「徳島未来フォーラム」

2002.11.23
於:徳島県郷土文化会館
仙 谷 由 人

 皆さん、こんにちは、ご無沙汰をお詫び申し上げながら、この素晴らしいお天気にもかかわらず、こんな屋内の会合にお越しいただいたことを御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

 ご心配をいただいておりました病気の方も、ごらんの通り、快復いたしました。10ヶ月と10日くらいでしょうか、手術後それくらいになります。先般、10月25日、検査に行きました。結果、全く問題はない。さらに加えて、血液検査の結果が、手術前よりも成人病関連数値が、遙かに改善をされ、全く心配のない正常値に入っておりまして、手術後少々貧血気味でありましたが、これも徐々に改善されているということで、はなはだ快適な生活をすることができています。

 皆様方からいただきました、お見舞いや、ご激励のおかげで、こうやって元気な顔を皆さん方にお見せすることができ、極めて、喜びいっぱいでございます。

 

小さいから、活躍できる

 さて、日本の景気がここまで悪くなって来ますと、景気・経済・金融につきまして、今まで厳しく政府の経済運営に批判をやっていた私も、批判し続けて良いのか、自分でも忸怩たる気持ちになるような状態です。

 簡単に言いますと、この年末〜来年の3月に向けて、悪くなることはあっても、良くなることはないだろうといいうのが、だいたい見通しであります。

 今まで、企業は、規模の経済学で、大きくなればいい(量的に大きくすれば、損があっても、他のところでカバーできるから、あるいは、ある業種の中で大きな範囲を自分のところの商品で占めることができれば、価格の決定力を持てるから、大きい方がいい)と、右肩上がりの経済の中で、世界中の企業、そして日本の企業は、頑張ってきたんだろうと思います。

 ところが、どうもそれがおかしい。今、巨大な銀行同士が合併して、ひとまわり大きくなっているけれども、経営が安定したわけでなく、利益が多く出てきたわけでもない。あるいは、かつて「鉄は国家なり」と言われましたけれども、今、新日鉄と神戸製鋼と住友金属が、一緒になる。日本鋼管と川崎製鉄も一緒にならざるを得ない。つまり、今まで鉄鋼5社とか6社とか言われていたのが、鉄鋼2社に収れんをせざるを得なくなった。これは何なのかということが、大問題なわけであります。

 こういう事態になりますと、銀行も、鉄鋼も、これからは、自動車や電機もそういう状況の波にもまれるのではないかと思いますけれども、大きい規模であるだけに、なかなか転換がしにくい、身動きが取りにくい、と言うのが、今の日本の大問題になっているという気がしてならないわけです。

 7〜8年前から、皆さん方とお話をするときに、“スモールイズビューティフル”“小さいことはいいことだ”、小さいからこれから活躍できるんだ、という話をしていたと思いますけど、いよいよ本格的に、そういう時代が、産業や経済のところにも来たのではないかと思います。「大きくないと、更に大きいところに負けるんだ」とか「大きいところにすがっていった方がいいんだ」という発想で、何かをやろうとしてもうまくいかない。その切り替えが、日本全体では、まだまだ出来てないところが、今の深刻な問題ではないかと思います。

 例えば、今の日本の株式市況をご覧いただきましても、時価総額で240兆円くらいになっています。これは、バブルの時には700兆円を超えておりました。そうしますと、規模は1/3になっている訳です。大銀行も、大きい会社も、息も絶え絶えでありますけれども、しかし、その中でも利益率を見ましたら、まだまだもっと、株価総体が小さくても、やむを得ないんじゃないかとい意見まで出てくるような実態、つまり、利益が非常に薄くなっているということです。ここも、巨艦主義といいましょうか、戦艦大和のような大きければいいという発想に、相当無理がきているということなのかもしれません。

 問題は、ここから先でございまして、“企業の規模を小さくする”、これは、できなければ倒産という事態が待っていますから、自然にできるんでしょうけれども、倒産という事態は、当然のことながら失業という事態を生みます。

 日本では、失業、倒産という事態に追い込まれた時に、“再びチャレンジができる”という仕組みが、大変立ち遅れている、ということが最大の問題です。

 

 

経済のグローバル化の中での政治の課題

 政治の側から、今の日本経済を、どう考えるか、どう見るか、という立場で、少し言いますと、非常に残念ながら、政治の役割(国家が経済を良くしたり、景気を良くしたり)というのは、極めて限られてるという風に思います。そして、近年ますますそれが小さくなってきた、という風にも思います。

