医療の危機的状況について小泉総理の認識を問う 

5月17日  厚生労働委員会  質疑

小泉総理の医療制度における責任は重大だ

○仙谷委員 仙谷でございます。

 今、我が党の議員と総理のやりとりを伺っておりました。総理、きょう出した、医療制度をめぐる主な経緯、ずっとごらんいただきましたら、平成八年から、今平成十八年ですから、十年間です。そこで、小泉総理大臣が厚生大臣として、あるいは総理大臣としてかかわった年数は大変長いわけですね。いわば、医療制度改革と言われている問題について、総理から言わせれば、全部任せているんだから形式的だ、こうおっしゃるのかもわかりませんが、そうはいかない。政治家としてかかわった以上、現在の事態にある種の結果責任といいましょうか、政治責任があるというふうに考えなければならないことは当然だと私は思うんですね。

 そして、この現在の事態を総理がどのように認識しているのか、これが、この法案審議をするに当たって我が党の議員の疑問であったために、先ほどのようなお話を聞いたわけですが、どうも予算委員会などと同じように、はぐらかしといいましょうか、傍聴席にいる方やあるいは厚生省の方やあるいは与党の議員でも、どうもぴたっとこないな、これは困ったものだな、こう思われたのじゃないかなと私は思うのでございます。

 今の園田さんの質問を引き継いで、こういうことをちょっとお伺いしてみたいわけでありますが、格差論争がございました。収入、所得の格差、これがつくのはやむを得ない、拡大し固定化するのが問題だ、ここまでおっしゃいました。

 さてそこで、健康に格差がつくのは、これはある種自己責任の問題だといって切り捨てられるでしょうか。それから、受け得る医療に格差がつくとすれば、これは日本国に住む日本人として、あるいは外国の方々も含めて、憲法二十五条の趣旨にも照らして、さあ、どのようにお考えになるのか、所得の格差と医療格差、受け得る医療に格差があるかないか、ある場合にはどう考えたらいいのか、総理はどうお考えでございますか。

健康格差社会にしてよいのか

○小泉内閣総理大臣 それは、健康にも格差があると思いますね。生まれながらにして健康、丈夫な人、弱い人、あると思います。そして、お医者さんがいるから、薬があるから暴飲暴食していいのだということではないと思います。生活習慣によって、いいお医者さんもいる、いい薬もあるけれども、やはり一番大事なのは、その以前の日常の食生活等、十分に気をつけている人と、余り気をつけないで無頓着に食事をしている人とは格差が出てくると思います。また、お医者さんによっても、名医と必ずしもそうでない方に診てもらう場合には、やはり差が出てくるでしょう。

 そういう面において、私は、格差はあると思いますけれども、全体的に考えて、日本の医療体制というのは、世界の水準からいっても先進国の部類に入る、このような医療保険制度は、持続させるように改革していかなきゃいけないと思っております。

○仙谷委員 資料の二枚目でしょうか、所得と抑うつの関係、所得と要介護高齢者率の関係というのをちょっとつけてみました。ごらんください。

 やはり、所得の問題も、実は高齢化をするというふうな条件が加わりますと、要介護率が男性も女性も飛躍的に高まったり、所得の低い人ほど、所得の低いお年寄りほどそういう要介護率が高まったり、あるいは精神状態が抑うつ的になる、つまり、病的な状態に近くなる、これはそういう一つのデータを表にしたものであります。このあたりも本当は厚生省が、あるいは内閣として、ちゃんとデータをとるべき時代に入ってきておるわけでありますが、この種のデータがない、ここは一つ、そういう問題点を指摘しておきます。

 さらに加えて、先ほどちょっと小泉流のお話をされましたけれども、個人の自由に帰せないような理由で、つまり、そういう素因があるからある病気に罹患した、あるいは、生まれながらにしてハンディキャップを持ったという方も医療を必要とする方の中にはいらっしゃるでしょう。それから、加齢によって医療を受けなければならない、こういうリスクというのは当然どなたでも増してくることは、これは世の習いというか、古今東西はっきりしたことであります。

