衆議院 - 厚生労働委員会

平成17年10月12日

○鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。仙谷由人君。

○仙谷委員 民主党の仙谷由人でございます。

 今度の総選挙の結果を受けまして、民主党は執行部を交代いたしました。前原誠司さん四十三歳が代表になる画期的な代表選出でございましたが、この執行体制において次の内閣の厚生労働担当を指名されましたので、私なりに、現在の日本の社会が抱えている問題、これを社会政策、社会保障政策、あるいは現在の厚生労働省の守備範囲の中でどのように考えていったらいいのか考えてみたい、こんなふうに思っております。

 大臣も感慨深いと思うのでありますが、前国会からのテーマ、そしてこれからの予想されるこの厚生労働委員会の守備範囲ということを考えてみますと、いわば高齢者医療保険制度といいましょうか、高齢者医療をめぐるさまざまな問題は、私が一九九六年に国会に復帰しましてからちょうど高齢者の一部薬剤費負担が議論をされ、翌年、自社さ政権の内部で抜本改革を二年後に行うという協定を結ばれて高齢者に対する一部薬剤費負担が導入をされたわけでありますが、老人保健制度といいましょうか、あえて言いますと制度ではないこの老人保健制度、そして高齢者医療の問題というものも、私に言わせれば、完全にネグられた、放置された。その中でいろいろな事態が日本では進行する。

 昨年は年金法案がかかったわけですが、これもびほう策と先送り。ことしは介護保険制度が提起をされたわけですが、この最も根幹の改正を要する点とされた適用拡大の問題が、これも棚上げにされてそのまま通ってきた、こういう事態が進んでいるわけであります。

 そして、さらにそれに、今度は反対の極からといいましょうか、後から統計上振り返れば、ああ、二〇〇五年がその年だったというふうに多分皆さん思われると思うのでありますが、人口減少がついに、厚生労働省の予測に、人口問題研究所の予測に反して二年早く、二〇〇五年に、つまりことしピークを打っておるのではないか、こういうのが常識的な判断といいましょうか感覚になっておるわけであります。ピークが二〇〇五年であろうと二〇〇六年であろうとほとんど変わらないといえば変わらないわけでありますが、ついに戦後日本といいましょうか、あるいは明治維新以降の日本で人口減少が始まる、こういう大変大きな構造的な変化が始まっているわけであります。

 そして、さらに、日本を取り巻く状況は、皆様方御承知のように、二極化、リスク化と言われますけれども、その最も基本のところにある事態の転換といいましょうか変わり方というのは、もちろんグローバリゼーションとIT革命が推し進めているということであります。

 私は、この間の郵政民営化騒ぎを拝見しておりまして、ああ、こんなことで日本が何とかなるのかなと、ある意味で寒々としたものを感じながらこの郵政民営化騒動を見ておったわけでございます。といいますのは、このグローバリゼーションとIT革命がもたらした二極化とリスク化というのは、当然のことながら人間集団の中にもそういうものを持ち込んでおりますが、日本の場合には、従来からあった集中と過疎、都市と農村山間部、これも見事に切り裂きつつあるわけでございまして、これを都市部の現役世代の方々の税収や保険料で全国あまねくばらまいていく、とりわけここ十年は借金をしながら公共事業をばらまいたわけでありますが、ここから先はそうはいかない。しかし、にもかかわらず、社会保障あるいは町づくりという面では、本来的には相当程度の分配をしていかなければ、地域社会は多分今よりももっとひどい状況に陥っていくということは間違いがないと思います。

 したがいまして、東京あるいは愛知県を中心にお住まいになる方は、これはまあそこそこの生活をできるのかもわかりませんが、多分四国あるいは北海道、九州、そしてまた、そこも四国の中の都市部ではないところ、あるいは九州の中の中山間地というようなところは、絶対的な貧困になるかどうか、あるいはグローバルなレベルで見て絶対的な額として貧困な生活になるかどうかは別にして、心理の面では極めて疎外をされ、排除をされ、みずからは貧困だというふうな感覚に陥っていくことは間違いがないと思います。

