「国のかたち」に対する国民の主権行使を

憲法調査特別委員会における締め括り発言

2005.10.27(木)
仙 谷 由 人

国民主権の深化、民主主義の民主化への不断の努力が必要

今国会における憲法調査特別委員会での「国民投票法制」についての審議は大いに意義があった、と評価する。この議論を多角的に保障し、展開された中山太郎委員長のリーダーシップに敬意を表したい。

 憲法96条、憲法改正のための国民投票なるものが、単なる手続法であるにとどまらず、「国のかたち」に対する国民の主権行使に他ならないものであり、換言すれば、憲法改正なるものを決定するその主体はあくまでも国民であって、代議制の担い手たる国会議員はあくまでも発議をなすにとどまるものであることを、再確認されたと考える。

 立法不作為論はそれなりの妥当性がない訳ではないが、国民に対して国会議員に立法を行うようけしかけるという政治的言動としての意味はあっても、これを国会議員が声高に叫んでも、「なぜ国会は今まで懈怠したのか」との反問に対して、十二分の回答をすることができないという、それは天に唾する類の言説となってしまい、積極的意義はない。

 日本国憲法公布から59年、施行から58年半を間近にした私達は今、「国のかたち」その法形式としての憲法体系を改めて深く考えるべきときを迎えている。

 近代主権国家は、グローバリゼーションと情報化の波に洗われ、今や「国家は小さすぎる」のであり、他面、人々には生活と自らの尊厳=人権がよりよく守られ、もっと自由で自立した生を生きるために生活により近いところでの“統治=ガバナンス”が求められる、つまり今や「国家は大きすぎる」のである。

 「たかが国家、されど国家」の新しい主権国家の主権の有りようを、国民が国民の政治的意思を集約して決めていくべき時代を迎えたのである。

 

 若い世代に開かれたものでなければならない

現時点で国民投票法制を、憲法改正手続としての国民投票法制を論議して、これを法定することは、「国民主権の深化、民主主義の民主化」への「不断の努力」であること意義付けるべきだ。

 その政治的意思の集約の方法が「国民投票」であり、成文憲法のもつその一定期間の拘束力や継続性の要請は、国民投票を行う主体は拘束を受けうる可能性がある人々、つまり出来うる限り若い世代に開かれたものでなければならない。最低限18歳に達した者に、あるいは投票時点で日本の施政権の外に居住している国民に対しても、その投票権が与えられるべきであるとの認識を共有できたのではないかと考える。

 国民の発言権を明確に

 憲法改正国民投票制度に関する具体的諸課題について申し上げれば、たとえば、憲法改正案の原案の発案に係るものとして、国民の発案権をどう位置づけるのかと言う課題がある。しかし、その発案要件や方法についていまだ何も検討されてはいない。主権者たる国民の提案権にかかる問題であるだけに、何よりも先に、この点を明確にする必要がある。

さらに、衆参各院の議員の改正原案にかかる発案権についても、いったいいかなる条件が求められるのか。たとえば、その議案の提出は、通常の法案提出の場合と同様のもので果たしてよいのかどうかを決定しなければならない。憲法改正原案に関する衆参両院の関係についても整備する必要がある。

加えて、憲法改正にかかわる方法上の課題として、以下の大きな論点が残されている。

憲法条項のうち、本日の福井参考人のご意見でも指摘された、シングル・サブジェクト・ルールを導入するか否かは必要な視点である。たとえば簡易な文面の追加や手直しにかかるものと、重大なる統治機構の改正にかかるものとを区分し、前者については国会の特定多数(ex.5分3以上or3分2以上)による改正を可能にし、後者についてのみ、国民投票を要件とするなどの工夫が必要ではないかと考える。ドイツやフランスをはじめ主要な国では、そうした事例が見られる。

上記と関連して、フランスやスペインのケースのように、憲法に準ずる重大な法律、すなわち「憲法付属法」にかかる特別多数決の制度の検討も行わなくてはいけない。たとえば、二院制の基本原則の変更に及ぶ議院規則の改正や、国と地方の関係に関する重大な変更に及ぶものについては、特別多数決を義務つけることも検討すべきであると考える。

 

 国民投票への規制は最小限に

さらに、国民投票における運動は、代議制のもとでの議員を選ぶこととは決定的に異なるのであるから、原則として自由であることが要請される。

 つまり国民投票関係者や投票(選挙)事務関係者の運動は例外的に制限されえても、その余は最小限の規制で十分であって、さらにマスコミの報道の自由は特に保障されなければならないと考えるべきである。

 さらにこの間の議論から、私達は国政における重要な問題に関しては、国会がその旨議決した場合、国民投票に付すことが出来る法制を併せて作ることが望ましいとの認識に到達する。

 今、マスコミ紙上を賑わせている「女性天皇=皇室典範の改正」などは憲法改正そのものではないが、「象徴天皇」制が国民の総意に基づき、支持を得ていることの確認のためにも、国民投票に付すべきテーマであると考える。