 その際に、受け得る医療に格差がある、これは、この日本国においては、できる限り格差が発生しないように、その差が少ないようにする、そして、日本における最低の基準はここだということだけはちゃんと守る、設定する、そのことを維持するために努力を払う、これが、憲法を持ち出すまでもなく政治の役割だと思いますけれども、総理はいかがお考えでございましょうか。

○小泉内閣総理大臣 それは、お金をかければ切りがないほど、医療にかける方もいると思います。しかし、それが必ずしも治療に役立っているかどうかということを考えますと、役立っているときもあるでしょうし、全く無意味な場合もある。健康食品を買う方はいますけれども、こういう方、健康食品を食べている方が必ずしも健康かというとそうでない。

 しかしながら、必要な医療はどこでもだれでも受けられるという、その体制はしっかりと日本でもつくらなきゃいかぬということで今までやってきた。医師もふやしてきた、でもまだ足りないということでありますので、まだまだ不十分な点がありますが、こういう点につきましては、国会の審議を通じて、またさまざまな国民の御意見を聞いて、改善すべきはしていかなきゃならない。私は、改革に終わりはない、どのような時代においてもこれで一〇〇%いいということはないのではないかと思っております。

必要な医師が圧倒的に足りない

○仙谷委員 さっき偏在というお言葉を使われました。偏ってあるという話、それから今この間の、これはがん治療から言われてきた言葉でありますが、厚生労働関係では均てん化という言葉を使われている。ということは、裏を返せば均てんされていない、だから均てん化が必要なんだ、不足しているところがある、こういう話だと思うんですね。

 それで、総理にぜひ認識を改めていただくというか、より掘り下げて認識をしていただきたいのは、先ほどから、医師がふえているけれども不足だと言う人がおると、こういう一般論で、今語るべき事態ではなくなっているということをまず認識していただきたいんです。

 足りないのは、病院の中堅の医者が圧倒的に足りなくなっている、急性期病棟の医者が圧倒的に足りなくなっている、そして科で言えば、分娩を扱う産婦人科のお医者さんが圧倒的にいなくなっている、あるいは、そういう病院でいなくなっている、そこが不足している、小児救急の病棟でのお医者さんが圧倒的に不足してきている、こういうことであります。

 それから、いいですか、御存じだと思いますが、毎年毎年七千五百人から八千人のお医者さんができますが、今、毎年毎年四千五百人ぐらいの中堅のお医者さんが、勤務医からバーンアウトしているのか、もっと違う思いなのか知りませんけれども、開業をされている。当然のことながら、マクロ的な統計の数字の上では不足としてあらわれてきません。しかし、病院のお医者さんは圧倒的に不足している。

 もう一つ、これは通常のお医者さんの問題でありますが、もう一つの大問題は、高度先進医療にかかわるお医者さんは、例えば、がんの腫瘍内科医とか、先ほど福島先生おっしゃっていましたが、がんの放射線治療医とか、圧倒的にこれは不足です、いません。腫瘍内科医は、ちゃんと認定された専門医は四十七人です。あと暫定の方が五百人弱です。一人もいない県もあります。つまり、そういう先端を行く、あるいは、もう国民が既に情報を知っているけれども、どこへ行ったら医療にアクセスできるのか、行ってみたらないというこの医師不足、専門医の不足。それから、今までは当然のこととして前提にされていた産科や小児科、そして最近では、外科、麻酔科、脳外科、そういうところを中心に急性期病棟においてお医者さんが圧倒的に不足してきた、こういう問題なんですね。

 さらにもう一つは、インフォームド・コンセント、これはいいことであります。私も、自分の病の体験からして、いや最近は丁寧になったなと思います。ありがたいことです。問題は、インフォームド・コンセントと、ある種医療技術のIT化の中で、丁寧にやれば従来の医療よりも、はるかにお一人お一人の患者さんに対する時間が勤務医の先生方を中心にかかるということなんです。そうすると、当然、対患者に使う時間数は、本来は少ない人数しか診察、治療できないはずでありますけれども、そこのところの人数を手当てされないと、どんどんどんどん残業になるか忙しくなってくる、寝る間もなくなってくる、こういう医師不足の問題なんです。

