連合財政構造改革シンポジウム

2001年1月16日

仙谷由人

 おはようございます。今日はこんなハイレベルなシンポジウムにお招きいただいて、忸怩たる思いで、今おります。  

 正村先生、神野先生には民主党の大方の議員にとりましても、政調のスタッフにしても、日頃大変なご指導をいただいていますし、私自身は特に、個人的にも正村先生、神野先生お二人の考え方を本気で日本の政治のレベルで政策化、制度化する以外にこの日本の救済というか、日本がなんとかどこまで続くぬかるみ、そしてまた現時点では財政の問題が現象としてもっとも大きく表れてわけですが、まさに奈落の底を覗き込むような状態に日本人が、あるいは日本の社会がなっておりますこの商況を脱却するといいましょうか、脱け出るためにはお二人の先生の考え方を基軸にした政策論、制度論が行われなかればならないという風に考えておりまして、そのお二人の先生と机を並べて議論に参加するということは、名誉なことでありますが、はなはだ恥ずかしいといいましょうか、気後れする状態でここにやって参りました。

 今、両先生がおっしゃられたことを、私は基本的にその通りだという思いで聞いておりました。そして今日の私の出席の目的はこの民主党の参議院選挙政策の財政構造改革という風にかかれたものの、いわば弁明に来いという趣旨であったようでありますが、実はこの政策自身、私の従来から申し上げてきたこと、あるいは鳩山代表が申し上げてきたことからすると、これを書いた方がちょっと誤解をされて機械的なことをずいぶん書いてあるなという印象を持っておりまして、これからこの財政構造改革に関する部分、当然のことながら、公共事業改革や社会保障の問題が絡んでくるわけですが、この問題に政治的な判断を与えて相当大きく変えなければならないだろうという風に思っているものですから、これを擁護的に弁解することにはならないかと思います。

 言い訳はそれくらいにして、先ほど神野先生がお持ちいただいた、財政赤字の対GDP比というところにイタリアのことが書かれていませんでした。先生は、ドイツ、フランスが財政面で優等生ということで出したのではないと思いますが、中程度の失業率とのからみで悩みながら頑張っているという意味で例としてドイツ、フランスをだしているのではないでしょうか。皆さまもご承知の通り、これはどこにでも書かれているご存知のことかもしれませんが、イタリアの中央、地方、社会保障とかの赤字は92年度は9.5%の財政赤字であります。それが9%台が94年度まで続きまして、EUに加入するためにそこから財政再建、財政構造改革に入ったのでしょう。95、96年度が7%台の財政赤字。マーストリヒト条約の実施が目の前に迫った97年からは、97年は2.7%、98年が2.8%、そして99年、2000年は1.9%、1.5%の財政赤字となっております。そんな手品のようなことが単年度の財政の収支でなぜできたのかというのが、はなはだ疑問でありますが、イタリアに行きますと、言わば豊かな北部と貧しい南部という図式の中で、イタリア南部は、いわゆる公共的な投資がこないということで不満たらたらだという声も聞きますが、いずれにしても無理やりでもこういう財政の赤字構造をEUの基準である3%以内に抑えこんで、2001年には−1.1%の財政赤字という様に、これはOECDのアウトルックの中で、昨年の6月の予測ですが、そういう風な政策が展開されているということであります。従いまして、累積の債務残高といいましょうか、財政の赤字もイタリアでは2001年には少々減りまして、対GDP比108.9%になりますが、日本は2000年が112・8%。ここで、2000年度は0.1%イタリアよりよかったのですが、2001年度では119.4%で、イタリアは108.9%ですから、もうずっと追い越してしまったということになります。イタリアより悪くなってどうのこうのと沽券に関わる話をしているわけではありませんで、実はこの赤字が、先ほど神野先生が、債務管理型国家というお考えかたを示されましたが、多分神野先生も、債務管理型国家という風に国民の合意を取りつけてシステムを作るにしても、しかし、毎年毎年、国・地方合わせた債務残高が増えつづけるということでは、債務を管理したことにはならないわけですから、ここをどうするのかということが我々政治家の役割だと思います。

