がん専門医の養成を、がん行政の柱に

「がん克服10カ年戦略」に患者の声を反映させよ

7月16日 衆議院厚生労働委員会での質疑

 かねてから仙谷由人は、がん治療の改善のために、厚生労働委員会の質疑に参加し、抗がん剤治療の問題と、がん専門医の養成の問題を政府にただそうとしていましたが、このたびわずか25ふんではありましたが、厚生労働委員会の一般質疑に参加することができました。以下、大臣に対し質問し、前向きな答弁をえることができました。

宙に浮いて放置されている「抗がん剤適正使用ガイドライン」

○中山委員長 次に、仙谷由人君。

○仙谷委員 昨年の五月二十九日に厚生労働委員会で質問をさせていただいたわけでございます。そのときに、主として医療提供体制の問題の提起をさせていただいて、さらに、がんの治療の問題を坂口大臣にお伺いしたわけでございます。それに先立つ昨年の四月二十四日に申し入れをさせていただきまして、ことしもまた、今度は抗がん剤の適応拡大について、がんの患者団体の皆さん方と一緒に申し入れをさせていただいたわけでございます。一年たちましたから、事態がどのぐらい改善されたかということで、きょうはぜひお伺いをしなければならないと思っておりまして、機会をちょうだいいたしましたので、二十五分間でございますけれども、質問をいたします。

 まず、大臣、昨年問題になりました一つに、抗がん剤適正使用ガイドラインというのが作成をされているらしいというか、されているわけでありますが、これが案にとどまって物になっていないという問題が一つ。

 抗がん剤適正使用ガイドラインの中に、使用をすべき、つまり、EBMという観点からも、標準治療という観点からも、がんの化学療法としては使用した方がいい、あるいは使用すべきだというふうに書かれている抗がん剤が、当時、昨年の時点で八十以上、これは日本では未承認とか適応外とかというふうに言われておるようでありますが、使えない、こういう問題を指摘したわけでございます。

 まず、抗がん剤適正使用ガイドラインは、その後いかなる存在になったんでございましょうか。何か一つのオーソライズされたものとして世の中で使われるようになっておるんでしょうか、なっていないんでしょうか。その点はいかがですか。

○小島政府参考人 ただいま先生御指摘の抗がん剤適正使用のガイドラインでございますが、これは平成十年から十二年にかけまして、私どもの関係学会医薬品等適正使用推進試行的事業の一環として実施しております委託事業でございます。

 がんにつきましては、日本臨床腫瘍学会には平成十年、日本癌治療学会には平成十一年、十二年度の二カ年度にわたりましてこの事業を委託いたしまして、安全性に関する情報の収集、評価、その結果に基づく適正使用のためのガイドラインの作成というものをやっていただきまして、また会員に対する情報提供というものをやっていただくというためのものでございまして、これはこの十二年で終了しているというふうに考えております。

○仙谷委員 終了するということでありますが、終了してどうなったんですか、これは。何か、世の中の治療に使われることになったんですか、使われることになっていないんですか。

 つまり、そこが大事なんですよ。患者あっての医療であって、あなたの今言った話は、がんの患者なんか全然関係ないという話じゃないですか。そんなふざけた話があるか。ちゃんと答えなさい。

○小島政府参考人 もちろん、このガイドラインにつきましては、各医療機関から、患者治療のための参考として使用されているということでございますし、先生御指摘の、確かに適応外使用の医薬品八十一件もこのガイドラインに載っております。それにつきましては、私どもとしては、できるだけこの適応外使用がなくなるように業者の関係に対して指導もしていますし、できるだけ早く承認申請が出るようにということで、承認申請が出た場合にはまた速やかにこれを承認できるようにということで努力をしているということでございます。

○仙谷委員 結局これは、適正使用ガイドラインというのが厚生省が公認するようなガイドラインになっているんですか。

 例えば、EBMに基づいて診療ガイドライン、優先十疾患をつくるということを去年もおっしゃいました。それと同じようなレベルの権威づけがされているんですか。あるいは、されているとしても、こんなものは、あなた、がんの治療において、もうつくられてから二年もたっちゃったら古くなっているというじゃないですか。もっと日々更新をしなければ、このようなものはほとんど意味がなくなってくるという話を臨床腫瘍学会の方もしているんですよ。

 これはどうなんですか、あなた、公認されているんですか、どういう存在なんですか。何かまま子みたいな、宙ぶらりんに浮いているんじゃないですか。僕が聞くと、いや、まだ決めてくれないんですよねみたいな話がずっと聞こえてくるじゃないですか。どうなっているんですか、これは。

