私は、ただいま議題となりました内閣提出二法案(「健康保険法の一部を改正する法律案」ならびに「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案」)に対し、民主党・無所属クラブを代表して総理並びに厚生労働大臣に質問いたします。
あわせて、民主党・無所属クラブ提出の法案に対しても質問いたします。
まずはじめに、現在の医療をとりまく問題をどう認識されているのかをお伺いします。
総理、今日本の医療のシステムが激しく動揺し、勤務医の方々のなかで「開業ブーム」が起きているのをご存じですか。
急性期病棟においては、労働基準法違反が常態化するなかで、勤務医の方々がヘトヘトになりながらも、献身的に努力されていることによってこれが辛うじて支えられてはいることをご存じですか。しかし、システムとしては崩壊しつつあることをご存じでしょうか。
とりわけ、今年は「産科、小児科、僻地医療崩壊元年」と言われていることはご存じですか。
昨年一二月二二日付「小児科・産科における医療資源の集約化・重点化の推進について」が発せられて以降、どのような施策が実施されたのか、具体的にお示しいただきたい。
医療は国民の最大関心事です。科学技術の進歩により期待が高まる反面、現実の医療提供体制の矛盾と不備がもたらす国民の不安、不信、不満は充満しています。また、経済的・社会的格差が拡大するのみならず、「健康格差」、「医療格差」という言葉まで語られていることをご存じですか。
四年前の健康保険法改正で、政府は勤労者負担を二割から三割へ、高齢者への負担をも一挙に増加させ、私たちの反対を押し切り強行しました。ところが、その際約束していた医療提供体制の整備もかけ声だけに終わり、毎年の厚生労働白書に記載されている「医療提供体制の充実」という文言も十年一日のごとく進展が見られません。こうした今までの医療行政を反省せず、進行する医療システムの崩壊を放置し、今また、保険財政の逼迫を口実に国民負担を強要する本法案が極めて不当なものであることを、私は声を大にして指摘します。
ただただ医療費抑制を自己目的化し、約束すら反故にし、国民への医療サービス提供体制を崩壊に導きつつあることになんの自覚もないのでしょうか。
総理ならびに厚生労働大臣に、現在の医療が抱える深刻な矛盾、医療提供体制の危機的状況をどのように認識しているのかを明確にお答えいただきたい。
さて、今回政府与党が進めようとする法案は“金計算”と根拠なき推計の数字あわせの「改革」です。医療現場の疲弊、矛盾をどのように改善させることができるのか、総理ならびに厚生労働大臣の見解を以下にうかがいたい。
(保険者に対する一定の予防健診等の義務づけ)
今回、政府案では、老人保健法に基づいて自治体が四〇歳以上を対象に行ってきた健診事業を廃止します。この事業で行われてきた検診はいかなる効果があったのか、実績をお聞かせいただきたい。
例えば「乳がん検診」はマンモグラフィ併用検診の受診率が五〇%を超えると、発見率と五年生存率が目に見えて上がると言われていますが、そのような質の検診が行われてきたのか、厚生労働大臣にお答え頂きたい。
また各保険にこれを任せた場合、例えば財政的疲弊にあえぐ市町村国保がこれを怠る可能性が大ですが、これにどう対処しようとしているのか。従来の検診事業に対するチェックとその結果にもとづく対応策を示されたい。
(医療費推計の根拠)
今回の医療制度改革の柱、医療費適正化の根拠として示されているのが、医療費の動向を元にした二〇二五年時点の医療費の推計です。ところが九四年には一四一兆円、九七年には一〇四兆円、二〇〇〇年には八一兆円、〇二年には七〇兆円、〇五年には六五兆円(その内、医療給付費は五六兆円)と、根拠なき推計をもとに、将来医療費の財政負担には耐えられなくなるというのが適正化の理由です。〇五年度の数字も、一〇年前から五年前の、九五年から九九年の上昇率を根拠にして推計したというのです。
これではオオカミ少年もびっくり、寅さんでも、「ベラボーめっ」と怒鳴りかねないバナナのたたき売りです。
総理、どのような根拠でこのような推計がなされたのか、あらためて明確にしていただくと同時に、この間違いについて、国民に対する謝罪を求めます。
イギリスでは、医療にかかる給付の抑制が行き過ぎたため、医療が質・量の両面で不十分になったNHSの反省をふまえ、今まさに医療に必要な財源は投入する方向へと方針を大転換しています。