 11月20日の予算委員会でわざわざパネルにしたのですが、これは税収が48兆円、49兆円。今年は50兆円を見込んでいるのですが、この内、基幹三税(所得税・法人税・消費税)の税収は37兆円。だいたい37兆円から38兆円という風になります。今年と昨年は利子所得税が10年前に預けた郵便貯金の返還とこれに対する利子。利子税20%がついていますから、この分が増えて所得税が増えてだいたい2兆円、3兆円多いというというのが、去年、今年の実態であります。この基幹三税が37兆円、その他税収で12兆円あるいは13兆円というのが今の日本の歳入の構造ということであります。49兆、50兆ということになるわけです。歳出の方から考えますと、皆様方ご存知のように国債費で今年は4兆5千億減らしたと言っておりますが、これは後で触れるかもしれませんが、いわゆる金融破たんに対処するいわゆる預金保険機構に繰入れるお金が4兆5千億減ったということで全体として国債発行額が2.8兆円くらい抑えられているわけですが、歳出の方は国債費が20兆円(そのようにかんがえかていただければいいです)そして、いわゆる地方交付税交付金と言われているのが、15,6兆円。だいたいこの二つで36,7兆円ぐらいかかることになります。さきほど申し上げた基幹三税とこの国債費と地方交付税交付金が必要だということで、基幹三税が消えてしまう。そして12兆円のその他税収というのは、国家公務員の給与でだいたい11兆円なので、ほとんどなくなってしまう。そうしますと、政策経費が約30兆円あるいは32兆円という、つまり社会保障費16兆円、公共事業費10兆円、教育費6兆円と足していきますと、これは中央政府の財政だけですが、約32兆円になるわけです。それでこの32兆円をファイナンスするために、昨年度は32兆円、つまり決算ベースが34兆円の国の財政赤字をつくったということです。地方の方は今年はよくわからないのですが、大蔵省の出した資料を見ますと、地方の債務残高が約4兆円しか増えないことになっているので、どうなっているのかなぁと思っていますが、少なくとも地方交付金特別会計の中では今年度末の段階で38兆円隠れ借金のようなものがある。そこにさらに借金を積み重ねると、借金が42兆円から45兆円くらいにはなるのではないかと見ております。

 この地方交付税交付金といいますのは、いずれにしても、税収が少なければ少ないだけの話で、特別会計の方に借金が構造ですから、地方レベルで必要なのは、多分17兆〜20兆円の間の借金が出てくるので、借金をさせないんだという政策が、地方が今年度レベルで4兆円になってる原因なのかなと思ったりもするのですが、いずれにしましても昨年、一昨年の財政は毎年毎年、国の政策経費32兆円と地方の17兆円、合わせて50兆円の借金を作らないと、国民の皆さま方が満足するような歳出にならないということであります。景気回復(効果があるかないか別にしても、ほとんど効果がないとみてましたが)を、公共事業を中心に50兆円の借金か国全体で行わなければならないような錯覚というか常識が通用していたということです。

 こういう財政が持続可能性があるのかないののかということは、これは誰が考えても持続可能性はない。現時点でまだ持つような感じになっておる。今度、財政経済諮問会議に東京大学から吉川さんという方が抜擢をされて、多分、神野先生や私などとあまり年がかわらない。もう少し若い方が、この吉川先生が「国債の発行は、国民の金融資産1300兆円でファイナンスするのだから、それほどびっくりするような話でもないし、それほど深刻に考える必要がない」ということを新聞に書かれておりまして、「おやおや」と私は思ったわけです。そして今の、指標が私自身は財政赤字の対GDP比から、あるいは消費者物価と為替レートとか、その他のマクロ的な指標をとってみますと、ドイツのワイマール共和国時代にドイツ経済の指標と非常に酷似しているということに、私は危機感を持っています。つまり1920年ぐらいの段階で、1921年から急激な悪性のハイパーインフレーションがドイツで起こったわけですが、その指標と非常に酷似しているといいうことが不気味なところでございます。

