金融の大危機を回避するために

仙谷 由人

2001年12月3日衆議院予算委員会参考人質疑から

 参考人   (金融庁長官) 森  昭治君

 参考人   (株式会社整理回収機構代表取締役社長) 鬼追 明夫君

 参考人   (預金保険機構理事長)  松田  昇君 

 

整理回収機構は企業再生に役だったか

○仙谷由人 まず、鬼追参考人にお伺いをいたしたいのでございますが、今度の金融再生法の改正で、何か突如、整理回収機構(RCC)が大きな役割を果たせるかのような、私は幻想だと思いますが、そういう議論がなされているんですね。つまり、特に不良債権の処理、企業の再生について、突如ここからはRCCが相当の力を持って行える、そんな雰囲気があるんですけれど、そもそも一般銀行から不良債権の買い取りができるという53条の一項のイロハニのニ号を、自民党さんの御要望によって金融再生法をつくるとき追加した、56条にも買い取り基準が書いてございますけれども。そしてまた、整理回収機構、RCCにも金融機関としての機能も付与したという歴史的な経過があるんですね。だから、ある意味では銀行として、あるいは不良債権の買い取りもできる金融機関としてRCCができる立場にあった。

 ところが、従来まで、私は十二分に企業の再生を前提にした融資や指導や、そういうこともなさっているものだと思っていたんですが、どうもそうじゃないと自民党の先生方はおっしゃる。それで、金融再生法まで改正しなければ何にもできないかのようなことをおっしゃっておるわけですが、なぜ今までRCCは企業再生とかあるいは一般銀行からの買い取りができなかったのか、あるいは入札に参加したというふうなことはないのか、あるいは柔軟に債権の放棄や和解というようなことをやらなかったのか、この点についてはいかがでございますか。

○鬼追参考人 これまでRCCになりましてから企業再生そのものをテーマにしたということはございませんが、債権回収の極大化を図るという意味で債権放棄ということもあり得るというわけでございますが、そういうことを通じまして企業再生に取り組んだということはございます。現実に数十件の件数を数えております。しかし、それはあくまでも、いろいろな慎重な検討の結果、債権回収の極大化を図るために債権放棄をするというようなことを通じましての話でございまして、企業再生そのものをテーマにして取り組んだということは、これまではございません。

 また、今のお尋ねでございますが、53条では、スキーム上、要するに健全行からの申し込みを待って買い取る、こういう仕組みになってございますので、私どもの方からビッドに参加する、入札に参加する、こういうのは仕組みとして設けられておりませんでした。

 したがいまして、これまでは年二回、つまり上半期、下半期にそれぞれお申し込みを募りまして、それでお申し込みのあった分についてデューデリジェンスを行いまして、ネゴを行いまして買い取る、こういう手順でございました。そういう意味では、言うならば受け身の姿勢で健全行からの不良債権を買い取っておりました。

 さらに、もう一点申し上げますと、私どもは法務大臣から民間サービサーとしての許可もちょうだいいたしております。しかしながら、民間サービサーとしての活動を行います場合には、相当額の規模のものを買い受けて回収をするということになりますと、当然、民間企業としての活動でございますので、そこには利益も出るだろうし、しかしながら、反面、損失を招くというようなことも論理的には考えられるわけでございます。そういう意味合いがありまして、勢い慎重にならざるを得ないというところがございます。

 また、その所要資金をどうするかという問題もございます。いろいろ預金保険機構さんの御指導も得てきておるところでございますけれども、公的サービサーとしての活動の上で必要な範囲において民間サービサー業務にも取り組んでおりましたけれども、量的には大変それは微々たるものになってございます。

 これにつきましては、将来の問題として、いろいろ検討しなければならないと考えておりますけれども、これまではそういうような推移をたどっております。

 

 二次ロスを出さぬように

○仙谷由人 もう一点、鬼追参考人にお伺いするのでありますが、参考人が、今回のRCCにかかわる権限、金融再生法の改正に絡んで、RCCが簿価で買い取れるようにしたらどうか、二次ロスはロスシェアするんだというふうにおっしゃったとか、時価で買い取ることはいかがなものかというふうなことをおっしゃったという報道がなされておりますけれども、従来はデューデリジェンスをなさって、ある種、RCCとしては損が出ないように、もうかるように価格設定をしてきた、こういうことだと思うんですね。