 皆さんも経験しておると思いますが、コンピューターを使えばペーパーレス時代になる、こう言われましたね。何か持ち運びも簡単だし仕事量が減るんじゃないか、効率化されて仕事量が減って、人間労働の中に余暇が生まれる、こう思いました。

 どうですか、皆さん。私もそんなに熟達しておりませんが、少々使えます。パソコンを使った仕事を始めたら、すぐ従来の二倍、三倍、四倍の仕事量をこなさなければいけなくなります。夜寝る暇も本当になくなります、メールの返事を打とうとすれば。つまり、このIT化というのはどうも仕事をふやすんですよ、お医者さんも。ペーパーレスじゃなくてペーパーがふえるんですよ、IT化というのは。どうもそういうことだと思います。

 医者不足は、そういうことの要因もあって、子供が減っているのになぜ小児科と産科が不足するのか。これはだれも、おかしいんじゃないか、絶対量あるんじゃないか、こういう感覚で見ておったわけですが、足元がこんなになってしまったということであります。ここは別途、特別の対策が私は必要だと思いますが、総理、いかがですか。

○小泉内閣総理大臣 今の御指摘は、大変私は重要なことだと思っております。前から、お医者さんは多い、どんどんふえていく、減らさなきゃいけないという専門家の方々の意見と、一般国民の声を聞くと、いや、お医者さん足りない足りないという声を私も常に受けております。どうなんだろうと。

 今、お子さんが減っていくのに、なぜ産科と小児科が足りないんだろうか、ここがやはり大きな現在の問題点でもあるし、お医者さんがふえているのにもかかわらず少ない少ないと言っているのは、やはり偏っている、お医者さんの希望者なり、お医者さんが働く分野が偏っているんだと思います。

 今後、なぜ医師が多過ぎて減らさなきゃならないかということを聞きますと、これは、医師養成に大変お金がかかると。この医師の養成、医師の国家試験、医師免許を取ってもお医者さんの仕事につけないというのが出てくる、これは好ましくないだろうということで、医師の数がふえ過ぎるから減らしていかなきゃならないということを、もう学校の段階から考えているわけであります。

 今後、この偏在というもの、医師の偏り、必要な分野に行ってもらうという点については、診療報酬等の面についてある刺激をつくる、こちらの分野に行くとかなり有利なことになりますよという点も必要でしょうけれども、同時に、さまざまな地方の意見を聞くことが大事でしょう、足りない部分もやろう。それと、財源を捻出する場合には、どういう財源を確保するかということも必要でしょう。あるいは医療提供体制の効率化を図るためには、IT化という分野に適することでかなりできる分野もあるでしょう。

 しかし、そのようなさまざまな意見がありますから、医師を減らして本当にいいんだろうか、医師の免許を受けても医師の分野につけなくても、医師の免許を持たせていいんだろうかという点も含めて、検討していかなきゃならない課題だと私は思っております。

「医療崩壊」をくいとめるには、政治が動かなければよくならない

○仙谷委員 まだちょっとおわかりいただけていないような気がするんですが。

 いいですか、今ここに、「医療崩壊」という本を持ってまいりました。何と、国家公務員共済組合が経営する虎の門病院の泌尿器科の部長さん、小松さん、これは、そこにいらっしゃる赤松副大臣の医療問題のアドバイザー。先般、委員会でおっしゃるから、僕は買ってきて読んでおるわけであります。「「立ち去り型サボタージュ」とは何か」という副題がついています。これは、もし時間をつくれるようになったら、総理もお読みください。厚生労働大臣もお読みいただきたい。赤松副大臣は中身をおわかりになっていると思いますけれども、要するに、今私が申し上げたようなことも書いておるのであります。

 厚生労働省も、いろいろな研究会で、なぜこんな事態に立ち至っているのか、小児科、産科を中心として医師不足、決定的に少ないということになぜなっているのか、研究はほぼ終わっているんですよ。立派な先生方が、ついせんだっても、この参考人質疑のときにいらっしゃってちゃんとしたことを、厚生省の研究会の班長さんですよ、責任者。自他ともに認める立派な先生。この委員会の自民党の筆頭理事の鴨下先生と同じ鴨下さん、鴨下重彦、極めて立派な先生。ほとんど医学の世界では、医療の世界では尊敬されている先生。