  「諸外国で認められている薬は半年で結論を出したい」(坂口大臣)

○坂口国務大臣 薬の問題に対するさまざまな御批判のあることは私もよく存じておりまして、それで、先生からも何度かお申し入れもいただいて、特にがんに対する薬のお話がありました。

 一番大枠のところはこういうふうに変えたいというふうに思っております。

 それは、今、がんならばがんの中で、最も優先をして承認をしなければならない薬は何か。これは、今まで厚生労働省の中で順位を決めてきたわけです。順位を決めると言うとおかしいですけれども。それはもちろん申請してもらわなきゃいけません。しかし、そこのところを少しオープンにしたい。それで、関係の専門家の皆さん方にもお入りをいただいて、そして、優先承認をすべきものは何かということを議論していただいて、そこで決定をしていただくというふうにしておる。そして、最も優先すべきものは、諸外国で認められているもの等につきましては、半年なら半年の間で結論を出すということにしたいというふうに思っておりまして、この四月にそういうことをスタートさせまして、現在、その人選を進めているところでございます。

 間もなく人選が決定をいたします。その皆さん方に、ことしはちょっとおくれましたけれども、来年からはもっと早くやりますが、ことしの優先的に議題にすべきものは何と何ということを御議論をいただいて決定をしていただいて、そこをオープンにしていくというふうにしたいと思っている次第でございます。

○仙谷委員 昨年も坂口大臣は、半年ぐらいで、外国で特にEBMに基づいて標準治療として使われているような抗がん剤、化学療法に使われているような薬剤については使えるようにしたい、こういうふうにおっしゃっていただいたわけですが、一年たってもなかなか進まないということで、私は申し上げておるわけであります。

 この一年間というのは、実は、あの申し入れに行った人の中で三人が死にました。新山さんという患者さんは亡くなった。一緒に私と伺った日野市朗先生も食道がんで亡くなった。今井澄先生も胃がんで亡くなった。どんどんどんどん亡くなっていくんですね。抗がん剤が使えるようになっていたとしても生き延びたかどうか、それはわかりません。しかし、少なくとも患者にとって選択肢が広がっておったことだけは間違いない。

 そして、どうもこのがんの治療というのは、選択肢があればあるほどいい。特に化学療法は、始めても耐性というんですか、何か効かなくなる時期があって、次の療法に変えるとか、その薬の量を変えるとか、単剤ではなくて併用していくことによってQOLをよくするとか、そういうことに現在の臨床研究なりあるいは臨床試験でなってきつつある。ここが臨床腫瘍医も専門的でなければいけないということでありますし、日々新たなところにどうやって厚生省についていってもらうかという大問題があるわけですが、私がこの一年間横から見ておる限りでは、どうも遅々として進まないという感じがあります。

「保険適応外の薬が使えない」

そこで、MVAC療法という泌尿器がんの治療方法について、当然のことながら、先ほど申し上げました抗がん剤適正使用ガイドライン、この中の泌尿器がんというところを見ましたら、このMVAC療法については、特にMVAC療法はCISCA療法を対照とする大規模無作為化比較試験で有意に有効性が確認されており、広く普及されている。

 こういうふうに、ガイドラインでは広く普及しているというところまで書かれておるものが、さる大大学の病院でこれを使っておりましたら、これは適応外の薬品を使っている、したがって、保険点数といいましょうか、保険請求をして取得した金額を返せ、返却せよという指導が厚生省から行われたということを伺いました。何でこんなことになるんだというのが私の疑問でございます。

 抗がん剤適正使用ガイドラインをむしろ公認したものにしないというのは、どうもこういうところに原因があるんじゃないか。つまり、これを公認した扱いにしますと、そこで使われなければならない薬剤が、適応外のものとか未承認のものがいっぱい出てきて、厚生省の方がむしろ困ってしまうというところに原因があるんじゃないかと思うんです。そういうふうに考えることは患者にとっては逆さまの話でありますから、日々このガイドラインを更新をすること、そして、今大臣おっしゃられましたように、未承認、適応外のものについては、あらゆる手段を使ってこれを早く使えるようにするということをお願いしたいと思うんですが、もう一度答弁をお願いしたいと思います。

○坂口国務大臣 今言われました、MVACと言われましたかね、M、V、A、C、これは四つとも、御承知のとおり、薬の頭文字でございます。この四つの薬は既にもう承認されているものばかりでございます。

