2001年02月27日 予算委員会公聴会

○野呂田委員長 次に、仙谷由人君。

○仙谷委員 お四方の公述人におかれましては、大変貴重なお時間をお使いいただきまして、日本経済の分析を中心にしてお話をいただきました。私からも感謝を申し上げたいと存じます。

 少々失礼なことをお伺いすることになるかもわかりませんが、ここはなるべく議論が対論的になった方がいいと思いますので、失礼を省みず質問をさせていただきたいと存じます。

 先ほどのお話の中で、クー公述人それから植草公述人ともに資産価格の下落を大変問題にされておったというふうに聞きました。この資産価格を考えるときに、私、もう一つ大きいファクターとして、いわゆる経済がグローバライズされたこの時代においては、ドルベースで考えてみる、あるいは世界的な価格との関係で考えるということがなければ、日本的に、資産が一千兆円吹っ飛んだんだ、九百兆円吹っ飛んだんだ、こういうふうにおっしゃられても、資産価格の下落がある意味でとまらない。

 例えば土地について申し上げると、土地は必然的に収益還元価格に収れんをしていかざるを得ない、こういうふうに考えるんですね。そうだとすると、還元される収益というのは、当然のことながら、外国人投資家にとってはといいましょうか、あるいは世界的な金融の流れにとっては、そういうリターンがあるかないかということで決まってくるはずだと思うんですね。つまり、ドルベースで、あるいはユーロベースでその収益還元価格を計算すると、現在の日本の土地なりあるいはビルの家賃なりが高いか低いかということが決まってくると思うんですね。

 さてそこで、土地は、一九九〇年には最も高くて二千四百五十五兆円だった、日本全部の土地を評価すると。現在、千六百兆円である、こういうことに大体なっておるようであります。九九年レベルで千六百兆円ということになっておるようであります。そうだといたしますと、これは対GDP比三倍ぐらいになるんですね、今日本の場合に。つまり、国民が稼ぎ出す、つくり出す付加価値の三倍もまだ土地がするんだ。欧米標準でいきますと、せいぜい対GDP比一・五倍ぐらいが土地の価格だ。つまり、その価格で土地を貸せば妥当なリターンがある、その程度に土地の価格がおさまっていないと、土地を買ったり使ったりする、つまり土地に対する投資をするということにならないということを聞くんでありますが。現実には欧米は対GDP比一倍ぐらいの土地価格だというふうに言われておりますけれども。

 そういうことからいいますと、土地はまだまだ下がる。つまり、幾らいろいろな政策的なことをやって土地の下落を防ごうとしても、必然的な傾向として、グローバライズされたこの時代においては、やはり収益性が同じようなところまでいかないと調整が済まないんだという考え方があるんではないか、いや、そういう考え方があると私は思うんですが、クーさんと植草さん、いかがでございますか。

○クー公述人 日本の土地価格についての御質問だったと思いますが、ドルベースで見たらどうかという御指摘なんですけれども、日本の場合は、土地を借りた人は円で支払いますから、やはり土地の値段も円で、家賃の方も円でありますから、私は円でのリターンというのが重要だと思います。

 今でも日本の土地の価格がGDP比に対して大き過ぎるではないかという御指摘はそのとおりだと思いますが、私は、最終的にどういう方向でこれが収れんしていくのかといいますと、土地の値段というのは最終的になくなるということになると思います。欧米で、一応GDP上に土地の値段は出てきますけれども、実際に土地の取引に目を向けますと、まず土地の値段というのはないんですね。この更地幾らと言っても答えは返ってこない、つまり、ないわけであります。そこに三十階のビルを建てて、家賃を計算して、全部で幾らという計算はありますが、土地だけでどうのと言われても、これはほとんど答えが出てこない。恐らく日本も最終的にはそうなるんだろうなという気がします。

 では、なぜ日本で土地の値段というのがあるのかというと、これは先ほどもちょっと触れさせていただきましたとおり、日本の場合には、とんでもない、世界基準を完全に外れた、土地に対する利用規制がありまして、容積率、日照権問題、建ぺい率といろいろ、これだけ土地が少ない国では想像できないくらい厳しいところに、そういうものが抑えられている。

