2000年04月20日 決算行政監視委員会第一分科会

○谷口主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仙谷由人君。

○仙谷分科員 きょうは法務大臣に、主として、波元路伊という方でしょうか、帰化をする前の名前はデルフォ・ゾルジという方のようでありますが、この件についてお伺いをしたいと思います。先般、社民党の保坂議員が聞かれたようでございますので、なるべく重複をしないようにお伺いをしたいと思っております。

 まず外務省のようでありますが、このデルフォ・ゾルジの犯罪について、あるいは波元路伊という名前で日本に帰化をしているという件について、イタリアのノーベル文学賞受賞者のダリオ・フォという方、あるいはフォンターナ爆破事件遺族の会会長ルイジ・パッセラという方から、アピール文あるいは手紙というもの、要請文というふうなものが当時の小渕恵三総理大臣に出されたという事実があるようでありますが、それは確認をしていらっしゃるのでしょうか。

○東郷政府参考人 お答え申し上げます。

 三月の二十日付で、御指摘のダリオ・フォ氏から小渕総理あてのアピール文が発出されたこと、及び同じく三月二十日付で犠牲者遺族の会からのアピール文が発出されたこと、これは私ども内容を承知し、確認しております。

○仙谷分科員 これは総理大臣のもとに届けられたのかということと、もう一つは、ここに記載されていることが事実であるかどうかということで随分事情が変わってくる、こう思われるわけですが、法務省当局の方にこの手紙あるいはアピール文というふうなものを回付したというふうなことがおありになりますでしょうか。

○東郷政府参考人 この二つのアピール文につきましては、ダリオ・フォ氏のアピール文は、三月の二十二日付で、在イタリアの日本大使館あてにこの書簡の写しがファクスにて送付されております。それから、犠牲者遺族の会からのアピール文につきましては、三月の二十三日に、在イタリアの日本大使館あてにこの書簡の写しが郵送されております。

 いずれも、その翌日に官邸及び関係方面に外務省よりこの写しを送付しております。(仙谷分科員「法務省も入るのですね」と呼ぶ)法務省の方にも官邸とあわせて送付したと承知しております。

○仙谷分科員 この手紙の中身を見ますと、イタリアでは日本政府がゾルジ氏をかくまっているという報道が相当されておるんだ、それから、ゾルジ氏が日本国籍を取得したということについて、いわば何らかの不正があったのではないか、現在も不法な援助とお目こぼしを受けているというふうなことが報道をされているということが書かれております。

 その前提は、今イタリア当局は、ピアッツァ・フォンターナ爆破事件という右翼テロの事件の主犯格であるというふうに認定をして、同氏を被告としてつい最近裁判がミラノの裁判所で始まったという事実があって、それで日本がかくまっているとかなんとかという話を報道はしておるようでありますが、結局のところ、この問題は、一九八九年でございますか、このゾルジ氏が日本国籍を取得した、帰化の許可が与えられたということに焦点が絞られてくるんじゃないかと思うのですね。

 その前提として、この手紙の中にもございますが、一九七三年に、ベニスの地方裁判所より武器及び爆発物不法所持により求刑を受けている。あるいは、別の情報でございますと、有罪判決を銃砲の不法所持等によって受けておるとかという情報もございます。

 そういう前歴、前科がある人物の可能性があるといいましょうか、そういう認識は今外務省としてはお持ちなんでしょうか。

○東郷政府参考人 御指摘のゾルジ氏に関連いたしまして、イタリアの方から一九八〇年代に犯罪人の引き渡しの請求がございましたけれども、それはその時点での判断として引き渡しはしないという結論を出したこと、それから、その後におきまして、現在判明しておりますところ、日本国籍が付与されたこと、こういう事実は承知しております。

○仙谷分科員 今八〇年代の話をされましたので、その点についてお伺いをしたいのですが、一度、当時はゾルジですね、ゾルジ氏に対して、イタリア政府の方から日本政府に逃亡犯罪人として引き渡しの要請があったという事実はあるのですか。その場合は、もしあったとすれば、その容疑といいましょうか、被疑事実はどうであったのか。断ったかのようなことをおっしゃいましたが、その時点での断った理由は何だったのか、これをお答えいただきたいと思います。