 そこで、この問題を尾辻大臣に少々御感想をお伺いしておきたいわけでありますが、二〇〇四年のOECDのレポートで、日本が貧困率が第五位でございましたか、十年前の貧困率に比べて、日本が一五・三になった。貧困率というのは平均所得以下の人たちの階層が他の人に比べてどのぐらいのパーセンテージを占めるか、そういう率で示すわけでありますが、日本が二〇〇四年のレポートでは一五・三になった。先進国と言われているところ、OECD加盟国ではメキシコ、アメリカ、トルコ、アイルランド、日本でありますから、比べ得るところとしては一番なのか二番なのかわかりませんけれども、そういう貧困率になった。

 現に、改めてそれに付随する日本の各資料をちょっと当たってみますと、日本は六十歳以上の無職世帯というのが二〇〇〇年から二〇〇四年まで一九・一%から二三・二%にふえている。この六十歳以上の無職世帯の貯蓄率はマイナス一六・一%からマイナス二九・二%になっている。貯蓄率が約マイナス三〇%になっているわけであります。つまり、そのぐらい取り崩さないと、当然のことながら六十歳以上の無職世帯の方々は生きていけない、こういう事態に追い込まれているということであります。それから、ちなみに六十歳以上の勤労者世帯の貯蓄率というのは一〇・五%というふうに言われておりますので、無職世帯と勤労者世帯では約三倍、このぐらい貯蓄率の減り方が激しいということになります。

 それから、生活保護のレベルで見ましても、御承知のように、ついに平成十六年度では生活保護を受ける世帯がどうも百万を超して、さらに徐々にふえつつある。そのうち約五〇%近く、これが六十五歳以上の高齢者世帯である。人員にしましても、平成十六年でいいますと百四十二万三千三百八十五名、これは全員の生活保護を受けている人々の数でございますが、六十五歳以上は、まだ去年の数は出ていないようでありますが、平成十五年でも四十八万九千八百四十三名、実に三七・九%の数、全体の、全体というのは生活保護を受けている人々の約三八%の方々が六十五歳以上であるということであります。

 生活保護の中身を見てみますと、この六十五歳以上の生活保護と言われておるものは、金額でいいましても五千八百九十六億円、つまり医療扶助が総額で一兆二千三百六十一億円、そのうち六十五歳以上の方が五千八百九十六億円、四七・七%を使っている。こういう事態が今我々の足元で起こっているわけであります。

 この貧困の問題あるいは二極化の問題というものについて、労働大臣は、この間のいろいろな諸施策に携わってこられたと思うわけでありますが、どういう御所見をお持ちでございましょうか。

○尾辻国務大臣 今いろいろお話をいただきまして、そして最後に二極化というふうに言われました。まさしく社会の二極化が起こっておる、これは私もそのとおりに感じておるところでございます。

 したがいまして、そういうときであるからこそ、この社会保障をどうするのかということが極めて大事なときだと思っております。社会保障を今一体的に見直さなきゃならないということで、政府全体で取り組んでおりますし、また官房長官のもとでも有識者会議が設けられて検討されておるところでございます。そのことを所管いたしております大臣として、まさにセーフティーネットの役割をきっちり果たすようにしていかなきゃならないというふうに考えておるところでございます。

○仙谷委員 私は先般も、厚生労働省、まさに厚生と労働がくっついた役所の、若いといいましょうか中核的な官僚の方がいらっしゃったので、ちょっと嫌みったらしいことを申し上げたわけであります。といいますのは、二極化あるいは生活のリスク化というふうな問題に対しては、ある意味で、厚生労働というふうな、私が習った大学の学問でいいますと、大河内一男先生の社会保障、社会政策的な観点だけでは全く対応できなくなっておるのではないだろうかと。

 我々が、アメリカ型の社会、大変な所得格差がある。年俸で、もうかる経営者は七百億も八百億ももうかる。そして、低所得者層は膨大に存在して、今申し上げた日本でいう平均所得以下よりもまだ低い人も相当おる。それはこの間のニューオーリンズのハリケーンが示したとおりであろうかと思います。こういう社会が、意外と社会としても安定性を欠くために、非常に問題がそこから発生する。むしろ社会の活性化にもならないというふうに考える。むしろ市場経済あるいは自由な活動を保障するためにも、それ相応の社会的なインフラストラクチャーが備わっていない限り、丸裸の競争を奨励する、小さな政府がいいんだということで、無責任な小さな政府がそこに出現をして、あとは自由にやりなさいというふうな話ではいかんともしがたくなる。