 そうすると、どうしても土地がないと??土地には床面積という代替物があって、欧米では全部床面積で計算するわけですが、日本の場合はどうしても床面積が需要に追いつけないような状況が何十年も続いちゃったわけであります。これが土地のバブルをつくっていったわけですけれども。そうすると、どうしても床面積の代替物が足りないとなれば、みんな土地が必要になるわけで、これが土地神話というのをつくってしまったのではないか。

 しかし、今回こういう形で土地の価格が暴落して、やはり土地神話というのは神話であったということがはっきりしたわけですから、私は、少しずつ、床面積を計算した、まさに収益還元価格という形になっていくだろう、したがって、最終的には土地の価格というのは消えてしまう、なくなってしまうというのが最終的な収れんした形ではないかというふうに思います。

 それでは、まだGDP比で見て高いんだから、もっともっと土地の値段が下がるのかというと、家賃も円で払われておるわけで、家賃に対しての地価はどうかというふうに考えると、これは必ずしもどんどん下がらなければならないという状況ではない。日本の場合は、土地の値段も高いんですが家賃も結構高い。

 家賃ということでいいますと、実は一九九六年ごろ、海外の投資家が日本の土地を買いに大挙してやってきました。こういう方々、英語でアセットストリッパーといいます。ストリッパーというのは服を脱ぐわけではなくて、そういう土地を買って、もう一回ばらして、うまく組み合わせて高く売るという人たちのことをアセットストリッパーといいますが、こういう人たちが大挙日本に来て、日本の土地を買いあさろうとしていました。一部買った方もおられます。それはあのときの収益還元価格で十分ペイするということを彼らは感じたわけで、つまり、そのときの家賃に対してもう土地の値段は十分下がっていたということであります。

 それで随分来たわけですけれども、残念ながら、その後、財政再建の方に向かってしまって、五期連続マイナス成長という大変な事態になって土地の値段がまた下がり、家賃も下がる。こういう状況になりますと、物を買えなくなっちゃうんですね。つまり、将来幾ら収益を生むかというのが、不況の中では、特にあのくらい深刻な不況になりますと読めなくなってしまう。将来の収益が読めなくなると、とても取引できませんから、みんな帰ってしまいまして、それがさらに地価の下落を加速させてしまったという気がします。

 しかし、今ぐらいの水準であれば、かなりまたこういう方々も戻ってくるんではないか。それは、景気が安定している、将来の収益が読めるというのが大前提でありますけれども、これが見えてくれば、日本政府もそういう政策を、今後とも今の政策をとり続けるだろうという安心感が戻ってくれば、こういう方々が戻ってきて、そこで今の家賃と計算して、買えるか買えないかという判断がなされるんではないか。私は、もうそろそろそういう人たちが戻ってくる水準になってきているのではないかという気がします。

○植草公述人 日本の地価の総額がGDP比で高いという御指摘でございますけれども、地価の決定そのものは、先生御指摘のように収益還元法によってそのベースが決まってくる、これは私も異論はございません。

 かつての日本、特にバブル期の日本の地価におきましては、収益還元法で説明のつかない価格水準が設定されていた。これは、非常に希少な資源であるということと、いわゆる右肩上がりの神話といいますか、価格上昇の予想が理論値からかなり乖離した価格を形成させていたというふうに思います。

 ただ、最近、REITという、いわゆる不動産投資信託市場、こういうものが日本でも創設されて、不動産を分売していく、こういうことが進んでおりますけれども、最近の事例におきましては、新規に土地を取得し、そこに建造物を建てて、それを賃貸に回したときのリターン、これが金利をかなり上回るような状況がかなり広範に生じてきておりますので、不動産に対するリターンが長期金利に比べてかなり高い状態になってきているということは、日本の地価も、そういう収益還元法に基づく説明でかなり説明可能な状況に近づいているのではないか、私はそのように判断しております。

 外国人の動向でありますけれども、外国人はここ数年、日本の大幅に下落した不動産に対して投資をしよう、こうした動きを実は強めております。それは、リターンという点で、投資利回りということでいえば、採算に合う状況になってきたということだと思いますが、ただ、それでもまだ外国の投資家がちゅうちょしておりますのは、そうはいいましても、今度は価格そのものが下方にオーバーシュートする、理論値よりもかなり下に突き進んでしまう、当面の価格下落のおそれがあること。それから、特に外国から投資する場合には為替についての見通し、円高になればリターンが生じるわけですけれども、円安になればその逆ということで、外国の投資家が日本の不動産投資に慎重姿勢を依然として維持しておりますのは、不動産価格の一連の下落のおそれと為替に対する見通しの不確定性、こういうことによっているのではないか。