 ただ、問題なのは、今おっしゃいましたように、Mというメトトレキサート、それからもう一つは硫酸ビンブラスチン、この二つ、いわゆる頭文字がMとそれからVのものというのが、これは承認をされておるんだけれども、がんに対する効果があるということで承認を受けていない、こういうことでトラブっておるという話だというふうに思うわけです。あとの二つは、これはもうがんとして出ておりますから問題はないわけで、この二つ、MとVのところを、がんとしての承認をとるというふうにしてもらえばこれは済む話でございまして、こうしたのは、この申し出をしてもらって、早くそれを承認をすれば済む話でございます。既にほかのものにはこれはもう適応されておるわけでありますので、そんなに時間のかかる話ではないと思っております。したがって、それは手順をどうするかという話だろうと思う。

 厚生労働省としての立場からしますと、それは申請してもらわないことには受けられぬじゃないかというところがある。しかし、患者さんの側からすれば、そんなのは、わかっていたら早くしたらどうだというところがある。そこのところがいつもぎくしゃくするというふうに私も思っているわけでありまして、そういうふうなところにつきましては、関係の医療界なら医療界からも、これについては、製薬会社がどう言おうとこう言おうと、早くするようにしてほしいというような御要望を出していただくということが私は第一だというふうに思っております。

 したがって、そうしたメーカーと厚生労働省という形だけではなくて、そこで実際にそれを使用して、効くか効かないかがはっきりしておみえになる先生方にもお入りをいただいて、そして御指摘をいただくということがこういう問題を早く解決することになるというふうに思っております。

○仙谷委員 ただ、この問題は、平成十三年、十四年、両年ともに泌尿器学会から要望書が厚生省には出されているんですよね、早く適応外から適応できるようにしてくれ。厚生省の態度は、そんなこと言ったって、薬屋が、メーカーが申請してこないんだからしようがないじゃないか、こんな話なんですよ、これは。

 そこで、患者団体も動いて、厚生省もそこそこ説得したのかもわかりません、最近申請中ということになっておるというふうに、昨日のレクのときに聞かされましたけれども、しかし、この種のものは、やはり厚生省は、いや、そんなことを言ったって、申請してこないんだからしようがないじゃないかみたいな、そんな態度は、私は、国民の健康を守るとか、あるいは国民病というふうに位置づけたがんをどうやっつけるかということを厚生省が本気で考えるんだったら、こんな悠長な話はないんじゃないかというのが私の考えているところでございます。

 そこで、この適応外の問題がややこしいのは、これは何か、もし、例えば現時点でこのMとVを使うとすれば、これは特定療養費制度でこなすんですか、それとも医師主導の治験ということでこなすんですか、それとも、ほかの領域は保険適用をするけれども、このMとVの薬剤費だけは、これは病院が持つとかそういう話になるんですか、どうなんですか、これ。

○真野政府参考人 現在の取り扱いでございますが、平成十二年に「医療機関等において患者から求めることができる実費について」という通知を出しておりまして、その中で、「実費徴収が認められないサービス」という項目の一つといたしまして、いわゆる適応外使用の医薬品というのを挙げております。いわばそれは、そういう意味では、医療機関におきまして御負担をいただきたいということを言っておるわけでございます。

○仙谷委員 そうしますと、病院が、そういうことをする医者はけしからぬ、これはもう病院経営はみんな苦しいですからね、特に国立病院あたりでも、これは独法化されるので、そんな医者はもう出ていってもらうとか、なるべくそういうことをしないように、こういうふうにインセンティブは働くんですよ。事実上できなくなるじゃないですか。

 それから、昨年導入された医師主導の治験、これは何か、がんの抗がん剤治療について、化学療法について、どこかから申請出てきましたか。つまり、私が現場に聞きますと、費用がないんだ費用が、メーカーが主導する治験であればメーカーが全部費用を持つんだけれども、医師主導の治験なんて言われたって、これはだれが金を出すんだ、その費用を。人件費もかかれば薬代もかかる、全然進まないじゃないかという声が聞こえてくるんですが、いかがですか、こういう点。つまり全然、できないようにできないようにやっているんじゃないかというふうに私は思えてしようがないんだ。どうですか。

○小島政府参考人 医師主導の治験のお尋ねでございますが、これは昨年薬事法が改正されまして、施行は今月三十日でございますので、まだその申請は出てまいりません。私どもねらっておりますのは、いわゆる各医療機関で行われております臨床研究の結果をそのまま医薬品の開発に結びつけていく一つの手段ではないかというふうに考えておりまして、臨床研究につきましては、各種研究費等々があるとは思いますが、基本的には各医療機関の医師の費用負担でお願いをするということになるんじゃないかというふうに思います。

 