 その人を長にして、もちろん小児科の専門家ですが、なぜ小児科、産科がこんな状況になっているのか、大体方向性としては答えが出ているんですよ。政治が動かない、政策がない、とりわけ予算がつかない、これが、もう素人が見てもわかる現在の状況です。

 そこで、連日のように新聞に、がん難民は去年の話で、まだがん難民も大量に存在しますけれども、産科難民、小児科難民ときて、今度のこの健康保険法の改正で平成二十年から始まる療養病床群のベッド数の削減で、それに対応する施策が六年でうまくいくとは思えない、そうだとすると、これは介護難民が大量に生まれるんじゃないかというところまで来ております。

 総理は、この医療崩壊とか小児科難民、産科難民、がん難民、介護難民とかという言い方は、大げさだと思いますか。それとも、そういう危機的な岸辺に日本はたたずんでいる、これは早急に何とかしなければいけないとお考えですか。いかがでしょうか。

○小泉内閣総理大臣 御指摘の話は私も聞いております。そういう問題点があるからこそ、この問題について改善をしていかなきゃならない。医療の分野においてさまざまな問題点が指摘されますし、こういうことについては不断の見直しが必要だと思っております。

5年間の小泉政治−「三方一両損」で国民が大犠牲

○仙谷委員 ここで総理に、この五年間の小泉政治を振り返って、胸に手を当てて、これでよかったのかなと考えていただきたいんです。

 というのは、よく御記憶されておると思いますけれども、ことしの診療報酬改定で、総理は、三回の診療報酬改定に総理としてかかわったことになるんですね。平成十四年、全体マイナス二・七%、診療報酬本体マイナス一・三%。平成十六年、全体マイナス一・〇%、本体〇%。平成十八年、全体マイナス三・一六%、本体マイナス一・三六%、これがことしです。その都度、小児科に対する重点配分とか急性期に重点配分、こういうことが言葉で出て、少々の加配、重点配分とかがなされたことは間違いありません。

 ところが、この平成十四年の診療報酬改定、お配りした二枚目の表でおわかりいただけると思いますが、この平成十四年の診療報酬改定は、三方一両損、これが総理のワンワードポリティクスでした。いろいろ、議会でどういうふうにおっしゃったか、調べてまいりました。事もあろうに、三方一両損というのは全体的に国民が一番得をするというところまで言い切った。

 三方一両損の医療制度改革なのか医療保険財政改革なのか知りませんが、この改革によって、いいですか、現在国民が受け得る医療は、部分的なのか全体的なのかはともかくとして、崩壊の岸辺に立っている。崩壊の兆しを来している。多分、お子さんをお持ちの方はこれから大変苦労すると思います。これからお子さんを産もうとする方は、これまた大変苦労すると思います。これはもう、この委員会で今度大きく問題になりました。

 がんになっても、アクセスの仕方をこれから探すような方々は、これまた大変苦労します。がん検診に至っては遅々として進まない。今度のこの医療制度改革では、ついにがん検診は市町村の老人保健事業からもたたき出されて、各保険者の業務ということになってしまいましたけれども、だれがやるかどうか、それももう自主的な話ということになるわけであります。

 つまり、小泉政治五年間というのは、医療制度改革というのは医療保険制度改革であり、医療保険財政改革に終始し、医療提供体制の改革、これは言うだけで何もしなかった。むしろ、拱手傍観をしたばかりにこんなにひどい状況になってしまった、なりつつある、こういうことじゃないかと私はこの間の審議を通じて見ておるんです。まじめに見ておるんです。病気の体験者として、これはゆゆしき事態になったなと本気で思っているんです。これではいかぬ、こういうふうに思っているんです。