 先ほど神野先生のお話でもありましたように、この財政再建を、とりわけ中曽根内閣の時に大声で叫び出した「増税なき財政再建」という政治スローガン自身は、私はある意味で、再建は非常に長期的に考えなければできないと思いますが、しかし、ここ数年、2年とか3年とかの間は、財政再建のために増税をするということはあってはならないし、国民が許すはずもないと思っていまして、当面は財政の規律を確立する。つまり、どういうことかと申しますと、借金が増えない構造にするということです。借金が増えないけれども、累積の借金は増えないような格好にする。それはプライマリーバランスという考え方がありまして、これを何年間かで回復する。10年で回復するか7年で回復するか、あるいは5年(というのは私は極端に短いと思っていますが)で回復するのか、その方向にいかざるを得ない。今、来年度の予算で言いますと、多分プライマリーのバランスが11兆円くらい依然としてプライマリー赤字というのですが、はみ出ている。この11兆円と何年間かかけて中央政府の支出を減らすことによって、プライマリーバランスを回復する。単純計算でいいますと、毎年1兆円ずつ減らせば、10年で10兆円くらいの政府支出の削減ということになりますから、そういうことが考えられるかもしれませんが、もうちょっと近代経済学の考え方を取り入れれば、毎年毎年機会的に1兆円ということではないのかもしれません。いずれにしましても、プライマリーバランスだけでも10年前後の時間をかけて回復するということがなければ私はいずれの日にか日本の国債が外国人投資家を中心にして価値がない、格付けが落ち、国債が売られる時が来るのではないかと。その時に起こってくるのはハイパーインフレーションとでもいいましょうか、円の暴落と当然のことながら金利の上昇というようなことになるわけでして、これについては、経済企画庁の経済研究所、野村総研、それから大和総研が、昨年ちょうど秋から冬にかけて、その種の報告、つまり2006年からはもうまさに破局に、奈落の底に落ちるということを書いて発表されておりまして、このことを私は軽視できないと思います。問題は、この認識を、あるいは危機感を民主党なら民主党で、あるいは国民のレベルで、どこまで共有できるのか、そして先ほど、正村先生、神野先生がおっしゃっておりますように、民主党が、あるいは仙谷という政治家が、そのことをあえて国民に説得できるかというのが、課題なんだろうという風に考えております。

 今の時点で、特に年明け後の証券市場の動向というのは、これは半年前から分かっている人には分かっている動向であります。ノキアというフィンランドの会社(日本を除くアジア、特に中国、それとヨーロッパの携帯電話市場のシェアをいわば席捲している携帯電話会)が、昨年の4月に売上げ予測を7億台としたのですが、これが夏になって3億5千万台に下方修正したわけです。従いまして、秋にアメリカ。ヨーロッパのあるいは日本、アジアの生産の方から見た指標を見ても、ITを中心にその部分だけ極端に成長していた構造が、どうも、その部分が供給過剰に、生産能力の過剰に入ったのではないかと見て取れておったはずでして、そこにナスダックの暴落というのはそのことを表現していると見た方がいいと思います。ナスダックは昨年の3月に5000ポイントを記録しましたが、今、上がったり下がったりしていますが、ようやく半分の2600ポイント、2400ポイントとなっておりまして、ITバブルがある種、崩壊して、ITが主導する経済体質、経済構造がそれでいくしかないのだろうと私は思いますが、さすがにここ数年のITブームはまさにバブルであって、それが正常なところに調整されつつあるというのが、どうも疑いがないようでございます。そうだとしますと、ナスダックのバブルを資産効果として、これはアメリカの民主党の一部の方、共和党の今度の政権担当者が、だいたい言ってますが、アメリカの構造改革とは過剰消費の構造を改革することである。それは、とりもなおさずアメリカが今、経済収支の赤字が4千億ドル(40兆円)強あり、そのファイナンスをヨーロッパから主として昨年あたりはしたわけですが、この構造をどうやって変えるのかというのが、アメリカにとっても相当重い課題であるはずでありますが、この過剰消費が剥げ落ちた段階では、当然そこへ輸出をしているアジア、中国、日本に波及してくることは必至だろうと私はみておりまして、そのことが中国が世界の生産工場になったと日経ビジネスが一ヶ月前に書きましたが、中国に生産拠点を移すことによって大変な価格破壊が起こって名目の消費も企業の売上高も伸びないこの状況下でますます不良債権が増え、日本の金融機関にもう一度困難な局面が来る可能性がある。そうなりますと、また財政の出動ということになるわけでして、相当な悪循環に入ってきていると私は思います。