 そういう観点から、旧来型の社会保障という観点だけではだめなのではないか。これはヨーロッパではもうほぼ常識になっておって、要するに貧しくなった人を救う、これもそれほど軽視はできないわけでありますけれども、この救貧をさらに一歩進めて、ポジティブウエルフェアとかという言い方をしている人たちもおるわけでありますが、貧しくなることを防ぐことが社会保障の目的である、そのためには何よりも可能性の機会をつくることだ、あるいは人材、人に投資をすることだ、そういう理論が唱えられているわけであります。

 そこで、私は、まさに厚生労働省のこの労働の方は、文科省の教育とうまく統合をして人づくりに向けて大きく踏み出さなければならない、こういうふうにこの間も申し上げたわけであります。

 労働関係の方々も、割とそのことには、いや、わかっちゃいるけどやめられないという日本の厳然とした縦割り構造の中で、ある意味で、厚生省と九八年の省庁再編成で一緒になったことでほっとしているのか何か知りませんけれども、新たな人材投資の方に大胆に踏み込んでいかない。あるいは、厚生労働省という省のトップがそんなことを言い出したら、どなたかにしかられるのかどうなのかわかりませんけれども、そういう話が全く今のところ出てこない、つまり政治の中での議論としても出てこない。私は、もう一度この厚生労働省をもう少し機能的に細分化、分散をし、かつまた統合させるというふうなことをやらなければ、日本のポジティブな社会保障というかそういうものは打ち立てられないのではないかというふうに思います。

 とりわけ、後からフリーター、ニートの議論をされる方がいらっしゃると思いますけれども、現在の労働状況、あるいは所得の二極化、あるいは地域と都市の二極化というふうな状況は、私は、もう一度原点に返るとすれば、それは一九九四年だったでしょうか、イギリスの労働党のブレアが首相になって、一に教育、二に教育、三、四がなくて五に教育だ、教育、教育、教育だと。何を言っているんだこの人はと、私は当時は思っておったわけであります。つまり、それほどイギリスというのは教育が、つまり我々の言う公教育が劣悪なのかな、こんなふうにも思ったりもしたことがあったわけでありますが、そうではなくて、子供の教育、学習、大人の教育、学習。

 労働力は十年間で陳腐化するというこの現代社会の極めて速い流れの技術革新や産業構造の変化や、あるいは、日本でいえば、中国その他の東アジアの諸国、あるいは東南アジアの諸国との経済の垣根が低くなってくる、その中での労働力の質が問われる、こういう時代になってきたときに、ここに公共政策といいましょうか公共的な取り組みがなされないと、そこもみんな各自が勝手に訓練するなり勉強するなりやってみろということだけではどうもうまくいかない。そこを、日本の官僚的な仕組みを改めてつくれということではなくて、市場原理や競争もそこに取り入れながら、そういう人的資源の刷新といいましょうかあるいは活性化、こういう政策のところに資源配分を移す、予算を移すということでなければならないと思います。

 労働問題の担当をもされている大臣、いかがでしょうか。この文部省との関係を再編成してみる、単なる連携ということではなくて、そういうふうに骨組みを変えて考えてみるというふうにお考えになりませんでしょうか。

○尾辻国務大臣 今、大変大事な御指摘をいただいたというふうに思います。

 直接の御質問ではございませんでしたけれども、途中でお触れいただきました、厚生省と労働省が一緒になった、せっかく一緒になったんだからこの利点を生かして施策にまた反映させるべきだというお話は、私どもも全くそのとおりだと思っておりまして、まだその点で足らないところがあるというふうに反省をいたしておるところでございます。

 それから、最後の御質問にお答えする前に、実は私も本当にそうだなと思っておりますことについてお触れいただきましたので、あえて述べさせていただきたいと思います。それは、ニート対策あるいはフリーター対策でございます。

 私もできるだけ現場を見に行こうと思いまして、この対策の現場、ヤングジョブスポットでありますとかヤングハローワークでありますとか、そういうところを見ております。そうしますと感じますことは、これはもう単に労働施策でやっているものではない、それで十分と言えるものではない、本当に一人の人間の教育として、また一人の若者が世の中で頑張っていってくれるように、役に立つようにということで、まさに教育だという思いがいたしております。