  イレッサの副作用による死者急増の背景には、

専門医師の養成の遅れがあった

○仙谷委員 だから、もし、これは後でも聞くんだけれども、がん克服十カ年戦略などという大層なことをまた来年の春から進められるとおっしゃるのであれば、こういう臨床試験の部分、つまり臨床のところにいかに資源をつぎ込むかということを考えてもらわないと、医師主導の治験だとか特定療養費制度とかいろいろなことをおっしゃるけれども、ほとんど進まないんですよ、これ、現実には。それで、結局、形式的には違法なことをやらざるを得ないみたいな話が出てくるんじゃないですか。

 だから、良心的な医者ほど苦しんで、結局、治療そのものとしてはやみで行わざるを得ないみたいな話になってくるんじゃないですか。ところが、そのやみで行われている治療そのものは、標準治療であり、抗がん剤適正使用ガイドラインで堂々と、普及しているとか、これをやるべきだと書かれている治療方法じゃないですか。どうなっているんだという話になるんですよ、これは。

 話を次の話に進めますが、イレッサ問題というのが起こりました。昨年、私のところにも、いや、世界じゅう一番のスピードでこれを承認して、いい薬ですというから、いや、よかったねと。確かに分子標的治療薬と称するもので、肺がんの患者に効く人がおるんですね。劇的に効いた人がおる。私もそれは聞いております。そういうふうに伺っております。

 いいのでありますが、副作用死亡例がどんどん出てきた。私これを見ておりまして、またメディアは、副作用例が出た、厚生省が何か誤って、安全性を確認しないで承認したんじゃないかみたいな記事も一方で出ます。

 しかし、私は、こういう抗がん剤なんというものは、よく効く薬ほど副作用が強いというのは、これは常識で考えていなきゃいかぬ。物とはさみは使いよう。頭は使いよう。つまり、専門的な医師が、臨床腫瘍の専門医が使えば、こんな死亡例がばんばん出るような話になっていないと思うのです。腫瘍をほとんどやっていない人が、何かいい薬が出たというので、それでたまたま経口薬だから、ぽんぽこぽんぽこ渡して、使わせたんじゃないかという疑いを実は私は持っています。

 この臨床腫瘍内科というか、臨床腫瘍の領域というのは、やはり患者の個体差とかジェンダーとかいろいろなことを配慮しながら、あるいはどのステージにおるかとか配慮しながら、使い方の工夫とか、それからいろいろな検査をあわせてしてフォローアップをするとか、相当、専門領域の世界ではないかということを最近感じるんです。

がん克服十カ年戦略の柱に医師養成を位置づけよ

 ところが、今度はまた、この臨床腫瘍医というのはどのぐらいおるんですか、今日本で。アメリカと日本の臨床腫瘍医の数というのはわかりますか。わからなかったら、時間がもったいないから聞きます。本当の専門医は、アメリカは約一万人というふうに言われています。日本は千人弱。九百人説もあるし七百人説もある。ただ、学会としては、臨床腫瘍学会は昨年立ち上がったばかり。こういうことになっておるわけですね。

 私は、このイレッサ問題は一つの教訓であって、やはり臨床腫瘍医の養成ということが、目的意識的に資源をつぎ込んで行われないと、がん克服ということができない。ましてや、QOLというふうなコンセプトを立てるんであれば、あるいはEBM、標準治療というふうなコンセプトを立てるんであれば、この臨床腫瘍医の養成、これを本格的に行うということと、抗がん剤、この日進月歩する薬剤と治療法をどんどん日本が取り入れる。

 日本は基礎研究と外科は相当進んでいるというふうに言われています。ところが、この臨床が、特にがんの臨床腫瘍医というのが不足している、あるいはそこが進んでいない。これはがんセンターの所長でも総長でもみんな、十年はおくれていると認めているじゃないですか。

 この点について、大臣、時間がなくなりましたので大臣に聞きますけれども、今度新たにつくる十カ年戦略では、目的意識的に臨床腫瘍医の養成とこの化学療法、これを世界標準並みに向上させるんだということを取り入れていただきたいんですが、いかがですか。

○坂口国務大臣 一言で言えば、そうしたいと思います。

 臨床腫瘍医というのは、各科の領域でそれぞれエキスパートはおみえになるというふうに思いますが、それを、今までは内科とか外科とか各科に割り振りになっていたのを、その中で特に腫瘍に対する研究あるいは治療に非常に卓越した皆さん方がお集まりになって学会をおつくりになった。だから、ここを我々も頼りにする以外にないわけでありまして、この皆さん方と連携を密にしながら、そしてその専門医をいかにして数多くしていくかということを、数が多いだけが能でなければ、いかにその能力を深めていくかということにしていかなければいけないというふうに思います。これは一つの大きな柱に取り入れるように努力いたします。

○仙谷委員 終わります。