「がん検診の充実」はじめ、がん対策に、国家の意思が必要

ちょっとお金の話の裏側なのか、どっちが表か裏かわかりませんが、国民が受ける医療の質をよくしなきゃいかぬということは何回も言っておりますけれども、それからさらに踏み込んで、病院、勤務医、急性期病棟、小児科、産科あるいはがん、リウマチ、難病というふうなところに特段の手当てをしていくというようなことが完全に没却されたことが、今の事態を生み出しているとつくづく思います。

 一つは、このお示しした資料の一番最後の、胃がん検診の実施状況の推移から肺がん、大腸がん、子宮がん、乳がん、これをちょっとごらんください。平成六年度からです。平成十三年度からごらんいただいても結構ですし、総理が厚生大臣時代あるいは総理になられてからのときのところをごらんください。

 総理ががんについて国会で本会議や委員会で答弁をされたり、あるいは厚生省からの、先ほどちょっと引用されましたけれども、第三次対がん十カ年総合戦略、これをごらんになったりして、こういうところでは、「有効ながん検診の普及等のがんの早期発見」、例えばこう書いてあります。それから、これは平成十七年でありますが、平成十六年でも、「検診の充実など予防の推進」、まことにごもっとも、書いてあります。これが、「罹患率と死亡率の激減を目指し」という頭言葉の中で出てくるわけであります。

 この検診実施は、昭和五十七年から始まったとか昭和六十二年から本格的に始まったとか言われておるわけでありますが、そのぐらい歴史のあるものでありますけれども、この数字の推移をごらんになって、総理、どういうふうにお考えになりますか。

○小泉内閣総理大臣 がんが我が国の死亡率の中でも第一位である、また、お医者さんに伺うと、人間は年をとれば必ずだれでもがんになるという、これからもがんの死亡率は一位になっていくのでしょう。それだけに、がん対策が重要だという御指摘だと思います。

 現に、かつてはがんを宣告されるともう死を覚悟しなきゃならない、いかに教えないで、家族にどうやって打ち明ければいいかと苦労されたお医者さんも多いかと思います。最近では、むしろ本人に教えた方がいい、あるいは本人も教えてほしいという患者さんもふえてきていると聞いております。

 そういう中で、がん対策も私は進んでいる面が随分あると思います。今御指摘の不十分な点もあると思いますけれども、治療等については格段に進歩している分野もたくさんあると思います。そういうことが両面であるわけでありますが、今後も、がんの対策について、重要だからこそ第三次がん対策を総合的に考えようということでやっているわけでありますので、今いい点は伸ばしながら、不十分な点、どうして改善していくかということが重要ではないかなと思っております。

○仙谷委員 ここで、例えば乳がんというのがございますね。これは実は、視触診という部分の数字でありますから、大して信用ならないのであります。つまり、平成十二年からは、国の方もマンモグラフィーという撮影機を導入して、それで、マンモグラフィー併用の乳がん検診をやった方がいいですよ、こういうことにしているんですね。これは、都道府県に助成をしたり、あるいは市町村に助成をして今までやってきた。

 ところが、ことしの予算、女性のがん緊急対策と称して、効果的ながん検診の普及で平成十七年度はマンモグラフィー導入に対して四十一億三千万円を予算措置した、ことしになったら二十四億一千万円になっている。何でこれを減らしたんだと僕は厚生省の人に聞きました。いや、十一億円も去年余りまして、使えないんですよと。

 各県別のマンモグラフィー併用のデータというのが厚生省にはないけれども、健康保険組合ではつくった人がおります。ほとんどが、つまり四十近い都道府県はマンモグラフィー併用の検診が、受診率がたった五%以下です。一%、二%のところもいっぱいあります。富山県だけが一五・七%、特段に力を入れている。次は宮城県、一〇・八かな。力を入れなければならないということを一方で書いたり言ったりしながら、予算が減ってくる。いや、それは地元で受けてくれないんですよと。

 今度は、先ほどから申し上げておりますように、がん検診を含めた健診、これも市町村の老健事業ではなくする。国保の事業であったり、政管健保の事業であったり、普通の組合健保の事業である、こういうことにしてしまうというのでありますが、こうなってくると、本当に、中央政府が、国家が国家意思としてがんの予防と早期発見のための検診、検診の精度を向上させる、そのために人材を養成する、人材養成のために資源、予算を投入するというふうなことを言っても、どうも羊頭狗肉、看板だけということになっているのではないかと思います。