○兼元政府参考人 お答えをいたします。

 このミラノの爆弾事件に関して、警察庁では、平成九年、一九九七年にICPOのルートで手配をイタリア当局から受けております。ただ、ICPOの手配の場合は、これを部外の、一般的な発表をいたしませんで、こういう手配を受けた場合に、一般論としてどういうことをしたかと申し上げますと、警察においては、こういう外国からの手配を受理した場合に、手配の種別によりまして必要な措置をとっております。可能な限り外国の要請にこたえられるように努力をしております。

 なお、お尋ねの逃亡犯罪人引き渡しということでございますが、我が国の現行法上、ICPOの手配で逃亡犯罪人の引き渡しのための各種の措置はできませんで、外交ルートによる請求がなされることが必要であると承知しておりますので、一般的に、外国からICPOルートによる身柄拘束等の要請を受けた場合は、外交ルートで要請するよう相手国に教示をするというふうにしております。(仙谷分科員「外務省、八〇年代、被疑事実」と呼ぶ)

○東郷政府参考人 今のゾルジ氏に関する個別の事案に関しましては、今警察庁の方からお答えしたとおりでございます。

○仙谷分科員 いやいや、警察庁はICPOのお話をされたのですよ。先ほど東郷さんは、そうじゃなくて、八〇年代の話をされたでしょう。だから、その中身をおっしゃってくださいと言っているわけです。つまり、今ICPOの話は九七年の話なんですよね。八〇年代の話は、あなたがせっかくされたから僕が言っているんじゃないですか。

○東郷政府参考人 八〇年代の事実に関しまして、もう一度確認した上でお答え申し上げたいと思います。

○仙谷分科員 私の調査では、銃砲の密輸で引き渡し要請があって、重罪でないという理由で引き渡せないというふうに、これは八六年ですか、拒否をしたというふうに聞いておるんですが、そういう事実ではありませんか。

○東郷政府参考人 調査の上、確認して、もう一度お答え申し上げたいと思います。

○仙谷分科員 今回は、三月三十日ですか、改めて正式の逃亡犯罪人の引き渡しの要請がイタリア政府からあった、こういうふうに前回保坂委員の質問に答えられていますよね。

 さて、問題はここからなんですが、そうしますと、逃亡犯罪人引渡法の二条でございましたか、日本人である者については引き渡しはできない、一応外形的にはこういうことになるわけですよね。

 そこで、今度は法務省の問題になるんだろうと思いますが、帰化の申請といいましょうか、国籍の取得をしようとする場合に、外国で行った犯罪のうち、麻薬とか銃砲関係とか、そういうものの前歴というふうなものがはっきりしている場合に、そういう刑を受けたとか裁判中であるという者である場合は、これは帰化の許可というのが認められるんでしょうか、いかがですか。

    〔主査退席、森(英)主査代理着席〕

○細川政府参考人 国籍法上、帰化の要件として、申請者が「素行が善良であること。」という要件がございます。したがいまして、素行善良であるかどうかの判断の上で、かつて前科があるかどうかということは重要な判断要素になるわけでございます。

 

○仙谷分科員 それは、つまり、ずっと戦後一貫して生活している在日の方とかなんとかだと、帰化申請が出てきた場合にも、別に外国政府に問い合わせをしないでも、容易であるかどうかは別にしまして、素行善良についての調査というのもそれほど困難をきわめるということはないわけでしょうが、こういうヨーロッパの方々とか、あるいは中南米の方々というのも相当この間永住の許可なり帰化の申請というのはふえてきているんじゃないかと推測をするのでありますが、これは基本的には問い合わせということで行っているということなんですか。素行が善良であるかどうか、つまり犯歴、犯罪の前歴、前科があるかないかというその調査はということですが。