 結局、繰り返しなりますが、そういう危機感をどこまで共有しながらあれもこれもではなくて、お二人の先生方のお話からもありましたし、連合の文章を拝見させていただいても、その通りでありますが、安心感のネットワークだけは、特化してやろうよというくらい、そのくらい大胆な事を考えざるを得ない局面に入ってきている。社会保障も必要だが、公共事業も必要だという話には、もうならないのではないかという気が私はしております。

 時間がきましたので、とりあえずこのようにまとめさせていただきます。

 

(神野先生、正村先生からの意見を聞いた後の発言)

 先ほどから、増税できないとかしないとか話をさせていだきましたら、ちょっとテーマになりまして、話が面白くなってきたかなと思っております。

 正村先生、神野先生の考えかたには基本的にというよりも、そういう大胆な改革をするしかないということを考えておりまして同意をいたしました。先ほどはそこまで限定的に言わなかったかもわかりませんが、私はこの財政の問題を考える時も、中央政府には増税をさせない。つまり神野先生がおっしゃるように債務管理型国家になるにせよ何にせよ、中央政府はこれ以上の増税をしないでプライマリーバランスを回復し、財政再建の方法を考えるべきであるというぐらいのことをやりませんと、中央により資源配分といいましょうか、予算を、あるいは税制を通じた資源配分はここまでモラルハザードを起こしますと改革政権が出来ても容易なことではない。つまり革命政権ぐらいできませんと、この中央に財政に規律をもたらして資源配分を変えるということは容易なことではない、ということをつくづく感じております。

 日本は、よく見れば、今正村先生がおっしゃったように数字の方から見ても分権型にすることはそれほどむずかしくないんですね。公共事業の世界で9兆4千億が国の一般会計の中でうたわれているわけですが、この中身をもう少し見ますと、行政投資実績という冊子が2年おきに出ます。これは自治大臣、自治省がなくなったので総務大臣になりますが、官房地域政策室というところが出しています。これはいわゆる行政投資全般を各県別に見て、例の一人当たりの行政投資は、全国平均を100として、徳島は169で、島根県は190で、埼玉県は68というのがこれに全部のっています。

 この中には昔、建設事業とうのがありましたが、今は多分一般事業というところで見ると思いますが、いわゆる各県の一般事業に国から補助金(国庫支出金)がどれくらい流れたというのがわかります。これをさっき調べていましたら、都道府県へ3兆7千億、市町村へ2兆1千億、というお金が一般事業へ流れています。合わせて5兆8千億ですね。9兆4千億の内、5兆8千億は平成9年度では補助金として流れている。平成8年、平成7年はどうなったのかと統計をとりましたら、仙谷由人が当選したから徳島に対する補助金は減らすとということを言う人は多いのですが、徳島に対する補助金は全然変わりません。島根の補助金は竹下さんが死のうが何をしようと変わりません。こういう構造、いわばこう着した補助金ということは、もっと反対から見ればヒモをつけないである一定限度を一括して渡す。あるいは、神野先生のお考え方に沿えば、一括して渡すくらいならば税源として渡したらどうか、ということがすぐでてきます。