 そして、それは、しかも費用のことを考えても、費用に合うように効果を出せと、よく言われる費用対効果というような発想で考えてもそれはとても無理だ、一人に対して一人で徹底して対応してでも、人間一人頑張ってもらうようになるのであればそれは惜しくないということを言っておりまして、今、先ほど先生が言っていただきましたようなことを強く感じておるものですから、あえてそのことも申し上げたところでございます。

 こういうふうに申し上げますと、最後の先生の御質問に対する答えも、私が何を言いたいかということはある程度御理解いただけると思いますけれども、まさに先生が言っていただきましたように、そして私どもも、このごろの施策の中では、特に若年者の労働に対する施策の中では、例えば若者自立・挑戦プランといったようなものは文部科学省と連携して取り組んでおりますし、キャリア形成ということでいいますと、もう広く教育でありまして、それは学校教育であろうと社会教育であろうと教育の中でやるべきでありますし、また、社会教育といった途端に、これは何も文部省ひとりのものではない、私どもも積極的に連携しなきゃならない部分もございますので、方向としては、ぜひ先生がお述べになりましたようなことで進めていかなければならない。ただ、具体的にそれをどう進めるかというのは、またいろいろ御指導もいただきたいというふうに思っているところでございます。

○仙谷委員 私は、今の労働大臣の御答弁も多とする部分はありますが、全くいらついております。それは、予算が、局別予算、課別予算、この下からの積み上げでしか毎年毎年組まれないために、本当に必要な統合的な予算とか、どんと新しい分野をつくってそこへ集中的に資源を投入して現在の日本で必要な施策をやっていくということが全くできないということであります。

 これは、一つは、大学が身動きしない。もっと言えば、文部省がもっと身動きしない。例えば、キャリアコーディネーターということが、先ほど尾辻労働大臣のお話との関連で、数年前に言われました。当時は、キャリアコーディネーターの養成をする専門の大学院の講座を持っているのは筑波大学に一つあるだけだと聞いておりました。

 これは質問通告していないから文科省の方は答えなくてもいいですけれども、きのうも、例えば専門職の話として、がんの臨床腫瘍内科、この講座が以前は北海道大学一つだった、昨年か一昨年だったと思いますが、近畿大学にできた、今どのぐらいふえてきたんだと。つまり、この間のがんの患者さんたちの動きも、あるいは厚生省の動きも、私に言わせれば遅々としてではあるけれども進んできた。ここを大胆に、がん克服十カ年戦略をやるとおっしゃるのであれば、今、焦眉の課題は、抗がん剤の問題であったり、腫瘍内科の問題であったり、それは国民の、完治というよりもQOLを高めるような治療が必要なんだというのががんの世界でほぼ主流になりかけたときに、この化学療法といいましょうか腫瘍内科の世界というのが極めて重要だと思いますけれども、これがどのぐらいふえてきたんだ、あるいは専門職を養成するために何がなされておるんだ、こう聞きましても、少なくとも文科省はほとんど反応をされないわけであります。これは独立行政法人になった大学が自由にやっている、こんな話になるわけであります。つまり、国家としての、あるいは中央政府としての統合的ながん治療の政策というのは、あるいは施策というのはあるのかという議論になるわけであります。

 厚生省の今度の、新しい鳴り物入りの対策本部をつくった概算要求といいましょうか、がん対策本部をつくって、そのもとにこういう施策をやるぞというので、対策本部をつくりました。しかし、これを拝見しますと、ことしは初年度だからこんなものだろうというふうに思うのか、やはりこれは金額が一けたは違うんじゃないですかと考えるかの違いだと思います。

 私は、ちなみに、最も日本でこういう面で心配をされている方に聞きました。腫瘍内科の講座を早急に例えば各大学につくるとすれば、人件費とか施設費とか講座の運営費とか、そういうことを考えて、一大学に一億円ぐらいあればこれはできるというわけですね。七十大学としても、単年度七十億円あればできるというわけです。ところが、そんな予算は、厚生省はもちろん、文部省の領域であるからつけるわけにいかない、こうおっしゃる、多分そうおっしゃるんでしょう。文部省がそういうのをつけたということは、つとにして私は伺いません。