 その原因の一つはグローバル化という、経済を取り巻く環境の中で、国境がものすごく低くなってきたということ。

 もう一つは、良く耳にされると思いますが、情報化、IT化、という風に言われていますが、このこととも関係があるのではないかとy¨、つまり、そのことによって、生産をする場所が、別に国内でなくても良くなってきた、というのが、大変深刻な問題なのです。

 この間、台湾へ行って参りました。台湾の経済は、日本よりも遙かに層は薄く、規模は小さい。ITでアメリカのシリコンバレーと連携をしながら、うまく経済発展をしたという風に言われていたわけですが、今や、5万社の企業が、上海・蘇州を中心とするところに展開して、50万人の台湾の人々、500億ドルの資本が、中国大陸の方に行ってしまって、日本よりも遙かに空洞化が進んでいるという状況になっています。

 台湾の政府関係者などが深刻に悩んでらっしゃいましたが、経済の問題からだけ申し上げますと、賃金が安かったり、土地の値段が安かったり、税金を特別負けてくれるようなことがあれば、どんどんそういうことになる。

 むしろ、IT化が進めば進むほど、そういうことが進むという風にも考えておかなければなりません。

 そして、台湾の問題はこれだけではありません。中国の為替のレートが少々おかしい、中国経済が、年7〜8%に伸びてきて、外貨準備高(ドル)を貯め込んできたのに、中国の人民元が、ドルに対してどんどん安くなっている。この矛盾が、台湾や日本、その他のアジアの国々を苦しめることになっている。これは今回、李登輝さんと会ったときに彼も言ってましたし、私も、5月から7月頃の国会の論戦の中で申し上げています。

 なぜアメリカがそのことを問題にしないのか。それは、既に今、中国で作られる製品が、アメリカへも輸出されていますが、これは過去、日本にやられて、例えば電機産業などは、まともなところはほとんど残っていない、アメリカには家電製品では競争する企業が残ってないということで、それほど痛くはないんだという説がありますy¨、そうかもしれません。

 要するに、人民元と円・ドルとの関係、つまり為替の問題が、非常にいびつな格好になっている。日本が1985年にプラザ合意ということで、円高を求められました。そういう話し合いが、先進国と中国の間でもなされなければ、世界の経済は、ますます歪になってしまうと私は思っています。

 それはひとえに、政治の課題でありますが、その他に、景気を良くするために何ができるか。残念ながら、政治の力、政府の力ができることは、そんなに大きくない。ただやるべきことはある。それは私も分かっているつもりですが、今のマスコミの大合唱、「デフレ脱却のために何かができる」という風な大合唱ほど、効果が出ることはないんではないかy¨。

 経営者の皆さん、やはりここは、自分の足固めをちゃんとして、自分の頭でお考えいただくことが原則、ということになるんではないかとy¨、冷たいような話しでありますが、そんな風に思います。

 

護送船団方式からの自立こそ原則

 実は、今日、日銀の高松支店長さんと過去の統計を見ながら話しをしておりまして、戦前の1920年代、1930年代と、現在の姿を比べると、戦前の時代の方が、民間や個人が、事業会社の株式も持ち、公的な部分に依存する度合いが非常に少なかった。遙かに戦前の方が資本主義的、自由主義的であったということが、統計を見ても明らかだということを、教えていただきました。

 1940年体制というんですが、私も、この間のことが、ものすごく気になっていて、戦争で負けたのが1945年、その5年ぐらい前から、統制経済、国家総動員体制になった。戦後、総動員体制になってからの癖が、続いたという部分があって、その残滓が護送船団方式ということで、我々の意識まで毒しているんではないかy¨

 こんなに、みんなが「政府が何とかしてくれる、何かをするのが政府の義務だ」という風な大声を(いつの時代も挙げたのかもしれませんが)、本気になって考えている時代はなかったんじゃないか。あまり過度に期待をしすぎると、これは裏切られるんではないかとy¨

 こんな時代だからこそ、まずは自分の足で立つ、自立をするということが、一番重要なんじゃないかと思います。

 私も、そうは言うものの、皆さん方に頼っているわけでございますけれども、そういう、志というか思いを、まずは固めて、そして、何が一緒にできるのかということを議論をし、考えていきたいと思います。

 この後、ジャーナリスト 大塚英樹さんの講演がありました。