○細川政府参考人 帰化許可事件の審査に当たりましては、それぞれの事案に応じて、国籍法所定の帰化条件を満たしているかどうかについて必要な調査を行っているわけです。

 それで、具体的にどういう調査をしているかということは、申請者本人や関係者のプライバシーの問題とか外国との関係とかいろいろありまして、それから今後の調査が円滑にいくかどうかということもございまして、一般的には実は差し控えさせていただいていますので、よろしくお願いいたします。

○仙谷分科員 本件の場合、今私がお伺いしましたことでわかってきましたのは、八九年に帰化が許可されたときには、その前段階である、八六年だと私は聞いておるんですが、八六年に既にICPOの手配を受けた、あるいは逃亡犯罪人の引き渡しの要請を受けた、そういう事実があったんじゃないかということが今わかってきているんですね。帰化の許可を行う前に情報が、法務省に届いていたかどうか知りませんよ、しかし、日本のどこかの役所にはその種の情報が届いていた、こういうことが一方であるわけですね。

 その時点では調査が行われなかったのかどうかわかりませんけれども、さあ帰化の許可を与えたという後に、実はどうもそうらしいなということが本件のようにだんだん明らかになってきた場合には、調査のやり直しといいましょうか、本格的な調査を行うというようなことがあり得るのかどうか、それはむしろあり得べしということなのかどうかということをお答えいただきたいんです。

○細川政府参考人 この方に対する犯罪人引き渡し請求につきましては、法務省としましては、本年の四月六日に外務省からイタリア政府の請求書の送付を受けたところであります。現在、引き渡し請求の理由となっているテロ事件の内容や証拠関係を現時点において入手した資料に基づいて慎重に検討する一方、さらに、帰化許可の見直しに必要と思われる所要の調査及び資料の収集を行おうとしているところでございます。ですから、御指摘のような問題もこの過程でしっかり調査いたしたいと思っております。

○仙谷分科員 これは、こちらから調査担当の検察官なのか検察事務官なのか知りませんけれども、そういう人を派遣して調査するのか、あるいはイタリアにおける日本の大使館のしかるべき人に依頼をして調査するということなのか、それはいかがですか。

○細川政府参考人 これは、外国の政府との関係もございますから、外国政府の御了解もないと具体的にどういうことをするかというのもできませんし、お話もできないということになりますので、今の時点ではちょっと答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

○仙谷分科員 この問題は、一つは外国政府との関係ということはもちろんおありになるんでしょうけれども、むしろ外国政府の方が、つまりイタリア政府の方が非常に熱心だというケースですよね。だから、日本政府の方がその気になれば、その種の調査、つまり犯罪歴があるのかないのか、どのような事件で判決を受けたのか、もしくは裁判中なのかということはもう極めて簡単に、現地で大使館員がその作業を行うのか、こちらが派遣をするかは別にして、これは容易に判明する、私はこういうことになるんじゃないかと思って、そういうふうに想像といいましょうか推論を立てているわけなんです。

 この点は、私は、イタリアの下院議長までが口にするということでありますれば、日本政府は、過去の行きがかりについてはさておいて、帰化の申請時点で帰化の許可を与えることが妥当な事案であったのかどうなのか、これをやはり白紙の状態で検討をすべきじゃないか、そしてまた、そのための厳正な調査をしなければいけないんじゃないかと思っておるんですが、いかがでございますか。

○細川政府参考人 一般論で申しますと、爆弾テロ事件で多数の死傷者を出すということは非常に重大な犯罪でございます。したがいまして、この帰化の処分が本当に正しかったかどうかというのは真剣に調査検討しなければならないと思っております。その過程では、外国との関係もございますので、外務省と密接に連絡をとりながら積極的に進めてまいりたいと考えております。

○仙谷分科員 今、積極的に進めてまいりたいというお話がございましたので、期待をしたいわけでございます。

 さっき九七年の話が出ましたが、九七年は、兼元さんとおっしゃるんですか、ICPOの総裁、これは日本から出ていらっしゃるわけでありますが、国連のアナン事務総長と会談して、ICPOと国連が国際犯罪対策に関して相互に協力することを定める協定に署名をしたという、たまたまそういう年であったようでございますし、そのころのデンバー・サミットではテロ対策というものに先進国が協力しようじゃないかということが大いにうたわれておったときなんですね。

