小泉総理の医療制度における責任は重大だ
○仙谷委員 仙谷でございます。
今、我が党の議員と総理のやりとりを伺っておりました。総理、きょう出した、医療制度をめぐる主な経緯、ずっとごらんいただきましたら、平成八年から、今平成十八年ですから、十年間です。そこで、小泉総理大臣が厚生大臣として、あるいは総理大臣としてかかわった年数は大変長いわけですね。いわば、医療制度改革と言われている問題について、総理から言わせれば、全部任せているんだから形式的だ、こうおっしゃるのかもわかりませんが、そうはいかない。政治家としてかかわった以上、現在の事態にある種の結果責任といいましょうか、政治責任があるというふうに考えなければならないことは当然だと私は思うんですね。
そして、この現在の事態を総理がどのように認識しているのか、これが、この法案審議をするに当たって我が党の議員の疑問であったために、先ほどのようなお話を聞いたわけですが、どうも予算委員会などと同じように、はぐらかしといいましょうか、傍聴席にいる方やあるいは厚生省の方やあるいは与党の議員でも、どうもぴたっとこないな、これは困ったものだな、こう思われたのじゃないかなと私は思うのでございます。
今の園田さんの質問を引き継いで、こういうことをちょっとお伺いしてみたいわけでありますが、格差論争がございました。収入、所得の格差、これがつくのはやむを得ない、拡大し固定化するのが問題だ、ここまでおっしゃいました。
さてそこで、健康に格差がつくのは、これはある種自己責任の問題だといって切り捨てられるでしょうか。それから、受け得る医療に格差がつくとすれば、これは日本国に住む日本人として、あるいは外国の方々も含めて、憲法二十五条の趣旨にも照らして、さあ、どのようにお考えになるのか、所得の格差と医療格差、受け得る医療に格差があるかないか、ある場合にはどう考えたらいいのか、総理はどうお考えでございますか。
健康格差社会にしてよいのか
○小泉内閣総理大臣 それは、健康にも格差があると思いますね。生まれながらにして健康、丈夫な人、弱い人、あると思います。そして、お医者さんがいるから、薬があるから暴飲暴食していいのだということではないと思います。生活習慣によって、いいお医者さんもいる、いい薬もあるけれども、やはり一番大事なのは、その以前の日常の食生活等、十分に気をつけている人と、余り気をつけないで無頓着に食事をしている人とは格差が出てくると思います。また、お医者さんによっても、名医と必ずしもそうでない方に診てもらう場合には、やはり差が出てくるでしょう。
そういう面において、私は、格差はあると思いますけれども、全体的に考えて、日本の医療体制というのは、世界の水準からいっても先進国の部類に入る、このような医療保険制度は、持続させるように改革していかなきゃいけないと思っております。
○仙谷委員 資料の二枚目でしょうか、所得と抑うつの関係、所得と要介護高齢者率の関係というのをちょっとつけてみました。ごらんください。
やはり、所得の問題も、実は高齢化をするというふうな条件が加わりますと、要介護率が男性も女性も飛躍的に高まったり、所得の低い人ほど、所得の低いお年寄りほどそういう要介護率が高まったり、あるいは精神状態が抑うつ的になる、つまり、病的な状態に近くなる、これはそういう一つのデータを表にしたものであります。このあたりも本当は厚生省が、あるいは内閣として、ちゃんとデータをとるべき時代に入ってきておるわけでありますが、この種のデータがない、ここは一つ、そういう問題点を指摘しておきます。
さらに加えて、先ほどちょっと小泉流のお話をされましたけれども、個人の自由に帰せないような理由で、つまり、そういう素因があるからある病気に罹患した、あるいは、生まれながらにしてハンディキャップを持ったという方も医療を必要とする方の中にはいらっしゃるでしょう。それから、加齢によって医療を受けなければならない、こういうリスクというのは当然どなたでも増してくることは、これは世の習いというか、古今東西はっきりしたことであります。
その際に、受け得る医療に格差がある、これは、この日本国においては、できる限り格差が発生しないように、その差が少ないようにする、そして、日本における最低の基準はここだということだけはちゃんと守る、設定する、そのことを維持するために努力を払う、これが、憲法を持ち出すまでもなく政治の役割だと思いますけれども、総理はいかがお考えでございましょうか。
○小泉内閣総理大臣 それは、お金をかければ切りがないほど、医療にかける方もいると思います。しかし、それが必ずしも治療に役立っているかどうかということを考えますと、役立っているときもあるでしょうし、全く無意味な場合もある。健康食品を買う方はいますけれども、こういう方、健康食品を食べている方が必ずしも健康かというとそうでない。
しかしながら、必要な医療はどこでもだれでも受けられるという、その体制はしっかりと日本でもつくらなきゃいかぬということで今までやってきた。医師もふやしてきた、でもまだ足りないということでありますので、まだまだ不十分な点がありますが、こういう点につきましては、国会の審議を通じて、またさまざまな国民の御意見を聞いて、改善すべきはしていかなきゃならない。私は、改革に終わりはない、どのような時代においてもこれで一〇〇%いいということはないのではないかと思っております。
必要な医師が圧倒的に足りない
○仙谷委員 さっき偏在というお言葉を使われました。偏ってあるという話、それから今この間の、これはがん治療から言われてきた言葉でありますが、厚生労働関係では均てん化という言葉を使われている。ということは、裏を返せば均てんされていない、だから均てん化が必要なんだ、不足しているところがある、こういう話だと思うんですね。