 地方交付税交付金も国がいったん集めて配るわけですが、これも一定割合の範囲では、つまり調整を必要とする範囲を残せば、つまり5割残すのか、4割残すのか別にしますと、その分の税源をわたせば、自治体が自由にできる財源が相当できるはずであります。相当貧しい町村でも5割くらいはできるかもしれません。徳島市くらいだと8割から9割ぐらいの財源、税源ができてくるのではないかと思います。

 私はそうして、そこに公共サービスを賄うということをお願いするというか、地方政府がそれをやる。ただ今度の予算編成時に地元からいろんな陳情団体が来ました。県知事サイド、市長サイド、町村長サイドも議会、議長会も、ここが一番おもしろかったのですが、全員必ず言ってきたことは、外形標準課税の早期導入に向けて全力を挙げていただきたい、ということでした。

 自治労さんの方も会場にいらっしゃるかと思いますが、自治労もそれを強く主張しています。政府税調も外形標準課税に反対していなくて、推進しようとしています。「これだけ役者がそろっているのになぜできないのか」と、その方々に申し上げました。これは、いやがらせのようで、わざと言いました。つまり、これは日本商工会議所、各地域の商工会議所・商工会が「赤字法人から税金をとるのはけしからん」という喧々囂々の意見がありまして、政治的なプレッシャーのもとに、本当はたてまえ上は外形標準課税で法人事業税をいただいて、市町村、あるいは都道府県の公共サービスに見合う、応益的な課税をしたい。安定的な税収を得たいというのが、地方自治体のたてまえ上の彼らの考え方です。

 ところが、いざ自分の選挙のこともありますから、それを考えると本音では「国がとってくれて分けてくれるのが、責任がなくて一番いい」という思いが消え去らない。私は地方の方々に誠に申し訳ないですが、自治体を地方政府的に責任をとってもらう以外に財政再建の道もなければ、日本の私どもの生活を安定的に再構築することもできないのではないかと思います。それはもう少し私の独断を申し上げると、実は間接金融と直接金融の話があります。平たく言えば、銀行がリスクをとらない。国民の皆さま一人一人がリスクをとってちょうだいねと、それだけの話ですよね。あなた方一人一人がマーケットに行って損をしてこい。得することもあるかもわからないよ、というのが直接金融の世界です。現に銀行はいくら預金が増えようが何をしようが、もうほとんどリスクをとれなくなっているという風に考えた方がいいのではないでしょうか。つまり彼らがやっていることは貸しはがしをしながら国債で利ざやを稼ぐことに特化しつつあると見た方がいいのではないかと私は思います。(それは少し厳しすぎる見方かもしれませんが・・・)

 そうだとすると税金を保険料をふくんでいもいいわけですが、その国民の富を中央政府が取って中央政府の仕切りで配分するということがうまくいくのでしょうか。それは正村先生もおっしゃるように、増税というリスクを政治の側でとらない限りできないのに、そのリスクをとりたくないために、50兆円の税収と50兆円の財政赤字で運営するというのは、きわめてひどいポピュリズムです。民主党が政権をとった時に、そのことをちゃんと提起して、そういうでたらめな財政の運営といいますが、サービスと負担の関係を説得できるのかという問題がまさに問われているのだろうと思います。でも、野党の立場でそれをやろうと言うことは、もうひとつ別の意味で難しいところもあるということを皆さま方にお許しをいただかなければならないと思います。

 私は今、大胆な財源の分権、つまり課税自主権を自治体に与える、小さすぎるとかいろんな議論がありますが、いったん与えてみようという方向の改革を、そのプロセスの中で、一括補助金の問題とか、総合補助金という名前にするとか、あるいは地方交付税をどうするのかという問題があると思いますが、それなくしては中央政府も地方政府も一緒になってこの財政破たん泥沼に入っていくだろうと思っています。