 これは民間のサービサーであろうとも、企業再生ファンドを担当する者であろうと、当然のことながら、もうけるという立場じゃないと、わざわざ損をするために債権を買い取りするというようなことはあってはならないというか、これは資本主義の原則からしてもあってはならないし、公的資金が入っている場合、なおさらあってはならないと思うのであります。

 そういう観点からいいますと、今回の改正でRCCが何か大きくリスクをとって、もうかるか、もうけないかわからないけれども、とりあえず金融機関の経営のためにその方がいいんだみたいな雰囲気で業務をなさるというふうなことになってしまっては目も当てられないと私は思っているんですが、いかがですか。

○鬼追参考人 この53条の改正が成立いたしましたとしましても、私どもは時価というのはやはり回収可能額というものをベースにして決められるものだろう、また、決めていかなきゃならないものだろう、このように考えております。

 したがいまして、私どもは万一にも二次ロスを出さないように、現場を預かる者といたしましては、どんなことがあっても二次ロスを出さないというようなことを一方の使命としてやはり考えていくべきだろうというふうに思っておりますし、私どもは、その趣旨を体して進めてまいりたい、このように思っております。

 

 銀行の体力はなぜ弱まったか

○仙谷由人 次に、森参考人に対してお伺いするわけですが、今お手元に、民主党の方で作成させていただいております「1999年3月期公的資本増強前の自己資本比率」という紙と「2001年9月期公的資本増強行の税効果相当額・公的資金控除後の正味自己資本比率」というペーパーがそこに配られていると思います。

 結局、1999年の3月に、私は森参考人にかねてから、これは要するに資産査定が甘い、金融再生法、金融健全化法違反の資本注入であるということを、これは当時の大蔵委員会で、指摘をしたり、あるいは資産査定の甘さの一つが長期信用銀行の瑕疵担保特約にあらわれているという指摘をしてきたと思うんですね。

 今、この「1999年3月期公的資本増強前の自己資本比率」のところの公的資本増強前の自己資本比率、特にこれは、現時点でも問題があるのではないかと疑われている銀行が8%以下であったということもございます。

 そして、2001年9月期公的資本増強行の税効果会計の相当額と注入された公的資金を取り払って正味自己資本比率を計算してみますと、こういう惨たんたる状況になっているんですね。絶対額で見ても、この上からの金額を、みずほ、三井、UFJ、あさひ、大和、住友信託、中央三井信託、これのTier1をごらんいただいても、一九九九年三月期のTier1と比べましても、絶対額としても減っているんですね、これは。非常に銀行の体力が劣化している、財務体質の健全化をいわば最大の課題として行われた資本増強、公的資本の注入が、ふたをあけてみると、三年たってみると体力が劣化しておる、こういう事態になっておるわけですね。これはどこに原因があったと思いますか。

○森参考人 お答え申し上げます。

 11年3月、資本注入をいたしまして、11年3月期は、私ちょっと今、全国銀行ベースの数字しか記憶にないのでございますけれども、13兆の不良債権の処分損を行いました。恐らく主要行は十兆近くをできたんじゃないかと思います。そしてさらに、12年3月期にはたしか主要行で4,3兆行い、13年3月も同じぐらいをしておる。つまり、もしこの資本注入なかりせば、恐らく主要行はそれだけの体力はなかったと思います。

 そういう意味におきまして、11年3月期の資本注入というのは何だったのかとお尋ねを受ければ、私は、それによって主要行をやはり健全なものにしたと思いますし、その後のジャパン・プレミアムの解消にもつながったと思いますし、その後の足元の景況が思うとおりにはよくなっていかなかったわけですけれども、その中で主要行が不良債権処理を思い切ってやれていけたのは、やはりこの公的資金注入があったからではないかというふうに思っております。