 そういう点で、日本の不動産価格は、これは物件にもよるわけでありますが、全体としては理論的に説明のつく水準にかなり近づいているのではないか、私はそのように判断しております。

 

○仙谷委員 次に、株価についてお伺いするわけでありますが、御両人ともきょうはおっしゃいませんでしたけれども、いわゆる小手先の株価対策みたいな話は、金庫株であれPKOであれ、多分否定をされるのではないかというふうに思います。

 日本の最も優良、超超優良会社のトヨタの時価総額を今手元に持っておるのですが、ドル換算しますと、一千二百九十四億ドルぐらいになるのですね。いわゆるビッグスリーと言われるGM、フォード、ダイムラー・クライスラー、これの時価総額を計算しますと、一千百七十一億ドルぐらい。つまり、ビッグスリーの時価総額合計とトヨタの時価総額合計、つまり東京証券取引所のトヨタをドル換算しますと、大体そのぐらいになる、こういうことが言われておるのですね。

 ところが、利益の予測を見ますと、ビッグスリー合計で二百十五億ドル、トヨタは三十一億ドル。つまり七分の一ぐらいしかトヨタはない。あれだけ日本で立派な会社だ、無借金経営だと言われておるトヨタでも、利益が七分の一である。そうすると、いわゆる株価収益率みたいな判断基準でいくと、まだまだ日本の株価は高い、外国人投資家から見ると、絶対額としては高い、こういう判断がされるのではないだろうか。

 もう株式については、売買の金額でいうと、マーケットではほぼ半分ぐらいが外国人投資家だというふうに言われておるわけでありますから、とりわけ企業の収益が奇跡的に改善されてくるということ以外には株価が飛躍的に上がるということはないのではないか、こういう予測を私は立てておるのですが、両先生いかがでございますか。

○クー公述人 日本の株価が飛躍的に上がることはないのではないかという御指摘だったわけですけれども、まず、私、野村証券のチーフエコノミストとして全世界の外人投資家に日本の説明をして、あわよくば日本の株を買ってもらうというのが本業なわけですけれども、海外の投資家が日本の株を買っている理由は幾つかありますが、もしも、先ほど御指摘された株価収益率、PERみたいなものだけ見ていれば当然買えないわけであります。でも彼らは買っている。どこにあるのかといいますと、それは、一つはやはり為替なんですね。

 円はやはり非常に強い通貨であるということ。日本の貿易黒字、一月はちょっと赤字になっておりましたけれども、全般で見ればまだ世界最大の貿易黒字国であるということで、円はずっとここ三十年間強かった。ちょっと若干弱い振れはありましたけれども、基本的には非常に強い通貨であるということ。そうすると、やはり円の資産を持っていなければ大きな流れに乗りおくれるのではないかという気持ちを持っている外人投資家は非常に多い。そういうところから見ますと、では、円の資産を持つのに、株を買うか債券を買うか。債券の利回りは何と一・四%ですから、これは幾ら何でも買えないのですね。そうすると、ちょっとでもおもしろい株を買いましょうということで、かなり株式投資に入ってきているのではないかという気がします。

 確かに、トヨタとGM、フォード、クライスラーと比べると御指摘のような数字になるのですけれども、ただ、アメリカでも、IT関連ですとかそういうところではかなり、トヨタ以上に株価を説明できないPERがついたこともあるわけで、必ずしもPERだけで投資家が判断しているわけではない。

 まして日本の場合は今、実際の実力、技術力に比べてかなり株価が安いのではないかという、オールドエコノミーですね、どうもマスコミはニューエコノミーばかり注目しておりますけれども、実はオールドエコノミーの外人持ち株比率、特に、いい企業は急激に上がっております。彼らは、そういう意味では、まさにバーゲンセール、つまり、今だれも見向きもしていない、持ち合いの解消でかなり一時的に供給過剰になっている株をしっかりと買い集めているわけで、そういうのを見ていますと、もう少し日本の機関投資家の皆さん、個人投資家の皆さん、頑張ってほしいな、やはり一番いいところをまた逆張りの外人にとられていってしまうのかなと。そういう話を海外でしているのもこの私ですので、ちょっと何とも言えないのですけれども。