 それからもう一点だけ。先ほど連合の皆様方の経済政策第一分科会のところを拝見しておりました。「実質2%台の経済成長と3%台の失業率、それから低金利政策を改めて」と記載されております。私も昨年の選挙のときに、昨年の1月からそういうリーフレットをだしておりました。「3%の失業率、3%の経済成長率、3%の金利とこれを実現する経済政策」というふうに書いておりましたが、ここがいわくいいがたい、言うに易し行うに難しということなのかもわかりません。

 私はこのことを実現するためには、皆様方もそうでありますが、国民の相当部分が、特にこの10年間続いてきた景気回復論のまやかしに絶望しながら経済のまともな成長をつくるためには、一遍、今まで的にいうと、つらい局面が2,3年あっても、まともになるための授業料だと、コストだというふうにお考えいただく常識がでてこないと、景気回復という言葉がでた瞬間に、それに財政出動、この次に公共事業。有名な野村総研のエコノミストでもまだそれを言っている。あるいは皆さんが経済雑誌をご覧いただきますと、多分こういうのはアホの一つおぼえと言うのではないかと私は思いますが。この論理の中で国民の過半数が「あっ、やっぱり景気回付のためにはこれが必要なんだ」という条件反射をするところから脱却しませんと、これは財政も規律をもつことはできないし、そして経済が再生するというところにはいかないのではないかと、この数年間の思いはそういうところでございます。私ども民主党もまさに簡単に「景気回復のために」とか「景気回復しましょう」というわけですが、この"景気回復"という言葉を使うのは2,3年やめたらどうかと私は思っております。以上です。

(会場からの質問に対しての答えと総括)

 私、個人的にも民主党的でも論理として自治体の税をどうすべきかということを考えますと現時点でももっと自由に大胆にやっていいんだ、やるべきだと私は思っています。例えば、バブルの時に地価税というのを国が創設するということになったわけですが、あの時の土地の固定資産税というのはまともにその評価に応じて、1000分の1.4だったと思いますが、とっていた自治体はほとんどありません。

 つまり評価の方法をいじることによって非常に低廉な保有コストしかかからないという仕組みにしてあったというのが実情であります。あの当時の東京都議会議員選挙の時に、候補者の皆さま方に、これは法律の規定通りに取って、その分都民税を減額するという政策を出したら必ず当選するんじゃないかと私は申し上げましたが、そのようにされた方はいませんでした。

 私はやはり今の自治体の議会、首長ともになるべき必要なものであっても税を取りたくないと。税という格好でとりたくないんだと。国から補助金をもらってるくる方がいいんだみたいな雰囲気がまだまだ残っているのが問題で、自主的にお作りいただけるのは、これはまったく問題ないと考えております。

 東京都の銀行に対する外形標準課税的な姿は(私はあれは外形標準課税でもなんでもないのだと思っております)、それから自治省がせんだって発表した外形標準課税も人件費を使えば使うほど税金が重くなるという、こういう税体系をこの時期、つまり産業構造が変化をして、神野先生がおっしゃってます、人間に対する投資とか手当てというところにむしろお金を使い、そこにインセンティブを与えるような税制でなければいけない時期に反対のことをやってしまう。つまり重厚長大産業がこれは一定程度残ってもらわないとならないわけでありますけれども、経済がどうしてもサービス化せざるを得ない時に、人件費を使えば使うほど税金が重くなるという税体系を作るとしたらこれはどういう名前がついても間違いだろうと思います。それで、その上でやはり石原慎太郎さんは、あれをやるのであれば銀行だけでなく全企業に、赤字法人にも応分の負担がなされるような税体系を、外形標準課税を思い切って導入すべきだったと思います。

 現時点での問題は私はあまり自治体行政に詳しくないわけでありますが、独自の税、あるいは基準通りの自治体の指導とは違う税の取り方、例えば先ほどの固定資産税でいいますと、評価を独自にするというふうなことになりますと、それは起債制限という格好を受けるということで今までできないで地方の特色がまったくでないことになっていたと思います。従いまして、ここは本当の自主財源とか分権とか言う以上はそこで自治体にリスクをとってもらうという仕組みを、つまり起債制限を外すと同時に地方債がマーケットでも選別されて、財政規律を持ってなければ金利が高くなるという仕組みをむしろ部分的にせよ導入した方がいいのではないだろうかと思います。