それで、総理にぜひ認識を改めていただくというか、より掘り下げて認識をしていただきたいのは、先ほどから、医師がふえているけれども不足だと言う人がおると、こういう一般論で、今語るべき事態ではなくなっているということをまず認識していただきたいんです。
足りないのは、病院の中堅の医者が圧倒的に足りなくなっている、急性期病棟の医者が圧倒的に足りなくなっている、そして科で言えば、分娩を扱う産婦人科のお医者さんが圧倒的にいなくなっている、あるいは、そういう病院でいなくなっている、そこが不足している、小児救急の病棟でのお医者さんが圧倒的に不足してきている、こういうことであります。
それから、いいですか、御存じだと思いますが、毎年毎年七千五百人から八千人のお医者さんができますが、今、毎年毎年四千五百人ぐらいの中堅のお医者さんが、勤務医からバーンアウトしているのか、もっと違う思いなのか知りませんけれども、開業をされている。当然のことながら、マクロ的な統計の数字の上では不足としてあらわれてきません。しかし、病院のお医者さんは圧倒的に不足している。
もう一つ、これは通常のお医者さんの問題でありますが、もう一つの大問題は、高度先進医療にかかわるお医者さんは、例えば、がんの腫瘍内科医とか、先ほど福島先生おっしゃっていましたが、がんの放射線治療医とか、圧倒的にこれは不足です、いません。腫瘍内科医は、ちゃんと認定された専門医は四十七人です。あと暫定の方が五百人弱です。一人もいない県もあります。つまり、そういう先端を行く、あるいは、もう国民が既に情報を知っているけれども、どこへ行ったら医療にアクセスできるのか、行ってみたらないというこの医師不足、専門医の不足。それから、今までは当然のこととして前提にされていた産科や小児科、そして最近では、外科、麻酔科、脳外科、そういうところを中心に急性期病棟においてお医者さんが圧倒的に不足してきた、こういう問題なんですね。
さらにもう一つは、インフォームド・コンセント、これはいいことであります。私も、自分の病の体験からして、いや最近は丁寧になったなと思います。ありがたいことです。問題は、インフォームド・コンセントと、ある種医療技術のIT化の中で、丁寧にやれば従来の医療よりも、はるかにお一人お一人の患者さんに対する時間が勤務医の先生方を中心にかかるということなんです。そうすると、当然、対患者に使う時間数は、本来は少ない人数しか診察、治療できないはずでありますけれども、そこのところの人数を手当てされないと、どんどんどんどん残業になるか忙しくなってくる、寝る間もなくなってくる、こういう医師不足の問題なんです。
皆さんも経験しておると思いますが、コンピューターを使えばペーパーレス時代になる、こう言われましたね。何か持ち運びも簡単だし仕事量が減るんじゃないか、効率化されて仕事量が減って、人間労働の中に余暇が生まれる、こう思いました。
どうですか、皆さん。私もそんなに熟達しておりませんが、少々使えます。パソコンを使った仕事を始めたら、すぐ従来の二倍、三倍、四倍の仕事量をこなさなければいけなくなります。夜寝る暇も本当になくなります、メールの返事を打とうとすれば。つまり、このIT化というのはどうも仕事をふやすんですよ、お医者さんも。ペーパーレスじゃなくてペーパーがふえるんですよ、IT化というのは。どうもそういうことだと思います。
医者不足は、そういうことの要因もあって、子供が減っているのになぜ小児科と産科が不足するのか。これはだれも、おかしいんじゃないか、絶対量あるんじゃないか、こういう感覚で見ておったわけですが、足元がこんなになってしまったということであります。ここは別途、特別の対策が私は必要だと思いますが、総理、いかがですか。
○小泉内閣総理大臣 今の御指摘は、大変私は重要なことだと思っております。前から、お医者さんは多い、どんどんふえていく、減らさなきゃいけないという専門家の方々の意見と、一般国民の声を聞くと、いや、お医者さん足りない足りないという声を私も常に受けております。どうなんだろうと。
今、お子さんが減っていくのに、なぜ産科と小児科が足りないんだろうか、ここがやはり大きな現在の問題点でもあるし、お医者さんがふえているのにもかかわらず少ない少ないと言っているのは、やはり偏っている、お医者さんの希望者なり、お医者さんが働く分野が偏っているんだと思います。
今後、なぜ医師が多過ぎて減らさなきゃならないかということを聞きますと、これは、医師養成に大変お金がかかると。この医師の養成、医師の国家試験、医師免許を取ってもお医者さんの仕事につけないというのが出てくる、これは好ましくないだろうということで、医師の数がふえ過ぎるから減らしていかなきゃならないということを、もう学校の段階から考えているわけであります。
今後、この偏在というもの、医師の偏り、必要な分野に行ってもらうという点については、診療報酬等の面についてある刺激をつくる、こちらの分野に行くとかなり有利なことになりますよという点も必要でしょうけれども、同時に、さまざまな地方の意見を聞くことが大事でしょう、足りない部分もやろう。それと、財源を捻出する場合には、どういう財源を確保するかということも必要でしょう。あるいは医療提供体制の効率化を図るためには、IT化という分野に適することでかなりできる分野もあるでしょう。
しかし、そのようなさまざまな意見がありますから、医師を減らして本当にいいんだろうか、医師の免許を受けても医師の分野につけなくても、医師の免許を持たせていいんだろうかという点も含めて、検討していかなきゃならない課題だと私は思っております。