 ただ、最近は、国内で一生懸命こういう話をしましても、やはり余りにも、特に機関投資家の皆さん、この資産価格の暴落で体力がなくなってしまった。株を買うというのは、どうしてもリスクをとれる体力が必要であります。ある程度下がってもそれを受け入れられる体力がなかったら株などを買ってはいけないわけで、そういう状況に今、多くの日本の投資家の皆さんはないので、結局、幾ら外交をやって勧めても、なかなか買っていただけない。そうすると、海外に言って買ってもらって今の株価を支えるしかないということになるわけで、そこはちょっと残念だなという気はします。

 実際に日本の企業で頑張って構造改革も進めているところはたくさんありますから、そういうところをもっと日本の投資家も見直していただきたいなという気がします。

 政策という点で一言つけ加えさせていただきますと、この点では、やはり為替レートというのは非常に注意していただきたいと思います。

 もしも日本の株式市場を日本の投資家が支えているのであれば、円安というのは一つ大きな選択肢であります。ここで円安にして、輸出から、先ほどお話ししましたデフレギャップを埋めていく。これは今、アジアの国々がみんなやっていることで、彼らはもともと大きな貿易黒字がなかったものですから、一部貿易赤字になっていましたから、通貨をうんと下げて、それで今、彼らのバランスシート問題は、輸出という形で解消に向けて動いているわけでありますが、日本の場合は、もともとがすごい貿易黒字なので、その選択肢がないのですね。それで円が強かったわけですけれども。

 ここで円安に持っていこうということになりますと、日本の株式市場、何が起きるかわからない。もちろん、外人が売る前にぱんと円を下げてしまって、向こうが朝起きたときにはもう円安だったということであれば売るチャンスを奪い取るということもできるかもしれませんが、これだけ景気が低迷していて企業収益もぱっとしない、構造改革もおくれている日本の株を外人が買い続けた非常に大きな理由はやはり為替レートでありますから、安易な円安政策というのは要注意ではないかという気がします。

 今のアメリカの財務長官オニール、また、その前のルービン、サマーズ、みんな強いドルを望むと言っておりました。なぜ彼らはそういうことを言っていたかというと、アメリカは今金融市場を外国の資本で支えてもらっている。言ってみればちょっと日本に似たような状況があるわけです。そうすると、彼らが一番恐れているのはアメリカ売りであります。つまり、弱いドルを望むなんて一言言ったら、恐らくドルは大暴落してアメリカ経済はめちゃくちゃになるだろうという危機を彼らは感じ取っているので、実際は恐らく彼らは弱いドルを望んでいるんだと思いますが、そういうことは一言も言わない。

 日本に関しても、日本は、全体は黒字なんですけれども、株式市場という一番重要な心臓部、これを外人に支えてもらっているという状況では、安易な円安政策は非常に危険ではないかという気がします。

○植草公述人 為替についての見解と意見は、クー公述人と私は違いますが、それは質問でありませんので、ここでは控えさせていただきます。

 株価の決定でありますけれども、二つ申し上げておきたいことがございます。

 一つは、いわゆる収益還元法というのは株価決定を考える基礎理論でありますが、ここでは、利益成長、それから長期金利、リスクプレミアムと呼ばれる株式投資に要求する超過リターン、これが通常の株価決定の基本ファクターとなるわけですけれども、例えば予想成長率が、米国の場合ですけれども、米国経済は、九〇年代二・五%しか成長しないと見られておりましたが、九六年から二〇〇〇年にかけまして四%成長を五年も続けたわけです。成長率が一・五も引き上がったわけです。

 そうした中で、米国の株価は九二年に二千三百ドルでありましたものが、昨年一万一千七百ドルになった。四倍から五倍の株価上昇が生じましたけれども、一般的に、予想成長率が二%ぐらい変わったとしましたときに、これはいろいろ前提によっても変わりますけれども、株価が二倍程度に変動しても、これは理論的に見てもおかしくないわけであります。

 そういう点でいいますと、日本経済は現在、九〇年代の長期低迷の延長上に一%程度しか成長しないだろうと、これが株価形成の基本に置かれているわけでありますが、例えば五年程度の間三%程度の成長を実現すると、私はこれは日本の供給余力等から考えますと十分可能だと考えておりますけれども、日本経済に対する見通しがそのように転じた場合には、これは理論的な見地から見ましても、株価には非常に大きな上昇力が発生するということは、現状においてもあり得ることだと思います。