 その結果、今日いろいろな剰余金を失っているわけでございますけれども、その中身だけで、公的資金注入がもし仮になかったとすればという議論、それからさらに、税効果というものが仮になかったとすればという議論をすれば、これは仙谷先生のお示しになった数字のとおりだと思いますけれども、しかし、銀行の健全性は何といっても自己資本比率であらわれるわけでございまして、資本勘定としては、金に色目はないわけでございまして、現実の問題として、現時点において11%程度の健全性を保持できた。それはやはり11年3月の国の資本注入があったからではないかというふうに認識しております。

 

 甘い資産査定と無責任

○仙谷由人 さらに重ねて森参考人にお伺いします。

 今のは、銀行の健全化、そして銀行が本来の金融仲介機能や信用創造機能を回復するためには何の役にも立たなかった、単に先延ばしをしただけだということを自白しているように私には聞こえるんですね。

 それで、公表自己資本比率、確かに10%強、11%ある銀行もいっぱいありますよ。だけれども、正味自己資本比率でマイナスになっている銀行があったり4%に届かない銀行が大手行の中でほとんどだ。こういう状況のもとでは、いかにも中途半端な先送りでしかなかったということを、やはり森さんはお認めになるべきだと私は思うんですよ。

 つまり、当時の資産査定が甘く、経営者に責任を問わないという、健全行に資本注入をするというこのコンセプトが決定的に間違っていたということを、僕は、森さんはわかっていらっしゃるんだからお認めになるべきだと思うんですけれども、いかがですか。

○森参考人 お答え申し上げます。

 仙谷先生からは、たしか11年3月の資本注入直後の大蔵委員会で同じ質問をいただきました。当時、たしか私の記憶では、早期健全化法3条2項というのは再生法6条2項を踏まえていることを、おまえは何もわからずにやっているんじゃないかという厳しいお言葉も受けたと思います。

 その後、何度も私は考え直してみましたけれども、やはり早期健全化法というのは、あのときの、平成10年の秋の金融国会でつくっていただきまして、平成10年の暮れの状況からすれば、一刻も早く主要行に対して資本注入を入れて世の中を安定させるというのが早期健全化法の趣旨だったと思います。

 そういうことにおきましては、再生法六条二項に基づく資産査定というのは11年3月期から始まるわけでございますけれども、その11年3月期の主要行の査定を待つとすれば、11年6月でないと資本増強ができなかったわけです。そんな中で、一刻も早く主要行に資本注入しようといたしますと、十一年初めということになります。実際、11年2月に資本注入の内定をいたしました。

 そのときに、健全行であるかどうかの判断というのは、やはり直近の決算期、すなわち平成10年9月の決算、これは資本注入行に対して一斉検査をした結果の決算でございまして、公認会計士協会の実務指針に基づいた決算であるわけですけれども、それに基づいて健全行かあるいは過少資本行かを判断しなければならなかったわけでございます。その場合には、行政といたしましては、時系列的に考えまして、それは平成10年の9月の決算によりますと、仙谷先生御指摘の銀行も8%以上でございまして、それは過少資本行とするわけにはいかなかった、そして健全行としての資本注入をした。

 ただし、どれだけ資本注入すれば今後大丈夫なのかといういわゆる資本注入の際の引き当ての目安といたしましては、アメリカンスタンダードに倣いまして15%、70%、100%というそういう目安は示させていただきましたけれども、それは会計ルールとは離れた、あくまで資本増強の審査の際の目安として使ったわけでございます。

 そして最後に、仙谷先生、単なる先送りだというのを認めろというお話でございますけれども、私は、会計のルールにおいても税効果は認められているものでございますし、公的資金、確かにそれは将来は返してもらわなきゃいけないものでございますけれども、現在、立派な自己資本だというふうに認識しておりますし、そういう意味におきましては、やはり平成11年3月の資本注入があったので、今日、相当厚い引き当てをしてもなお主要行は11%程度の自己資本を保っているわけだと認識しております。

 