 それから、厚生省のがん対策の来年度の概算要求に係る予算を拝見してみましたら、がん専門医等がん医療専門スタッフの育成、ここで三千四百万円の新規の予算要求をしていらっしゃる。これも一けたか二けたか違うんじゃないかと思いますよ。

 つまり、私も国立がんセンターでちゃんと治療を受けましたが、そのときに、もちろん主治医の先生もよくやってくれました、看護婦さんもよくやってくれた。しかし、土曜日、日曜日まで出てきて細々とやってくれたのは、地方の大学や病院から来ているレジデントの先生方であります。

 このレジデントの先生方を、例えば国立がんセンターで年間七十名ぐらい養成をするということを前提にしますと、現在もそういう前提で募集をしているようであります。ところが、レジデントの先生方は約三百六十万円ぐらいしかお手当が出ないということでありますから、必死に土曜日、日曜日も修練のためにということで出てきておるわけでありますけれども、出てくるそのレジデント候補生は約十年ぐらいはたっているわけですね、お医者さんになってからは。それが平均だということであります。三十五歳前後であります。

 二年とか三年とか、あるいは長い人だったら五年ぐらいの臨床の研修をすれば、一人前になって、どこへ帰っても立派にやれるということになるわけでありますけれども、こういう方々がこのお手当というか給料では、よほどおうちがいい方や財力がある方や、若いときに例の宿日直をしてアルバイトをして稼いでためた、こういうことで三年や五年はそういう専門家として修練をしてみようという人しか来られないということがあるようであります。

 大臣、情報センターも結構ですし、拠点病院の相談センターも結構です。しかし、私に言わせますと、すべて予算づけが零が一つ少ない。何か初年度だからということなのかどうかわかりません。これでは本当に、少ないものをぱらぱらと全国に振りまく、御飯のふりかけみたいな話になって、がん克服十カ年戦略で、さあ、ここからは、今まではハードに少々偏った、あるいは基礎研究に偏ったんだけれども、ここからは臨床で、がんの患者さんあるいはその御家族に対して、もう少し安心してもらえる、あるいは納得性が出てくるようながん治療に向けて前へ向いて動くんだ、そういうふうにはなかなか思えないのでありますが、いかがでございましょうか。

○尾辻国務大臣 数字につきましては先生がよく御存じのとおりでありまして、また今も幾つかお述べになったとおりでございますから、改めては申し上げません。お話しのとおりであります。

 そしてまた、今お述べいただきました途中でも言っていただいたことでございますが、何しろ今まで予算がゼロであった、そうした予算を組んでいなかったものに対して、ことしの要求で、すなわち来年度に向けての要求でございますけれども、これで私どもとしては精いっぱいの要求をいたしたつもりでございます。

 その額が少ないとおっしゃいますと、これは本来もう少しあればいいというのは私どももそのとおりに思うところでありますけれども、何しろ初めての要求でありますし、また精いっぱいの要求をいたしたつもりでございますので、どうぞ、今後とも、先生方のまたいろいろな御意見を賜りながら、御指導もいただきながら、これがさらに大きな額になるように努力していきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

○仙谷委員 後にあるいは後日、アスベストの中皮腫治療の問題も出てくると思います。

 この間、三時間のテレビに、鹿児島から大臣、出演されて、中皮腫というのも、がん治療の中でもまた特異なというか専門的な分野で、専門家がほとんどいない、たらい回しにされたあげく私の母は死んでいきましたみたいな話をされて、大変つらいようなお顔をされていました。

 これは本当に、がん治療の世界あるいはその中のアスベストを原因とする中皮腫の問題も含めて、専門家はいることはいるんだけれども、まさに極めて少なくて、全国に均てんされてはほとんどいない。これは、積極的に養成をする、お金をかけて養成をするということ以外には解決のしようがないわけであります。

 がんの化学療法についても、未承認薬の問題もあれば適応外使用の問題もあったけれども、そこは徐々に遅々として進んでいる。しかし、未承認薬の問題にしても、国際的には標準治療薬になっていて、これを使える人がいないと結局のところはどうにもならない、専門家がいないとどうにもならない、こういう話になるわけでございます。したがいまして、ここはどうやって専門家を養成するのか、これはもう極めてそれほど難しくない話であります。