 これは、フォンターナ事件について、この波元路伊、ゾルジ氏という人が関与していたかどうかということは、多分、イタリアの政権交代後これは四、五年たっておりますか、そういう中で出てきた問題、新たな事態であるとは思いますけれども、そういう中で、要するにイタリアの現在の報道にございますように、日本がわざわざあえて不正に入国をさせて帰化の許可まで与えてかくまっている、こういう疑いを持たれないようにこの問題にひとつ対処をしていただきたいと思いますけれども、法務大臣、いかがでございますか。

○臼井国務大臣 ただいま政府参考人の方からお答えを申し上げましたとおり、不特定多数の方々に対して大きな影響を与えるテロというものは、国際協力のもとで対処していかなければならない重大な問題でございます。したがいまして、私どもといたしましては、この引き渡し請求に関する内容や証拠関係を現在慎重に検討いたしているところでございます。

 委員御指摘をいただきました中で確認をしなければならない問題がございますが、今後、しっかりと対処をするように努力をいたしてまいりたいと思います。

○仙谷分科員 では、最後に、もう一点だけ確認的にお伺いするわけですが、国籍法には帰化の取り消しについての条項というものが見当たらないわけでございますが、これは、取り消し申請をだれかがするというふうなことなくして、何らかの方法で、帰化を許可をしたことが間違いであった、あるいは後に判明した事実によればこれは帰化を与えるべき事案ではなかったというふうなことを判断することができるのか、あるいは判断をして取り消しすることができるのか。これは手続上、人権に関することでありますから、どうなっておるのか、その点をお答えください。

○細川政府参考人 国籍法中には帰化許可処分の取り消しに関する規定はございませんし、また、かつてそういうことをした例もございません。しかし、行政法の一般的な理論といたしましては、帰化許可処分も行政行為でございますが、行政行為に違法の瑕疵があれば、一定の要件のもとに正当な権限を有する行政庁が当該行為を職権で取り消すことができることと解されておりまして、これについては、他の事案でございますが、同趣旨の考えを述べた最高裁の判例もあるわけでございます。

 

○仙谷分科員 それでは、通常は、人権に関することでありますから、職権で許可をしたり取り消したりというようなことになりますと、どこにその基準があるのかないのかというのが疑いの目をもって疑義が提起されるというふうな事態もなきにしもあらず、これは一般論でありますが、そういうこともあり得るわけでありますが、本件の場合には非常に事は重大だと私は思っております。

 したがいまして、フォンターナ事件あるいはフォンターナ事件以前の、以後か以前かわかりませんが、要するにフォンターナ事件発覚以前の日本の国籍取得、つまり帰化申請をする前段階でどういう事件に関与をし、どういう裁判を受け、どういう判決を受けていたのかということが、帰化の申請時には不分明であったけれども、現時点で調べてみると非常に重大な犯罪を犯したと疑うに足る相当の理由があるか、あるいは判決を受けているかというふうな事態がもし判明したときには、ちゅうちょなく職権を発動して、テロ対策の国際協調の実を上げるようにひとつよろしくお願いを申し上げたい。

 私の質問は終わりますが、御答弁をいただけるのでしたら、どうぞひとつ御答弁ください。

○細川政府参考人 問題となっている事件が三十年前のものでございます。それから、帰化許可処分も十年以上前のものですので、捜査は相当慎重にしなければならないし、簡単に結論が出るとは思いませんけれども、一般論で申し上げれば、先ほど大臣からも御指摘がありましたけれども、爆弾テロの事件というのは重大、悪質な犯罪でありまして、国籍法の素行要件に反するということが明らかであると思うのです。したがいまして、爆弾テロの犯人であることが当局において明確になったということになれば、先ほどの帰化許可の取り消しの一般法理に照らして最終的な判断をするということになろうかと思っております。

○仙谷分科員 終わります。

○森(英)主査代理 これにて仙谷由人君の質疑は終了いたしました。