 現在の最大の危機とは

○仙谷由人 先般、財務金融委員会で問題になったようでありますが、あなたが、本年の10月24日に銀行会館で都市銀行の幹部の人たちを集めて意見交換会をなさって、その中で私の認識とよく似たことを言っているじゃないですか。今度資本再注入をすれば、銀行というセクターは全部国家管理になってしまう、こんな経済環境ですから、どんな経営をしたって配当財源は枯渇する、ましてや時価会計の導入等、株価の先行きから見ればどうにもならないこともあるんじゃないか、正直言って、皆さんにとって最大の危機だ、そして同じ立場に立っている我々にとっても最大の危機である、こう言っているじゃないですか。

 つまり、最大の危機というのは何ですか。現在の最大の危機というのは何ですか。

○森参考人 お答え申し上げます。

 そのとき申した危機と申しますのは、世の中の評価でございます。すなわち、金融庁あるいは銀行の自己査定で実際に自分の健全度がどれくらいかということについては認識は一致していると私は思うんでございますけれども、一方、マクロエコノミストを初め市場関係者が、不良債権はもっとあるんではないか、銀行の自己査定が甘いんじゃないか、あるいはそれを検査する金融庁が甘いんじゃないか、そういう銀行及び金融庁への信認というものが低下している、これが私は危機だと言ったわけでございます。

 それを克服するためには、特別検査も銀行は耐えてもらいたいと思いますし、特別検査を実施いたしましたし、さらに、銀行は市場での信認をかち得るために自力調達というものを懸命に考えてほしいということを要請したわけでございます。銀行の健全性とか、資本再注入が今必要だとか、そんなような意味で危機と言ったわけではございません。

○仙谷由人 もう一点だけお伺いしますが、あなた自身は、金融庁や銀行当局は、財務内容として、あるいは体力の問題として危機だと思っていないけれども、エコノミストや世間がそう言うんだ、それが危機だと、こうおっしゃるんだけれども、しかし、この十年を見ましても、3年を見ましても、あなたがでたらめを言っている。つまり、もっと言えば、「エコノミスト」、「選択」等に対して法的手段はとれないのか、どんどん訴えるべきだというのを10月24日の意見交換会で言っていらっしゃる。

 経済誌の報道は誤りか

 きょうのダイヤモンド「銀行壊滅」、エコノミスト12月11日号「力尽きた大手銀行」、日経ビジネス12月3日号「暴走する不良債権」。こんなものはでたらめだ、告訴するんだとおっしゃるけれども、この3年、5年の経過は、この種雑誌が先行して報道してきたことがタイムラグを置いて大体実現しているじゃないですか。悪い方へ実現しているじゃないですか。だから我々は、保守的にというか、厳しくこの問題だけには対処しないと、今までだって、佐々波委員会から何回失敗しているんだということを申し上げているわけですよ。

 私は、公的資金を注入してまずいなんてことは一言も言っていないですよ、今まで。注入の仕方なんですよ。査定の仕方なんですよ。

 そこをやらない限り、いいですか、正味自己資本比率がこんなになっている銀行、あなたがおっしゃるように、国家管理、国有化せざるを得ないような状況にまでなっているじゃないですか。そこのところをちゃんと認識して物事に処さないと、何回やっても国民の税金がどぶに捨てられるようなだけだ、このことを申し上げているんですよ。

 どんどん告訴すべきだと10月の24日におっしゃったようですけれども、金融庁が告訴したらどうですか、きょうの三誌は。

○森参考人 お答え申し上げます。

 10月24日のことにつきましては、財務金融委員会で問題になりましたので、私自身、出席者とともに記憶を呼び覚まし、何を話したかということの記憶を呼び覚ましたわけでございますけれども、当時三十社問題ということがよく言われまして、マスコミが問題企業の名前を取り上げて平気で風説を流していることは深刻な事態であると、そういう発言は私からじゃございません、出席した銀行側から出たのでございます。

 それに対して、それは私も大変懸念していると私は言っただけでございまして、意見交換の場で、個別の週刊誌とか雑誌の名前、ましてや個別の企業名を挙げて、どんどん訴えるべきだとか、三十社も黙っているのはおかしいとか、そんなことを私言った覚えは全くございませんので、その点だけ申し上げておきます。

○仙谷由人 言ったか言わないかはまた別途決着つけますが、ここで質問をかわります。

○野呂田委員長 これにて仙谷君の質疑は終了いたしました。