 総理、先ほどもおっしゃいましたけれども、お金の話を一生懸命されておりますが、そのとおりなんですよ。だから、政治が必要なんじゃないですか。国家の意思が必要なんじゃないですか。道路の財源を一千億持ってくれば、がん対策なんかどんと進みますよ。小児も産科も、多分、単年度で言えば二千億か三千億のものを突っ込めば、これは一挙に改善の方向に向かう可能性があると思います。あるいは、今の崩壊を食いとめられることが一時的にせよできる可能性があると思います。しかし、そのぐらいの単位のお金は必要です。

人材の育成、勤務条件の改善、医療崩壊阻止のために、予算の集中投入こそ必要

 先ほどから申し上げていることは、専門医をつくる、専門性のために、つまり人材育成のためにお金をこの医療の世界でももっと使わないと、専門医の不足という事態は解消できない、これが一つ。

 もう一つは、勤務医の世界は、むちゃくちゃに過酷な労働条件や、あるいは訴訟や、あるいはいろいろな親御さんとの接触、インフォームド・コンセント、そういうところで労働環境、労働条件が悪過ぎる。特に、女性のお医者さんがふえていますから、家庭を持ったり子供を育てながらということで、三十八時間労働でその次の日はまた通常勤務につくなんということが続いたら、それはとてもじゃないけれども、もう、ちょっとこの世界は勘弁してくれ、ゆっくりと診療所でも行って、あるいはパートにでも行きたい、こういうことになるのは、これは人情というよりも人間として当たり前じゃないですか。

 つまり、犠牲的な、労働基準法違反のむちゃくちゃな労働条件で勤務をせざるを得ない勤務医の世界というのが、いまだにか、以前よりももっとひどくか知りませんけれども、存在するということなんですよ。二交代、三交代にできるものだったら、やっていくためには人の数が倍要るわけですから、少なくとも人件費は五〇%増しぐらいは要るわけですよ、人件費カウントでも。そのために、医療の崩壊を防ぐために予算措置をする、あるいは法律をつくるというのが政治の役目じゃないですか、国家意思じゃないですか。

 そこのところ、この法案を単なる時間パックのようにして通そうと何か焦っている方がいらっしゃるらしいけれども、今の医療の現場と実態はそんな事態ではない、そのことを申し上げますし、総理の答弁をいただきたい。

○小泉内閣総理大臣 それは、予算全体の中では民主党も削減に積極的であると聞いておりますし、私もさまざまな委員会で民主党の議員からも質問を受けますが、医療費もまだまだ無駄が多い、削減せよという声もよく聞きます。恐らく、診療報酬のマイナス改定にも民主党は賛成されているんだと思います。

 そういう中で、各予算の中におきまして、それぞれふやしてくれという要望があるんです。道路も減らせといいながら、地元に行きますとふやせという意見が多い。それは与野党問わず、さまざまな地域の要望を聞きますと、予算を減らしてくれというよりもふやしてくれという方が多い。かといって、それでは、消費税にしてもほかの税金にしても増税していいかというと、増税はやめろということでありますので、確かに、費用と対策というのは切り離すことはできません、予算と。歳入と歳出、両方考えていかなきゃならない。そういう中で、できるだけ効率化しながら、社会保障の分野はますますふえていきます。医療だけではありません。

 そういう中で、全体の予算を削減していく中で、社会保障の分野は減らさないで伸び率をどうやって抑制していくかということの中で、効率的に必要な分野にどう手当てをしていくかという御指摘、御審議を踏まえて、これからも改善策を講じていきたいと思っております。

○仙谷委員 政治はやはりプライオリティー、優先度のつけ方、めり張りのつけ方ですから、それを申し上げたかっただけでございます。

(この日、総理との質疑のあと、衆議院厚生労働委員会では、与党が強行採決をし、健康保険法改正、医療法改正が強行可決されました。)