 それから、もう一点申し上げますと、いわゆる企業活動で得られました果実を労働と資本に分配するわけでありますけれども、日本の場合には、不況下において労働分配率が上がるという特徴を持っております。これは、不況におきましても、労働者の地位や賃金が、これは先ほどのお話との関連もありますが、諸外国に比べ非常に強く守られておりますので、企業収益が大幅に減少し、労働の取り分はそれほど低下しない、したがって全体に占める労働の取り分が上昇する、こういう傾向がございます。

 逆に、景気拡大期におきまして、賃金がそれほどふえない中で企業収益が大幅にふえてまいりますので、実際にしっかりとした景気拡大局面に入りますと、かなり高いペースでの企業収益の増大が見込まれますので、そうしますと、結果として得られるPERなどもかなり急速に変動してまいります。

 そういうことを踏まえて考えますと、経済が順調に回復軌道に移行する場合には、大幅な株価上昇というのは、理論的な見地から見ても発生し得る、このように考えております。

○仙谷委員 そこで、景気、経済成長のことをお伺いしたいわけでありますが、今、私は、平成十一年二月二十六日に経済戦略会議が出した答申を持っております。これには「日本経済は本来二%強の潜在成長力を有している。」「十分な構造改革が断行された場合、日本経済は九九年度以降プラス成長に転じ、二〇〇一年度には二%の潜在成長力軌道に復帰する。」ということが書かれておって、平成十一年、十二年は、とりあえず公共事業でも何でもいいから財政出動して景気回復を支えよう、支えろ、それをやってもいいというふうな答申であったわけであります。

 私は、お二人とも御存じだと思いますが、今の公共投資の構造が、官僚と、要するに公益法人、特殊法人の寄生虫が絡みついて、このこと自身が民間の新規参入とか新規事業を妨げるような構造になっている限り、こういう財政出動をしても必ず効果があらわれないということを、この経済戦略会議の答申を書いた先生方にも申し上げたわけであります。

 現に、名目の成長はほとんど達成できない。それから、二〇〇〇年度の成長を、名目成長率、見通しとしては現時点では〇・八%を〇・〇%に修正をしておるようでありますけれども、とても二年間で二%の成長軌道に乗せて、よく言う官需から民需へバトンタッチする、そういうふうな状況にないことは、植草さんがお持ちになったこの先行指標たるべき株価の動きだけでもはっきりしていると思うのですね。つまり、六カ月、八カ月先行指標だということになってくると、当分は、ついに現在は下降局面に入っているというふうに考えた方がいいのではないか。

 そうすると、これは何が失敗したのか。要するに中途半端に財政出動をやり過ぎたから失敗したのか、あるいは構造改革的な、つまり規制の問題、行政改革であるとか、あるいは、私がさっき申し上げた公共事業、あるいは公益法人、特殊法人のような世界にまずメスを入れて、民間の活動が自由にできる範囲を広げるということでなければ、こういうふうに財政出動を幾らやってもどこかむだに消えてしまうということになるのではないか、こう考えておるわけでございますけれども、その点について、今度はまず植草さん、そしてクーさんと、お伺いいたしたいと存じます。

○植草公述人 お答えいたします。

 問題は山積しているというふうに思います。それは、景気の問題もそうでありますし、財政支出の中身の問題もそうであります。私は、公共事業についても、やはり全面的な見直しが必要だと。必要性の乏しいものを省き、本当に必要なところに回す、これが必要だと思います。ただ、その中身の論議とマクロベースの話は分ける必要があるのではないか。

 先ほどの株価のグラフでございますが、去年の四月まで株価は順調に上昇しておりましたが、四月以降下落に転じたわけです。これは先ほども触れましたが、金融政策が金利引き上げに転じたことが一つ。それから、財政政策は、私は現時点において拡張的な財政政策は必要ないと考えておりますが、まだ財政面から景気にブレーキをかけるのは時期尚早だ、こう判断しております。