 つまり、一つは文部省との関係、一つは厚生労働省内のほかの局の予算でも抜いてきてでも使うぐらいの迫力をやはりトップリーダーが示さない限り、私は解決しないと思います。ひとつ、十一月二日以降もその席に大臣がいらっしゃることを期待し、なおかつ、そういう観点で頑張っていただきたいと思います。

 それからもう一つ、次の問題でございますが、例の在韓被爆者の福岡高裁の判決、広島高裁の取り下げ等々の問題であります。

 これも我々から見れば総額として大した金額ではないんだけれども、どうも小出しにちょこちょこちょこちょこ出して、ある種、戦後処理ができない。

 私は、実は、一九九〇年から、サハリン残留韓国人の問題、それからこの在韓被爆者の問題にも少々かかわってまいりました。韓国被爆者協会の方の要望は、当然のことながらおわかりになっていると思います。

 この協会へも御協力をいただいて、現地で被爆者健康手帳がとれるようなことを、早急にその手続ができることをしていただく、こういうことができないでしょうか。そして、もう残り少ない人生に、一応は全部ちゃんと同じように健康管理手当が払われる、そういう方向性で法律上は問題がないはずでありますから、あと規則とか省令か政令か知りませんけれども、そういうものは変えるのは大臣の一声で変わるわけでありますから、そういう方向で。

 今、この韓国被爆者協会は二千三百六十四名いらっしゃって、千九百名が手帳を持っておるけれども、手帳を持っていて手当がもらえない人が十七名、四百六十四名が手帳を持っていない、それから未加入者が百五十名ぐらいおって、六百名ぐらいの被爆者が無援護のまま残っている。この人たちに手帳をとらせてほしいというふうに私の方へも要望が参っております。

 これは、この人たちに手帳をとらせて手当を払う、そして、治療はその気があれば日本でも当然のことながら受けてもらうし、韓国でも治療ができるのであれば治療してもらう、こういう観点で、前を向いてあらゆる困難を乗り越えてというか、バリアをつぶしながらやっていく、こういうふうにさらに一歩進めたお考えを尾辻大臣からお伺いしたいと思います。

○尾辻国務大臣 ただいまの在外被爆者のことでございますけれども、まず、先日の福岡高裁判決につきましては、これは健康管理手当等の申請に係るものでございましたから、上訴しないということを決めたところでございます。

 このことについてもそうでございましたが、今の手帳のお話でもそうですが、大きく考えなきゃならないことが二つございまして、一つは、法律がどうなっているかということでございます。それからもう一つは、実務がどうなるかということでございます。

 この福岡高裁につきましては、法律の解釈についてはいろいろ私どもも言いたいことがありましたけれども、これは被爆者の皆さんの年齢も考えまして、高齢化しておられるといったようなことも考えて、そういうことは言うまいということで、私は政治的決断ですというふうに表現しましたが、まさにそういうことで上訴することを見合わせ、今後手当の申請は海外においてもやらせていただく。これは、窓口にするという意味でありますけれども、最終的なところは都道府県になるわけでありますが、今そういうことを決めさせていただいたところであります。

 今、今度、改めて手帳の話でございますが、では、手帳の話について法律がどうだということでいいますと、今度の判決の中でも述べられておるところなのでありますけれども、どうしても手帳の方は「居住地の都道府県知事」、こういうふうになっておりますので、今の法律のままで海外における手帳の申請をということは非常に難しいと実は判断をいたしております。

 実務的なこともいろいろあるんですけれども、まずそこのところがありますので、ここをどうするか、やるとすれば法律の改正しかないと思っておりまして、ここのところの御議論をいただければというふうに思っておるところでございます。

○仙谷委員 私どももそれじゃ緊急に法律改正の観点からも取り組みますが、要は、金額にしてこの程度のことをああだこうだ言って延ばすというのは、私は、甚だ日本の東アジアにおける国際的な評価にもつながってくる問題で、できるだけ早く解決していくということが必要だと思います。

 きょうは、実は、医療費の総額管理とか医療費抑制の問題、あるいは現在の医療の問題点等々についてもお伺いしようと思いましたが、時間が終わりましたので次の質問者に交代をいたします。どうもありがとうございました。