仙谷由人 朝日新聞のインタビューに答える

2001.10.10 朝日新聞 徳島版より

テロ対策特別措置法案インタビュー

 米国で起きた同時多発テロ事件に絡み、自衛隊を海外派遣するための「テロ対策特別措置法案」の審議が国会で本格的に始まる。成立すれば戦後日本の安全保障政策の一つの転換を意味する。凶悪なテロ犯罪に対し、日本が国際社会で果たすべき役割は何なのか。県選出国会議員(衆院比例区の県関係議員を含む)7人に法案の是非や国際貢献のあり方を聞いた。

 

---テロをどこで知り、どう受け止めたか。

仙谷 午後11時過ぎに帰宅して子供から聞いた。午前3時頃までテレビにくぎ付けになった。市民の命を何とも思わないのかとショックを受けた。人間の尊厳に対する悪質な攻撃で、いわば大量虐殺だと思う。

---民主党は新法の制定自体には賛成の立場だが理由は。

仙谷 国内に警察力が必要なように、国際的にも調停力、実行力が必要。国連による集団安全保障の枠組みの中で、日本も実力行使すべきだが、行使の中身は憲法の範囲内にとどまる。現状では自衛隊を動かす根拠となる国内法はなく、派遣には新法の制定が必要だ。

 ただ、報復のための戦争は国際法上あってはならず、何でもやればいいわけではない。歯止めをかけるために、新たな国連決議や自衛隊の活動内容を決める基本計画の国会での事前承認も必要だ。

---なぜ実力行使が必要か。

仙谷 今回のテロは従来の国家間の戦争や民族、宗教をめぐる内戦とは全く様相が違う。ロシアや中国でも、テログループをどう制裁してテロを根絶するかを考えており、冷戦の対立構造とも異なるからだ。

 ただ本来は、法と正義の名のもと、手続きを踏んで制裁を加える常設の国際刑事裁判所が必要だ。それには犯人の捜索、逮捕が不可欠で、あくまで犯罪者に裁判を受けさせなければならない。

---憲法解釈上、集団的自衛権の行使はできないのでは。

仙谷 米国が個別的自衛権の行使で自衛のための戦争をするとして、それに日本が付き合えば、集団的自衛権の行使にあたる。だが、国連の行動の一端を日本が担うのならば、集団安全保障の枠組みで日本も参加できる。

 憲法解釈を変えるか、国連のもとで派遣するかどちらかにしないと派遣の根拠はすっきりしない。憲法解釈はなし崩し的に変えるべきでなく、きちんと憲法を変える議論をしないといけない。

---政府は武力行使はしないと説明するが。

仙谷 前線の戦闘行動があり、やや後ろに野戦病院や(軍需品を補給する)兵たん基地がある。後方での支援も一体としての武力行使にあたるのではないか。政府が想定する行方不明者の捜索活動も、戦闘のない地域でやると言っても、実際に必要になるのは戦闘地域で、整合性がとれない。携行武器などを新法で歯止めをかけるか、国連に抑制を求めなければ危うい。

---自衛隊派遣にアジア諸国の危機感は強いのではないか。

仙谷 中国や韓国も今回、テロ対策が必要という旗色を鮮明にしている。状況は昔とは違う。国際化の中で様々な国の市民が、テロの被害者にならないよう対処する国際的な仕組みをつくることが、今回の同時多発テロ事件の教訓だ。対テロや麻薬などで、アジア諸国、少なくとも中韓日共同で対処する安全保障の枠組みをつくる機会でもある。日本の侵略戦争の反省は、アジア地域の集団安全保障の枠組みをつくることによってのみ生かされる。

以 上