 神野先生がよくおっしゃるように、自治体ごとに見ると、税金の高い所へ所得の低い方が住みたがるという、この日本の常識と正反対の常識が通用するという、そういう地域社会を作るというか、我々の住んでいる場所を作るということが税と財政と公共サービスの関係で作られるというのが私個人の目標でございますし、民主党のほとんどの議員が今、そういうふうに考え始めていると思っております。

(鳥取県の方がおっしゃったのはその通りでございます。)

 ヨーロッパの基準がすべて正しいとは申しませんが、財政から見ますとやはり累積の債務残高がGDPの60%以内くらいでおさまるというのは、企業経営者の論理から言うと「そんなに累積債務があっていいのか」というふうにいわれますけれども、それでもそういうことだと思います。そうしますと、今の累積債務残高は645兆円、あるいは666兆円といっているのをこれを60%以内に抑えようとすると、GDPが約1000兆円強、今のGDPの倍の経済規模を持たなければならない。あるいは反対から言えば、今のGDP500兆円を前提にすると、300兆円ということになりますから、今の債務残高に半分以上今から減らしていかなければならないということになって、これは大変なことでございます。

 もうひとつの基準は単年度で3%以内。これは私の直感で、詳しく調べておりませんが、ヨーロッパ連合の3%というのは、どうも、経済学用語では"一般政府の固定資本形成"と言うようで、日本で言えば公共投資、公共事業というふうに置き換えてもそれほど大きな間違いではないと思います。このパーセントがやはり財政赤字の比率とだいたいイコールというか相似形をなしているように私は感じております。つまり固定資本形成をGDPの3%以内に抑えるとと、日本でいえば15兆円ぐらいに抑えておけば遅々たる歩みといいますかこの間の公共事業一本槍の景気対策であれ社会資本整備であれそういう激しさはないもののメンテナンスをしながら、必要なところにはお金が使われるという程度の社会資本整備ができるだろうと私は思っております。従いまして、今45兆円で15兆円の3倍くらいありますから民主党の公共事業改革の政策は10年間で3割減らすと言ってますが、そこへ持っていくためには7割減らすと言う話にしなければいけません。これは容易なことではありません。つまり就業構造の方から見て建設業従事者はどうするのか。今の話からすると単純計算でいうと670万人の建設労働者を200万人にするという話に近い話になりますから、これはソフトランディングになるのか、相当ハードな局面を経ながらそういう過程を通らなければ財政も経済構造もそして税の負担の問題も適正化しないのか大変な検討課題だと思いますけれども、私はどうもそういう目標に向けて10年、15年のレベルで近づけていかなければならないというふうに今感じております。

 それから社会保障のトータルプランとか年金の一元化のお話はまさにその通りでございます。これはつぎはぎの話に近いかと思いますが、年金のできれば特に基礎年金だけは一元化するとか、先ほど神野先生がおっしゃられた収入に応じて年金額が決まってくる部分がどの程度にするか、それをポータブルにするかどうかという課題が年金問題で問われている。私は地方出身の議員ですから年金の問題もさることながら、もう一つの問題、老人医療の問題を焦眉の課題として、特にこの財政ということは組合健保も、あるいは共済組合、国保も含めて現役世代の負担と70歳以上のお年寄りの医療をどうするのか。特に介護と相当重なる部分をどうするのか。誰が、どのように支えるのかということをもう一遍議論をして、これこそここ数年で解決の方策を出さないと、その内、国民皆保険という麗しいシステムがほとんど崩れてしまうのではないかと心配をしております。

 そこは、民主党の方もつきぬけか独立かということでも、まだ本当の意味で決着はついていない。選挙政策としては出せるとしても、本当の意味での決着はついていないという気がしますので、連合の皆さま方からお知恵を借り、大いに議論をしたいと思います。