今回の過大な将来見通しに基づいた医療費の削減方針が、方針転換前のイギリスのように日本の医療制度を機能不全に陥らせることはないと断言できるのか。
もし医療の荒廃をさらに進めることになったときの責任を総理はどのようにおとりになるのでしょうか。責任ある答弁を求めます。
(医療保険の本来のあり方)
民主党は、全ての国民が同一の制度に加入し、公平な負担の下で、全国あまねく標準治療を受けられるようにすることが理に適うと考え、今後一〇年を目途に保険制度の一元化をめざすこととしました。
一方政府・与党は、医療制度改革大綱で「医療保険制度の一元化をめざす」と将来の一元化を謳ってはいますが、今回の法案では一元化のプロセスについては明らかにしていません。
政府与党のいう「一元化」とは、何を意味しているのですか。総理に、期限と手法を明示した説明を求めます。
(高齢者医療)
民主党は高齢者医療では、七〇歳以上は一割、現役並み所得二割として、自己負担分の増加には反対です。社会的入院を減少させるとともに真に医療を必要とする患者の食費・居住費の自己負担は現状どおりにすべきと主張しています。
政府法案では、新たな高齢者医療制度の創設と銘打っていますが、現役世代の保険料の一部を支援金として当てているこの制度の位置づけは、保険制度なのでしょうか、それとも福祉制度なのでしょうか。この制度の創設の意義とともに説明を厚生労働大臣に求めます。
厚生労働省案は広域連合を運営主体とし、他方、保険料徴収は市町村に委ねています。医療費の入り口と出口で主体が異なるため、保険者機能を担うのはどの機関なのか、はっきりしません。本制度の運営の責任主体はどこにあるのか、もし財政運営が失敗した場合の責任はどのようにとることになるのか、厚生労働大臣の説明を求めます。
(医療安全の確保)
本法案に規定された医療安全の確保策は、医師を含む医療従事者の資質に起因する医療ミスにどう対処をするのかを示しているだけです。
しかし、そもそも医療事故は、医師を含めた人的なミスによってだけ発生するわけではありません。
福島県立大野病院事件が発生しました。「医師法二一条」の「異状死の届出義務」違反による産科医の逮捕に始まり、業務上過失致死での起訴に至るという暴挙で、全国の勤務医から怒りや絶望の声が巻き起こっています。三六五日、二四時間の連続勤務など、過酷な労働環境の中で患者のニーズに誠実に対応しようとして奮闘する医師を、事故が起きたときに個人として刑事責任を問うという、極めて短絡的対応gあなされています。
他方で公正な立場からの原因究明の手段はなく、多くの事故被害者は怒りをかかえたままです。
医療政策の欠陥や機関としての病院の構造上の問題を、医療従事者の資質に転嫁するだけで、医療事故は永遠になくなりません。医療事故への原因別の対処方法が必要と考えますが、本法案に含まれる医療事故対策は、なぜ医療従事者に対する処分しか出されていないのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。
(民主党案への質問)
一昨日、民主党は、この政府提出法案に対して、「がん対策基本法案」、「小児医療緊急推進法案」ならびに「医療の安心・納得・安全法案」の三法案を提出いたしました。
民主党案に対して、二問お伺いします。
まず、民主党は、過去に「患者の権利法案」を提出していましたが、今回の「医療の安心・納得・安全法案」は、どのような点が異なり、いかにバージョンアップされたのですか。
また、小児医療緊急推進法案については、小児科救急における勤務医の過酷な労働実態がまず基本的な問題になっていますが、その実態をどう認識し、過労による医療事故を防ぐと同時に小児科治療のシステムを再構築しようとしているのか、そのためにどう労働条件を改善しようとしているのか、またその手段は何なのかお答えください。
今、医療をめぐる全国民注視の中でこの審議が開始されました。
国民は、単なる医療の消極的受け手としてだけではなく、自ら情報を求め、よりよい治療を求めて発言し始めています。
例えば、がん治療を例にあげれば、豊かな経済力を誇っているはずの先進国日本において、世界標準の治療薬ならびに治療、特に化学療法、放射線治療の恩恵を受けられない悲劇を克服しようと、患者自身が今大きく声を上げ運動を拡大しています。
政府・与党の皆さんがこうした声に謙虚に耳を傾け、財政的な数字あわせではなく、真の医療の改善のための方策を出し直されるよう呼びかけ、私の質問といたします。