。

組織のために許されると思って犯罪になる

 この中で、あめとむちで、むちでしばいてあめを垂らして、それだけでできるか。さっき長妻さんがおっしゃった板橋の例というのは、兆候が出てくるんですよ、ノルマをかけると。個人的にオーバーランする人が出てくるんですよ。次は集団がそうなるんですよ。

 村瀬さん、長官、副社長までやられたんでしょう。僕とほとんど世代は同じですよね。この間のバブル崩壊後、我々世代が、個人的には優秀で有能で人柄がよくて、いい人が随分お縄つきになりましたよね、会社のために、組織のために。これが日本の最大の問題なんですよ。許されると思ってしまうんですよ。今回だって、私文書偽造事件に手を染めるんですよ。許されると思ってしまうんですよ。

 これが日本の組織のコンプライアンスの大問題なんですよ。そのことが事前に予測されないで、予測しないで、この十数年の経験を生かした企業マネジメントというのはあり得ないんですよ、組織マネジメントというのはあり得ないと僕は思いますよ。いかがですか。

○村瀬政府参考人 私自身は、先ほどお話がありましたように、二年前まで民間で仕事をしてまいりました。そういう中で、民間がいい部分、それから国家公務員がいい部分、当然両方あるんだろうと私は思います。

 その中で、では、今までの公務員のやり方でいいのかどうか。これは決していいのではなかろう、やはり変えるべきではなかろうかと。その変え方をどうするかということで、私自身が考えましたのは、一つは、仕事のやり方を変えてもらいたいということで、業務改革プログラムであるとか緊急対応プログラムということで、どちらかといいますと国民の皆さんの視点に立った仕事をするような仕組みをつくりたい。

 それからもう一点は、社員の意識の中身を変えたいということで、昨年の十月から人事評価制度ということで、目標管理シート、目標設定シートと言っていますけれども、具体的に上司が部下に対して何をしてもらいたいのか、部下は自分からどういうことをしたいのか、それと上司と部下のコミュニケーションをしっかりつくっていく、これをやらない限り、やはり組織の一体化はできないんだろう。特に、社会保険庁の場合には、前にもお話ししましたように、三層構造という大きな問題を抱えております。したがって、その部分を着実にやっていけば変わるんだろうということで私自身は取り組んできたつもりでございます。

 今回、先生がおっしゃったように、残念な結果が起こったということは、私のマネジメントの仕方がまずかったのか、それとも急ぎ過ぎたのか、ここはよく検証しなければならないというふうに思っております。

トップマネッジメントが問われている組織のコンプライアンス

○仙谷委員 時間が参りましたのでひとまずおきますが、要するに、収納額を上昇させる、そういう目標を掲げて一気通貫の集団をつくるというのであれば、僕はわかるんですよ。納付率というある種のごまかしのきく、外向けには納付率が上がったということでごまかしがきく、しかし、空洞化は進む、そういうことになりかねない公的な制度なのだということを前提にしてやらないと、こういう大問題が起こってくるんですよ。

 私は、明らかに、単純な民間手法とか、わけのわからない遵法精神みたいなことを言っておるけれども、本物のコンプライアンスというのはないと思いますよ。だからこんな大失態、大事件が発生したんだと思いますよ。望むらくは、トップ以下、謙虚にこの事態を反省していただいて、トカゲのしっぽ切りに終わらせることだけはしないようにしてください。

 私は、こういう事態になったら、我々世代が組織からすぐ切り取らされて、逮捕されて、もう後は本当に大変なことになっているのを随分見てきました、組織のために。こんなばかばかしいことを繰り返してはならないんですよ。これはトップマネジメントが、あるいは長官だけじゃないんだけれども、しっかりしない限り、大変悲惨なことになります。

 どうぞ、この問題は非常に重大で、私が先ほど申し上げたように、何せ法違反が中核にある事態を起こしてしまった、このことをよく拳々服膺して事に当たってもらいたいと思います。

 これからも、まだこの問題についての審議を続けなければいけないと思いますけれども、いろいろな角度から議論をしてみたいと思います。終わります。