第29回日本・EU議員会議   於 ブリュッセル

6月3日にブリュッセルで開かれた日本EU議員会議における発言(骨子)

仙谷由人

主権国家を超える問題の解決に向け「共同のガバナンス」を

− EUにおける「熟議の民主主義」に学ぶ −

 EUの27カ国への拡大とリスボン条約の署名ないし批准への注力に祝意と敬意を表する。以下の点につき、21世紀に生きる政治家として積極的に評価する。

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いわば「熟議の民主主義」を創ろうとしていること
1) EU憲法条約批准のある種の挫折を乗り越え、同意法条約の主要な理念と枠組みを生かしつつ練り上げたこと
2) 8党派(政治グループ)が未来志向で、偏狭なナショナリズムとイデオロギーを止揚して合意形成したこと
戦争、武力行使で紛争を解決しない、単一の市場を拡大形成し、成長によって域内市民の自由と人権が保障されるという理念が貫かれている。
主権国家の「主権の移譲」、「主権の共同行使」という新しいコンセプトと新しい手法によって、グローバライゼーションに適応する新しい「ガバナンス」を構築しようとしていること。
さらに、「市民イニシアチブ」(=参加民主主義)をも組み込んだ“民主主義の民主化”にも共鳴する。

 いわゆる“右”の政治勢力が、仏、独、伊、スウェーデンなど各国において復活、政権交代した原因は何か“左”が狙った“第3の道”が、高齢化(生産労働力人口の減少)に伴い、雇用の不安定化をもたらし、労働条件で格差を拡大させたうえ下方平準化した。このことにより一国的社会保障システムの動揺を生んでいることが、その大きな原因なのか。
 共通農業政策、輸出補助金

 しかしリスボン合意は、国境を超えて発生する様々な問題群の解決について、一つのそして確かな方策として、主権国家を超える「共同のガバナンス」を打ち出したことにより「希望」を与えている。
 主としてヨーロッパ社会が築き上げてきた国際法と国際社会のコモンセンスに準拠して、多国間協調主義の理念に信頼を置き、このソフトパワーを中心にガバナンス(共同統治)を創造することが、何よりも重要である。

 東アジアにおいても、環境(大気汚染、水質汚濁、水不足)と地域温暖化は、エネルギーの共同開発なくしては達成できないし、鳥インフルエンザなどの感染症対策、食糎危機や自然災害対応での緊急支援と援助なども恒常的な共同のガバナンスが求められている。

 公正な市場を創り、維持運営するためにも、主権国家を超えた知的財産権裁判所とその執行についての共同の統治のシステムや、あまりに肥大化し投機化した金融を適切にコントロールする仕組みが早急にのぞまれる。
 日本のバブルとその崩壊後の対応、10年前のアジア金融危機、昨年夏から発現した米欧におけるサブプライムローン破綻と住宅バブルのクラッシュをいかに教訓化しうるかが、東アジアのみならず問われている