 予算の取り扱いが、本予算があり、補正予算があり、執行の時期がずれるために、果たして財政が拡張的なのか、中立なのか、緊縮的なのか、この評価が非常に難しくなっていて、それもまた正しく報道もされていないという点もありまして、これが大きな問題だと思いますが、私なりに分析をした結果からいいますと、昨年の春以降、特に第二次森政権発足の後、財政政策の運営の中身がかなり強い緊縮に転じたということで、これが株価を再び下落させている。タイムラグを伴いまして、今また景気を悪化させている。これは、財政政策がきき目がないということではなしに、財政が緊縮に転じた当然の帰結として今そういう状況が生じている、こういうふうに解釈しております。

○クー公述人 確かに、財政がここ十年間いろいろな形で出たわけですけれども、なかなか経済が元気を取り戻さなかったということで、財政はきいていないのではないかという指摘がたくさんあるわけですけれども、これは、どこからはかるかの問題がありまして、もしも何もやらなくてもゼロ成長であるということであるのであれば、それは本当に効果がなかったと思います。

 しかし、私、先ほどもお話しさせていただきましたように、もしもやっていなかったら恐らく日本は大恐慌のシナリオになっていたと思います。これだけ資産価値が下がって、下がるべく下がったところももちろんあるわけですけれども、でも、それを買った人からしてみればバランスシートが壊れているわけですから、そこから発生した問題を考えますと、そこからはかると、財政の乗数効果とかいろいろ言われるものは極めて高く出るわけで、そういう意味では、どこからはかるかということを注意してこの議論をしないと、大変間違った結論になってしまうのではないか。

 一時、国際機関でありますIMF、OECD、みんな細かく日本の財政を調べて、全然きいていない、乗数効果が非常に低いという結論を出したわけですが、その話を聞いて政府が財政再建に向かってしまって、結局、経済がめちゃくちゃになってしまったわけですが、その後、彼らが私のところにも来て、計算のベースを間違えた、これは本当に日本国民に対して申しわけないことをしたとまで言われました。つまり、彼らは、何もしなくてもゼロ成長という前提で計算してしまったのが、実際はそうではなかった。何もしなかったらとんでもないことになっていた、そこから計算すべきだったということで財政を見るのが正しいのではないかという気が私はします。

 ただ、財政の内容については、これは一住民としましても、穴を掘って埋めて、穴を掘って埋めて、穴を掘って埋めるようなことがもう周りじゅうで行われているというのを見ると、大変腹が立つわけですが、ただ、これは植草公述人も指摘されておりますように、中身とマクロの問題は分けて考えてみる必要があると思います。

 中身は、これはよければいいにこしたことはないわけですけれども、そのいいプロジェクトが十分見つからない。しかしそれでも、例えば、先ほど申しましたような百円のギャップがあるときに、では、七十円までやって、いいプロジェクトは七十円しかないからもう七十円でやめましょうという選択肢が日本にあるのかといったら、私はないと思います。どんなにいいプロジェクトでも、七十円しかやらなかったら、残った三十円から、先ほどお話ししましたような悪循環が発生してしまう。穴を掘って埋めるようなとんでもない公共事業でも、こういうことをやれとは言いませんけれども、三十円分とにかく埋めれば、千円の所得に対して千円の支出が発生しますから経済は安定するわけです。

 そういう意味では、もちろんいい財政支出の内容にしていただきたいし、まだそういう改善の余地は幾らでもあると思いますが、今のような局面では、このバランスシート不況という局面では、量の方が質に優先するという事態であると思います。通常は絶対こんなことはあり得ないのですけれども、とにかくデフレギャップ、日銀の金融政策で埋められないデフレギャップ、これは財政で埋めるしかない。そうなりますと、量ありきということになるのではないか。

 最後に、新規参入を妨げるという御指摘がありましたが、そこはまさに規制緩和、規制撤廃ということが必要なのではないか。ただ一方で、とにかくゼネコンをつぶさなければ構造改革にならないというような論調が出ているのは、今の日本の局面に対してはどうなのかなと。

 といいますのは、どこかをつぶさなければ新規参入が可能でないというのは、完全雇用の発想であります。完全雇用のときには、どこかをつぶさないと資源も人も別のところへ移せないわけですけれども、今の日本は完全雇用とはほど遠い状況にある。こういう状況でつぶす方ばかり優先しますと、受け皿がないわけですから、さらに景気が悪化してしまうリスクがあるのではないかという気がします。

○仙谷委員 終わります。